馬場宏二

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馬場 宏二(ばば こうじ、1933年4月8日[1] - 2011年10月14日)は、マルクス経済学者。東京大学名誉教授。専攻は農業問題研究、世界経済研究[2]宇野学派の重鎮[3]

経歴[編集]

群馬県生まれ。小学校時代を台湾で過ごし、敗戦で引揚げる[4]。1953年群馬県立渋川高等学校卒業[5]。1957年東京大学経済学部卒業。1962年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位修得退学[1]大内力[6][7][8]宇野弘蔵に師事[9]。1962年神奈川大学法経学部専任講師、1966年同大学経済学部助教授[1]。1967年「アメリカ農業問題の発生」で経済学博士(東京大学)[10]。1968年東京大学社会科学研究所助教授、1981年同教授[2]。1994年東京大学社会科学研究所を退官、東京大学名誉教授、大東文化大学経済学部・経営学部教授[2][3]。2004年大東文化大学を定年退職[3][4]。2011年10月14日、胃がんのため死去、78歳[11]

会社主義論や過剰富裕化論を唱えたことで知られる[12][13]。1986年から行われた東大社研の共同研究「現代社会」を主導[7][6]。1989年の論文「経済政策論と現代資本主義論」(『社會科學研究』第41巻第2号)で第一次大戦までを古典的帝国主義、それ以後を現代資本主義と区分する独自の段階論を提起し、『新資本主義論』(名古屋大学出版会、1997年)、『宇野理論とアメリカ資本主義』(御茶の水書房、2011年)で精緻化した[14]

大内力や新田俊三らとともに1977年発足の労働者自主管理研究会議に参加し、日本社会党の綱領的文書「日本における社会主義への道」(通称:「道」)を批判した[15]。新田俊三、福島新吾佐藤経明福田豊西尾孝明大内秀明らとともに1978年の社会党第42回大会で設置された社会主義理論センターで「道」の見直し作業に協力した[16]

アンドリュー・E・バーシェイ著『近代日本の社会科学――丸山眞男と宇野弘蔵の射程』(山田鋭夫訳、NTT出版、2007年)の第5章は、大内力、玉野井芳郎、馬場宏二を取り上げている。

著書[編集]

単著[編集]

  • 『アメリカ農業問題の発生』(東京大学出版会、1969年)
  • 『世界経済――基軸と周辺』(東京大学出版会[東大社会科学研究叢書]、1973年)
  • 『現代資本主義の透視』(東京大学出版会[UP選書]、1981年)
  • 『富裕化と金融資本』(ミネルヴァ書房[東京大學社會科學研究所研究叢書]、1986年)
  • 『教育危機の経済学』(御茶の水書房[御茶の水選書]、1988年)
  • 『新資本主義論――視角転換の経済学』(名古屋大学出版会、1997年)
  • 『会社という言葉』(大東文化大学経営研究所[大東文化大学経営研究所研究叢書]、2001年)
  • 『マルクス経済学の活き方――批判と好奇心』(御茶の水書房、2003年)
  • 『もう一つの経済学――批判と好奇心』(御茶の水書房、2005年)
  • 『経済学古典探索――批判と好奇心』(御茶の水書房、2008年)
  • 『宇野理論とアメリカ資本主義』(御茶の水書房、2011年)
  • 『神長倉真民論』(開成出版、2013年)

共編著[編集]

  • 『講座 帝国主義の研究――両大戦間におけるその再編成 2 世界経済』(宇野弘蔵監修、加藤栄一渡辺寛、中山弘正共著、青木書店、1975年)
  • 『シリーズ世界経済(1)国際的連関――焦点と回路』(編、御茶の水書房、1986年)
  • 『シリーズ世界経済(2)アメリカ――基軸国の盛衰』(編、御茶の水書房、1987年)
  • 『シリーズ世界経済(3)ヨーロッパ――独自の軌跡』(編、御茶の水書房、1988年)
  • 『シリーズ世界経済(4)日本――盲目的成長の帰結』(編、御茶の水書房、1989年)
  • 『資本主義はどこに行くのか――20世紀資本主義の終焉』(加藤榮一、三和良一共編、東京大学出版会、2004年)
  • 『現代世界経済の構図』(工藤章共編、ミネルヴァ書房[Minerva人文・社会科学叢書]、2009年)

訳書[編集]

  • アーサー・ルイス『世界経済論』(石崎昭彦、森恒夫共訳、新評論、1969年)

出典[編集]

  1. a b c 東京大学社会科学研究所編『社会科学研究所の30年――年表・座談会・資料』東京大学社会科学研究所、1977年
  2. a b c 馬場宏二 東京大学社会科学研究所
  3. a b c 竹永進「書評 馬場宏二『宇野理論とアメリカ資本主義』御茶の水書房、2011年PDF」『経済論集』第96巻、2011年10月
  4. a b もう一つの経済学―批判と好奇心 紀伊國屋書店
  5. 「故馬場宏二氏 弔辞・追悼文」『「宇野理論を現代にどう活かすか」Newsletter』第2期6号―通巻第18号―PDF2011年10月30日
  6. a b 馬場宏二「三題噺PDF」」『商学論集』第78巻第2号、2009年12月
  7. a b 山崎広明「弔辞」『「宇野理論を現代にどう活かすか」Newsletter』第2期6号―通巻第18号―PDF2011年10月30日
  8. 中山弘正「書評 馬場宏二著『宇野理論とアメリカ資本主義』」『PRIME』第34号、2011年10月
  9. 福留久大「『マルクス理論研究』, 小幡道昭・青才高志・清水敦編, 御茶の水書房, 2007年PDF」『季刊経済理論』第45巻第2号、2008年
  10. CiNii 博士論文
  11. 東大名誉教授の馬場宏二さん死去 朝日新聞デジタル、2011年10月16日
  12. 田中史郎「過剰富裕の経済学PDF」」『經濟學研究』第65巻第3号、1998年10月
  13. 戸塚茂雄「過剰富裕化論の学説史的考察PDF」」『「宇野理論を現代にどう活かすか」Newsletter』第2期第8号通巻第20号、2011年10月30日
  14. 三和良一「弔辞」『「宇野理論を現代にどう活かすか」Newsletter』第2期6号―通巻第18号―PDF2011年10月30日
  15. 川上忠雄編著『岐路に立つ日本社会党――路線論争と自主管理社会主義』社会評論社、1981年
  16. 勝間田清一『勝間田清一著作集 第3巻 回想の七十余年』日本社会党中央本部機関紙局、1987年