安中貨物
安中貨物(あんなかかもつ)とは、日本貨物鉄道(JR貨物)が福島臨海鉄道の小名浜駅から東日本旅客鉄道(JR東日本)の安中駅の間で設定していた貨物列車。群馬県安中市の東邦亜鉛の委託列車である。壮年の鉄道ファンを中心に、当時の東邦亜鉛の公式名称である「東邦亜鉛号」由来の東邦号(とうほうごう)という呼称も用いられる。なお、この安中貨物という名称は正式ではない。
概要[編集]
福島臨海鉄道の小名浜駅と、信越本線の安中駅との間を走る貨物列車。全国的に希少な「専用線発送車扱貨物」である[1]。1日1往復が小名浜精錬所・安中精練所の間で鉱石を輸送する目的で運行されていたが、焙焼工程を小名浜製錬所に一本化した上で安中製錬所の焙焼炉を休止するという東邦亜鉛の事業再編によってその役目を終え、2025年3月末を以て廃止となった[2]。しかし2024年12月時点での東邦亜鉛では、亜鉛をリサイクルする新事業で溶融炉を新設する方針を示したうえで『貨物列車の活用を検討する』としており、将来的には列車の復活も期待されている[3]。
国鉄分割民営化以降、この貨物列車の運用はJR東日本田端運転所所属機に委託していたが、2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)によって委託運行は打ち切られる。その後はJR貨物・仙台総合鉄道部所属機によって直接運行されている。水戸線・両毛線経由で運転されていた時代もあり、小山駅で機関車の付け替え(交直流機→直流機)を行っていた。
定期運用時点での列車番号は、泉→大宮操間が5094列車、大宮操→安中間が5097列車、安中→大宮操間が5098列車、大宮操→泉間が5095列車。5095列車はマルヨ運用となっている。小名浜行については返空(積み荷が空の返却)となる[4]。
歴史[編集]
- 1969年(昭和44年):「東邦亜鉛号」として運行が開始される[1][5]。
- 2008年(平成20年):水戸線、両毛線の貨物列車廃止に伴い、安中行が常磐線、東北本線、高崎線、信越本線経由のルートに、小名浜行が信越線、高崎線、東北本線、武蔵野線、常磐線というルートに変更される[6]。
- 2015年(平成27年):安中行の列車も武蔵野線経由での運行となる[6]。
- 2021年(令和3年)10月15日:トキ25000形による運行を終了[1][7][8]。
- 2025年(令和7年)
使用車両[編集]
運行終了時点の使用車両[編集]
機関車[編集]
- JR貨物EH500形電気機関車(JR貨物仙台総合鉄道部所属機)
- ルート上にある常磐線の大部分の区間が交流電化されているため、交直流機のEH500形が使用される。以前はJR東日本に委託していたため、田端運転所所属のEF81形・EF510形500番台が運用されていた。EF81形の運用は2010年、EF510形の定期運用は2011年で終了しており、それからしばらくは田端運転所機による「代走」という扱いが続いたのち、2013年春のダイヤ改正からはJR東日本との貨物運送契約を解除(その後田端運転所のEF510形は全機がJR貨物富山機関区に売却)。安中貨物はJR貨物・EH500形での運用が始まり現在に至っている。
- 福島臨海鉄道DL機
- 非電化の福島臨海鉄道本線内はディーゼル機関車牽引。
貨車[編集]
- 亜鉛焼鉱専用貨車(タンク車)[1]。
かつての使用車両[編集]
機関車[編集]
貨車[編集]
- 亜鉛精鉱専用貨車(無蓋車)[1]。東邦亜鉛では、2022年3月に安中精練所での鉱石加熱の焙焼炉を休止し、焙焼工程を小名浜製錬所に集約した[12]。そのため亜鉛精鉱の貨物輸送の廃止が決まり[8]、2021年(令和3年)10月15日付で運行を終了した。
ダイヤ[編集]
2023年3月現在のダイヤ[13]。いずれも仕業番号は仙貨A106仕業。
泉→安中[編集]
- 5094列車
- 5097列車
安中→泉[編集]
5098列車は高崎操にて牽引機関車の交換が行われる。
- 5098列車
- 安中 20:04
- 高崎 20:21-20:45
- 熊谷タ 21:19-22:02
- 大宮操 22:47-23:01
- 5095列車
- 大宮操 23:03
- 越谷タ 23:22
- 南流山 23:35
- 土浦 00:24 (ヨ)
- 水戸 01:05-05:17
- 日立 05:45
- 泉 06:32
脚注[編集]
- ↑ 以下の位置に戻る: a b c d e technology education (2022年4月15日). “さようなら 安中貨物 トキ25000形 貨車 2019~2021年 撮影 交流直流両用電気機関車EH500+(タキ1200形貨車)+トキ25000形貨車”. YouTube. 2022年11月25日確認。
- ↑ 以下の位置に戻る: a b “<東京新聞 鉄道クラブ>さよなら安中貨物”. 東京新聞. (2025年2月3日) 2025年4月2日閲覧。
- ↑ “東邦亜鉛 「安中貨物」は活用検討 安中製錬所(群馬・安中市)に溶融炉新設へ”. 上毛新聞. (2024年12月24日) 2025年4月2日閲覧。
- ↑ “福島から群馬へ、茶色い貨車でほぼ毎日運ばれている物資_国内でもめずらしい車扱い貨物列車”. 鉄道チャンネル (2022年5月11日). 2022年11月25日確認。
- ↑ “沿革”. 東邦亜鉛株式会社. 2022年11月25日確認。
- ↑ 以下の位置に戻る: a b “The安中貨物”. ゆうづるのブログ (2020年9月5日). 2022年11月25日確認。
- ↑ “撮り鉄報告ー安中貨物トキ運用終了?”. Noboの遊楽帳 (2021年10月17日). 2022年11月25日確認。
- ↑ 以下の位置に戻る: a b “安中貨物”. ネコキック (2021年10月1日). 2022年11月25日確認。
- ↑ “安中貨物の運行が終了”. 鉄道ホビダス (2025年3月27日). 2025年4月2日確認。
- ↑ “「安中貨物」の運行が終了”. 鉄道ファン (2025年3月28日). 2025年4月2日確認。
- ↑ “【福臨】安中貨物の運行が終了でセレモニーが実施”. 2nd-train (2025年3月26日). 2025年4月2日確認。
- ↑ “東邦亜鉛、製錬事業を再編 群馬で焙焼炉など休止”. 日本経済新聞. (2021年5月31日) 2022年11月25日閲覧。
- ↑ 「貨物運用情報」より。