鉄路のない県境

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鉄路のない県境(てつろのないけんざかい)は、鉄道や軌道線の線路が敷かれていない都道府県同士の境目のこと。

概要[編集]

大抵、多くの都道府県の境目には道路や線路が敷かれていることがあるが、中には全く線路自体が敷かれていない都道府県境も存在する。

しかし、その例は少ないのでここですべて紹介する。

一覧[編集]

宮城県と秋田県[編集]

宮城県北西部と秋田県南東部で直接両県が接しているが、道路が2本あるものの鉄道の線路はない。

群馬県と福島県[編集]

尾瀬国立公園が群馬、福島、栃木、新潟の4県の県境のど真ん中に位置し、特に群馬と福島の両県の県境を国立公園がすっぽり覆っており、線路どころか道路すらない。

埼玉県と栃木県[編集]

東武日光線上野東京ライン東北新幹線は埼玉から栃木に直接抜けるように見えるが、両者の県境は極めて狭く、加えて足尾鉱山公害対策で田中正造の反対運動に抗して谷中村を潰して渡良瀬遊水地を設けた低湿地なので、線路どころか道路すらない。東武日光線は群馬県の板倉東洋大前駅を、上野東京ラインは茨城県の古河駅を通る。東北新幹線は茨城県をかするが、停車駅が全くない。なお、板倉東洋大前駅も古河駅もそれぞれ他の群馬県、茨城県の駅との直接的な線路接続はない。

東京都と山梨県[編集]

両県は中央東線で直接結ばれているように見えるが、甲州街道に沿って、神奈川県の相模湖駅藤野駅を通ってから山梨に抜けており、青梅線五日市線とも両県の直接的な県境に線路が到達しておらず、2本の道路が県境に通じるだけである。

なお、神奈川県の当該2駅は橋本駅など県内の他の駅とは鉄路で直接接続されておらず、前述の古河駅同様、「飛地の神奈川県駅」である。

埼玉県と山梨県[編集]

秩父多摩甲斐国立公園ですっぽり覆われており、1998年4月に道路の雁坂トンネルができるまで、交通が分断されていた。

埼玉県と長野県[編集]

同じく秩父多摩甲斐国立公園がすっぽり覆っている例。こちらは線路どころか道路もない。

愛知県と長野県[編集]

両県は直接的な県境に道路が何本もあるものの線路はない。なお飯田線で直接結ばれているように見えるが、同線の出馬 - 小和田間で静岡県浜松市お荷物天竜区を通っている。
但し、大正期に足助、稲武、根羽経由による信参鉄道の構想はあった。

また、中部天竜・水窪一帯に関しては浜松市天竜区でありながら、区の中心地の西鹿島や天竜二俣とも線路で直接繋がっておらず、浜松駅からも豊橋への迂回が必要で、浜松駅から一番早い列車に乗っても水窪駅に着くのは午前11時過ぎである。
なお、天竜二俣から鉄建公団が佐久間線を建設しており、途中の船明まで路盤はほぼ完成していた。

岐阜県と石川県[編集]

両県境は国立公園の両白山地がすっぽり覆っており、道路が1本あるものの線路はない。

岐阜県と福井県[編集]

両県境には道路が3本あるが、線路はない。過去には樽見鉄道樽見線が同県境を越えて線路を伸ばす予定であったが、構想のみで終わった。遡って戦前には上越線に倣って越美南線が開業。戦後に越美北線も開業し、残りは県境のみになったが、国鉄の財政赤字によりあえなくボツに。これなら、奥越の大野三番から金津もしくは福井に通じていた私鉄線を先行して戦時中に国有化すれば手っ取り早かったのに…

徳島県と兵庫県[編集]

鳴門大橋にて両県が陸路で結ばれている。鳴門大橋は、鉄路を通せる構造になっているが、明石海峡大橋が道路単独橋になったこともあり、現在に至るまで結局線路は敷設されず、橋の線路用地全体がある種の未成線となっている[注 1]

兵庫県と和歌山県[編集]

上記注釈に出てきた紀淡海峡の鉄道トンネルが未着工で、かつ道路橋、道路トンネルもない。

広島県と愛媛県[編集]

上記徳島・兵庫両県と同様に西瀬戸自動車道(瀬戸内しまなみ海道)により両県が陸路で結ばれているが、こちらは道路橋前提で線路敷設の計画すらない。

広島県と鳥取県[編集]

広島県北東部と鳥取県南西部で両県が接しているが、道路が2本あるものの線路はない。

なお、広島と島根の間では県境部の路線規格が良かった三江線が廃止され木次線が運行中だが、下手したら大赤字で廃止され、120kmにも及ぶ長大な広島県と島根県の県境が本項に載る可能性があり、警戒が必要である。

愛媛県と徳島県[編集]

両県境には線路はない。道路は徳島自動車道[注 2]国道192号が通じ、国道192号には鉄道先行自動車線として国鉄(JR)バス川池線があったが、2001年にJR四国が撤退し、路線バス自体も2010年4月に廃止された。

愛媛県と大分県[編集]

両県間に航路はあるものの、鉄路どころか橋や海底トンネルすらない。

鹿児島県と沖縄県[編集]

線路も道路もないが、離島ゆえやむを得ない例。似たような理由で北海道と青森県の間にも線路があるものの道路はない。

JR在来線のない例[編集]

新潟県と富山県[編集]

両県間はえちごトキめき鉄道日本海ひすいライン、あいの風とやま鉄道線、北陸新幹線で直接繋がっているが、いずれもJR在来線ではない。

富山県と石川県[編集]

両県境にはあいの風とやま鉄道線、IRいしかわ鉄道線、北陸新幹線が通るが、いずれもJRの在来線ではない。

三重県と奈良県[編集]

唯一の鉄路である近鉄大阪線が名張市と宇陀市の間で本県境を通過する。

熊本県と鹿児島県[編集]

両県は肥薩おれんじ鉄道と九州新幹線のみで直接繋がっている。長期運休実施中の肥薩線は上記のように宮崎県を遠回りする。

電化路線のない例[編集]

新潟県と福島県[編集]

両県を、県境を超えて直接結ぶのは非電化の磐越西線と只見線のみ。

岐阜県と富山県[編集]

両県の県境上にあるのは非電化の高山本線のみ。

三重県と和歌山県[編集]

両県の県境上にあるのは非電化の紀勢本線のみ。

三重県と京都府[編集]

両県境上にあるのは非電化の関西本線のみ。

広島県と島根県[編集]

両県境上にあるのは非電化、かつ廃線危機にある木次線のみ。かつては三江線もあったが廃止されている。

香川県と徳島県[編集]

高徳線と土讃線が該当するが、前者は全線非電化、後者は琴平以南が非電化のため、県境は非電化。

徳島県と高知県[編集]

阿佐海岸鉄道と土讃線が該当するが、いずれも県境は当然のごとく非電化である。

愛媛県と高知県[編集]

こちらは非電化の予土線でのみ結ばれている。

熊本県と大分県[編集]

両県を結ぶのは非電化の豊肥本線のみ。

海外[編集]

ローマ県とバチカン市国
非電化の1路線のみで結ばれているのに加え、定期の旅客列車が運行しない。

関連項目[編集]

  • 電車が来ない都道府県
  • 気動車が来ない都道府県
  • 鉄路のない旧国境
  • 真幸駅 - 宮崎県にありながら、県内の他の駅との鉄路での直接接続が全くない例。北隣の矢岳駅は熊本県、県内駅で最も近い京町温泉駅は鹿児島県所在の吉松駅を経由する必要がある。
  • 智頭急行線 - 同線の岡山県区間は他の鉄道駅から県内で孤立している。そのため県立大原高校廃校後は2019年の兵庫県立佐用高校への通学特例ができるまで、県内の公立高校へ定期代が嵩むバス通学を迫られた。
  • 大井川鐵道井川線 - 末端の閑蔵駅・井川駅は静岡市葵区にありながら同区どころか同市の他の鉄道駅から孤立している。
  • 伊賀市奈良市 - 両市は三重・奈良県境で接しているが、関西本線は一旦京都府下を経由する。
  • 北山村 - 日本唯一の、他の県と飛び地になっている村だが、当然村内に鉄路はない。
  • 志布志市 - 大隅線が消えて以降の鉄路は、他の県内の自治体から孤立している。
  • 気仙沼市 - 気仙沼線がBRT化されて以降の鉄路は、他の県内の自治体から孤立している。
  • 町田市 - 神奈川県を挟んで飛び地の東京都駅となるものが多数存在。

[編集]

  1. 紀淡海峡の鉄道トンネル実現の日に備えた用地確保という側面も無くはない。
  2. 高速バスは、県境を徳島道で短絡するのに加え、高縄半島桜千里をショートカットするため、鉄道だと遠廻りかつ高松乗換が不可欠な松山 - 徳島の移動で優位に立ち、同様に四国内を最短ルートで運行する関西 対 松山等の高速バスも堅調な乗車実績を積んでいる。