日高六郎

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日高 六郎(ひだか ろくろう、大正6年(1917年1月11日 - 平成30年(2018年6月7日)は、日本社会学者進歩的文化人の一人である。英文学者・日高八郎の兄。ベトナム戦争反戦運動、水俣病問題など「行動する学者」として戦後の平和運動を主導した人物である。妻は画家エッセイスト日高暢子

来歴[編集]

中華民国青島生まれ。東京帝国大学(現在の東京大学)を卒業する。太平洋戦争中は日本海軍技術研究所嘱託を経て、戦後東京大新聞研究所助教授を経て、昭和35年(1960年)に教授となる。同年の安保闘争をはじめ、数多くの市民運動に参加して中心人物となり、理論と実践の両面で活躍する。知識人の社会的責任を持論とし、作家小田実評論家鶴見俊輔らと共に在野の立場から主張を続け、平和教育公害人権などの問題で戦後民主主義を擁護する論陣を張る。

1960年代末の東大紛争では、大学への機動隊導入に抗議して教授職を辞職する。ベトナム戦争では反戦運動を展開し、脱走したアメリカ兵を自宅に匿うなど、社会の課題に積極的に関与した。その後、京都精華大学に就任する。市民運動の拠点として創立された「国民文化会議」の代表も務めた。国際交流基金の文化交流事業の一環としてオーストラリアの大学に派遣されることが決まった際には、日本赤軍と関係のある人物であるとしてオーストラリアが渡航を拒否する事態に発展した。

護憲の立場を貫き、ドキュメンタリーである「映画、日本国憲法」に出演し、戦中の自らの精神史を振り返る「戦争のなかで考えたこと」を出版するなど、日本の平和主義を守るために発言を続ける。著書も多く、「戦後思想を考える」「現代イデオロギー」「1960年5月19日」などがある。

平成30年(2018年)6月7日午前5時31分、老衰のため、京都府京都市左京区高齢者施設死去。101歳没。日高の意志により葬儀は行なわれないという。

著書[編集]

単著[編集]

  • 『現代イデオロギー』(勁草書房、1960年)
  • 『原水爆とのたたかい 平和の声まちに村に』(国土社、1963年)
  • 『日高六郎教育論集』(一ツ橋書房、1970年)
  • 『人間の復権と解放』(一ツ橋書房、1973年)
  • 『戦後思想と歴史の体験』(勁草書房、1974年)
  • 『戦後思想を考える』(岩波新書、1980年)
  • 『私の平和論 戦前から戦後へ』(岩波新書、1995年)
  • 『戦争のなかで考えたこと ある家族の物語』(筑摩書房、2005年)

編著[編集]

  • 『日本人の思想と意識』(春秋社、1953年)
  • 『現代心理学. 第6巻』(河出書房、1955年)
  • 『マス・コミュニケーション講座. 第5巻』(河出書房、1955年)
  • 福武直高橋徹と共編)『講座社会学』全10巻(東京大学出版会、1957-58年)
  • 北川隆吉と共編)『現代社会集団論』(東京大学出版会、1958年)
  • (福武直・高橋徹と共編)『社会学辞典』(有斐閣、1958年)
  • 『人間の研究. 第3巻』(有斐閣、1959年)
  • 『社会学論集. 理論篇』(河出書房新社、1959年)
  • 『1960年5月19日』(岩波新書、1960年) 石田雄鶴見俊輔等と共著
  • 『マス・レジャー叢書. 第2』(紀伊国屋書店、1961年)
  • 『20世紀を動かした人々. 第15』(講談社、1963年)
  • 近代主義』(現代日本思想大系第34巻)(筑摩書房、1964年)
  • 佐藤毅と共編)『にっぽん診断』(三一新書、1964年)
  • (福武直と共編)『倫理・社会』(学生社、1964年)
  • 木下順二野間宏と共編)『知識人の思想と行動 : 新しい連帯のために』(麦書房、1964年)
  • 依田新木原健太郎と共編)『講座マス・コミュニケーションと教育』全3巻(明治図書出版、1965年)
  • 『講座社会と倫理. 第5巻』(日本評論社、1966年)
  • 『現代日本の思想 : 戦争と日本人 シンポジウム』(三省堂新書、1967年)
  • (佐藤毅・稲葉三千男と共編)『マス・コミュニケーション入門』(有斐閣、1967年)
  • 『戦後思想の出発』(戦後日本思想大系第1巻)(筑摩書房、1968年)
  • 作田啓一と共編)『社会学のすすめ』(筑摩書房、1968年)
  • 城塚登と共編)『岩波講座哲学. 第5』(岩波書店、1969年)
  • 田中寿美子と共編)『現代婦人問題講座. 第1』(亜紀書房、1969年)
  • 『マスコミ : 戦後資料』(日本評論社、1970年)
  • 『意識のなかの日本 : シンポジウム』(朝日新聞社、1972年)
  • 徐龍達と共編)『大学の国際化と外国人教員』(第三文明社、1980年)
  • サルトルとの対話』(人文書院、1980年)
  • 『憲法改悪反対運動入門 : 青年よ銃をとるな』(オリジン出版センター、1981年)
  • 高山英男と共編)『教育実践の記録. 別冊 1』(筑摩書房、1982年)
  • 総評教宣局と共編)『私の戦争体験 : 若い世代に語りつぐ』(労働教育センター、1982年)
  • 榎本貴志雄と共編)『21世紀への進路』(ミネルヴァ書房、1986年)
  • 『戦後日本を考える』(筑摩書房、1986年)
  • 『現代日本を考える』(筑摩書房、1987年)
  • 『明日の日本を考える』(筑摩書房、1988年)
  • 『世界のいまを考える』(筑摩書房、1989年)
  • 『変わる世界を考える』(筑摩書房、1990年)
  • 『激動する世界と日本を考える』(筑摩書房、1992年)
  • 『教科書に書かれなかった戦争. part 19』(梨の木舎、1995年)
  • 高畠通敏と共編)『21世紀私たちの選択』(日本評論社、1996年)
  • 『国際化時代の人権入門』(神奈川人権センター、1997年)

共著[編集]

  • 『社会科学研究. 第1』(鎌倉文庫、1948年)
  • 国際社会科学協会編『社会科学講座. 第4巻』(二見書房)
  • 東京大学社会学会編『現代社会学の諸問題 : 戸田貞三博士還暦祝賀紀念論文集』(弘文堂、1949年)
  • 大塚久雄編『社会科学入門』(みすず書房、1949年)
  • 荒正人編『知識人の探求』(河出書房、1949年)
  • 清水幾太郎編『文化の思索』(糸書房、1949年)
  • マックス・ウェーバー研究. 第1』(鎌倉文庫新社、1950年)
  • 『思索叢書. 第4』(池田書店、1950年)
  • 弘文堂編集部編『社会科学講座. 第5巻』(弘文堂、1951年)
  • 牛島義友編『少年問題と科学』(有斐閣、1951年)
  • 清水幾太郎編『日本の思想』(河出書房、1951年)
  • 勝田守一編『岩波講座教育. 第3巻』(岩波書店、1952年)
  • 創文社編集部編『新倫理講座. 第4巻』(創文社、1952年)
  • 福武直・日高六郎『社会学 : 社会と文化の基礎理論』(光文社、1952年)
  • 林恵海臼井二尚編『教養講座社会学』(有斐閣、1953年)
  • 桑原武夫ほか編『岩波講座文学. 第2』(岩波書店、1953年)
  • 安藤良雄高野雄一編『一般社会』(学生社、1953年)
  • 遠山茂樹ほか編『日本資本主義講座 : 戦後日本の政治と経済. 第9巻』(岩波書店、1954年)
  • 創文社編集部編『現代宗教講座. 第2巻』(創文社、1954年)
  • 創文社編集部編『現代史講座. 別巻』(創文社、1954年)
  • 勝田守一ほか編『現代道徳教育講座. 第1巻』(岩崎書店、1955年)
  • 千葉雄次郎編『新聞』(有斐閣、1955年)
  • 勝田守一ほか編『講座道徳教育. 第8巻』(牧書店、1956年)
  • 『岩波講座現代思想. 第1巻』(岩波書店、1956年)
  • 石黒修ほか編『ことばの講座. 第5巻』(東京創元社、1956年)
  • みすず書房編集部編『社会科学入門』(みすず書房、1956年)
  • 『岩波講座現代思想. 第8巻』(岩波書店、1957年)
  • 『岩波講座現代思想. 第11巻』(岩波書店、1957年)
  • 宗像誠也編『日本の教育』(毎日新聞社、1957年)
  • 福武直編『日本の社会』(毎日新聞社、1957年)
  • 『講座現代倫理. 第7巻』(筑摩書房、1958年)
  • 阿部知二ほか編『講座現代芸術. 第3』(勁草書房、1958年)
  • 国分一太郎丸岡秀子編『教師生活』(新評論、1958年)
  • 『講座現代倫理. 第11巻』(筑摩書房、1959年)
  • 『岩波講座現代教育学. 第1巻』(岩波書店、1960年)
  • 新評論編集部編『日本の教師にうつたえる. 第3』(新評論、1960年)
  • 臼井吉見編『現代教養全集. 第23』(筑摩書房、1960年)
  • 伊藤整清水幾太郎編『近代日本思想史講座. 第3』(筑摩書房、1960年)
  • 『岩波講座現代教育学. 第12』(岩波書店、1961年)
  • 『岩波講座現代教育学. 第13』(岩波書店、1961年)
  • 井汲卓一ほか編『講座現代のイデオロギー. 第5巻』(三一書房、1962年)
  • 日本作文の会編『講座生活綴方. 第5巻』(百合出版、1963年)
  • 『岩波講座現代. 第11』(岩波書店、1964年)
  • 家永三郎編『現代日本思想大系. 第3』(筑摩書房、1965年)
  • 桑原武夫ほか編『世界の思想. 第15』(河出書房新社、1965年)
  • 家永先生の教科書訴訟を支援する市民の会編『変革への提言 : 国家は「私」を教育できるか』(学芸書房、1969年)
  • 大久保典夫ほか編『戦後文学論争. 上巻』(番町書房、1972年)
  • 『岩波講座現代都市政策. 2』(岩波書店、1973年)
  • 久野収編『戦後日本思想大系. 15』(筑摩書房、1974年)
  • 外山滋比古ほか編『人間の発見. 5』(三省堂、1974年)
  • 久野収・神島二郎編『『天皇制』論集』(三一書房、1974年)
  • 加藤周一と共著)『同時代人丸山眞男を語る』(世織書房、1998年)
  • 井上ひさし樋口陽一編『『世界』憲法論文選 : 1946-2005』(岩波書店、2006年)

訳書[編集]

外部リンク[編集]