炭化水素

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炭化水素(たんかすいそ、: hydrocarbon)は、炭素と水素のみからなる化合物の総称である。

鎖式飽和炭化水素[編集]

ブタン(C4H10)の構造式
オクタン(C8H18)の球棒モデル
ドデカン(C12H26)の球棒モデル

「CnH2n+2」の分子式で表せる炭化水素。直鎖状のアルカン塩素ヨウ素などのハロゲン水素を近づけても付加反応は起きない。

燃料によく使用され[1]ノッキング現象起きやすさの指標としてのイソオクタンが用いられ、「オクタン価」として現在でも使用される。オクタン価が高いガソリンは、「ハイオクタン」、あるいは「ハイオクガソリン」と呼ばれる。

炭素数が4以上からは構造異性体が出てくる[2]。7以上になると不斉炭素原子をもつものが現れる。

鎖式飽和炭化水素
名称 分子式 構造式または示性式 形状[3] 備考
メタン CH4 CH4 気体 温室効果ガスLNGの主成分
エタン C2H6 CH3-CH3 気体
プロパン C3H8 CH3​-CH2-CH3 気体 LPGの主成分
ブタン C4H10 CH3​(CH2)2CH3 気体 ライターの燃料に含まれる
イソブタン C4H10 CH(CH3)3 気体 2-メチルプロパンとも
ブタンの構造異性体
ペンタン C5H12 CH3(CH2)3CH3 液体
イソペンタン C5H12 CH3CH2CH(CH3)2 液体 2-メチルブタンとも
ペンタンの構造異性体
ネオペンタン C5H12 C(CH3)4 気体 2,2-ジメチルプロパンとも
ペンタン、イソペンタンの構造異性体
ヘキサン C6H14 CH3(CH2)4CH3 液体
ヘプタン C7H16 CH3(CH2)5CH3 液体
オクタン C8H18 CH3(CH2)6CH3 液体 ガソリンに含まれる
ノナン C9H20 CH3(CH2)7CH3 液体 ジェット燃料ケロシンに含まれる
デカン C10H22 CH3(CH2)8CH3 液体
ウンデカン C11H24 CH3(CH2)9CH3 液体
ドデカン C12H26 CH3(CH2)10CH3 液体
トリデカン C13H28 CH3(CH2)11CH3 液体
テトラデカン C14H30 CH3(CH2)12CH3 液体
ペンタデカン C15H32 CH3(CH2)13CH3 液体
ヘキサデカン C16H34 CH3(CH2)14CH3 液体 セタンとも
軽油に含まれる
ヘプタデカン C17H36 CH3(CH2)15CH3 液体
オクタデカン C18H38 CH3(CH2)16CH3 固体
ノナデカン C19H40 CH3(CH2)17CH3 固体
エイコサン C20H42 CH3(CH2)18CH3 固体 ろうそくに含まれる
ヘンイコサン C21H44 CH3(CH2)19CH3 固体
ドコサン C22H46 CH3(CH2)20CH3 固体
トリコサン C23H48 CH3(CH2)21CH3 固体
テトラコサン C24H50 CH3(CH2)22CH3 固体
ペンタコサン C25H52 CH3(CH2)23CH3 固体
ヘキサコサン C26H54 CH3(CH2)24CH3 固体
ヘプタコサン C27H56 CH3(CH2)25CH3 固体
オクタコサン C28H58 CH3(CH2)26CH3 固体
ノナコサン C29H60 CH3(CH2)27CH3 固体
トリアコンタン C30H62 CH3(CH2)28CH3 固体
テトラコンタン C40H82 CH3(CH2)38CH3 固体
ペンタコンタン C50H102 CH3(CH2)48CH3 固体
ヘキサコンタン C60H122 CH3(CH2)58CH3 固体
ヘプタコンタン C70H142 CH3(CH2)68CH3 固体
オクタコンタン C80H162 CH3(CH2)78CH3 固体
ノナコンタン C90H182 CH3(CH2)88CH3 固体
ノナノナコンタン C99H200 CH3(CH2)97CH3 固体
ヘクタン C100H202 CH3(CH2)98CH3 固体

:構造異性体

鎖式不飽和炭化水素[編集]

エチレン(C2H4)の分子モデル
アセチレン(C2H2)の分子モデル

二重結合や三重結合を含んでいる鎖式炭化水素。それぞれの通称は「アルケン」「アルキン」など。水素やハロゲンを近づけると付加反応が起きる。

炭素数3以上から構造異性体が出てくる。[4]この部類のみで考えた場合炭素数が6以上になると不斉炭素原子をもつものが現れる。

鎖式不飽和炭化水素
名称 分子式 構造式 形状[3] 通称 備考
エチレン C2H4 CH2=CH2 気体 アルケン リンゴが出すガス。ポリエチレンの原料にもなる
プロピレン C3H6 CH2=CH-CH3 気体 アルケン ポリプロピレンの原料になる
1-ブテン C4H8 CH2=CH-CH2-CH3 気体 アルケン α-ブチレンとも
2-ブテン C4H8 CH3-CH=CH-CH3 気体 アルケン 上記の1-ブテンの他にシス型、トランス型の2種類の構造異性体が存在する。β-ブチレンとも
イソブテン C4H8 CH2=C(CH3)2 気体 アルケン 1-ブテン、2-ブテンの構造異性体。2-メチルプロペンとも。イソブチレンとは言わない
1,3-ブタジエン C4H6 CH2=CH-CH=CH2 気体 アルカジエン
または共役ジエン
ブタジエンゴムの原料になる
プロパジエン C3H4 CH2=C=CH2 気体 アレン
1,2-ブタジエン C4H6 CH2=C=CH-CH3 気体 アレン
1,2,3-ブタトリエン C4H4 H2C=C=C=CH2 ? クムレン
アセチレン C2H2 HC≡CH 気体 アルキン ガス溶接などで利用
プロピン C3H4 CH3−C≡CH 気体 アルキン ガス溶接などで利用
エチルアセチレン C4H6 CH≡C−CH2−CH3 気体 アルキン
ジメチルアセチレン C4H6 H3C−C≡C−CH3 気体 アルキン

:構造異性体

脂環式飽和炭化水素[編集]

シクロアルカン。3つ以上の炭素による環状の構造と、飽和(炭素原子が全て単結合)なのが特徴。環状の構造は大抵平面上になく、歪みがある。

「CnH2n」で表せる。(ただし n ≧ 3)このためアルケンの構造異性体と言って良い。

なお、炭素数が5以下になると付加反応が起きやすい。また、この部類で考えると炭素数5以上で不斉炭素原子をもつ構造異性体が現れる。

脂環式飽和炭化水素
名称 分子式 形状[3] 備考
シクロプロパン C3H6 気体 三角形
平面上にあるしか無いが無理してるっぽい
シクロブタン C4H8 気体 四角形
シクロペンタン C5H10 気体 五角形
シクロヘキサン C6H12 液体 六角形
シクロヘプタン C7H14 液体 七角形
シクロオクタン C8H16 液体 八角形
シクロノナン C9H18 ? 九角形
シクロデカン C10H20 液体 十角形
シクロウンデカン C11H22 ? 十一角形
シクロドデカン C12H24 ? 十二角形
シクロトリデカン C13H26 ? 十三角形
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脂環式不飽和炭化水素[編集]

シクロアルケンシクロアルキン

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芳香族炭化水素[編集]

ベンゼンの構造式

主にベンゼン環をもつもの。毒性があるものが多い。

付加反応は起きにくい傾向がある。

燃焼させるとすすが発生しやすい。

芳香族炭化水素
名称 分子式 形状[3] 備考
ベンゼン C6H6 液体 発癌性物質
トルエン C7H8 液体 シンナーに含まれる
キシレン C8H10 液体
クメン C9H12 液体 フェノールやアセトンの製造に用いられる
ナフタレン C10H8 固体
非ベンゼン系芳香族化合物
名称 分子式 形状[3] 備考
アズレン C10H8 固体 青色
フルバレン C10H8 ?

:構造異性体

その他[編集]

これらはかなりマイナーな部類に入るものも多く、工業的な実用化の目処も立っていない。そもそも固体・液体・気体のどれなのかまで怪しいものもある。

その他
名称 分子式 分子構造または形状[3] 備考
プリズマン C6H6 三角柱型
テトラヘドラン C4H4 正四面体型
キュバン C8H8 立方体型
ドデカヘドラン C20H20 正十二面体型

炭化水素ではない[編集]

炭素水素以外に酸素窒素塩素などを含むものは炭化水素とは呼ばれない。また、炭素と水素のみであっても高分子化合物(合成樹脂など)の場合は炭化水素に含まれない。

炭化水素ではない(どちらかというと炭水化物)
名称 分子式 形状[3] 備考
グルコース C6H12O6 固体 ブドウ糖。炭水化物
セルロース (C6H10O5)n 固体 食物繊維。消化されずらい。反芻動物はこれを消化できる。
炭化水素ではない(どちらかというとカルボン酸)
名称 分子式 形状[3] 備考
酢酸 C2H6O2 液体 に含まれる
セバシン酸 C10H18O4 固体 ナイロンの原料になる
安息香酸 C7H7O2 固体
アセチルサリチル酸 C9H8O4 固体 鎮痛剤に使われる。子どもは使用できない。
炭化水素ではない(どちらかというとヒドロキシ酸)
名称 分子式 形状[3] 備考
クエン酸 C6H8O7 液体 レモンに含まれる
サリチル酸 C7H8O3 固体 鎮痛剤に使われる
炭化水素ではない(どちらかというとエーテル)
名称 分子式 形状[3] 備考
ジメチルエーテル C2H6O 気体 スプレー缶に混入される
ジエチルエーテル C4H10O 気体 麻酔薬に含まれる
炭化水素ではない(どちらかというとビタミン)
名称 分子式 形状[3] 備考
ビタミンC C6H8O6 固体 不足すると壊血病になるとされる
ビタミンD C27H44O 固体 不足すると骨粗しょう症などになるとされる
炭化水素ではない(どちらかというとアルコール)
名称 分子式 形状[3] 備考
エタノール C2H6O 液体 消毒液に含まれる
ナトリウムエトキシド C2H5ONa 固体 水と反応し水酸化ナトリウムエタノールになる
ビニルアルコール C2H4O ? 非常に不安定
エチレングリコール C2H6O2 液体 水冷エンジンの不凍液に含まれる
炭化水素ではない(どちらかというとアルデヒド)
名称 分子式 形状[3] 備考
ホルムアルデヒド CH2O 気体 ホルマリンに含まれる
シックハウス症候群の原因とされる
アセトアルデヒド C2H4O 気体 酒を飲む際に体内で生成される
二日酔いの原因とされる
プロピオンアルデヒド C3H6O 液体
炭化水素ではない(どちらかというとケトン)
名称 分子式 形状[3] 備考
アセトン C3H6O 液体 マニキュアに含まれる
炭化水素ではない(どちらかというとポリフェノールではないフェノール類)
名称 分子式 形状[3] 備考
フェノール C6H6O 固体
クレゾール C7H8O 固体
サリチル酸メチル C8H8O3 液体 鎮痛剤に使われる
炭化水素ではない(どちらかというとアミン)
名称 分子式 形状[3] 備考
エチルアミン C2H7N 気体 多くの溶媒で弱塩基性を示す。
ヘキサメチレンジアミン C6H16N2 固体 ナイロンの原料になる
アニリン C6H7N 液体
炭化水素ではない(どちらかというとニトリル)
名称 分子式 形状[3] 備考
シアン化水素 HCN (かろうじて)液体 触れたら即死レベルの猛毒
アセトニトリル C2H3N 液体 地下鉄サリン事件の際にも検出されている
アクリロニトリル C3H3N 液体 アクリル繊維やABS樹脂の原料になる
炭化水素ではない(どちらかというとアミノ酸)
名称 分子式 形状[3] 備考
グリシン C2H5NO2 固体 不斉炭素原子をもたない
アラニン C3H7NO2 固体 不斉炭素原子をもつ
β-アラニン C3H7NO2 固体 自然界に存在する数少ないβ以上の型のアミノ酸
グルタミン酸ナトリウム C5H8NNaO4 固体 うま味調味料に含まれる
トリプトファン C11H12N2O2 ? 必須アミノ酸の1つ。牛乳乳製品に多く含まれる
ε-アミノカプロン酸 C6H13NO2 ? 人工合成されたアミノ酸。血液凝固作用をもつ
トラネキサム酸 C8H15NO2 ? 人工合成されたアミノ酸。血液凝固作用をもつ
炭化水素ではない(どちらかというとラクタム)
名称 分子式 形状[3] 備考
ε-カプロラクタム C6H11NO ? ナイロン6の合成に用いられる。
炭化水素ではない(どちらかというとポリフェノール)
名称 分子式 形状[3] 備考
カテキン C15H14O6 固体 お茶に含まれる
抗菌や抗酸化作用があるとされる
イソフラボン C15H10O2 ? 大豆に含まれる
炭化水素ではない(どちらかというとホルモン)
名称 分子式 形状[3] 備考
アセチルコリン C7H16NO2 ? 神経伝達物質
アドレナリン C9H13NO3 ? 神経伝達物質
エストロゲン C18H24O2 固体 女性ホルモン
炭化水素ではない(どちらかというと脂肪酸)
名称 分子式 形状[3] 備考
リノール酸 C18H32O2 液体 必須脂肪酸の1つ。サラダ油に含まれる
炭化水素ではない(どちらかというと核酸
名称 分子式 形状[3] 備考
アデニン C5H5N5 固体 DNAに含まれる
グアニン C5H5N5O 固体 DNAに含まれる
チミン C5H6N2O2 ? DNAに含まれる
シトシン C4H5N3O 固体 DNAに含まれる
ウラシル C4H4N2O2 固体 RNAに含まれる
炭化水素ではない(どちらかというとフロン)
名称 分子式 形状[3] 備考
塩化メチル CH3Cl 気体
炭化水素ではない(どちらかというと有毒)
名称 分子式 形状[3] 備考
サリン C4H10FO2P 液体 地下鉄サリン事件で有名
パラジクロロベンゼン C6H4Cl2 固体 防虫剤に含まれる
テトロドトキシン C11H17N3O8 固体 フグ毒に含まれる
VXガス C11H26NO2PS 液体 皮膚に付着した時点でOUT
カプサイシン C18H27NO3 固体 唐辛子に含まれる。純物質の場合1600万スコヴィル値となる。
サマンダリン C19H31NO2 固体 ファイアサラマンダーの毒
レシニフェラトキシン C37H40O9 ? 世界一辛いとされる物質。純物質で160億スコヴィル値。触っただけで化学火傷を起こす。
パリトキシン C129H223N3O54 ? 矢毒として使う神経毒の1つ
ボツリヌストキシン C6760H10447N1743O2010S32 ? ボツリヌス菌が出す毒素
炭化水素ではない(どちらかというと爆薬)
名称 分子式 形状[3] 備考
ニトログリセリン C3H5N3O9 液体 ダイナマイトに含まれる
TNT火薬 C7H15N3O6 固体 地雷に含まれる
ピクリン酸 C6H3N3O7 固体 上記のTNT火薬に取って代わられた

紛れもない無機物[編集]

炭素、水素、酸素がCnH2mO2n+mの割合で構成される場合は不安定ですぐにCO2とH2Oに分解されるので有機物ですらない。その塩も同様である。

炭化水素ではない(紛れもない無機物)
名称 分子式 形状[3] 備考
炭酸 H2CO3 ?
オルト炭酸 H4CO4 ?
炭酸水素ナトリウム NaHCO3 固体 重曹に含まれる

脚注[編集]

  1. ガソリンエンジンディーゼルエンジン天然ガス自動車など。
  2. 高等学校化学I/炭化水素/鎖式炭化水素/アルカン - Wikibooks
  3. a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa 常温常圧で(25℃、100kPa)
  4. 下の表からプロパジエンとプロピンが構造異性体であることより。

関連項目[編集]