お好み焼き

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お好み焼き

お好み焼き(おこのみやき)とは、小麦粉メリケン粉)を主材料として作る日本の料理である。

概要[編集]

日本各地域で親しまれており、長年定着しているソウルフード的の料理のひとつ。食文化評論家の上前文太郎によると、生地に着目した場合、関東・関西・広島が三傑であり、少数派が「もんじゃ焼」であるという。

基本的には小麦粉と出汁を同割で混ぜ、一時間から二時間ほど冷蔵庫で保存し、それを生地として焼いたものに具材をトッピングするというのが基本スタイルである。「生地に出汁が入る」「具材を同時に調理する」というスタイルは海外では珍しい(小麦粉の生地を焼いたもので具材を包んで食べるスタイルは古くからあり、「最後の晩餐」は「お焼きで『苦い菜』と羊の焼肉を包んだもの」だと福音書にある)ので、海外では「日本料理」として認識されているが、「お好み焼き」が世界的に普及しつつある現在では、「日本料理」というカテゴライズは意味を失いつつある。

主に地域によっていろいろな種類があるので、下に解説してゆく。

しぐれ焼き[編集]

しぐれ焼き」も参照

静岡県富士宮市を中心に親しまれる。具材に富士宮焼きそばが入ることが特徴的である。

名古屋風お好み焼き[編集]

二つに折って紙に包む。食事というよりは間食として親しまれている。

関西風お好み焼き(大阪風お好み焼き)[編集]

最もスタンダートなお好み焼き...というと一部から怒られそうだが、全国的には圧倒的に関西風が有名なんだから仕方がない。首都圏でお好み焼きを頼んだら大体これが出てくる。おそらくは はるき悦巳『じゃりン子チエ』の影響かと思われる。「カルメラ」「ホルモン」「お好み焼き」など、大阪テイストが感じられるため、広島県人(というか、市内で育った人々)の間には反撥的な感情があるらしい。

関西のお好み焼き小史
1955年昭和30年)前後までの関西下町では、町内に一軒位の割合でお好み焼き屋があり、庶民の親しまれる日常の食べ物であった。夫婦で自家営業する形態が一般的だが、戦争などで夫に先立たれたり、水商売を引退した女性などがひとりで経営する店も多く見られた。戦後はさらに店の数も増え、大阪市内においては町内に四軒五軒と、あげくは向かい合ってお好み焼き屋が乱立するほどであった。お好み焼き屋が多い事から、家庭でお好み焼きを作るという習慣はなく、主に近所のお好み焼き屋で出来あがったもの持ち帰り、家庭で食べるというスタイルが主流。店で焼いてもらったものを家庭で食べるという形が定着していたため、お好み焼きの出前も活発に行われるようにもなった。最近では廃れ気味だが、かつての関西ではお好み焼きの出前がよく行われていた。
昭和50年頃からは、多種多様な料理を外食するというスタイルが世間で増えだしたこともあり、お好み焼きも店で食べるという事が定着し始めた。また、関西のお好み焼き屋では、焼きそば焼きうどんなども昔からメニューとして提供されている。店の看板などにおいても、「お好み焼き・焼きそば」と言った記述が多く見られる。この当時から、文字通りお客のお好みで肉や野菜、季節の魚介類を具として加え、焼くといった、現在にも通じるスタイルでお好み焼きが提供されていた。食生活が多様化するに従い、このような内職的な店は廃れ、繁華街を中心にして専業化した店が他の食種とも味を競うようになった。また、高級化して近年では、ステーキや魚介類を中心とした鉄板焼き店に業態を変えた店もあり、かつてのように外食や出前でしか食べられなかったお好み焼きも、家庭で一般的に作られる様になり、今では家庭料理の上位にはいるメニューとなっている。
調理法

生地に摺りおろした山芋・食塩・ベーキングパウダーまたは重曹などを加えることが多いらしい。具材はキャベツ・豚肉がメインである。トッピングとしては、紅生姜・天かす(または揚げ玉)のほか、切りイカなどが用いられる。

広島焼き(広島風お好み焼き)[編集]

実際に広島で「広島焼き」と言うと生きては帰れないらしい[要出典]広島市民にとってはあくまでこれが正統派「お好み焼き」である。「俺」の「おれ」で「お」が高くなる男性は、小学校中学年になるまで市内で育った可能性が高いので、あらかじめ「お好み焼き」にたいする見解に関して探りを入れておくのが無難である。

具材にそばうどんといった麺が入っているのが特徴的。また、具材を混ぜずに「重ね焼き」する。麺を入れない場合は「麺無し」とリクエストすれば店主の気分次第で麺無しで作ってくれる場合もある。

広島のお好み焼きを焼くには技術が必要であり、広島県以外にも、広島の老舗やソースメーカーで技術習得した上で出店しているお好み焼き店もある。しかし、広島風のスタイルを取り入れてはいるが独自の調理をしている店もあり、小麦粉の生地が厚すぎることがあったり、あるいは「広島風お好みピザ」に近いもの、大阪風の混ぜ焼きに中華麺を入れたもの、薄い生地に混ぜ焼きを重ねて提供している店などがある。ソースメーカーの幟やのれんがあれば、少なくともソースは広島から取り寄せているということで、広島と同じお好み焼きかどうかを判断する場合に一定の目安となる。ソースとしてはオタフクソースが広島では定番であるが、ソースの製造会社は日本においては各地において存在し地方性があるため、おなじ「広島風お好み焼き」であっても味は異なる。「ご当地ラーメン」と同じように、「ご当地お好み焼き」があってもよいと思う。

調理法
鉄板上での麺の調理法は大きく分けて2種類ある。八昌やみっちゃんをはじめ主な店舗の調理法は、お好み焼きの生地や野菜などの本体を焼くと同時に、その横で並行して麺を炒め、最後に本体を麺の上に重ねる方法である。最近人気のいわゆる「麺パリ」と呼ばれるパリパリした仕上がりのお好み焼きはこの方法で調理されている。麺の調理時に、塩やこしょうなどで軽く味をつけたりソースで味付けされることもある。もう一種類の麺の調理法は「三八方式」と呼ばれる方法で、麺を塩コショウなどで味付けして炒めたあと、小麦粉で薄く引いた生地の上に載せ、その上に野菜や肉等の具を載せてひっくり返す方法である。こうすると麺が野菜と一緒に蒸し焼きされ、全体に広がりのある味になる。[1]
調味料
広島では、元はお好み焼きにマヨネーズをかける文化はなかったが、近年ではかけることも多い。オタフクソースはお好みマヨネーズというお好み焼き専用の商品を販売しており、マヨネーズの使用が定着しつつあると考えられる。一説に広島に所在する関西風のお好み焼きを主に販売する大手チェーン店の徳川が昭和30年代中頃に持ちこんだという説が主力ではあるが、現在ではマヨラーと呼ばれる何にでもマヨネーズをかけないと気のすまない若者が増加し、全国区のテレビによる影響、露天営業のたこ焼きにはマヨネーズを付けている事などの事情から、決定的な説ではない。
このように、マヨネーズを置く店舗も増加傾向にあるが、基本的には卓上(鉄板のみの店では、鉄板脇)にある調味料は、ソースのみ。しかし、中にはコショウ(ホワイトペッパー)や一味唐辛子七味唐辛子ガーリック粉末を置く店舗もある。
広島風では、キャベツの甘みだけで十分な旨みを賄うため、関西風と異なり生地にだし汁を混ぜたり、上に削り節を振り掛けることは少なく、卓上にも花がつおはあまり置かれない。削り節や魚粉は、生地をクレープ状に焼く際、生地の上に少量を載せるだけである。紅生姜についても、賛否両論があるが、広島県外の店舗では広島風お好み焼きにも紅生姜が載ってくる場合が多い。

府中焼き[編集]

東京都の府中市ではなく、広島県府中市であることに注意。

府中焼き」も参照

広島焼きの亜種...と言ってはいけない。広島焼きと似ているが、ひき肉(ミンチ肉)を使うのが特徴的。

歴史[編集]

お好み焼きの起源は、安土桃山時代千利休が作らせていた「麩の焼き(ふのやき)」であるといわれている。その後、麩の焼きを起源として江戸末期から明治にかけ、味噌の代わりにを巻いて作る「助惣焼(すけそうやき)」が生まれる、明治時代には「もんじゃ焼き」「どんどん焼き」が生まれた。1923年大正12年)の関東大震災の際には主食的位置を占め、大正から昭和にかけてウスターソースを使用する「もんじゃ焼き」や「一銭洋食」が食料不足を補う方法としてもてはやされるようになる。コンニャクや豆といった具を入れ、醤油で味付けして食べる「ベタ焼」「チョボ焼」が誕生し、それが各種鉄板料理へと派生した。

その一種として、戦後に登場したのがこの「お好み焼き」であると考えられる。

サービス[編集]

関西では、調理を最後まで店員がやってくれる場合が多いが、他地域では「半セルフサービス」の事も多い。関西以外の地方で「半セルフサービス」が先に広まった理由として、店員の調理技術がほとんど必要なく容易に開業できるという発想が根底にあったと考えられる。なお、関東一円でも、この半セルフサービスの店は顕著に見られる。このスタイルは、ホットプレートなどの普及で家庭でも広く一般化したこと、高度な調理技術を必要とせず自由に焼き具合や調味加減ができる面白さも手伝って、カップルや学生、団体客などに受けている。

地方から関西のお好み焼き屋に来て初めて、店が最後まで焼くスタイルが関西の標準である事を知り、驚く人も少なくない。また逆に、関西人は出先で入ったお好み焼き屋で具材の入ったボールを渡されて困惑した経験を持っている場合が結構ある。

脚注[編集]

  1. おっさんひとりめし お好み焼きの麺の扱い方を参照

参考文献[編集]

  • 浜内千波『シースの匂いがたまらない! お好み焼きの本 ― 関東風、関西風、広島風から世界のお好み焼きまで』(株式会社グラフ社、平成 8 年 5 月 18 日発行、マイライフシリーズ No.375)