近代オリンピック
近代オリンピック(きんだいオリンピック)とは、フランスのクーベルタン男爵の提唱により1896年に第1回オリンピックが古代オリンピック発祥の地・ギリシャの首都・アテネで始まった4年に1度世界各国の都市で行われる世界規模の運動会である。「オリンピック精神は、勝つことではなく、参加することにある」という言葉は有名[1]。
概要[編集]
オリンピック憲章第1条は、オリンピックの参加基準に於いて、全世界のアマチュア選手が参加できる権利を有していると宣言し、政治、人種、宗教による差別は許さないとしている。
問題点[編集]
オリンピックは平和の祭典として位置づけられているが、残念ながら近代オリンピックは、常に国際政治のプロパガンダ(文化宣伝)として利用されることが多い。
オリンピック開催費用の問題について[編集]
近代オリンピックは「開催費用がかかりすぎ」という問題に直面している。歴代五輪の経費を並べてみる。
- 1984年のロサンゼルスオリンピック - 約790億円
- 1988年のソウルオリンピック - 約6300億円
- 1992年のバルセロナオリンピック - 約1兆1900億円
- 1996年のアトランタオリンピック - 約5500億円
- 2000年のシドニーオリンピック - 約4000億円
- 2004年のアテネオリンピック - 約1兆1000億円
- 2008年の北京オリンピック - 約3兆4000億円
- 2012年のロンドンオリンピック - 約3兆1700億円
- 2020年の2020年東京オリンピック - 当初費用は約7000億円の予定(諸々かかって予算オーバー)
時代が下る毎に開催費用が膨大になっており、小国の国家予算に匹敵する額にまでなっている。多額の費用を賄うために五輪の商業化が進められて政治利用、商業利用が進んでいる。
五輪の商業化問題[編集]
聖火リレーは五輪のシンボル的な存在であるが、実はこのリレーのランナーは金で取引されている。リレーのランナーは距離で分割して有料で販売される。1キロメートル当たり3000ドル(約70万円)を寄付すれば、誰でも聖火ランナーになれる。これは当初は五輪の認知度を挙げることを目的にされていたが、商業化が進められて結局、シンボルの聖火を売り物にする結果となった。
1980年のモスクワオリンピックでは「スポンサー契約制度」が開始される。実はこの五輪の当初は約370社の契約があったが、どの企業も小口の契約だったため、1業種1社に限定することで約30社にまで減らし、代わりに莫大な協賛金を求めた。つまり、大口の独占契約を結ぶことで資金集めをやりやすくしたのである。
そして、放映権料の引き上げも行なわれた。五輪のテレビ放送は世界中の人々が自国を応援するために視聴するので、企業にとっては大きなビジネスチャンスとなり、放映権料は右肩上がりで、1996年には約107億円、2000年には約144億円、2004年には約173億円、2012年には約266億円と上昇し、放映権料は美味しいドル箱と化している。しかし、行き過ぎた商業化によって放映権料の価値を高めるために、お茶の間に放送される時間に合わせて大会スケジュールを変更させる事態まで発生。2008年の北京五輪における水泳で、午前に予選、午後に決勝を行なって選手の集中力を徐々に高めるのが一般的なのだが、放映権を買った会社が自国で視聴率が取りやすい時間に放送するために、午前に決勝、午後に予選とスケジュールを通常とは逆にする、つまり、選手の都合などそっちのけで利権を優先したのであった。
2020年に開かれる予定だった東京五輪も開催費用は7000億円で抑えられるはずが、あらゆる費用のかかりすぎで、いつの間にか総額3兆円にまで達する始末である。新型コロナウイルスで開催時期が延長されているので、これをさらに上回るのは避けられないと見られる。そもそも東京五輪は従来の施設をそのまま利用するはずであったが、自民党や政府が新築路線を提唱し、大手ゼネコン会社に現場を任せたり、IOCへの招致裏金疑惑やロゴの著作権違反問題など、商業化問題が絶えず発生している。
なぜ、五輪で利権問題が起こるのか[編集]
五輪で利権問題が起こる理由として「大義名分が成立しやすい」ということが挙げられる。
日本では1964年に1964年東京オリンピックが開催されているが、そのためにかけた費用は1兆円で、当時の日本の国家予算の3割を占めていた。そして、この開催費用で使用された大半がインフラの整備であった。東海道新幹線に高速道路、上水道、下水道など、生活には欠かせないライフラインの整備が「五輪のため」という大義名分を掲げることで行なわれており、つまり大義名分が成立しやすいので利権が発生してその温床が生まれやすいのである。
また、1998年長野冬季オリンピックでは、長野行新幹線が半年前に開業した反面、並行在来線処置で、信越本線が分断され、通学の高校生等が犠牲になる負の側面が生じた。
五輪の政治問題[編集]
五輪は政治利用化されることも多い。1972年のミュンヘンオリンピックでは、パレスチナのゲリラ集団が選手村のイスラエル宿舎を襲撃して、11人の犠牲者を出す大惨事となった。また、1980年のモスクワ五輪でもソ連のアフガニスタン侵攻によって西側諸国がボイコットする事態になった。近年では2022年の北京冬季五輪で、中国の政治に抗議すべく外交的ボイコット (閣僚や政府関係者は出席しないが、選手や選手団関係者は通常通り参加) が行われている。
ただ、世界的に注目される国際的なイベントのため、近代五輪では「五輪の政治利用はしない」という方針を大義名分としている。
関連項目[編集]
- オリンピック関連用語一覧
- オリンピック関連年表
- オリンピック競技
- 近代オリンピックでの国・地域別メダル総獲得数一覧
- 日本オリンピック委員会
- オリンピック憲章
- オリンピアード
- 古代オリンピック
- 夏季オリンピック
- 冬季オリンピック
- ワールドゲームズ
- パラリンピック
- スペシャルオリンピックス
- デフリンピック
- プレオリンピック
- ユースオリンピック
- ユニバーシアード
- 複合競技大会 - 国際的に「競技大会」といえばこの単語が先に上がる。マルチスポーツイベント とも称される。オリンピックはこれらの中で最も重要なポジションを占めている
- ジャパンコンソーシアム - 日本でのオリンピックやFIFAワールドカップの放送に際するNHK・民間放送の合同組織
- オリンピック景気
- アジア競技大会
- 国民体育大会
- 運動会
外部リンク[編集]
- 公式
- 大会
脚注[編集]
- ↑ でも、多くの国で、国内の予選を勝ち上がった人しか参加できない。