神谷貴行
神谷 貴行(かみや たかゆき、1970年 - )は、ブロガー、漫画評論家、元・日本共産党職員。「紙屋高雪」のペンネームで評論活動を行っている[1][2]。漫画評・書評サイト「紙屋研究所」管理人。
経歴[編集]
愛知県西尾市出身[3]。高校時代の校則反対運動の経験から「やれば社会は変わるんだ」と知り、18歳で日本共産党に入党[4]。全日本学生自治会総連合(民青系全学連)委員長を務める[3]。1995年京都大学法学部卒。卒業後は日本共産党職員となり[4]、東京都委員会職員を経て、2006年3月より福岡県委員会に勤務[5]。2006~17年に福岡市議団事務局次長[1]、2017年6月より福岡市議団事務局長[5]。2023年2月時点で福岡県委員、県常任委員[6]。
2018年11月の福岡市長選に共産党推薦の無所属で立候補し、現職の高島宗一郎(自民党支持)が公約に掲げるロープウェー構想を批判したが、大差で落選した[7][8]。
党福岡県委員会総会の議論内容をブログに独断で公開し、党首公選制導入などを訴えて除名されたジャーナリストの松竹伸幸の処分見直しを主張する意見を発表したとして、2024年8月6日付で共産党から除籍され、8月16日付で共産党福岡県委員会から解雇された。
評論活動[編集]
2003年に紙屋高雪名義で漫画や社会時評を論じるサイト「紙屋研究所」を開設。人気サイトとなり、書籍や雑誌にも進出した[9]。初の著書『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』を出版した2007年時点ではライトノベル雑誌『ザ・スニーカー』や共産党の機関紙『しんぶん赤旗』に漫画評を連載していた[10]。サイトの一部の記事は朝日新聞社の言論サイト「WEBRONZA」やニュースサイト「The Huffington Post 日本版」にも転載されている[11]。
2018年に出版した『マンガの「超」リアリズム』所収の論文で『はだしのゲン』が核抑止論の重要な一翼を担ったとする呉智英の認識を批判したところ、呉に『週刊ポスト』誌上で「共産党系のマンガ評論家紙屋高雪」による「この批判の初出誌は民主教育研究所の「人間と教育」」などと揶揄された[12]。これを受け、ブログで呉の『ゲン』論を詳細に批判した。ただし呉の『ゲン』論を全体的には高く評価している[13]。
町内会長を務めた経験から、町内会に関する著書の執筆やメディア出演も行っている。2014年に出版した著書『“町内会”は義務ですか?』によると、家族には妻と小学生の娘がいる[11]。
「ご飯論法」の発案者の1人であり[6]、2018年のユーキャン新語・流行語大賞のトップ10に「ご飯論法」が入賞し、上西充子とともに同賞を共同受賞した[14]。
福岡市長選[編集]
2018年10月3日、共産党福岡市議団などでつくる市民団体「市民が主人公の福岡市をめざす市民の会」が11月4日告示、18日投開票の福岡市長選において神谷の擁立を決定した[2]。神谷は10月4日に出馬要請を受諾[1]、10月5日に記者会見を開き、無所属での立候補を表明した。共産党福岡県委員会は神谷の推薦を決定した[15]。漫画家の山本夜羽音は、神谷の福岡市長選出馬について、「お!紙屋高雪!/ゼロ年代の児ポ法改悪問題の頃に共産党内部で意見集約に尽力したマンガ評論家だよ!/こいつは信用できる!」とツイートしている[16]。
自民党が支持する無所属現職の高島宗一郎も出馬し、24年ぶりの現職と新人の一騎打ちとなった[17]。結果は94,437票を獲得、高島に大差を付けられて落選した。高島は史上最多の285,435票を獲得,当日有権者数は124万2438人、投票率は過去最低の31.42%[8]。
共産党除籍・解雇[編集]
2023年9月19日付の産経新聞によると、共産党福岡県委員会は神谷が同年2月に開かれた党福岡県委員会総会で、党首公選制導入などを訴えて除名されたジャーナリストの松竹伸幸の処分見直しを主張し、その議事内容をブログで公表したとして、党規約違反で処分する方針を固めた[6]。2024年3月6日付の産経新聞によると、2月の県党会議で県委員に再任されなかった[18]。4月18日付の産経新聞によると、県党会議では党幹部が規約違反と認定したブログの削除と自己批判を求めた[19]。
2024年8月16日に共産党から6日付で除籍され、共産党福岡県委員会から16日付で解雇されたとX(Twitter)に投稿した[20]。2024年8月19日に共産党福岡県委員会は「神谷貴行氏の除籍と解雇について」を公表した。
人物[編集]
- 活動家の外山恒一は、紙屋(神谷)について、「…彼は実はぼくらがやってた「全国高校生会議」の参加者なんだよ。ぼくや矢部史郎といった主力メンバーではなく、単なる参加者の1人だけどね。愛知県で民青の高校生班を束ねてて、そこそこ優秀な奴だという印象はあったけど、まさかその後、民青の全学連委員長までやってたとは最近まで知らなかった。」と述べている[21]。
- 尊敬する人物は、地方政治家の潮谷義子(元熊本県知事)、翁長雄志(元沖縄県知事)、蜷川虎三(元京都府知事)、大西巨人の小説『神聖喜劇』の登場人物の東堂太郎[15]。
著書[編集]
※紙屋高雪名義。
- 『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』 築地書館、2007年11月
- 『理論劇画 マルクス資本論』 原作:門井文雄、解説・構成:紙屋高雪、協力:石川康宏、かもがわ出版、2009年4月
- 『超訳マルクス――ブラック企業と闘った大先輩の言葉』 訳:紙屋高雪、イラスト:加門啓子、かもがわ出版、2013年10月
- 『"町内会"は義務ですか?――コミュニティーと自由の実践』 小学館(小学館新書)、2014年10月
- 『どこまでやるか、町内会』 ポプラ社(ポプラ新書)、2017年2月
- 『マンガの「超」リアリズム』 花伝社、発売:共栄書房、2018年4月
- 『不快な表現をやめさせたい!?――こわれゆく「思想の自由市場」』 かもがわ出版、2020年4月
脚注[編集]
- ↑ a b c 福岡市長選:神谷貴行氏が出馬へ 共産党市議団事務局長 毎日新聞(2018年10月4日)
- ↑ a b 福岡市長選に神谷氏出馬へ 共産市議団事務局長 西日本新聞(2018年10月4日)
- ↑ a b 私の公約・事務所・募金先・プロフィールを知りたい人へ かみや貴行のブログ 1%でなく99%のための福岡市政を(2018年11月2日)
- ↑ a b 【福岡市長選】「オタクで炊事メン」「強い人には、こびない」候補者はどんな人?横顔紹介 西日本新聞(2018年11月6日)
- ↑ a b 福岡市長選、神谷貴行氏が立候補に強い意欲 データ・マックス NETIB-NEWS(2018年10月4日)
- ↑ a b c 共産党福岡県委が「ご飯論法」発案の党員処分を検討 党内議論のブログ公表を問題視 産経新聞(2023年9月19日)
- ↑ 福岡市長選、現職の高島宗一郎氏が当選 朝日新聞デジタル(2018年11月18日)
- ↑ a b 福岡市長に高島氏3選 史上最多の28万票超 投票率は過去最低31・42% 西日本新聞(2018年11月19日)
- ↑ 読者が漫画評論サイト…本の販売にも影響 読売新聞(2008年1月30日)
- ↑ オタクコミュニスト超絶マンガ評論 紀伊國屋書店
- ↑ a b “町内会”は義務ですか?―コミュニティーと自由の実践 紀伊國屋書店
- ↑ 呉智英 核抑止を解説、朝日新聞が「語ってはいけない真実」を書いた 週刊ポスト2018年8月17・24日号
- ↑ 『はだしのゲン』は核均衡論の味方か 紙屋研究所(2018年8月9日)
- ↑ 第35回 2018年 授賞語 ユーキャン
- ↑ a b 【たっぷり福岡市長選】「市民にかけられた魔法を解きたい」共産党が推薦、神谷氏が主張した福祉や経済論 西日本新聞(2018年10月6日)
- ↑ 山本夜羽音のツイート(2018年10月4日)
- ↑ 「成長」「暮らし」最後の訴え 福岡市長選18日投開票 日本経済新聞(2018年11月17日)
- ↑ <独自>共産、「ご飯論法」発案者の党員を福岡県委員に再任せず 反転攻勢へさらなる試練 産経新聞(2024年3月6日)
- ↑ <独自>「ご飯論法」神谷氏にブログ削除要求 共産福岡県委 言論封殺の懸念も 産経新聞(2024年4月18日)
- ↑ 「共産党から除籍された」 漫画評論家の神谷貴行氏が投稿 他の党員処分見直しを主張 産経新聞(2024年8月16日)
- ↑ 批評シーンの中で東浩紀は一所懸命運動を志向している。しかし、ジャンルがなあ…… -『ゲンロン』 「平成批評の諸問題2001-2016」を読む(3) 外山恒一のWEB版人民の敵