ミーン・ストリート
『ミーン・ストリート』(原題:Mean Streets)は、1973年に公開されたアメリカ映画。監督はマーティン・スコセッシ、出演はハーヴェイ・カイテル、ロバート・デ・ニーロなど。
概要[編集]
ニューヨークのリトル・イタリーに住む2人のチンピラ、チャーリー(ハーヴェイ・カイテル)とジョニー・ボーイ(ロバート・デ・ニーロ)の友情をメインテーマとした作品。リトル・イタリーで生まれ育ったスコセッシの自伝的作品の要素が強く、この街に住む人々の日常生活をリアルに写し出している。スコセッシとデ・ニーロのコンビ作の第1作、荒削りだが情熱と才気に溢れた傑作として知られる。当初は『エルサレム・エルサレム』『ドアをノックするのは誰?』『ミーン・ストリート』からなる、リトル・イタリーに住む青年たちの成長を扱った3部作を構想していたが、『エルサレム・エルサレム』は映像化されず、本作は『ドアをノックするのは誰?』(1969年)の続編的な作品となった[1]。当初はドノヴァンの曲からとられた『魔女の季節』というタイトルを予定していたが[2]、レイモンド・チャンドラーのエッセイ「簡単な殺人法」の一節から『ミーン・ストリート』というタイトルがとられた[3]。ミーン・ストリートは「卑しい街路[4]」「うすぎたない通り[5]」「危険な地域[2]」「みすぼらしい街角[6]」を意味する。
『グッドフェローズ』(1990年)と『カジノ』(1995年)の原作と脚本を担当したニコラス・ピレッジは、この2作と『ミーン・ストリート』(1973年)、『アイリッシュマン』(2019年)を合わせて緩やかなスコセッシ4部作をなすと考えている[7]。4作ともスコセッシとデニーロが組んだマフィア映画で、マフィアのアソシエイトを主人公にしている。『ミーン・ストリート』と『アイリッシュマン』はギャングものでありながらキリスト教(カトリック)的な贖罪をテーマとした点で共通性がある。
主人公チャーリーとリトル・イタリーの人々の交流を映した8mmフィルムと、ザ・ロネッツのラブソング「Be My Baby」(1963年)を組み合わせたオープニングのタイトルバックの評判が高い[2][8][6]。その他にローリング・ストーンズの「テル・ミー」「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」、ザ・チップスの「ラバー・ビスケット」、マーヴェレッツの「プリーズ・ミスター・ポストマン」、ザ・ミラクルズの「ミッキーズ・モンキー」、エリック・クラプトンの「ハイダウェイ」、クリームの「ステッピン・アウト」、デレク&ザ・ドミノスの「アイ・ルックト・アウェイ」などの楽曲が使われている。
備考[編集]
- 冒頭に登場する祭りは、マンハッタンのリトル・イタリーで毎年9月に行われるサン・ジェンナーロ・フェスティバル(聖ジェンナーロ祭)[9]。『ゴッドファーザー PART II』(1973年)、『ゴッドファーザー PART III』(1990年)でも取り上げられている。
- 劇中で引用されている映画は、フリッツ・ラング監督のサスペンス映画『復讐は俺に任せろ』(1953年)、ロジャー・コーマン監督のホラー映画『黒猫の棲む館』(1964年)[10]。
- フランシス・フォード・コッポラは本作を見て『ゴッドファーザー PART II』(1973年)へのデ・ニーロの起用を決めた[11]。
- ルッケーゼ・ファミリーの幹部ポール・ヴァリオ(1914~1988)は、仲間たちに半ば無理やり車に押し込まれ、映画館で『ミーン・ストリート』を見させられたが、みんなこの映画に大喜びしたという[12]。ヴァリオは『グッドフェローズ』(1995年)の登場人物ポール・シセロのモデル。
- 日本では1980年に公開された[2]。
出典[編集]
- ↑ デイヴィッド・トンプソン、イアン・クリスティ編、宮本高晴訳『スコセッシ・オン・スコセッシ――私はキャメラの横で死ぬだろう』フィルムアート社、1992年、58頁
- ↑ a b c d 大森さわこ「『ミーン・ストリート』マーティン・スコセッシ&ロバート・デ・ニーロの初タッグにみる、ギャング映画の原点」CINEMORE、2019年12月14日
- ↑ 渡部幻主編『70年代アメリカ映画100』芸術新聞社、2013年、131頁
- ↑ レイモンド・チャンドラー著、稲葉明雄訳『チャンドラー傑作集2』東京創元新社(創元推理文庫)、1965年
- ↑ 『スコセッシ・オン・スコセッシ――私はキャメラの横で死ぬだろう』77頁
- ↑ a b 中野充浩「ミーン・ストリート〜NYの下町に流れた不朽のラブソング「Be My Baby」」TAP the POP、2021年11月27日
- ↑ David Fear「史上最高のギャング映画になるか? スコセッシの新作『アイリッシュマン』に迫る」Rolling Stone Japan、2019年11月20日
- ↑ 中野充浩「ダーティ・ダンシング/ミーン・ストリート〜史上最高のラブソング「Be My Baby」」TAP the POP、2016年8月20日
- ↑ 『スコセッシ・オン・スコセッシ――私はキャメラの横で死ぬだろう』39頁
- ↑ 『スコセッシ・オン・スコセッシ――私はキャメラの横で死ぬだろう』80、85頁
- ↑ 『スコセッシ・オン・スコセッシ――私はキャメラの横で死ぬだろう』92頁
- ↑ 『スコセッシ・オン・スコセッシ――私はキャメラの横で死ぬだろう』246-247頁
外部リンク[編集]
- ミーン・ストリート - allcinema
- ミーン・ストリート - KINENOTE
- Mean Streets - オールムービー(英語)
- Mean Streets - IMDb(英語)