食塩
食塩(しょくえん)とは、塩化ナトリウムを主成分とした物質。一般には「塩」とよばれ、食用に供しない場合は工業塩(こうぎょうえん)として区別することがある。
概要[編集]
海水や岩塩[1]から作られ、食用では調味料に用いられる。岩塩と海水塩(海塩)はあまり区別することはないが、「真のナポリピッツ協会」の見解では「真のナポリピッツァは海塩で作られなければならない」と主張している。ただし、これはジョークの類ではないかと思われる節もある。
塩化ナトリウムのほか、微量の塩化カリウム、塩化マグネシウム(いわゆる、「にがり」)など、いわゆるミネラル(鉱物質)が含まれる。にがりは豆腐の凝固に用いられる他、自然塩愛好家は食塩の好適な にがりの含有を重視する向きがある。
製造方法[編集]
塩田を用いた製法(天日塩法、煎熬採塩法)と、イオン交換樹脂を用いて工業的に製造する方法がある。煙草や酒と並んで食塩が統制食品であり専売公社が統制していた時代[2]はイオン交換樹脂を用いたもの以外は禁止されていたため、「塩が不味くなった」と云われた。
天日塩法[編集]
自然乾燥のみで天日干しした塩を製造する方法。日本国内では、「砂地に捲いて天日干しする」という「塩田」がある。その風情を楽しんだ風流人もおり、光源氏のモデルになったという源融に関する逸話は能の『融』として伝えられる。
こうした「自然乾燥によって濃縮された海水」を「海藻に浸して天日干しする(いわゆる「藻塩」)」などが派生している。
メキシコのバハ・カリフォルニア州など、海が近く海水が多量に製造できるような適地は限られる。
煎熬採塩法[編集]
- 自然塩愛好者によって、塩自由化以降に流下式などの塩田が小規模ながら復活しつつある。
- 海水を砂地の上、もしくは流下させながら枝条架に撒く
- 天日干しする
- 砂や枝条架に付いた塩を鍋に入れて海水を注いで濃い塩水を作る(採鹹)
- 濃い塩水を別の鍋に入れて煮ると塩ができる(煎熬)
イオン交換樹脂膜法[編集]
現代では、濃い塩水の精製(採鹹)をイオン交換膜を使用して行うことが多い。
ただし、これは誤解を招く表現である。
イオン交換膜は、近年では「海水から水を抽出する」ことにも利用されるため、その結果“廃液”としての「濃縮された海水」が残る。そこから鹽を作っても天然塩と変わりがないが、問題は「水」は輸出できないし「工業用の塩化ナトリウム」は必要であるため、「汚れた水からでも工業用の塩化ナトリウムが取れる」というイオン交換樹脂膜法と、国の復興と高度成長期があったため、「民間から資金を得る」ために「鹽・煙草・酒」の専売を政府が政策て取りいれた結果である。
「食塩」として販売されていることもあり、室内で製造できるので、微生物や有害物質が外界から混入しないほか、にがり など他の成分を含まないため湿気(しけ)にくいという長所がある。反面、「塩辛いだけで味がしない」という評もある。
ゆっくりと結晶化すると、立方体の単結晶ができる。
その他[編集]
- 岩塩に海水を混ぜて精製したものを売っているメーカーも散見される。風味はよいが、にがり 成分を含むため水酸化ナトリウム同様「潮解」を起こしやすく、食塩の卓上瓶に玄米を炒った「炒り米」を添加することも広く行われた。日本の高級ホテルでは「サービスに配慮していますよ」という広告塔的な役割も果たし、喫茶店のカウンターの客席から見えるところにステンレス製のウォーターピッチャーが置いてあるのと同様な意味がある。
経済[編集]
古くから調味料として使われるほか、牛馬に対する飼料の一部として重要であった。そのため、その製造や販売は時の権力者や政府が深く関わり、専売制度や公定価格など、様々な保護政策を与えられた。
日本国内でも1997年4月に塩専売制度が廃止され、2002年に自然塩の販売が完全自由化されるまで、国家管理の専売制が続いた。
1971年に日本専売公社は公社で販売する食塩を原則イオン交換樹脂膜法限定とし、小規模の伝統的製法を除いた塩田を廃止した。1985年の専売公社民営化後の日本たばこ産業においても塩事業部が置かれた[注 1]。専売公社当時の「鹽」というホーロー看板は、いまやコレクターズ・アイテムである。
人体への影響[編集]
人体を含む陸性の哺乳類(および鳥類。アオバトがいる)にとっては必須のミネラル(無機質)である。
同時に塩化ナトリウムは「角砂糖一個分を飲んだら死にかねない」という劇物ではある。
ただし、「取り過ぎると生活習慣病を含む様々な悪影響がある」という話はタチの悪い都市伝説の類であり、とくに「塩分濃度に敏感(センシティブ)な体質」でなければまったく問題はないという医学的なエビデンスがある。カリウムとの拮抗作用があるのは心筋を含む筋肉の運動にナトリウムとカリウムが密接に関わっているためである。青野菜とのバランスを考えて摂取することに関しては特に問題はない[3]。そのため、いわゆる「減塩ブーム」に対しては疑問視する医師も多いが、苦言を呈すと自分も虐待の対象とされるため、事実上口を封じられている。
塩田の廃止とイオン交換樹脂膜法推進との因果関係で語られることもあるが、イオン交換膜は「塩水から水を取り出す」ことで塩水濃度を上昇させる採鹹の役割しかないので、「残渣からどのように成分を取り出すか」は、また別の話で廃液にあたる食塩にもミネラル分は残っているはずであり、イオン交換樹脂樹脂膜法によって得られた水に頼っている方々もいるので、そのあたりは科学的な観点から折合をつけることも大切だろう。
なお、自然塩愛好家は、自家消費用どぶろくすら規制を受ける酒税法同様、ミネラル分が必要以上に除去されたイオン交換樹脂膜法による食塩を専売公社が販売し続け、民営の日本たばこ産業(JT)も独占販売を継続し、国内の塩製造販売の自由化を遅らせた悪影響と主張し続けている。
比喩[編集]
いつも、塩で味つけられた、やさしい言葉を使いなさい。そうすれば、ひとりびとりに対してどう答えるべきか、わかるであろう。 — 使徒パウロ、コロサイ人への手紙(口語訳)4章6節
その他[編集]
脚注[編集]
- 注
- 出典