坂野潤治
坂野 潤治(ばんの じゅんじ、1937年(昭和12年)5月13日[1] - 2020年(令和2年)10月14日)は、日本の歴史学者。専門は日本近代政治史。東京大学名誉教授。
経歴[編集]
神奈川県横浜市生まれ。1963年東京大学文学部国史学科卒業[2]。大学在学中、日本共産党を経て、共産主義者同盟(ブント)に参加[3]。60年安保闘争に青木昌彦や西部邁らとともに全日本学生自治会総連合(全学連)の幹部として参加した[4]。1968年東京大学大学院人文科学研究科国史学専攻博士課程中退[2][5]、東京大学文学部助手。1970年千葉大学人文学部助手。1973年千葉大学人文学部助教授、お茶の水女子大学文教育学部助教授。1975年東京大学社会科学研究所助教授[6]。1986~1998年東京大学社会科学研究所教授(1994~1996年所長)。1998年東京大学名誉教授[7]、千葉大学法経学部教授。2003年退官[8]。
藩閥勢力と政党勢力の関係を検討し、明治憲法の立憲的側面を評価した『明治憲法体制の確立』(東京大学出版会、1971年)で注目された[9][10]。『大正政変』(ミネルヴァ書房、1982年)、『昭和史の決定的瞬間』(ちくま新書、2004年)、『明治デモクラシー』(岩波新書、2005年)、『日本近代史』(ちくま新書、2012年)など一般向けの書籍も執筆した。1997年『近代日本の国家構想』(岩波書店、1996年)で吉野作造賞を受賞。2009年『日本憲政史』(東京大学出版会、2008年)で角川源義賞を受賞[11]。
2020年10月14日、進行性胃がんのため、東京都大田区の病院で死去。83歳没[12]。
人物[編集]
2009年から2016年頃まで3ヶ月に1度、民主党の仙谷由人元官房長官、ジャーナリストの田原総一朗と3人で勉強会を行っていた[9]。
著書[編集]
単著[編集]
- 『明治憲法体制の確立――富国強兵と民力休養』 東京大学出版会、1971年。
- Junji Banno 『The Establishment of the Japanese Constitutional System』 trans. by J. A. A. Stockwin、Routledge、1995年12月18日、New edition。ISBN 0-415-13475-7。
- 『明治・思想の実像』 創文社〈叢書身体の思想 8〉、1977年10月。
- 『近代日本とアジア――明治・思想の実像』 筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉、2013年10月。ISBN 4-480-09576-4。
- 『大正政変――1900年体制の崩壊』 ミネルヴァ書房〈歴史と日本人 5〉、1982年4月。
- 『大正政変――1900年体制の崩壊』 ミネルヴァ書房〈Minerva21世紀ライブラリー 10〉、1994年4月。ISBN 4-623-02402-4。
- 『明治国家の終焉――1900年体制の崩壊』 筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉、2010年6月。ISBN 4-480-09296-X。
- 『近代日本の外交と政治』 研文出版、1985年12月。ISBN 4-87636-061-8。
- 『大系日本の歴史 13 近代日本の出発』 小学館、1989年4月。ISBN 4-09-622013-2。
- 『大系日本の歴史 13 近代日本の出発』 小学館〈小学館ライブラリー〉、1993年8月。ISBN 4-09-461013-8。
- 『近代日本の出発』 新人物往来社〈新人物文庫〉、2010年5月。ISBN 4-404-03848-8。
- 『日本政治史――明治・大正・戦前昭和』 放送大学教育振興会〈放送大学教材 1993〉、1993年3月。ISBN 4-595-53491-4。
- 『日本政治史――明治・大正・戦前昭和』 放送大学教育振興会〈放送大学教材 1997〉、1997年3月、改訂版。ISBN 4-595-53492-2。
- 『近代日本の国家構想――1871-1936』 岩波書店、1996年10月。ISBN 4-00-002757-3。
- Junji Banno 『Democracy in Pre-War Japan 1871-1937: Collected Essays』 trans. by Andrew Frasen、Routledge、2001年。ISBN 0-415-22864-6。
- 『近代日本の国家構想――1871-1936』 岩波書店〈岩波現代文庫〉、2009年8月。ISBN 4-00-600228-9。
- 『日本政治「失敗」の研究――中途半端好みの国民の行方』 光芒社、2001年7月。ISBN 4-89542-184-8。
- 『日本政治「失敗」の研究』 講談社〈講談社学術文庫〉、2010年3月。ISBN 4-06-291987-7。
- 『十五年戦争論再考――平和三勢力の敗退』 北海道大学大学院法学研究科附属高等法政教育研究センター編、北海道大学大学院法学研究科附属高等法政教育研究センター〈Academia juris booklet no.1〉、2002年11月。ISBN 4-902066-00-9。
- 『昭和史の決定的瞬間』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2004年2月。ISBN 4-480-06157-6。
- 『明治デモクラシー』 岩波書店〈岩波新書〉、2005年3月。ISBN 4-00-430939-5。
- 『近代日本政治史』 岩波書店〈岩波テキストブックス〉、2006年1月。ISBN 4-00-028040-6。
- 『未完の明治維新』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年3月。ISBN 978-4-480-06353-3。
- 『日本憲政史』 東京大学出版会、2008年5月。ISBN 978-4-13-030147-3。
- 『日本近代史』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2012年3月。ISBN 978-4-480-06642-8。
- 『西郷隆盛と明治維新』 講談社〈講談社現代新書〉、2013年4月。ISBN 978-4-06-288202-6。
- 『〈階級〉の日本近代史――政治的平等と社会的不平等』 講談社〈講談社選書メチエ〉、2014年11月。ISBN 978-4-06-258589-7。
- 『帝国と立憲――日中戦争はなぜ防げなかったのか』 筑摩書房、2017年7月。
- 『近代日本の構造――同盟と格差』 講談社〈講談社現代新書〉、2018年5月。ISBN 978-4-06-511729-3。
- 『明治憲法史』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2020年9月。ISBN 978-4-480-07317-4。
共著[編集]
- 田原総一朗共著 『大日本帝国の民主主義――嘘ばかり教えられてきた!』 小学館、2006年4月。ISBN 4-09-389242-3。
- 三谷太一郎共著、藤井裕久・仙谷由人監修、日本の近現代史調査会編 『歴史をつくるもの 日本の近現代史述講 上』 中央公論新社、2006年12月。ISBN 4-12-003795-9。
- 大野健一共著 『明治維新 1858-1881』 講談社〈講談社現代新書〉、2010年1月。ISBN 978-4-06-288031-2。
- 山口二郎共著 『歴史を繰り返すな』 岩波書店、2014年8月。ISBN 978-4-00-025664-3。
編著[編集]
- 広瀬順晧・増田知子・渡辺恭夫共編 『財部彪日記 海軍次官時代(上・下)』 山川出版社〈近代日本史料選書 12-1〉、1983年10月。
- 宮地正人共編『日本近代史における転換期の研究』 山川出版社、1985年6月。ISBN 4-634-26140-5。
- 宮地正人・高村直助・安田浩・渡辺治共編 『シリーズ日本近現代史 構造と変動 1 維新変革と近代日本』 岩波書店、1993年2月。ISBN 4-00-003711-0。
- 宮地正人・高村直助・安田浩・渡辺治共編 『シリーズ日本近現代史 構造と変動 2 資本主義と「自由主義」』 岩波書店、1993年4月。ISBN 4-00-003712-9。
- 宮地正人・高村直助・安田浩・渡辺治共編 『シリーズ日本近現代史 構造と変動 3 現代社会への転形』 岩波書店、1993年7月。ISBN 4-00-003713-7。
- 宮地正人・高村直助・安田浩・渡辺治共編 『シリーズ日本近現代史 構造と変動 4 戦後改革と現代社会の形成』 岩波書店、1994年1月。ISBN 4-00-003714-5。
- 新藤宗幸・小林正弥共編 『憲政の政治学』 東京大学出版会、2006年1月。ISBN 4-13-030138-1。
- 『自由と平等の昭和史――一九三〇年代の日本政治』 講談社〈講談社選書メチエ〉、2009年12月。ISBN 978-4-06-258456-2。
- 青木和夫・佐藤進一・高木昭作共編 『文献史料を読む――古代から近代』 朝日新聞社、2000年10月。ISBN 4-02-257545-X。
監修[編集]
- 後藤一雄・田村裕美編著 『二つの昭和史――老後に歴史を学ぶ』 光芒社、2002年11月。ISBN 4-89542-199-6。
訳書[編集]
- ジョージ・アキタ 『明治立憲政と伊藤博文』 荒井孝太郎共訳、東京大学出版会、1971年11月。
- テツオ・ナジタ 『明治維新の遺産――近代日本の政治抗争と知的緊張』 中央公論社〈中公新書〉、1979年9月。
- 『明治維新の遺産』 講談社〈講談社学術文庫〉、2013年8月。ISBN 978-4-06292186-2。
- ゴードン・M・バーガー 『大政翼賛会――国民動員をめぐる相剋』 山川出版社、2000年10月。ISBN 4-634-52050-8。
出典[編集]
- ↑ デジタル版 日本人名大辞典+Plusの解説 コトバンク
- ↑ a b 日本憲政史 / 坂野 潤治【著】 紀伊國屋書店ウェブストア
- ↑ 西部邁『六〇年安保――センチメンタル・ジャーニー』洋泉社MC新書、2007年
- ↑ 坂野潤治さんが死去 東京大名誉教授 (写真=共同) 日本経済新聞(2020年10月20日)
- ↑ 日本政治「失敗」の研究 / 坂野 潤治【著】 紀伊國屋書店ウェブストア
- ↑ 「坂野潤治教授略歴・著作目録」『社會科學研究』49巻3号、1998年
- ↑ 名誉教授:坂野潤治 東京大学社会科学研究所
- ↑ 『法学論集』18巻1号、千葉大学法学会、2003年
- ↑ a b 歴史学者、坂野潤治さんが死去 田原総一朗氏「彼に代わる学者は見つからない」 - 芸能社会 SANSPO.COM(サンスポ)(2020年10月20日)
- ↑ 歴史学者の坂野潤治さんが死去、83歳 近代政治史を研究 毎日新聞(2020年10月21日)
- ↑ 近代日本の出発 / 坂野 潤治【著】 紀伊國屋書店ウェブストア
- ↑ 坂野潤治氏死去 歴史学者、83歳 時事ドットコム(2020年10月21日)