ジェリー藤尾
ジェリー藤尾(ジェリーふじお、昭和15年(1940年)6月26日 - 令和3年(2021年)8月14日)は、日本の歌手、俳優、タレント。娘は元女優の藤尾美紀、藤尾亜紀。元妻は歌手、タレントの渡辺友子。
プロフィール[編集]
概要[編集]
1940年、上海で生まれる。本名は藤尾 薫紀(ふじお しげき)。父の薫宏は中国の上海でNHKのアナウンサーを務めていた。母のオリビアはイギリス人である。1945年に日本が太平洋戦争で敗戦したため、1946年に日本に引き揚げた。生まれが上海のため当初は日本語がわからず、童謡や唱歌を歌うことで身につけたという。
日本人の父親とイギリス人の母親をもつ1956年に専修大付属京王高(現専修大学附属高等学校)に入学するが、その後高校2年で中退する。1957年にバンドボーイとして米軍キャンプを回り始め、新宿のジャズ喫茶で飛び入りで歌ったところをスカウトされて芸能界入りする。
1961年に「悲しきインディアン」で歌手デビュー。1962年NHKのバラエティー番組「夢であいましょう」の「今月の歌」の「遠くへ行きたい」が大ヒットする。1964年、当時20才のアイドル歌手だった渡辺トモコ(現・渡辺友子)と大恋愛の末に結婚。渡辺は結婚と同時に芸能界を引退した。1986年7月に正式離婚。娘たちは父を選んだ。世間のバッシングがある中、娘たちの選択にジェリーは思わず涙をこぼした[1]。なお、夫婦は5億円とされる豪邸に住んでテレビCMに出演することもあり、当初はおしどり夫婦で知られていた。
「独立愚連隊」(岡本喜八監督)、「用心棒」(黒澤明監督)などの映画にも出演する。最後の仕事は2021年1月1日にBSテレビ東京で放送した日本歌手協会新春12時間歌謡祭であった。ただ、藤尾にはそれ以外も多くの仕事の依頼が寄せられていたのだが、コロナ禍のためにステージやイベントが次々とキャンセルに追い込まれ、家にいることが多くなったので「ステージとか何か仕事はないかな?」と仕事に最後まで意欲を示していたという。
晩年の藤尾は一時期は千葉県内の老人施設で暮らしたが、次女の自宅近くの部屋を借りて1人暮らしをしていた。しかし新型コロナウイルスの感染拡大と高齢を理由に次女から同居を勧められ、2021年から引っ越していた。藤尾はヘビースモーカーで肺が弱く高齢を理由に車椅子を使用するという欠点があったが、タバコは最晩年には止めて基礎疾患は無かったという。
2021年8月14日午前4時52分、COPD(慢性閉塞性肺疾患)を起因とする急性肺炎のため、横浜市内の次女夫妻の自宅で亡くなった[2]。没年81歳。亡くなる前日夜に容態に異変が生じて往診を受けて次女に薬を飲ませてもらって横になっていたが、14日に次女が様子を見に行くと既に亡くなっていたという。遺体が病院に搬送された際にはまだ藤尾の遺体は温かさがあったので、医師は「少し前に亡くなったのではないか?」との所見を示したという。
ディスコグラフィ[編集]
シングル[編集]
発売日 | 規格品番 | 面 | タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 |
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東芝音楽工業 | ||||||
1961年 | A | 悲しきインディアン | ||||
B | ||||||
JP-5099 | A | 石松野郎の唄 | 小野竜之介 | ダニー飯田 | ||
B | 地平線がギラギラ | 宇坪朱夫 | ||||
JP-5120 | A | ノーモア(ラ・パロマ) | ダニー飯田 | |||
B | 聖者が町にやって来る | |||||
1962年6月 | JP-5133 | A | 遠くへ行きたい[注 1] | 永六輔 | 中村八大 | |
B | インディアン・ツイスト | |||||
1963年7月 | JP-5237 | A | ヤングセブン(若い虹)[注 2] | 前田武彦 | 三保敬太郎 | |
B | ふたりの唄 | |||||
1963年10月 | JP-5258 | A | 誰かと誰かが[注 3] | 永六輔 | 中村八大 | |
B | なんて馬鹿な僕 | |||||
1965年2月 | TP-1033 | A | 街角の広場で | |||
B | ちょっとあんたに聞くけれど | |||||
1965年6月 | TP-1082 | A | 青春に恋をしよう | 八木柊一郎 | ||
B | この胸のときめきを | |||||
1966年3月 | TP-1*** | A | 悲しいときには | |||
B | 魚河岸の石松 | |||||
1966年3月 | TP-1216 | A | 遠くへ行きたい | 永六輔 | 中村八大 | |
B | ヤング・セブン(若い虹) | 前田武彦 | 三保敬太郎 | |||
1966年7月 | TP-1*** | A | 男意気 | |||
B | 土佐の一本漁り | |||||
1967年2月 | TP-1386 | A | 二人だけの道 | 佐々木勉 | ||
B | 君の可愛い耳もとで | |||||
1967年5月 | TP-1429 | A | 歩いて行こう恋人よ | |||
B | 森の泉 | |||||
1968年2月 | TP-1584 | A | 指笛の丘 | 有馬三恵子 | 鈴木淳 | 大西修 |
B | ふるさとが欲しいから | かもまさる | ||||
1968年5月 | TP-1613 | A | 夢去りし街 | 平田淳 | 東京之介 | 大西修 |
B | 愛の湖 | |||||
1968年9月 | TP-2038 | A | ドゥー・ワカ・ドゥー | 城悠輔 | ||
B | なんという素晴らしさ | 八木柊一郎 | いずみたく | |||
1969年8月 | TP-2167 | A | ここは赤坂別れ坂 | 平田淳 | 東京之介 | |
B | 消えた瞳 | |||||
1970年7月 | TP-2291 | A | さよならはさよならじゃない[注 4] | |||
B | 愛のしるし[注 5] | |||||
TP-10062 | A | 遠くへ行きたい | 永六輔 | 中村八大 | ||
B | ヤング・セブン(若い虹) | 前田武彦 | 三保敬太郎 | |||
1971年2月 | TP-2*** | A | 夫婦 | |||
B | はずみの恋 | |||||
1972年3月 | TP-2609 | A | さすらいの青春 | うさみかつみ | 小林亜星 | 馬飼野康二 |
B | ポケットに夢ひとつ A dream in my pocket | 後藤忠紀 | ||||
1972年8月 | TP-2684 | A | ラ・タ・タでゴキゲン | |||
B | ロージーちゃん | |||||
パイオニア | ||||||
1976年11月 | L-32P | A | 巨人軍音頭 | 梶原一騎 | 佐瀬寿一 | 池多孝春 |
B | 巨人軍応援歌 -王者の栄光- | 池多孝春 | ||||
CBS・ソニー(SONY RECORDS) | ||||||
1979年4月 | 06SH-482 | A | '79 遠くへ行きたい | 永六輔 | 中村八大 | 川口真 |
B | 憧憬(あこがれ) | 石丸博 | 川口真 | |||
1979年11月 | 06SH-583 | A | 男たちのララバイ | 山川啓介 | 川口真 | |
B | オールディーズ・タウン | |||||
1980年10月 | 07SH-844 | A | 別れにほほえみを | 萩原次郎 | 三木たかし | |
B | 霧の中の旅人 | |||||
1991年10月25日 | SRDL-3375 | 1 | パパとワルツを踊ろう | はかま満緒 | 猪俣公章 | 松浦晃久 |
3 | 遠くへ行きたい | 永六輔 | 中村八大 | |||
キングレコード | ||||||
2000年9月21日 | KISD-1946 | 1 | 悠久人の詩 | |||
2 | 再びの…人生 |
アルバム[編集]
オリジナル・アルバム[編集]
発売日 | 規格 | 規格品番 | アルバム | 備考 |
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東芝音楽工業 | ||||
LP | JPO-1093 | 悲しき60才(ジェリーを囲むユカイな仲間) | 坂本九、森山加代子、ジェリー藤尾、渡辺トモ子 | |
1962年 | LP | JPO-1162 | ダニー・ボーイ ジェリー藤尾愛唱集 | |
LP | JPO-1211 | 遠くへ行きたい ジェリー藤尾ヒットソング | ||
LP | TP-8229 | 愛の贈りもの | ジェリー藤尾&トモコ | |
東芝EMI | ||||
2006年9月6日 | LP | TOCT-11150 | 「遠くヘ行きたい」+「ダニー・ボーイ」(2in1CD) | 生産限定盤、リマスター |
SPACE SHOWER MUSIC | ||||
2014年2月12日 | LP | My Road~ジェリー藤尾55周年記念アルバム
※ 全て再録音源。
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オムニバス・アルバム[編集]
発売日 | 規格 | 規格品番 | アルバム | 備考 |
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LP | TP-7766 | スペシャルコレクション 若者の詩 | 坂本九、デュークエイセス、加山雄三など参加 |
出演[編集]
映画[編集]
- 檻の中の野郎たち(1959年、東宝)デビュー作
- 独立愚連隊(1959年、東宝)
- 足にさわった女(1960年、大映東京)
- 偽大学生(1960年、大映東京)
- 竜巻小僧(1960年、日活)
- 都会の空の用心棒(1960年、日活)
- みな殺しの歌より 拳銃よさらば!(1960年、東宝)
- 縞の背広の親分衆(1961年、東京映画、配給:東宝)
- 一石二鳥(1961年、日活)
- 地平線がぎらぎらっ(1961年、新東宝)
- 俺はトップ屋だ 顔のない美女(1961年、日活)
- 悲しき60才(1961年)
- 用心棒(1961年、東宝=黒澤プロ)
- 東京おにぎり娘(1961年、大映東京)
- 若き日の次郎長 東海一の若親分(1961年、東映京都)
- アワモリ君売出す(1961年、東宝)
- アワモリ君乾杯!(1961年、東宝)
- アワモリ君西へ行く(1961年、宝塚映画)
- 若き日の次郎長 東海道のつむじ風(1962年、東映京都)
- 銀座の恋の物語(1962年、日活)
- 九ちゃん音頭(1962年、松竹大船)
- 次郎長と小天狗 殴り込み甲州路(1962年、東映京都)
- 若い季節(1962年、東宝)
- バラキンと九ちゃん 申し訳ない野郎たち(1962年、松竹大船)
- 九ちゃんの大当りさかさま仁義(1963年、東映東京)
- 一心太助 男一匹道中記(1963年、東映京都)
- 嘘(1963年、大映東京)
- 真田風雲録(1963年、東映京都)
- ジェリーの森の石松(1963年、東映京都)
- 牝(1964年、東映東京)
- エレキの若大将(1965年、東宝)
- そっくり大逆転(1966年、松竹大船)
- 九ちゃんのでっかい夢(1967年、松竹大船)
- 拳銃は俺のパスポート(1967年、日活)
- 日本最大の顔役(1970年、日活)
- どですかでん(1970年、東宝=四騎の会)
- 悪の親衛隊(1971年、東映東京)
- がんばれ!ベアーズ大旋風 -日本遠征-(1978年、パラマウント映画)
- 日本フィルハーモニー物語 炎の第五楽章(1981年、エヌ・アール企画)
- この愛の物語(1987年、松竹富士)
- サクゴエ(2007年、中目黒製作所)
テレビ[編集]
- ザ・ヒットパレード(1959年 - 1970年、フジテレビ)
- 夢であいましょう(1962年、NHK総合テレビ)
- 昭和とんちんかん(1967年、日本テレビ系列)
- オールスター家族対抗歌合戦(1972年 - 1986年、フジテレビ系) - 毎回優勝
- ダイビングクイズ(1973年 - 1974年、MBS制作・NET系列) - 3代目司会者
- 笑って!笑って!!60分(1975年 - 降板時期不明、TBS) - 一家で司会兼任のレギュラーを務めていた。
- 第3の目(1975年 - 1978年、フジテレビ) - 司会[3]
- オール九州各県対抗家族なんでも合戦(RKB製作、九州地区ブロックネット) - 司会
- オールスターものまね王座決定戦(フジテレビ) - 審査員
テレビドラマ[編集]
- 東京警備指令 ザ・ガードマン第18話、第55話ほか(1965年~1971年、TBS系列)
- 魚河岸の石松(主演、1966年、日本テレビ系列、連続ドラマ)
- 意地悪ばあさん(YTV制作・日本テレビ系列)
- 第12話「平和なんか大嫌いの巻」(1967年)
- 第13話「へそくりこそわが命の巻」(1967年)
- 三匹の侍 第5シリーズ 第14話「空っ風野郎」(1968年1月4日放送分、フジテレビ) - 空っ風の又次
- 渥美清の泣いてたまるか(1968年1月21日放送分、TBS系列)
- キイハンター(TBS系列)
- 第7話「パリから来た大泥棒」(1968年) - ピエール山口
- 第93話「女王陛下ォー!発狂一分前」(1970年) - 桑野
- 第106話「宝石ギャング珍道中 」(1970年) - 猿渡人麻呂
- 第117話「東京ーホノルル豚をかついで珍道中」(1970年) - アルセーヌ
- 第124話「腰抜け札束強盗団 」(1970年) - 永井
- 第133話「私の首を返して頂だい」(1970年) - 眉村
- 第145話「ギャング対自動車レース」(1971年) - 怪盗・ペイント赤木
- 第154話「サギ師の皆様ふところにご用心!」(1971年) - 地下鉄のトム
- 第166話「ヨーイ・ドン!赤頭巾で殺人ごっこ」(1971年) - 鮫島
- 助太刀屋助六(オムニバスドラマ『仇討ち』第19話、1969年2月5日放送分、TBS系)
- 五番目の刑事 第12話「バカは死ななきゃタメゴロー」(1969年12月18日放送分、NET系列・東映) - 為五郎 役
- さすらいの狼(1972年、NET系列) - むしりの才六 役
- 無宿侍 第11話(1973年、CX)
- 白い牙(1974年、日本テレビ系列) - 大沼 役
- 夜明けの刑事 第7話「お母ちゃんのお手柄」(1974年11月13日、大映テレビ・TBS) - 南原
- 破れ奉行(1977年、テレビ朝日系列) - 多門伝九郎 役
- 太陽にほえろ!(日本テレビ系列) - ゲスト
- セーラー服反逆同盟 第12話「落ちこぼれ名門高校マル秘作戦」(1987年、日本テレビ系列) - 藤沢 役 ※次女・亜樹と親子役で共演
- ぼくが医者をやめた理由(1990年、テレビ東京系列)
- 月曜・女のサスペンス「仙台七夕・幻の女」(1991年8月5日、テレビ東京系列)
- 土曜ワイド劇場 美人OL殺し(1994年9月3日、テレビ朝日系列)
- やすらぎの刻〜道(2019 - 2020年) - 辛坊修
Vシネマ[編集]
- LUMINOUS(ルミナス) / ジェリー藤尾 VS ひのき薫(1992年、SOUTHERN CROSS VIDEOARTS)
- 悪徳の勲章 Black Cop(1992年、東映ビデオ)
- まいっちんぐマチコ先生 東大お受験大作戦!!(2006年) - コケダルマ校長
- 組長×射殺 敵(たま)を狩(と)れ(2007年) - 鴫野組組長 鴫野武雄
- 実録・外道の群れ 流血の鎮魂歌(2007年) - 任侠盟友会総裁 門奈組組長 門奈和昭
- 平成清水一家(2007年)全2作 - 大前田(総裁)
- ビジネスマン必勝講座 ヤクザに学ぶカリスマ性(2008年)実例4「K会・M連合会 I会長の指導力」 - I会長
- 標的 TARGET(2009年) - マカオマフィア
- 堕悪2〜DARK〜(2011年) - 闇金業者オーナー 鎌田
アニメ[編集]
- 町一番のけちんぼう(1978年、テレビ朝日)アニメ作品に声優で出演
CM[編集]
- トヨタ・カローラ3代目・4代目(1974年~1980年)、トヨタ・タウンエース初代・2代目(1981年~1985年)
- コイズミ 学習机(1979年。家族で出演)
- 白元(現・白元アース)・アイスノン(家族で出演)
- 江崎グリコ・ワンタッチカレー(家族で出演)
- 三洋信販(現・SMBCモビット)(夫婦で出演)
ラジオ[編集]
- はかま満緒の話しのネタ(2010年3月22日・29日ラジオ日本-ゲスト)
NHK紅白歌合戦出場歴[編集]
年度/放送回 | 曲目 | 対戦相手 |
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1961年(昭和36年)/第12回 | 石松野郎の歌 | 楠トシエ |
1962年(昭和37年)/第13回 | 遠くへ行きたい | 松尾和子 |
1963年(昭和38年)/第14回 | 誰かと誰かが | 坂本スミ子 |
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
- ↑ ジェリー藤尾 男遊びしすぎて別れた妻の名前さえ聞くのが嫌<Newポストセブン,2010年12月13日
- ↑ ジェリー藤尾さん死去、81歳日刊スポーツ,2021年8月14日
- ↑ 「みもの」『北海道新聞』(縮刷版) 1975年(昭和50年)10月5日付朝刊、20面。