ダイヤホール

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ダイヤホールとは、鉄道やバスなどの公共交通機関を利用する際に発生する事象のことである。

概要[編集]

通常、首都圏関西圏といった大都市圏の鉄道やバスでは日中時間帯を中心にn分間隔のパターンダイヤになるようにダイヤが組まれている。しかし、ときにn分間隔の割に列車が間引かれている路線や区間が存在する。これを鉄道ファンの中ではダイヤホールといい、利用する際に大きな罠になる可能性がある。

はじめてこの言葉が使用されたのは定かではないが、2021年7月に東洋経済オンラインが公開した「10分間隔なのに20分待ち?列車ダイヤに潜む「穴」」[1]という記事にダイヤホールに関する説明があり、このころから世間一般に知られているものかと思われる。

特徴[編集]

主に以下の理由でダイヤホールが生じる。

  1. 遠距離利用者で、末端区間で優等列車と普通列車が共存する場合
  2. 普通列車と優等列車の運転間隔が異なっていたり、同じ種別でも待ち合わせ・時間調整を行う駅が異なる場合
  3. 途中の駅から支線に直通する列車が存在する
  4. 途中駅終点の列車が挟まる
  5. 特急列車が運行される
  6. もともとパターンダイヤになっていたものの、コロナ渦等による旅客がへったことにより一部の列車が間引かれた

現存する例[編集]

関東[編集]

総武快速線 千葉方面の事例[編集]

日中時間帯の総武快速線は、横須賀線からの直通列車が毎時4本に東京始発1本を加えた毎時5本となっている。このほかに特急列車として成田エクスプレスしおさいが最大で毎時3本運行されている。東京駅から平日12時代の船橋・千葉方面の時刻表は以下のとおりである。

  • 12:03 NEX 成田空港
  • 12:05 東京始発千葉行
  • 12:15 成田空港行
  • 12:25 千葉行
  • 12:33 NEX 成田空港行
  • 12:40 千葉行
  • 12:54 君津

このように、快速列車は10 - 15分と多少ばらつきが発生している。特急列車や横須賀線内で乗り入れてくる湘南新宿ラインや相鉄線直通列車との兼ね合いもあるので、多少の間隔乱れは致し方ないだろう。ところが、東京駅発車時刻で25分発と54分発の列車は市川で後続の特急の通過待ちを行う。このため、市川駅の時刻表では以下の通りになる。

  • 12:15 君津行
  • 12:23 千葉行
  • 12:33 成田空港行
  • 12:45 千葉行
  • 12:58 千葉行

御覧のように、もともと14分の間隔があいていた東京駅40分発の千葉行と54分発の君津行の間隔がさらに広がり、市川駅発車時点で17分もの間隔があいている。その一方で市川で退避をしない列車は時間調整などは特に行わないため、君津行のあとの千葉行とは8分しか間隔があいておらず、毎時5本ながら1時間に1回17分の間隔があいてしまう。一応、並行する各駅停車に乗れば快速線を待たずに先着することができることもあるが、快速線とは別ホームであることや平日ダイヤ時の総武緩行線は5分30秒間隔[2]という中途半端な運転間隔もあって利用しずらい。


中央快速線 東京・新宿から立川以遠の事例[編集]

中央快速線は1時間当たり中央特快が3本、青梅特快が1本、快速がおおむね8 - 9本程度設定されている。基本的に特快は三鷹と国分寺で先行の快速に連絡するが、特快のみならず快速も運転間隔がバラバラのため、有効列車の運行間隔にばらつきやすい。加えて、特急あずさやかいじとの関連性や青梅線直通列車、平日ダイヤでは貨物列車の関係で毎時1本無退避の快速があることもあって有効列車同士の間隔がいびつになってしまう。平日12時代の東京駅基準でみると、三鷹駅までは全列車が有効列車として機能するが、国分寺駅立川駅八王子駅高尾駅までの有効列車は以下の通りとなる。

国分寺駅までの有効列車
  • 12:03
  • 12:05
  • 12:09
  • 12:22
  • 12:25
  • 12:34
  • 12:37
  • 12:49
  • 12:55
立川駅までの有効列車
  • 12:03
  • 12:05
  • 12:22
  • 12:34
  • 12:49
八王子駅・高尾駅までの有効列車
  • 12:03
  • 12:22
  • 12:34
  • 12:49

このように、国分寺駅まではある程度有効本数が確保されているが、同駅以遠は有効本数が極端に少なくなる。特に立川駅までの有効列車は03発の特快の後に05発の青梅行が続くが、次の有効列車は22発の特快と17分も間隔があいてしまう。中央線も特急があるものの、この時間帯は全列車が新宿始発であるので東京駅からは利用しずらい。


埼京線・湘南新宿ライン・相鉄・JR直通線の事例[編集]

池袋駅大崎駅の間は埼京線湘南新宿ラインは線路を共用している。埼京線は20分の間で各停2・快速1の運行であり、湘南新宿ラインは種別の違いはあれどおおよそ15分に1本、相鉄線直通列車は30分に1本の運行となっている。この段階で間隔不定になりやすいが、特に問題になるのが新宿 - 大崎間である。埼京線の各停は日中は全列車が新宿で折り返すため、同駅以南は1時間当たり埼京線快速が3本・湘南新宿ラインが4本・相鉄線が2本と運行本数がまちまちになる。その結果、新宿駅の大崎方面と大崎駅の新宿方面の時刻表は以下の通りになる。

新宿駅時刻表
大崎駅時刻表
  • 12:02 快速川越
  • 12:09 特快高崎
  • 12:13 新宿行
  • 12:21 快速川越行
  • 12:25 宇都宮
  • 12:36 籠原
  • 12:41 快速川越行
  • 12:43 新宿行
  • 12:55 快速宇都宮行

新宿駅基準でみると、毎時00分と30分ごろに出発列車が集中しており、そのほかの時間帯では運行間隔が広がりやすい。大崎駅からだと1時間に2回12分列車間隔があく時間帯が生じており、時刻表を見ないとりようしずらい。とはいえ、相鉄線開業前は15分列車間隔があくこともあったことを踏まえると、これでもまだ改善された方である。しかし、相鉄線直通列車は新宿発着であり、大崎駅 → 池袋駅などという移動をする際には新宿駅の発着ホームが異なることや乗り換え時間がわずかであることから有効列車として機能しない。そのため、今でも15分近く列車間隔があいてしまうことがある。

常磐線 天王台駅・取手駅の事例[編集]

常磐線は取手駅までの快速をE231系[3]が、同駅以遠に向かう列車はE531系[4]が担当している。日中時間帯は緑快速と青快速が交互に運行されており、上野駅の発車時刻を見るときれいな10分間隔になっている。ところが、上野発毎時42分発の列車は我孫子から成田線に乗り入れてしまうため、天王台取手に向かう際にはその列車の前後だけ20分あいてしまう。各駅停車も日中は全列車が我孫子どまりであり、特急も両駅には停車しないため、利便性が極めて悪くなる。東京大学名誉教授曽根悟はこの部分だけ各駅停車を取手まで延長運行するべきではないかと意見を述べている。

京葉線における事例[編集]

日中時間帯の京葉線の一般列車は1時間当たり、快速2・各駅停車4・武蔵野線直通が3というダイヤ構成になっている。なんだかさっきみたのと同じような気がするが、東京駅の発車時刻は以下の通りである。

  • ☆12:02 快速上総一ノ宮
  • ●12:06 武蔵野線 府中本町
  • ●☆12:10 各駅停車 蘇我
  • ●12:21 各駅停車 海浜幕張
  • ●12:26 武蔵野線 府中本町
  • ☆12:33 快速蘇我行
  • ●☆12:40 各駅停車 蘇我行
  • ●12:46 武蔵野線 府中本町行
  • ●12:51 各駅停車 海浜幕張行

ダイヤホールとなる事例は市川塩浜までの快速通過駅に向かう場合、および海浜幕張以遠に向かう場合の2パターンである。市川塩浜までの駅では武蔵野線直通列車も利用できるが、この場合、東京駅からの利用可能列車は●で示した7本であるが、武蔵野線直通は京葉線の各駅停車と5分以内での接近運転を行っている関係上、毎時7本ながら1時間に3回も15分近く運転間隔が開いてしまう。海浜幕張以遠に向かうことができる列車は☆で示した列車であるが、快速と各駅停車が毎時2本ずつであり、海浜幕張より先で15分の等間隔運行が行われている関係上、東京駅からの発車時刻の間隔は大きく偏っている。

ちなみに土休日は快速が毎時4本、ほぼ15分間隔で運行されるため、各駅停車も含めて運行間隔が多少均一化されることから、平日ほどひどいダイヤホール状態ではない。

関西[編集]

関西圏では、特にJR西日本や阪神電車阪急電車を中心に15分ないし20分のパターンダイヤが組まれていることが多く、関東ほどひどい例はあまり見られない。とはいえ、少なからずダイヤホールになっているところもあるのでその路線たちについて取り上げる。

近鉄大阪線の事例[編集]

近鉄のダイヤは基本的に短距離を各停(普通電車)が、中長距離を快速急行・急行が、そのどちらにもあてはまらない区間で準急・区間準急が設定されており、そこに特急がぶち込まれている。そのため、全体的に等間隔になりずらい運行形態となっているが、そのなかでも特にひどいのが大阪線の事例であり、日中時間帯は1時間当たり、急行3・区間準急3・各停5になっている。一般的に毎時5本の運行は他のn分パターンと相性が極めて悪いので、あまり採用されないことが多いが、無理に採用したことでどの種別も運行間隔がかなり乱れている。

大阪上本町駅平日日中の時刻表の例(一般列車のみ)
  • 06 高安行 各駅停車
  • ●☆11 青山町行 急行
  • ●☆15 五位堂行 区間準急
  • 18 大和朝倉行 各駅停車
  • ●☆28 伊勢中川行 急行
  • 30 高安行 各駅停車
  • ●39 大和朝倉行 区間準急
  • 45 高安行 各駅停車
  • ●☆51 名張行 急行
  • ●54 大和朝倉行 区間準急
  • 56 高安行 各駅停車

大阪上本町発時点では、急行こそある程度感覚がそろっているが、区間準急は毎時3本ながら最大25分待ち、各停も毎時5本ながら15分あいてしまっている箇所が存在している。●印は約20km先の河内国分までの先着列車であるが、毎時6本の運転ながら、15分近くあいてしまう個所が毎時2回も存在している。☆印は約30km先の五位堂までの先着列車であるが、39・54分発の区間準急は河内国分で後続の急行の待ち合わせを行う関係上、五位堂への先着列車は毎時4本でありながら28分の急行の後は51分の急行まで待つ必要があり、相変わらず運行間隔が一定になっていない。

京阪電車の事例[編集]

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京阪電車では、2003年の枚方市・樟葉両駅への特急停車化によるダイヤ改正により、それまでの特急の15分間隔運転を改め、10分間隔でのうんこを主体とするダイヤに変化した。それによって特急以外の各種別の運行間隔にも変更が生じたものの、2016年以降は行先の違いはあれどおおむね10分に特急・準急・各停が各1本ずつというダイヤが組まれた。しかし、新型コロナウイルス感染症や長年の沿線人口減少による利用者減を受けて2021年9月にダイヤ変更が行われることになった。ここまではよかったのだが、変更後のダイヤは、15分間に特急・準急・各停各1本のパターンを基準となったが、●プレミアムカー連結車両を減らしたくなかったこと、●京都側の優等列車毎時6本を崩したくなかった、●枚方市までの利用者が多い区間の補填という点を補うために、30分に1本快速急行が挟まれるようになったが、快速急行によって利用者が多い守口市・寝屋川市・香里園の各駅の有効本数自体は変化なかったものの、各種別の運行間隔が10分間隔と比べると、運転間隔が不均等になったうえ、列車の退避も複雑化したことからカオスなことになってしまった。

特急スーパーはくと[編集]

2時間間隔のパターンダイヤが、平成後半以降定着してきた。しかし、コロナ禍の影響で日中の1往復が臨時列車となり、臨時列車の運休日は4時間のダイヤホールが生じる形となった。

特急こうのとり[編集]

1時間間隔のパターンダイヤが定着しているが、平成前半は1本だけ欠けており、日中に2時間のダイヤホールが生じていた。平成中期頃に埋められ、ちょうど1時間間隔の運行となるも、コロナ禍の影響で再び2時間、あるいは3時間のダイヤホールが出現した。

まとめ[編集]

このように、利用する区間によっては乗り遅れた際に大きな待ち時間が生じることになる。このような場合には時間に余裕をもって利用しよう。

脚注[編集]

  1. https://toyokeizai.net/articles/-/443844
  2. 津田沼以遠は列車本数が半減する
  3. 以下緑快速とする
  4. 以下青快速とする

外部リンク[編集]