国際連盟
国際連盟(こくさいれんめい、League of Nations)は、第一次世界大戦により甚大な被害が出たことからイギリス、アメリカ合衆国が主導して作った史上初の国際平和機構である。 本部は永世中立国のスイスジュネーヴに置かれ、様々な機構がつくられて活動した。
1920年に発足してから第二次世界大戦後の1946年4月に国際連合に移行するまで続いた。
設立まで[編集]
アメリカ合衆国大統領のウッドロウ・ウィルソンの十四か条の平和原則により提唱され、ヴェルサイユ条約第1編に基づいて設立された。原加盟国は42カ国から始まった。
この原加盟国の中には提唱者であるアメリカ合衆国、第一次世界大戦の敗者ドイツ、ロシア革命により社会主義国となるソビエト連邦は入っていなかった。アメリカ合衆国はモンロー主義が主流で、上院で否決されたため加盟できなかった。ドイツは敗戦国であったため、ソ連は政情不安定だったことなどによる。こうした大国が国際連盟に参加せず、当初の構想とは違うものとなってしまった。
国際紛争[編集]
国際連盟には様々な紛争が持ち込まれた。成功例として1925年の10月から12月にかけてのギリシャ・ブルガリア紛争に対しては、ギリシャがブルガリアに対して賠償金を支払うこととし、両軍を撤退させるという解決策を示し、導いたことが挙げられる。
機構[編集]
国際連盟の機関は主に次の主要五機構がある。
- 総会(Assembly)
- 理事会(Council)
- 事務局(Secretariat)
- 常設国際司法裁判所(Permanent Court of International Justice)
- 国際労働機関(International Labour Organisation)
発足当初の常任理事国は、大日本帝国、フランス、イギリス、イタリアの4か国。
事務局の下には、専門機関などが存在する。
最高意志決定機関は「総会」で「全会一致」が原則で、軍事的制裁はできず経済制裁のみだったた。このため、第二次エチオピア戦争ではイタリアに対する制裁も充分な効果は発揮できなかった。このため紛争解決に効果を発揮できず、第二次世界大戦につながった一つの要因とされる。しかし、1920年代後半には国際連盟が仲介に入り解決できた問題もあり、一概に失敗とは言えず、国際的な機構を初めて作った点は歴史的に評価もされている。また、国際連盟の機関は国際連盟解散後、国際連合に引き継がれた。
国際連盟加盟国推移[編集]
- 1920年
- 1月 国際連盟設立 原加盟国42カ国 アルゼンチン、イギリス、イタリア、イラン(ペルシャ)、インド、ウルグアイ、ベネズエラ、エルサルバドル、オーストラリア、オランダ、カナダ、キューバ、ギリシャ、グアテマラ、コロンビア、スイス、スウェーデン、スペイン、タイ(シャイ)、チェコスロバキア、中国、チリ、デンマーク、ニカラグア、大日本帝国、ニュージーランド、ノルウェー、ハイチ、パナマ、パラグアイ、ブラジル、フランス、ペルー、ベルギー、ポーランド、ボリビア、ポルトガル、ホンジェラス、南アフリカ、 ユーゴスラビア、リベリア、ルーマニア
- 第一回総会時にアルゼンチン脱退
- 12月 アルバニア、オーストリア、コスタリカ、フィンランド、ブルガリア、ルクセンブルク加盟
- 1921年
- 9月 ラトビア、リトアニア、エストニア加盟
- 1922年
- 9月 ハンガリー加盟
- 1923年
- 9月 アイルランド(英国自治領)、エチオピア加盟
- 1924年
- 9月 ドミニカ共和国加盟
- 1925年
- 1月 コスタリカ脱退
- 1926年
- 6月 ブラジル脱退
- 9月 ドイツ加盟
- 1931年
- 9月 メキシコ加盟
- 1932年
- 7月 トルコ加盟
- 10月 イラク加盟
- 1933年
- 3月 大日本帝国脱退
- 10月 ドイツ脱退
- 1934年
- 9月 アフガニスタン、エクアドル、ソビエト連邦加盟
- 1935年
- 2月 パラグアイ脱退
- 1936年
- 5月 グアテマラ脱退
- 6月 ニカラグア脱退
- 7月 ホンジュラス脱退
- 1937年
- 5月 エジプト加盟
- 8月 エルサルヴァドル脱退
- 12月 イタリア脱退
- 1938年
- 3月 オーストリア脱退(ドイツ併合のため)
- 6月 チリ脱退
- 1939年
- 4月 アルバニア、ハンガリー、ペルー脱退(イタリア併合のため)
- 5月 スペイン脱退
- 12月 ソビエト連邦脱退(除名)
- 1940年
- 7月 ルーマニア脱退
- 1942年
- 4月 ハイチ脱退
常任理事国推移[編集]
- 1920年
- 1月 イギリス、フランス、イタリア、大日本帝国
- 1926年
- 9月 ドイツが常任理事国になる
- 1933年
- 3月 大日本帝国が脱退
- 10月 ドイツが脱退
- 1934年
- 9月 ソビエト連邦が常任理事国になる
- 1937年
- 12月 イタリアが脱退
- 1939年
- 12月 ソビエト連邦が脱退
設立から解散までの大雑把な経緯[編集]
- 1914年7月28日 - 第一次世界大戦が始まる。
- 1918年11月11日 - 第一次世界大戦が終わる。
- 1920年1月10日 - 国際連盟が設立される。
- 1939年9月1日 - 第二次世界大戦が始まる。
- 1945年9月2日 - 第二次世界大戦が終わる。
- 1945年10月24日 - 国際連合が設立される。
- 1946年4月20日 - 国際連盟が解散される。
参考文献[編集]
- 篠原初枝 国際連盟 世界平和への夢と挫折 中央公論新社 2010年 ISBN 978-4-12-102055-0
- 百瀬孝『事典昭和戦前期の日本』吉川弘文館2002年8月20日第8刷発行。ISBN-4-642-03619-9