シカゴ・アウトフィット
シカゴ・アウトフィット(英語: The Chicago Outfit)は、イリノイ州シカゴに拠点を置くマフィア・ファミリー。アウトフィット(the Outfit)、シカゴ・マフィア(the Chicago Mafia)、シカゴ・モブ(the Chicago Mob)、シカゴ・ファミリー(the Chicago crime family)、シカゴ・シンジケート(the Chicago Syndicate)、サウスサイド・ギャング(the South Side Gang)、オーガニゼーション(The Organization)などとも呼ばれる。
1910年代初頭にシカゴのサウスサイドで生まれた。1920年代にジョニー・トリオとアル・カポネの支配下で勢力を拡大した。この時期は禁酒法時代に違法なアルコールの流通の支配をめぐる血生臭い抗争が目立った。それ以来、アウトフィットは高利貸し、違法賭博、売春、恐喝、政治腐敗、殺人など幅広い犯罪行為に関与している。カポネは1931年に所得税脱税で有罪判決を受け、ポール・リッカがアウトフィットを運営することになった。リッカは1943年から1972年に亡くなるまでトニー・アッカルドと権力を共有した。アッカルドはリッカの死後、アウトフィットの唯一の権力者となり、1990年代初頭に亡くなったとき歴代のボスの中で最も長くボスの座に就いていた人物の1人だった。
アウトフィットはシカゴの組織犯罪を完全に独占していたわけではないが、長年にわたり、シカゴとアメリカ中西部全般で最も強力で暴力的な最大の犯罪組織である。ニューヨークを5大ファミリーが分割して支配しているのとは異なり、アウトフィットはシカゴを単独で支配する唯一のマフィア組織である。1980年代当時はノース・サイド・クルー、チャイナタウン・クルー、サウス・サバーブス・クルー、ウエスト・サイド・クルー、ウエスタン・サバ―ブス・クルーの5つのクルーから成り立ち、その他にアンソニー・スピロトロが率いるラスベガスから利益を得る一味があった[1]。最盛期の影響力はカリフォルニア、フロリダ、ネバダにまで及び、現在もアメリカ中西部と南フロリダおよびラスベガスとアメリカ南西部のその他の地域で活動している。他のマフィア・ファミリーと同様に法執行機関の注意の高まりとメンバーの減少により、20世紀後半から徐々に衰退したが、現在もシカゴ都市圏と中西部地域において大規模かつ最も活発な組織犯罪集団の1つであり続けている。
歴代リーダー[編集]
ボス(正式・代理)[編集]
名前およびニックネーム | 任期 | 備考 | |
---|---|---|---|
ヴィンチェンツォ・コロシモ ビッグ・ジム、ダイアモンド・ジム |
1910 | 1920 | 1920年5月11日に殺害された。 |
ジョン・D.トーリオ パパ・ジョニー、ザ・フォックス |
1920 | 1925 | 1925年の暗殺未遂後に引退。 |
アルフォンス・"アル"・カポネ アル・ブラウン、スカーフェイス、スノーキー |
1925 | 1931 | 1931年に脱税罪で有罪判決。 |
ラルフ・カポネ (代理) ボトルズ |
1929 | 1930 | 退任。 |
フランク・ニッティ (本名:フランチェスコ・ニット) エンフォーサー |
1931 | 1943 | 1943年に自殺。 |
ポール・リッカ (本名:フェリーチェ・デルチア) ウェイター |
1943 | 1947 | 1943年に恐喝罪で有罪判決、1947年に退任。 |
アンソニー・"トニー"・アッカルド[2] (本名:アントニオ・アッカルド) ジョー・バッターズ、ビッグ・ツナ |
1947 | 1957 | 1957年に退任し、マフィアの「影の幹部」(shadow executive)となった。 |
サルヴァトーレ・"サム"・ジアンカーナ ムーニー、モー、モモ |
1957 | 1966 | 1966年に投獄を免れるためにメキシコに逃亡。リッカとアッカルドによって退任させられた。 |
サミュエル・バッタグリア (本名:サルヴァトーレ・バッタグリア) ティーツ |
1966 | 1967 | 1967年にホッブス法違反で有罪判決。 |
フェリックス・アルデリシオ ミルウォーキー・フィル |
1967 | 1971 | 1967年から1969年に恐喝罪で服役、1971年に死去。 |
ジョゼフ・アイウッパ ジョーイ・ドォーヴズ、ジョーイ・オブライエン |
1971 | 1986 | 1986年、スキミングの罪で有罪判決。 |
ジョゼフ・フェリオーラ ジョー・ナガール、ミスター・クリーン |
1986 | 1989 | 1989年に心臓疾患のため死去。 |
サミュエル・カーリシ サム・ウィングス、ブラック・サム |
1989 | 1996 | 1993年から1994年、および1996年にラケッティアリングで有罪判決、1997年に死亡。 |
ジョン・ディフロンゾ ノ・ノース |
1996 | 2014 | 2014年にセミリタイア、2018年にアルツハイマー病で死去。 |
サルヴァトーレ・デラウレンティス ソリー・D |
2014 | 現在 |
ストリートボス[編集]
ストリートボスは、ボスに代わって組織の日常業務を運営するために任命された高位のメンバーである。ボスを連邦政府の捜査から守るために作られた役職である。
- 1996–2007: James "Jimmy the Man" Marcello – sentenced in 2007, imprisoned for life in 2009.
- 2007–2012: Michael "Fat Mike" Sarno – sentenced to 25 years in prison in 2012.
- 2012–2016: Louis "Louie Tomatoes" Marino
- 2016–現在: Albert "Albie the Falcon" Vena
アンダーボス[編集]
- 1910–1920: John "Papa Johnny" Torrio – became boss in 1920.
- 1920–1925: Alphonse "Scarface Al" Capone – became boss in 1925.
- 1925–1931: Frank "The Enforcer" Nitti – became boss in 1931.
- 1931–1943: Louis "Little New York" Campagna – arrested in 1943, deceased in 1955.[2]
- 1943–1947: Tony "Joe Batters" Accardo – became boss in 1947.
- 1947–1957: Salvatore "Mooney Sam" Giancana – became boss in 1957, murdered in 1975.
- 1957–1964: Frank "Strongy" Ferraro – died in 1964.
- 1964–1966: Samuel "Teets" Battaglia – became boss in 1966, deceased in 1973.
- 1967–1986: John "Jackie the Lackey" Cerone – imprisoned in 1986, deceased in 1996.
- 1986–1992: John "No Nose" DiFronzo – became boss in 1992.
- 1992–1996: James "Jimmy the Man" Marcello – became street boss in 1996.
- 1996–2006: Anthony "Little Tony" Zizzo – disappeared and probably murdered in 2006.
- 2006–2009: Joseph "Joe the Builder" Andriacchi – retired briefly due to illness.
- 2009–現在: Salvatore "Sammy Cards" Cataudella
コンシリエーレ[編集]
- 1925–1928: Antonio "Tony the Scourge" Lombardo – murdered in 1928.
- 1928–1947: Charles "Trigger Happy" Fischetti – retired in 1947, deceased in 1951.[2]
- 1947–1957: Paul "The Waiter" Ricca – retired in 1957, deceased in 1972.[2]
- 1957–1992: Tony "Joe Batters" Accardo – deceased from natural causes in 1992.
- 1992–1999: Angelo J. LaPietra[2] – deceased from natural causes in 1999.
- 1999–2007: Joseph "Joey the Clown" Lombardo – sentenced in 2007 and imprisoned in 2009; died on October 19, 2019, at the age of 90.[3][4]
- 2007–2009: Alfonso "Al the Pizza Man" Tornabene – deceased in 2009.
- 2009–2016: Marco "The Mover" D'Amico – asked to step down so that Andriacchi could help advise the power shift from DiFronzo to DeLaurentis.
- 代理 2012–2016: Joseph "Joe the Builder" Andriacchi – retired in 2016.
- 2016–2020: Marco D'Amico – deceased from natural causes in 2020.
大衆文化[編集]
シカゴ・アウトフィットは、ハリウッドで映画やテレビ番組の題材として描かれてきた長い歴史がある。
映画[編集]
- 犯罪王リコ (1931)
- 暗黒街の顔役 (1932)
- Chicago Syndicate (1955)
- Al Capone (1959)
- The St. Valentine's Day Massacre (1967)
- 殺しの分け前/ポイント・ブランク (1967)
- ブリット (1968)
- The Outfit (1973)
- ビッグ・ボス (1975)
- ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー (1981)
- ゴリラ (1986)
- アンタッチャブル (1987)
- ミッドナイト・ラン (1988)
- パトリック・スウェイジ/復讐は我が胸に (1989)
- ザ・ファーム 法律事務所 (1993)
- カジノ (1995)
- ペイバック (1999)
- ロード・トゥ・パーディション (2002)
- TOKYO JOE マフィアを売った男(2008)
- パブリック・エネミーズ (2009)
- Chicago Overcoat (2009)
- Gangster Land (2017)
- カポネ (2020)
- The Outfit (2022)
テレビ番組[編集]
- The Scarface Mob (テレビ映画, 1959)
- アンタッチャブル (1959–1963)
- FBIアメリカ連邦警察 (1965–1974)
- クライム・ストーリー (1986–1988)
- 新・アンタッチャブル (1993–1994)
- Sugartime (テレビ映画, 1995)
- The Rat Pack (1998)
- プリズン・ブレイク (2005–2009)
- The Chicago Code (2011)
- THE FIRM ザ・ファーム 法律事務所 (2012)
- Mob Wives: Chicago (2012)
- The Mob Doctor (2012–2013)
- ボードウォーク・エンパイア 欲望の街 (2010–2014)
- The Making of the Mob: Chicago (2016)
アニメ[編集]
出典[編集]
- ↑ エレイン・C・スミス著、山西三穂子訳『TOKYO JOE――マフィアを売った男』講談社、2008年、327-328頁
- ↑ a b c d e “American Gangland: The Chicago Outfit”. Angelfire.com (2014年2月10日). 2015年3月2日確認。
- ↑ “Notorious Chicago mobster Joey 'The Clown' Lombardo dead at age 90”. FOX 32 Chicago (2019年10月20日). 2019年10月21日確認。
- ↑ “Chicago Mobster Joey 'The Clown' Lombardo Dies While Serving Life Sentence”. CBS Chicago (2019年10月20日). 2019年10月21日確認。
参考文献[編集]
- Binder, John 『The Chicago Outfit』 Arcadia Publishing、2003年。ISBN 0-7385-2326-7。
- Cooley, Robert 『When Corruption Was King』、2004年。ISBN 0-7867-1583-9。
- Cooley, Will (2017). "Jim Crow Organized Crime: Black Chicago's Underground Economy in the Twentieth Century", in Building the Black Metropolis: African American Entrepreneurship in Chicago, Robert Weems and Jason Chambers, eds. Urbana: University of Illinois Press, 147–170. ISBN 978-0252082948.
- Lombardi, Mark、Richards, Robert Carleton、Hobbs, Judith Richards 『Mark Lombardi: Global Networks』 Independent Curators、2003年。ISBN 0-916365-67-0。 (Published for the traveling exhibition of Lombardi's work, Mark Lombardi Global Networks).
- Nolan, John Matthew 『2,543 Days: A History of the Hotel at the Grand Rapids Dam on the Wabash River』。
- Russo, Gus 『The Outfit: The Role of Chicago's Underworld in the Shaping of Modern America』 Bloomsbury USA、2002年。ISBN 1-58234-279-2。
- Tereba, Tere 『Mickey Cohen : the life and crimes of L.A.'s notorious mobster』 ECW Press、Toronto, Ont.、2012年。ISBN 978-1-4596-5049-7。OCLC 1016454937。