神社本庁
宗教法人神社本庁(じんじゃほんちょう)は、全国の神社が加盟する宗教法人。日本最大の神道系宗教団体。
概要[編集]
神社神道系の包括宗教法人。文化庁の『宗教年鑑 令和6年度版』によると、被包括宗教団体は78,298団体(うち被包括宗教法人は78,261法人)、被包括宗教団体のうち神社は78,251社(うち宗教法人は78,216社)、教師数は21,071人(うち女性は3,770人)、信者数は74,696,959人。なお神社本庁以外にも神社神道系の包括宗教法人がある(神社本教、神社産土教、北海道神社協会、木曽御嶽本教、石鎚本教など)。神社本庁に加盟している神社でも他の団体の被包括宗教法人になっている神社もある(石鎚神社、出雲大社など)。石鎚神社は石鎚本教、出雲大社は教派神道系の単立宗教法人である出雲大社教のそれぞれ被包括宗教法人である。神社本庁に加盟していない有名神社には日光東照宮、伏見稲荷大社、靖国神社などがある。
東京都渋谷区代々木1-1-2に事務所があり、狭義にはこれが神社本庁と呼ばれる。47都道府県に地方機関として神社庁(うち45は宗教法人)を置いている。伊勢神宮を本宗(最上位)として神社神道の宣布、神職の養成や任免、神宮大麻の頒布などを行っている。機関紙は『神社新報』(週刊)、機関誌は『月刊若木』で、いずれも神社新報社が発行している。1956年5月に「敬神生活の綱領」、1980年5月に「神社本庁憲章」を定めた。
建国記念の日制定運動、元号法制化運動、靖国神社国家護持運動、教育基本法改正、夫婦別姓反対などの保守運動を推進してきた。1969年に政治団体として神道政治連盟(神政連)を結成し、1970年に神政連の趣旨に賛同する国会議員からなる議員連盟として神道政治連盟国会議員懇談会が結成された。2024年11月1日時点で213名の国会議員(衆院134名、参院79名。大半は自民党に所属)が同議連の会員になっている[1]。神社本庁と神政連は「日本を守る会」「日本を守る国民会議」や後身団体の「日本会議」と密接な関係を持ち、神道政治連盟国会議員懇談会の会員は日本会議国会議員懇談会の会員と重複が多い。神社本庁教学委員や神政連政策委員には日本会議の事務局を担当する日本青年協議会(青協)のメンバーが含まれている[2]。
設立[編集]
1945年12月15日にGHQが神道指令を発し、神社神道の国家からの分離を命じたことを受け、大日本神祇会、皇典講究所、神宮奉斎会の民間三団体が新団体の設立を協議し、1946年1月23日に神社本庁設立総会を開催した。2月2日に神社行政を管掌していた神祇院が廃止された。翌2月3日に宗教法人令の改正令(「神社」の字句が挿入)が公布・施行され、宗教法人神社本庁が正式に発足した[3]。
吉田茂(首相を務めた吉田茂とは別人。皇典講究所専務理事)、葦津珍彦(青年神道懇談会主宰[3])、宮川宗徳(神宮奉斎会専務理事)の3人が設立の中心を担った[4]。設立協議の際に組織案として、三団体事務局側は管長制の宗教教団とする「神社教」案を主張した[3]。葦津は神社神道には固定的成文的な教義や定義がないこと、他宗派の国民と対立すべきでないこと(祭祀を目的とした財団もしくは社団法人が望ましい)、各神社がもともと持つ独立性を尊重すべきことから「神社教」案に反対し、法人の連盟組織とする「神社連盟」案を主張した[3]。葦津は伊勢神宮と各神社が仏教宗派の本山・末寺のような関係になる教団型の組織にした場合、GHQが伊勢神宮を潰すと教団としての神社も消滅してしまうため、占領下で神社を守るには緩やかな連合体の方が良いと考えていた[4]。宮川と吉田は葦津の「神社連盟」案に賛成し、結果としてこの案に近い組織形態となった[3][4]。
葦津は神社本庁の設立当時の性格をGHQから神社を守るための緊急的応急措置として設立された「仮バラック」と見做していた(「神社本庁バラック」論)。また本庁のその後の状況について、占領政策に対応するための「暫定的制度」を「理想的恒久制度」であるかのように思う気風に「本庁の精神的な空洞化と無気力現象の生じて来る根源」があると指摘した[5]。
関係団体[編集]
出典[編集]
- ↑ 神道政治連盟 2025年3月7日閲覧
- ↑ 神社本庁(日本会議)の見果てぬ夢 清洲山王宮日吉神社、2016年10月11日
- ↑ 以下の位置に戻る: a b c d e 『神社本庁十年史』神社本庁、1956年
- ↑ 以下の位置に戻る: a b c 藤本頼生「経済 X 宗教「ピンチを乗り切る4つのポイント」」國學院大學メディア、2016年4月25日
- ↑ 牟禮仁「戦後神社界史寸感」『埼玉県神社庁報』No.218(PDF)、2016年10月31日
関連文献[編集]
- 神社新報社編『神道指令と戦後の神道』(神社新報社、1971年)
- 神社新報社編『近代神社神道史』(神社新報社、1976年、増補改訂版1986年)
- 神社新報創刊六十周年記念出版委員会編『戦後の神社・神道――歴史と課題』(神社新報社、2010年)
- 神社新報社編『戦後神道界の群像――神社新報創刊七十周年記念出版』(神社新報社、2016年)
- 小川寛大『神社本庁とは何か――「安倍政権の黒幕」と呼ばれて』(ケイアンドケイプレス、2018年)
- 藤生明『徹底検証 神社本庁――その起源から内紛、保守運動まで』(筑摩書房[ちくま新書]、2018年)