張飛

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張 飛(ちょう ひ、? - 221年6月)は、中国後漢末期から三国時代将軍益徳(えきとく)[1]。子は張苞張紹敬哀皇后張氏張皇后。孫は張遵

生涯[編集]

若い頃[編集]

幽州涿郡(現在の河北省涿州市)の出身。つまり劉備とは同郷である。馬商人の用心棒だった劉備の取り巻きのひとりで、年上の関羽に兄事していた[1]

現在の涿州市に伝わる逸話がある[1]。張飛は肉を売っており、「張飛が肉を商う」という言葉がある[1]。貧乏人には安くして金持ちからは高く取るという意味で、これは張飛の謀計だったといい、粗にして細という意味である。関羽との出会いでは豚肉を売っていた張飛が門前の井戸に上質の肉塊を入れ、千斤の巨大な石で蓋をして「石を持ち上げた者には、中の肉をただで持っていってもよい」と大書した札を立てた[1]。だが誰も重しの巨石を持ち上げることはできなかった[2]。そこに現れたのが関羽で、いとも簡単に巨石を持ち上げて肉を取って悠々と立ち去ったので、張飛は逆に怒りがこみ上げて関羽と喧嘩になり、それを止めたのが劉備であり「一龍、二虎を分ける」と地元では信じられ、その井戸も保存されているという[2]

また涿州市では張飛は小説や正史で伝わるような軍人ではなく、美人画の名手だったという[2]。張飛は気性が激しくすぐに義憤を感じる少年だった。父親が招いた家庭教師は尽く追い出し、張飛の大志を知る伯父が紹介したのが王養年であり、彼は優れた画家で張飛とも気が合って張飛は彼に師事して絵画や書に才能を発揮し、涿州には今も張飛が書いたとされる美人画は『女媧娘娘補天図』として伝えられているという[2]

戦功[編集]

208年曹操が大軍を率いて南下し、劉備は南に逃げたがこの時に多くの群衆を引き連れることになったため、すぐに曹操軍に追いつかれた[3]。追いつかれたのは長坂、つまり現在の湖北省当陽である[3]。張飛は部下わずか20騎を率いて橋を切り落とし、川を楯にして矛を小脇にして眼を怒らせ「我が輩が張益徳である。さあ来い。死を賭して戦うぞ」と怒鳴った[3]。その大胆不敵に、精強で知られた曹操軍は逆に誰も近づこうとせず、この行為は張飛の勇猛を天下に知らしめることになった[3]

214年、劉備が蜀を奪うために益州攻略を開始するが(劉備の入蜀)、劉璋軍の張任、並びに劉璋の息子・劉循の激しい抵抗に遭い、予想以上の苦戦をしていた。劉備は諸葛亮荊州の軍勢を後詰として送るように求め、諸葛亮は趙雲や張飛を連れて益州に急行し、張飛は江州(現在の四川省重慶)を攻めた[3]。ここは劉璋の部下・厳顔が守っていて激戦になったが、遂に江州を落として厳顔を捕虜にした[3]。この時、張飛は捕虜である厳顔を「なぜ降参せず、あえて抗戦したのか」と頭ごなしに怒鳴ると[3]、「益州には首を刎ねられる将軍がいるだけで、降伏する将軍はいない」と怒鳴り返した[4]。張飛は激怒して厳顔の首を刎ねようとしたが「首を斬るならさっさと斬れ。どうして怒ることがある」と述べたため、張飛はその態度を見事だと思い、縄を解いて賓客として迎えたという[4]

219年、曹操との漢中をめぐる攻防戦では(定軍山の戦い)、漢中を守る曹操軍の名将・張郃と戦って勝利し、漢中平定で大いに貢献した[4]。平定後の漢中太守には張飛がなるものと周囲の人々は思っていたが、劉備は魏延を太守に任命した[4]

最期[編集]

張飛には悪い癖があった[4]。部下を大切にして士大夫すなわち同僚には傲慢だった関羽とは対照的に、張飛は士大夫や自分より身分の高い人物は敬愛したが、部下には憐れみをかけず逆に刑罰によって処罰を苛酷にして、時には殺しすぎることもあった[4]。劉備はそんな張飛を見かねて態度を改めるように注意していたが、張飛は聞き流しているばかりだった[4]

219年、関羽は孫権軍の呂蒙陸遜らに攻められて殺された(麦城の戦い)。劉備は関羽の復仇に燃え、孫権征伐の軍を興した。張飛にも東征の号令が下るが、かねてから張飛に恨みを抱く部下の張達范彊によって寝首をかかれて殺された[4]。推定年齢は56歳から57歳だったという[4]

劉備は東征の軍を率いて進軍している途中で張飛の都督から上奏文が届けられたと聞くと、その内容を聞く前に「張飛が死んだか」と全て悟ったという。

小説『三国志演義』では字は翼徳(よくとく)とされ、呂布や関羽に匹敵する武勇を誇る猛将として描かれる。また大変な乱暴者で大酒飲みとしても描かれ、それが時として失敗を招く一因として描かれている。

脚注[編集]

  1. a b c d e 伴野朗『英傑たちの三国志』、P200
  2. a b c d 伴野朗『英傑たちの三国志』、P201
  3. a b c d e f g 伴野朗『英傑たちの三国志』、P202
  4. a b c d e f g h i 伴野朗『英傑たちの三国志』、P203

張飛が登場する作品[編集]

アニメ
人形劇
テレビドラマ

参考文献[編集]