石見徹

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石見 徹(いわみ とおる、1948年 - )は、経済学者。東京大学名誉教授。専門は国際経済論、金融論、経済発展論[1][注 1]宇野学派[4]

経歴[編集]

和歌山県那賀郡粉河町(現・紀の川市)生まれ[5]。1971年東京大学経済学部経済学科卒。1977年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学[6]。学部演習で侘美光彦、大学院で馬場宏二の指導を受けた[7]。博士課程在籍中の1975年に馬場が主宰した「ブラウン研究会」に参加[8]。大学院時代に侘美主宰の「大恐慌研究会」にも参加した[9]

1977年法政大学社会学部講師。1979年東京大学経済学部助教授[7]。1986年「ドイツ恐慌史論 : 第二帝政期の成長と循環」で経済学博士(東京大学)[10]。1991年東京大学経済学部教授[11]。1996年東京大学大学院経済学研究科教授。2013年東京大学名誉教授、流通経済大学経済学部教授。2016年退職[6]

この間、1979-81年テュービンゲン大学経済学部留学。1990-91年カリフォルニア大学バークレー校客員研究員。1994年ミュンヘン大学日本研究所客員教授。1998-99年ロンドン大学経済・政治学部(LSE)客員研究員[11]

宇野派の流れをくむ研究者。稲葉振一郎によると、石見の著書『世界経済史――覇権国と経済体制』(東洋経済新報社、1999年)は実質的に資本主義の発展段階論を主題とし、段階論の原点である宇野弘蔵『経済政策論』(弘文堂、1954年)のバージョアンアップを図ったものである[12]。宇野派の財政学者である加藤榮一の「影響が強く見られるほか、新古典派を含めた非マルクス主義経済学の業績をも広く踏まえて書か」れている[12]。資本主義の発展段階のベンチマークとして旧来のマルクス主義者が重視した生産力・技術、加藤が重視した政府・政策体系、そして国際経済体制の3つをいずれも応分に重視するが、「あえていえば国際経済体制、とりわけ国際通貨制度の構造転換」を最重要視しているのが特徴である[12]。19世紀から20世紀初頭を「金本位制の時代」である「自由主義局面」、第一次世界大戦から第二次世界大戦までを「構造転換局面」、戦後高度成長期を「黄金期」、スタグフレーション以降を「新自由主義局面」と規定した[12]

著書[編集]

単著[編集]

  • 『ドイツ恐慌史論――第二帝政期の成長と循環』(有斐閣、1985年)
  • Japan in the International Financial System (Macmillan, 1995)
  • 『日本経済と国際金融』(東京大学出版会[東京大学産業経済研究叢書]、1995年)
  • 『国際通貨・金融システムの歴史 1870~1990』(有斐閣、1995年)
  • 『国際経済体制の再建から多極化へ』(山川出版社[世界史リブレット]、1996年)
  • 『世界経済史――覇権国と経済体制』(東洋経済新報社、1999年)
  • 『全地球化するマネー――ドル・円・ユーロを読む』(講談社[講談社選書メチエ]、2001年)
  • 『開発と環境の政治経済学』(東京大学出版会、2004年)
  • 『グローバル資本主義を考える』(ミネルヴァ書房[シリーズ・現代経済学]、2007年)
  • 地球温暖化問題は解決できるか――実現可能な方向を求めて』(岩波書店、2009年)
  • 『「幸福な日本」の経済学』(講談社[講談社選書メチエ]、2017年)
  • 『日本経済 衰退の構図』(東京大学出版会、2021年)
  • 『世界恐慌とブロック経済――経済の第二次世界大戦前史』(山川出版社、2024年)

共編著[編集]

  • 『国際資本移動と累積債務』(伊藤元重共編、東京大学出版会[東京大学産業経済研究叢書]、1990年)

訳書[編集]

  • H.W.アーント『世界大不況の教訓』(小沢健二、長部重康、小林襄治、工藤章、鈴木直次共訳、東洋経済新報社、1978年)

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. 『全地球化するマネー』(講談社選書メチエ、2001年)では国際経済、経済政策論[2]。『地球温暖化問題は解決できるか』(岩波書店、2009年)では国際経済、比較経済史、環境経済[3]

出典[編集]

  1. 「幸福な日本」の経済学 紀伊國屋書店
  2. 全地球化するマネー 紀伊國屋書店
  3. 地球温暖化問題は解決できるか―実現可能な方向を求めて 紀伊國屋書店
  4. 馬渡尚憲平田喜彦・侘美光彦編, 『世界大恐慌の分析』, 有斐閣、一九八八年四月、三四七頁、六五〇〇円PDF」『社会経済史学』第49巻第5号、1989年
  5. 石見徹『世界経済史――覇権国と経済体制』東洋経済新報社、1999年
  6. a b 日本経済 衰退の構図 紀伊國屋書店
  7. a b 石見徹『ドイツ恐慌史論――第二帝政期の成長と循環』有斐閣、1985年
  8. 馬場宏二「解題」、H.W.アーント著、小沢健二、長部重康、小林襄治、工藤章、鈴木直次、石見徹訳『世界大不況の教訓』東洋経済新報社、1978年
  9. 石見徹『世界恐慌とブロック経済――経済の第二次世界大戦前史』山川出版社、2024年
  10. CiNii 博士論文
  11. a b 開発と環境の政治経済学 紀伊國屋書店
  12. a b c d 稲葉振一郎『「新自由主義」の妖怪――資本主義史論の試み』亜紀書房、2018年、149-151頁