伊豆半島東方沖地震

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伊豆半島東方沖地震(いずはんとうとうほうおきじしん)とは、静岡県伊豆半島東方沖を震源とする地震の総称である。この地域では火山活動に伴う群発地震が過去に繰り返し発生しており、M5を超える比較的規模の大きい地震が発生することもある。

観測体制として、陸上には気象庁や防災技術研究所の地震観測施設が設置されており、ひずみ計などを使用した地殻変動の観測が行われている。また、東京大学地震研究所1993年から伊豆半島東方の海底にケーブル式の海底地震計を設置し地殻活動を常時監視している[1]

群発地震[編集]

詳細は「伊豆半島東方沖群発地震」を参照

伊豆半島東方沖では、過去に何度も活発な群発地震が発生しており、近年では特に1978年以降、地震活動が活発化した[2][3][4]。地震活動は特に、伊豆半島東部の伊東市の沿岸から沖合にかけての領域(主に川奈崎の沖合を中心とした北西-南東方向のおよそ20kmの範囲)で活発となっている[2]

群発地震の原因については、この地域が火山地帯であることからマグマの動きと関係あるのではないかと考えられてきたが(伊豆東部火山群)、1989年7月になると群発地震に伴う海底噴火により「手石海丘」という海底火山ができたため、火山性地震であることが裏付けられた[5][6][7]。その後の研究により、伊豆東部の群発地震は火山活動に伴う岩脈の貫入によってたびたび発生してきたこともわかった[6]

1970年代1980年代1990年代には非常に活発だった地震活動だが、2000年代に入ってからは活動が低調化しつつある。

1980年の地震[編集]

1980年6月29日午後4時20分頃、伊豆半島東方沖(北緯34度55.0分・東経139度14.0分)でM6.7の地震が発生(深さ10km)[8]。この地震は、1978年頃から活発化した群発地震活動の中で最大の地震である(過去に伊豆半島東方沖を震源として発生した全ての地震の中でマグニチュードが最も大きい)。伊豆半島で家屋全壊1、一部破損17、傷7などの被害があり、神奈川県でも傷1などの被害があった[9]

震度4以上の地域[8]
震度 都道府県 地域
5 東京都 伊豆大島町元町
静岡県 熱海市網代
4 埼玉県 熊谷市桜町
千葉県 館山市長須賀
東京都 千代田区大手町新島測候所
神奈川県 横浜市中区山手町
静岡県 三島市東本町

2006年の地震[編集]

2006年平成18年)4月21日午前2時50分に、伊豆半島東方沖(静岡県伊東市富戸沖)を震源として発生。マグニチュード5.8 。

2006年1月頃からM1.0前後の微弱な地震活動が観測されていたが、同4月17日頃から顕著な有感地震が発生するようになり、4月21日に最大規模の本地震が発生。4月30日には M4.5、5月2日に M5.1 等の地震も発生している。この地震の震源断層は、南北に約4km×幅約6kmで、東側に75度傾斜する左横ずれ断層であり、平均すべり量は約0.7mと分析されている[10]

震源・日時
被害
  • 静岡県 伊東市(震度4)
    • 富戸で水道管の破裂3ヶ所、ブロック塀の崩落。
    • がけ崩れ数箇所。
    • 軽傷者1人。
  • 静岡県 伊豆市(震度4)
    • スーパーなどで商品落下被害。
    • 市内各地で建物や道路のひび割れ・陥没数ヵ所。
  • 静岡県 伊豆の国市(震度4)
    • 田京にある武道館の天井が崩落。
  • 神奈川県 湯河原町(震度3)
    • 軽傷者1人。
  • 神奈川県 横浜市港北区(震度3)
  • 神奈川県 大和市(震度2)
    • 軽傷者1人。
  • その他
    • 震源地の海底で地滑りが起き、高さ10mの泥流発生。極小の津波が起きた可能性がある。
    • 地殻変動、半島が南西に最大5cmずれる。
  • 人的被害
    • 軽傷者は3人。重傷者・死者はなし。
海底地滑り
本震の約5分後に海洋研究開発機構(JAMSTEC)の初島沖深海底総合観測ステーションで乱泥流が観測されたが、この乱泥流の原因は海底地滑りと考えられている[13][14]
震度
震度 都道府県 観測点名
4 東京都 伊豆大島町元町・利島村
神奈川県 小田原市荻窪・真鶴町真鶴
静岡県 熱海市網代・熱海市泉・伊東市大原・伊豆市小立野・伊豆市市山・伊豆市八幡・下田市東本郷・東伊豆町奈良本・東伊豆町稲取・河津町田中・伊豆の国市長岡・伊豆の国市四日町
東京大学地震研究所が伊東市立富戸小学校に設置している地震計が、計測震度5.7(=震度6弱相当)を観測していた[15]。さらに、防災科学技術研究所が伊豆市修善寺町に設置している地震計も、計測震度4.6(=震度5弱相当)を示していた。東伊豆町は揺れ方や地盤の軟弱さから、震度5弱相当の揺れであった可能性があるとされた。
強震動 (gal)
  • 4月21日 M5.8の地震
    • 伊東 333.71
    • 熱海 221.38
    • 修善寺 148.63
    • 東伊豆 155.66
  • 5月2日 M5.1の地震
    • 伊東 227.07
    • 修善寺 285.13
    • 熱海 129.87
    • 大島町岡田 107.03


緊急地震速報
この地震に伴い気象庁が発表する緊急地震速報において、予測震度を最大震度7と、実際に観測された震度を大きく上回る震度で発表された[16]
緊急地震速報の第1報から第7報までは、実際と同じ「伊豆半島東方沖」を震源地として推定M5.7~M6.0、最大震度を5弱~5強とする情報で推移していたが、第8報から突如震源地を「静岡県東部」、推定M6.2、最大震度7の情報を発表した[16]
その後の調査により、本地震の直前に小規模地震が多発していた為に震源の正しい特定ができなかったことや、一部プログラムにミスがあったことが原因であったと発表された。
余震
  • 4月30日13時10分頃発生、M4.5(最大震度5弱:熱海市網代港付近)
    • 最大震度5弱を観測した熱海市網代以外の同市内の観測点では震度2以下の地点がほとんどであり、その他東伊豆町伊豆の国市真鶴町で震度3を観測したのみであったが、これは震源が主な群発地震の震源域からやや離れた熱海市のすぐ沿岸であったために、局地的に強震になったとされている。
    • 顕著な被害の情報はなかったが、エレベーターの停止、荷物落下などの被害が出た。
  • 5月2日18時24分頃発生、M5.1(最大震度4:伊豆市、熱海市、伊豆の国市、横浜市、厚木市、真鶴町)
    • ゴールデンウィークの下りピーク時だったため、鉄道高速道路などがマヒし大混雑が発生した。
    • その他、エレベーター停止・ライフライン障害・荷物落下等の被害が発生。
    • この地震の震源は群発域から東に10kmの場所で、横浜市でもやや強い揺れ(震度4)を観測した。
    • この地震発生の2分後にM4.3(最大震度2)の地震が発生したが地震情報はすぐには発表されず、発生から5日後に明らかになった。
群発地震活動
  • 期間:2006年(平成18年)4月17日~5月12日
    • 4月17日頃、活動が活発になる。有感地震はないが、体に感じる微弱震動が何度も続いた。
    • 4月18日0時すぎから有感地震が相次いで観測。微弱震動が、多いときは1分に3回ほど記録された。
    • 4月21日02時50分に、伊東市富戸で震度6弱を記録する地震(M5.8)が発生。震度3が4回など、大きな余震が相次ぐ。
    • 4月30日13時10分に、熱海市網代で震度5弱を記録する地震(M4.5)が発生。
    • 5月2日18時24分に、横浜市から伊豆市にかけての広範囲で震度4を記録する地震(M5.1)が発生。
    • 5月12日気象庁が終息発表。
  • 有感地震は49回、無感地震は3009回に及び、震度1以下の微弱震動は200回を大きく越えた。
震度表(各日付毎の最大震度と有感地震の回数)[17]
日付 震度1 震度2 震度3 震度4 震度5弱 合計
4月18日 11 0 0 0 0 11
19日 0 0 0 0 0 0
20日 4 1 0 0 0 5
21日 5 4 3 0 0 12
22日 3 1 2 0 0 6
23日 2 0 0 0 0 2
24日 1 0 0 0 0 1
25日 2 0 0 0 0 2
26日 1 0 0 0 0 1
27日 0 0 0 0 0 0
28日 0 0 0 0 0 0
29日 0 0 0 0 0 0
30日 2 0 0 0 1 3
5月1日 0 0 0 0 0 0
2日 0 1 0 1 0 2
3日 0 0 0 0 0 0
4日 1 0 0 0 0 1
5日 0 0 0 0 0 0
6日 0 0 0 0 0 0
7日 1 0 0 0 0 1
8日 0 0 0 0 0 0
9日 0 0 0 0 0 0
10日 0 0 0 0 0 0
11日 0 0 0 0 0 0
12日 1 0 0 0 0 1
合計 34 8 4 1 1 49
活動終息後
一連の地震活動の終息後も震度1程度の地震が稀に発生していた。ここでは、終息半年後~2年間の伊豆半島付近を震源とした主な地震について掲載する。
  • 2006年(平成18年)11月12日 23時46分、伊豆半島東方沖の深さ9kmを震源とするM3.4の地震発生。
  • 震度1
  • 2006年(平成18年)11月24日 03時35分、伊豆半島東方沖の深さ7kmを震源とするM4.3の地震発生。
    • 静岡県伊豆地方で最大震度3を観測。
  • 震度3
  • 2007年(平成19年)1月13日 07時30分、静岡県伊豆地方の深さ2kmを震源とするM2.5の地震発生。
    • 1930年(昭和5年)の北伊豆地震によって発生した伊豆市の大野断層が震源と思われる。ここ数年間はこの場所では地震は発生していない。また、この地震の前後には小規模な群発地震も確認された。
  • 震度2
    • 静岡県伊豆市
  • 2007年(平成19年)11月19日 11時58分、伊豆半島東方沖の深さ6kmを震源とするM3.9の地震発生。
    • 静岡県で最大震度3を観測。
  • 震度3
    • 静岡県東伊豆町

脚注[編集]

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  1. 伊豆半島地震観測システム
  2. a b 伊豆東部の地震活動の特徴”. www.data.jma.go.jp. 気象庁. 2024年4月19日確認。
  3. 伊豆半島東方沖の群発地震活動について”. www.jishin.go.jp. 2024年4月19日確認。
  4. 伊豆群発地震』 - コトバンク
  5. 伊豆東部の地震活動の予測手法について”. www.data.jma.go.jp. 気象庁. 2024年4月19日確認。
  6. a b 伊豆東方沖群発地震』 - コトバンク
  7. https://www.eri.u-tokyo.ac.jp/TOPICS_OLD/IZU200604/morita.html
  8. a b 震度データベース検索 (1980年の地震)”. www.data.jma.go.jp. 2024年4月19日確認。
  9. 日本付近のおもな被害地震年代表 20世紀後半 (1951-)”. www.zisin.jp. 日本地震学会. 2024年4月19日確認。
  10. 平成18年3月~4月の地殻変動について 国土地理院
  11. 震度データベース検索”. 気象庁. 2014年3月19日確認。
  12. https://www.data.jma.go.jp/svd/eqdb/data/shindo/index.html#20060421025039
  13. 伊豆東方沖を震源とする地震での乱泥流PDF
  14. 伊豆東方沖地震に誘発された相模湾初島沖の海底地すべり 日本地すべり学会誌 landslides 43(2), 91-93, 2006-07-25
  15. 2006年伊豆半島東方沖の地震-強震動-
  16. a b 平成18年4月21日02時50分に伊豆半島東方沖で発生した地震に伴い提供された緊急地震速報についてPDF
  17. 震度データベース期間2006年4月18日〜2006年5月12日、震央地名を伊豆半島東方沖として作成

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

テンプレート:日本近代地震