市田良彦

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市田 良彦(いちだ よしひこ、1957年 - )は、社会思想史家。神戸大学名誉教授。専攻はフランス現代思想。

経歴・人物[編集]

西宮市生まれ。京都大学経済学部卒業[1]。京都大学大学院経済学研究科博士課程中退。元大阪女子大学専任講師[2]、神戸大学助教授[3]、神戸大学大学院国際文化学研究科教授。ルイ・アルチューセルの思想に影響を受けたアルチュセリアン[3]。アルチューセルを始め、フーコードゥルーズなど現代思想の研究で知られるが、「マルクス思想を模範とする実践家」でもあるとされる[4]。京大在学中の70年代後半、京都大学全学自治会同学会の委員長を二期務め、竹本処分粉砕闘争などを闘った[5]。80年代はニューアカデミズム周辺で活躍し、雑誌『GS たのしい知識』に浅田彰との共訳でフーリエ「愛の新世界」の翻訳などを載せた。この頃から「浅田彰よりキレ者」と言われていたという[6]。90年代からフランスの左翼系理論誌『マルチチュード』誌の編集委員を務めていたが、2008年にリーマン・ショックを発端とした金融危機をめぐって市田らデフォルト路線を主張する編集委員と国民国家・EUを拠点にグローバリゼーションを批判する編集委員が対立したため辞任した[7]。2008年にアントニオ・ネグリ来日の準備を進めたが、法務省入国管理局からネグリが政治犯であったことを証明する公式書類の提出を求められ、書類の収集が困難なため中止を余儀なくされた[8]。2011年~2014年京都大学人文科学研究所の共同研究「ヨーロッパ現代思想と政治」班長。2017年~2020年共同研究「フーコー研究──人文科学の再批判と新展開」班員。

2009年3月にベネズエラ大使館主催により東京で行われた「チャベス大統領と日本の知識人とのミーティング」でレクチャーおよび応答を行い、同年8月にベネズエラの首都カラカスで行われた第2ラウンドにも参加した[9]。2019年2月、ベネズエラ危機を受けて発表された「ベネズエラ情勢に関する有識者の緊急声明~国際社会に主権と国際規範の尊重を求める」の呼びかけ人の1人に名を連ねた[10][11]

著書[編集]

単著[編集]

  • 『闘争の思考』(平凡社、1993年)
  • 『ランシエール 新〈音楽の哲学〉』(白水社[哲学の現代を読む]、2007年)
  • 『アルチュセール ある連結の哲学』(平凡社、2010年)
  • 『革命論――マルチチュードの政治哲学序説』(平凡社[平凡社新書]、2012年)
  • 『存在論的政治――反乱・主体化・階級闘争』(航思社、2014年)
  • 『ルイ・アルチュセール――行方不明者の哲学』(岩波書店岩波新書]、2018年) - 浅田彰が帯に推薦コメントを書いている[12]
  • 『フーコーの〈哲学〉――真理の政治史へ』(岩波書店、2023年)

共著[編集]

  • 丹生谷貴志、上野俊哉、田崎英明、藤井雅実共著『戦争――思想・歴史・想像力』(新曜社、1989年)
  • 青木隆嘉、中嶋昌弥、藤田正共著『過剰としてのプラクシス 日常実践の光景』(晃洋書房、1991年)
  • 柄谷行人、浅田彰、小倉利丸、崎山政毅共著、石谷治寛、大野裕之編集『マルクスの現在』(とっても便利出版部、1999年)
  • 西谷修、酒井直樹、遠藤乾、酒井隆史、宇野邦一、尾崎一郎、トニ・ネグリ、マイケル・ハート共著『非対称化する世界――『〈帝国〉』の射程』(以文社、2005年)
  • ポール・ギルロイ、本橋哲也共著、小笠原博毅編『黒い大西洋と知識人の現在』(松籟社、2009年)
  • 石井暎禧共著『聞書き〈ブント〉一代――政治と医療で時代をかけ抜ける』(世界書院、2010年)
  • 王寺賢太小泉義之絓秀実長原豊共著『脱原発「異論」』(作品社、2011年)
  • 王寺賢太、小泉義之、長原豊共著『債務共和国の終焉――わたしたちはいつから奴隷になったのか』(河出書房新社、2013年)
  • アントニオ・ネグリ、伊藤守、上野千鶴子、大澤真幸、姜尚中、白井聡、毛利嘉孝共著、三浦信孝訳『ネグリ、日本と向き合う』(NHK出版[NHK出版新書]、2014年)
  • 相澤伸依、上尾真道、上田和彦、王寺賢太、隠岐さや香、重田園江、北垣徹、久保田泰考、小泉義之、坂本尚志、柵瀬宏平、佐藤淳二、佐藤嘉幸、柴田秀樹、武田宙也、田中祐理子、千葉雅也、立木康介、中井亜佐子、長原豊、西迫大祐、丹生谷貴志、箱田徹、廣瀬純、藤田公二郎、布施哲、堀尾耕一、前川真行松本潤一郎、森本淳生、森元庸介共著『狂い咲く、フーコー――京都大学人文科学研究所 人文研アカデミー『フーコー研究』出版記念シンポジウム全記録+(プラス)』(読書人、2021年)

編著[編集]

  • 杉本昭典著、黒川伊織共編『時代に抗する――ある「活動者」の戦後期』(航思社、2014年)[13]
  • 王寺賢太共編『現代思想と政治――資本主義・精神分析・哲学』(平凡社、2016年)
  • 王寺賢太共編『〈ポスト68年〉と私たち――「現代思想と政治」の現在』(平凡社、2017年)

翻訳[編集]

  • ポール・ヴィリリオ『速度と政治――地政学から時政学へ』(平凡社、1989年/平凡社[平凡社ライブラリー]、2001年)
  • 編訳『三〇億の倒錯者――ルシェルシュ十二号より』(インパクト出版会、1992年)
  • ルイ・アルチュセール『哲学・政治著作集Ⅰ』(福井和美共訳、藤原書店、1999年)
  • ルイ・アルチュセール『哲学・政治著作集Ⅱ』(福井和美、前川真行、宇城輝人、水嶋一憲、安川慶治共訳、藤原書店、1999年)
  • ジャック・ランシエール『アルチュセールの教え』(伊吹浩一、箱田徹、松本潤一郎、山家歩共訳、航思社[革命のアルケオロジー]、2013年)
  • ジャック・ランシエール『平等の方法』(上尾真道、信友建志、箱田徹共訳、航思社、2014年)
  • ミシェル・フーコー著、ファビエンヌ・ブリヨン、ベルナール・E・アルクール編『悪をなし真実を言う――ルーヴァン講義1981』(監訳、上尾真道、信友建志、箱田徹訳、河出書房新社、2015年)
  • ルイ・アルチュセール『政治と歴史――エコール・ノルマル講義1955-1972』(王寺賢太共訳、平凡社、2015年)
  • ルイ・アルチュセール『終わりなき不安夢――夢話1941-1967』(書肆心水、2016年)
  • ルイ・アルチュセール『哲学においてマルクス主義者であること』(航思社[革命のアルケオロジー]、2016年)
  • フランソワ・マトゥロン『もはや書けなかった男』(航思社、2018年)

監修[編集]

  • アントニオ・ネグリ、マイケル・ハート著、幾島幸子訳『マルチチュード――「帝国」時代の戦争と民主主義(上・下)』(水嶋一憲共監修、日本放送出版協会[NHKブックス]、2005年)

出典[編集]

  1. 政治と歴史 / アルチュセール,ルイ【著】〈Althusser,Louis〉/市田 良彦/王寺 賢太【訳】 - 紀伊國屋書店ウェブストア
  2. 市田良彦、丹生谷貴志、上野俊哉、田崎英明、藤井雅実『戦争――思想・歴史・想像力』新曜社、1989年
  3. a b 柄谷行人、浅田彰、市田良彦、小倉利丸、崎山政毅『マルクスの現在』とっても便利出版部、1999年
  4. 「資本論−現代グロ−バリズム資本主義−現代過渡期世界の変革の方向性をめぐって」 LOFT PROJECT SCHEDULE
  5. 市田良彦「「俺が党だ」――ポスト〈68年〉の理論的悲哀」『情況』2018年秋号
  6. 日誌 How It Is(佐々木敦の批評ブログ)、2007年8月12日
  7. 市田良彦『存在論的政治――反乱・主体化・階級闘争』航思社、2014年
  8. 【緊急報告】アントニオ・ネグリ氏来日中止の経緯説明会 University of Tokyo Center for Philosophy
  9. 黒沢惟昭「カリブ海の新しい波--ベネズエラと大統領チャベス」『長野大学紀要』31巻3号、2010年3月
  10. ベネズエラ情勢に関する有識者の緊急声明 for-venezuela-2019-jp on Strikingly
  11. ベネズエラ情勢に関する有識者の緊急声明~国際社会に主権と国際規範の尊重を求める 長周新聞(2019年2月25日)
  12. 岩波新書編集部のツイート
  13. 『時代に抗する―ある「活動者」の戦後期』 エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)(2014年8月1日)

外部リンク[編集]