水戸黄門

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水戸黄門(みとこうもん)とは、

  1. 副将軍と呼ばれた徳川光圀(水戸光國)の活躍を描いた茨城県主舞台の時代劇。本ページで詳述。
  2. 過去水戸徳川家黄門の唐官名である中納言の官位に叙せられた人物。2代当主の光圀以外にも6名いる。


概要[編集]

典型的な勧善懲悪時代劇である。時代は江戸時代初期、徳川幕府五代征夷大将軍徳川綱吉の治世下。

あらすじ[編集]

西山荘に隠居の徳川光圀(以下、御老公)が野良仕事を一休みして一服していると、若い侍が何者かに襲撃を受けているところに出くわす。助さん、角さんの助けを借りてなんとか暴漢を撃退したものの、侍は深手を負ってしまう。瀕死の重傷を負いつつも、侍は奉公にしていたお家で家老を中心に、農民からの過酷な年貢の取り立て、禁制品密輸、そして、これに異議を申し立てた者に対する粛清があったので、『水戸の御老公様に直訴に来た』と言い、訴状を渡して息を引き取る。こうして御老公一行は巨悪を仕置きするため、国家老の山野辺兵庫の怒りを買いながら旅立ったのであった。

特徴[編集]

  • 御老公は副将軍(実際は副将軍という官職はない)という高い身分である。但し、隠居の身分の設定。
  • 儒者である「水鏡」と名のったり、「引退した(越後のちりめん)商人の光右衛門」名のったりして身分を隠し、旅をして、悪事を働き庶民を圧迫している悪徳役人や私腹を肥やしている悪徳商人などに関する情報を得ると、数々の証拠を手に入れ、御老公一行は家来を連れて、悪徳役人の詰所に乗り込み、悪事の数々を申し述べる。
  • 従者として、佐々木助三郎(「助さん」)と渥美格之進(「格さん」)を伴っている。
  • 悪徳役人が「黙れ! じじい! それ以上物を申すな!」と言っても、御老公はさらに意見をする。激怒した悪徳役人は、「黙れ黙れ黙れ!田舎じじいの分際で生意気な! 者ども、出会え出会え!この者らを引っ捕らえ!」と叫ぶと、悪徳役人の部下が大勢出てくる。助さん、角さんが武術で抵抗すると、悪徳役人は「構わん、切れ!切り捨てい!」と叫び、チャンバラとなるというのがTVドラマにおけるお約束である。
  • 捕り物は御老公側に有利に進み、「助さん、角さん、もういいでしょう」と御老公が言うと、徳川家の家紋の入った印籠を見せて正体を明かす。この時の「えぇい! この紋所が目に入らぬか!」という決めゼリフは、原作である講談にはあまり見られず、TVドラマ化されてからこのスタイルになった[注 1]。こうして悪徳商人や悪党は屈伏する。
  • 御老公が悪徳役人に「藩主○○公より厳しいご沙汰があるものと覚悟いたせ」と言うと、悪徳役人は、時々最後の悪あがきを御老公一行にするものの、最終的に「恐れ入ります」と平伏する。

というストーリーを毎回同じように繰り広げるが、悪人を懲らしめることに視聴者はカタルシスを得る。

例外回[編集]

  • 悪代官が倒されず、誰も罰せられない回がある(「と呼ばれた男」の鬼代官)
  • 光圀一行が悪人を自ら進んで殺害する回がある(「七人の暗殺者」の天草七兄弟) 

京滞在の場合[編集]

光圀は従三位中納言のため、光圀より官位の高い公家に「三葉葵の印籠」は効かない。しかし、悪徳公家の尻尾をつかんだ光圀を支持する高位の公家が悪徳公家を懲戒して決着する。

登場人物[編集]

  • 徳川光圀
    • 主人公。杖を持っている。「御老公」と尊称されるが、商人の主人の姿をして、庶民には「隠居の光右衛門」と名乗る。
  • 佐々木助三郎
    • 商人の姿をしている。「助さん」と呼ばれ、手代とされている。実在の光圀配下の儒者佐々宗純がモデルとされる。
  • 渥美格之進
    • 商人の姿をしている。「格さん」と呼ばれ、手代とされている。実在の光圀配下の儒者安積澹泊がモデルとされる。
  • うっかり八兵衛
    • お調子者の大食い。丁稚とされている。
  • 風車の弥七
    • ヤクザの姿をしている忍者。針付きの風車が武器。
  • 霞のお新
    • 弥七の妻。同行の場合、夫と共に忍びを行う。
  • 柘植の飛猿(つげのとびざる)
    • 薬売りの姿をしている忍者。怪力。
  • かげろうお銀
    • 芸者の姿をしている忍者。入浴シーンが多い。お銀が主役の外伝(スピンオフ)も製作された。
  • 山野部兵庫
    • 光圀にとってはウザい存在の国元家老。実在の山野部義堅(最上義俊の従弟)がモデルとされる。

良い所[編集]

  • チャンバラは過激過ぎず、子供に観せてもあまり害はない。入院患者が病室で観ても興奮して血圧が上がらない程度のものである。
  • 毎回のストーリーもパターン化していて、点滴を受けながら朦朧とした意識で観ても内容が解らなくなることもない。ボケ老人でも楽しめる。

問題点[編集]

  • 毎回、内容に大きな変化がなく、飽きっぽい人には向かない。
  • すぐに印籠を出さず、チャンバラシーンの時間稼ぎをするのは許しがたい。

映像作品[編集]

テレビドラマ[編集]

1969年から松下幸之助の声掛りでTBS系列などで始まった「ナショナル劇場(最末期はパナソニック・ドラマチックシアター)」のシリーズが著名。目的地に着くまでは一話完結の物語。主題歌も一貫している。2011年6月放送の第42部でレギュラー放送は終了し、2015年6月の特番で地上波の放送は終了したが、2018年2019年BS-TBSの連続テレビドラマとして復活した。

歴代の黄門役[編集]

地上波版
  1. 東野英治郎
  2. 西村晃
  3. 佐野浅夫
  4. 石坂浩二
  5. 里見浩太朗
BS-TBS版
武田鉄矢

映画[編集]

「ナショナル劇場」のテレビドラマが始まるまでは、月形龍之介主演のシリーズが著名だった。

臺灣版[編集]

水戸黄門を嘉慶君(乾隆帝)に置きかえ、嘉慶君が臺灣を訪れたという話が「清鑑」にあったことから「臺灣版・水戸黄門」が生まれたとされる。ただし最後まで身分を明かさず、若くて色男で武術(太極拳)の使い手であるといった違いがある。
主題歌に「竹山の芋は、美味しくて皆が褒める」という部分があり、供給が追いつかず、サツマイモの価格が三倍にまで上がっても、飛ぶように売れたという。
ちなみに主役は欧雲竜。

脚注[編集]

  1. 昔の映画では、「チラ見せ」がスタイルであった。