グッドフェローズ
『グッドフェローズ』(原題:Goodfellas)は、1990年に公開されたアメリカ映画。監督はマーティン・スコセッシ、出演はレイ・リオッタ、ロバート・デ・ニーロ、ジョー・ペシなど。原作はニコラス・ピレッジのノンフィクション作品『ワイズガイ』(1985年)。
概要[編集]
ルッケーゼ・ファミリーのアソシエイトだった実在の人物、ヘンリー・ヒル(1943~2012)の半生を通してマフィアの実態を描いた映画。1955~1980年の約25年間を145分に圧縮し、素早いカット割りとモノローグ、ポップ・ミュージックを使ってテンポよく描き、編集・撮影・音楽の面で革新的な作品であるとされる。全編が予告編のような展開はフランソワ・トリュフォー監督の『突然炎のごとく』(1962年)を模範としたものだとされ、後半にはサイレント映画『大列車強盗』(1903年)からの引用がある[1]。40曲以上のポップ、ロック、R&Bが使用されており、中でもデレク&ザ・ドミノスの「いとしのレイラ」とシド・ヴィシャスの「マイ・ウェイ」が流れるシーンは定評がある[2][3]。原作と脚本を担当したニコラス・ピレッジは、『ミーン・ストリート』(1973年)、『カジノ』(1995年)、『アイリッシュマン』(2019年)と合わせて緩やかなスコセッシ4部作をなすと考えている[4]。
代表的なマフィア映画の一つであり、しばしばマフィア映画の金字塔として有名な『ゴッドファーザー』シリーズ(1972~1990年)と対比される。『ゴッドファーザー』がイタリア系マフィアのドンを神話的に描いているのに対し、『グッドフェローズ』はマフィアの正式な構成員になれないアイルランド系ギャングのモラルなき日常を生々しく描いている。スコセッシは『ゴッドファーザー PART II』(1974年)が『アーサー王の死』のような叙事詩だとすれば、『グッドフェローズ』は街頭ドキュメンタリーに似たものだと語っている[5]。マーク・フィッシャーは『資本主義リアリズム』(2009年)で『ゴッドファーザー』『グッドフェローズ』の2作と『ヒート』(1995年)を比較している。同じギャングもの映画でも「地域的な色彩、料理の香り、俗語」にあふれた共同体を舞台にした前者と、チェーン店の立ち並ぶロサンゼルスを舞台に根無し草の組員たちが将来の収益への期待だけで団結する後者の差異を、フォーディズムとポスト・フォーディズムの差異として論じている[6]。
評価[編集]
- 1991年の第63回アカデミー賞では、作品賞、監督賞(スコセッシ)、助演女優賞(ロレイン・ブラッコ)、脚色賞(スコセッシ、ピレッジ)にノミネートされた。トミー・デヴィートを演じたジョー・ペシが助演男優賞を受賞した。
- アメリカン・フィルム・インスティチュートの「AFIアメリカ映画100年シリーズ」では、1998年の「アメリカ映画ベスト100」で第94位、2007年の「アメリカ映画ベスト100(10周年エディション)」で第92位、2008年の「10ジャンルのトップ10 ギャング映画」で第2位に選出されている。
- 英文学者の北村紗衣は、Twitterにて「#私の音楽が最高の映画ベスト10」「#アカデミー作品賞を逃したベスト10」「#90年代ベスト映画」「#好きなバイオレンス映画[7]」に『グッドフェローズ』を挙げている。また「#映画史上最も素晴らしいと思うシーン」の1つに「『グッドフェローズ』コパカバーナ長回し」を挙げている。北村は大学のゼミで本作を見せているが、学生の受けは悪いという[8][9]。
#私の音楽が最高の映画ベスト10 『ベルベット・ゴールドマイン』 |
#アカデミー作品賞を逃したベスト10 (古いほうから) |
#90年代ベスト映画 グッドフェローズ |
- ドナルド・トランプ米大統領は、好きな映画に『市民ケーン』(1941年)、『ブラッド・スポーツ』(1988年)、『続・夕陽のガンマン』(1966年)、『ゴッドファーザー』(1972年)、『グッドフェローズ』、『風と共に去りぬ』(1939年)を挙げている[14]。
- コロンボ・ファミリーの元幹部で『グッドフェローズ』の登場人物フランチェーゼのモデルであるマイケル・フランゼーゼは、『グッドフェローズ』と『フェイク』(1997年)はマフィアを正確に描いていると述べている[15]。
- クエンティン・タランティーノ監督の『レザボア・ドッグス』(1992年)に影響を与えたとされるが[16]、タランティーノは『グッドフェローズ』よりも『キング・オブ・ニューヨーク』(1990年)の方が良いと述べている[17]。
出典[編集]
- ↑ 尾崎一男「<90年代>M・スコセッシを代表する『グッドフェローズ』 マフィア映画のマスターピースはいかにして誕生したのか?」スカパー、2021年6月28日
- ↑ 森直人「『グッドフェローズ』がギャング映画にもたらした画期的なニュースタイルとは」CINEMORE、2019年1月3日
- ↑ 中野充浩「グッドフェローズ〜「いとしのレイラ」が印象的に使われたマーティン・スコセッシ監督作」TAP the POP、2021年9月6日
- ↑ David Fear「史上最高のギャング映画になるか? スコセッシの新作『アイリッシュマン』に迫る」Rolling Stone Japan、2019年11月20日
- ↑ デイヴィッド・トンプソン、イアン・クリスティ編、宮本高晴訳『スコセッシ・オン・スコセッシ――私はキャメラの横で死ぬだろう』フィルムアート社、1992年、231頁
- ↑ マーク・フィッシャー著、セバスチャン・ブロイ、河南瑠莉訳『資本主義リアリズム――「この道しかない」のか?』堀之内出版、2018年、第五章
- ↑ https://twitter.com/Cristoforou/status/1153861401565417472
- ↑ https://twitter.com/Cristoforou/status/1045858863021318144
- ↑ https://twitter.com/Cristoforou/status/1087351541386760192
- ↑ https://twitter.com/Cristoforou/status/1023237344285999104
- ↑ https://twitter.com/Cristoforou/status/1100396245086945280
- ↑ https://twitter.com/Cristoforou/status/1563185322590367744
- ↑ https://twitter.com/Cristoforou/status/1148167528629194752
- ↑ John Lynch「Donald Trump's surprising list of favorite movies, TV shows, and music」INSIDER、2016年8月25日
- ↑ 小千谷サチ「【本人降臨】元マフィア幹部がネット上で質問を受付け!「1番怖かった瞬間は?」などQ&A 43選がこれだ!!」ロケットニュース24、2016年2月19日
- ↑ Jim Hemphill「Of Tarantino and TV: The Legacy of Goodfellas」Filmmaker、2015年4月12日
- ↑ Dennis Hopper talks to QT