湯川順夫
湯川 順夫(ゆかわ のぶお、1943年10月8日[1] - 2022年7月6日)は、翻訳家[1]。
経歴[編集]
大阪市生まれ。1967年京都大学文学部西洋史学科卒業[1]。在学中に日本革命的共産主義者同盟(第四インターナショナル日本支部)(JRCL)の運動に参加した。学部時代はJRCLのフラクション「社学同レフト」に所属し、同学会でも活動した。卒業後は大学院に進学した。1970〜71年頃にJRCL関西地方委員会で急進主義派が主導権を掌握し、反急進主義派との中間的な立場にいた湯川が関西地方委員会の議長に就任した。1976年に国際部の専従として東京に移住し、JRCLの国際活動の中心を担った[2]。
トロツキー研究所、ポーランド資料センター、ATTAC Japanなどで活動し、トロツキー研究所事務局長[2]、幹事[3]、ソ連・東欧資料センター運営編集委員を務めた[4][5]。アジア連帯講座では何度も講演を行った[6]。社会理論学会会員[1]。
2007年から2021年の解散まで路上生活者を支援する三鷹市の市民団体「びよんどネット」の代表を務めた[7][8]。「びよんど」は2007年6月に湯川が中心となって発足した[9]。三鷹市周辺で雑誌『ビッグイシュー日本版』を販売する路上生活者の支援から出発し、同市下連雀のアパートの一室を借りて事務所とした。2021年3月末に中心メンバーの高齢化のため活動を終了した。この間、「びよんど」の支援で生活保護を受け、アパートで生活を始めた人たちは100人以上になるという[8]。
翻訳家としてはフランス語、英語からの翻訳を手掛け[1]、エルネスト・マンデル、ダニエル・ベンサイド、ジルベール・アシュカルなどの著書を訳した[2]。フランスの社会運動(反グローバリゼーション運動)に詳しく、移民問題など社会問題に関する論文も執筆した[1][7]。
2022年7月6日に癌のため亡くなった[2]。
著書[編集]
編著[編集]
- 『東欧左翼は語る――社会主義オルタナティブの戦略』 編・解説、柘植書房、1991年
- 『トロツキーとグラムシ――歴史と知の交差点』 片桐薫共編、社会評論社、1999年
訳書[編集]
- トロツキー『トロツキー著作集 1932~33 下』柘植書房、1989年
- 『トレチャコフ美術館 モスクワ 絵画グラフィック・アート彫刻』湯川順夫ほか訳、図録「トレチャコフ美術館」刊行委員会、1989年
- ボリス・カガルリツキー『モスクワ人民戦線――下からのペレストロイカ』佐久間邦夫、水谷驍共訳、柘植書房、1990年
- トロツキー『ヨーロッパとアメリカ――帝国主義に関する二つの演説』大屋史朗、西島栄、坂本透共訳、柘植書房、1992年
- ボリス・カガルリツキー『迷走する復古ロシア』佐久間邦夫、水谷驍共訳、現代企画室、1996年
- 片山次男解説『GHQ日本占領史 第44巻 不燃鉱業の復興』日本図書センター、1998年
- 宮島英昭解説『GHQ日本占領史 第30巻 公正取引の促進』日本図書センター、1998年
- トロツキー『トロツキー著作集 1932 上』柘植書房新社、1998年
- ジルベール・アシュカル編『エルネスト・マンデル――世界資本主義と二十世紀社会主義』岡田光正、志田昇、西島栄共訳、柘植書房新社、2000年
- トロツキー『トロツキー著作集 1932 下』柘植書房、2000年
- クリストフ・アギトン、ダニエル・ベンサイド『フランス社会運動の再生――失業・不安定雇用・社会的排除に抗し』柘植書房新社、2001年
- イグナシオ・ラモネ『マルコス ここは世界の片隅なのか――グローバリゼーションをめぐる対話』現代企画室、2002年
- ATTACフランス編著『アメリカ帝国の基礎知識』コリン・コバヤシ、松葉祥一、星野秀明、椎名亮輔、羽生のり子共訳、作品社、2004年
- ジルベール・アシュカル『野蛮の衝突――なぜ21世紀は、戦争とテロリズムの時代になったのか?』作品社、2004年
- ダニエル・ベンサイド『新しいインターナショナリズムの胎動――帝国の戦争と地球の私有化に対抗して』加藤洋介、星野秀明共訳、柘植書房新社、2009年
- ダニエル・ベンサイド『21世紀マルクス主義の模索』柘植書房新社、2011年
- ダニエル・ベンサイド文、シャルブ絵『マルクス「取扱説明書」』中村富美子、星野秀明共訳、柘植書房新社、2013年
- エルネスト・マンデル『第二次世界大戦とは何だったのか』山本ひろし、西島栄、志田昇共訳、柘植書房新社、2014年
- 區龍宇著、白瑞雪、ブルーノ・ジュタン、ピエール・ルッセ寄稿『台頭する中国――その強靭性と脆弱性』寺本勉、喜多幡佳秀、早野一共訳、柘植書房新社、2014年
- ジルベール・アシュカル『アラブ革命の展望を考える――「アラブの春」の後の中東はどこへ?』寺本勉共訳、柘植書房新社、2018年
- ディディエ・デニンクス文、PEF絵『父さんはどうしてヒトラーに投票したの?』戦争ホーキの会共訳、解放出版社(エルくらぶ)、2019年
- エンツォ・トラヴェルソ『ポピュリズムとファシズム――21世紀の全体主義のゆくえ』作品社、2021年
分担執筆[編集]
- カトリーヌ・サマリ著、神野明訳『ユーゴの解体を解く』柘植書房(世界を解くシリーズ)、1994年
- 伊藤誠、本山美彦編『危機からの脱出――変革への提言』御茶の水書房、2010年
脚注[編集]
- ↑ a b c d e f 日外アソシエーツ編『現代日本執筆者大事典 第4期 第4巻』日外アソシエーツ、2003年、713-714頁
- ↑ a b c d 喜多幡佳秀「追悼湯川順夫同志─関西時代の思い出」かけはし2022年7月25日号
- ↑ トロツキーを知るコーナー つげ書房新社
- ↑ 「ロシア革命なお未完(インタビュー 社会主義のゆくえ:7)」『朝日新聞』1992年1月17日付夕刊3面(らうんじ)
- ↑ 日外アソシエーツ編『新訂 現代日本人名録2002 4.ひろ~わ』日外アソシエーツ、2002年、1633頁
- ↑ 追悼:湯川順夫さん「民族問題の歴史からウクライナ問題を考える」(2022年6月28日絶筆) 虹とモンスーン、2022年7月10日
- ↑ a b 「(TOKYO 参院選 憲法を考える:3)湯川順夫さん 生活保護受給は権利/東京都」『朝日新聞』2013年7月13日付朝刊29面(東京都心・1地方)
- ↑ a b 青島顕「路上生活者支援14年、活動に区切り 100人以上の生活再建」毎日新聞、2021年3月27日
- ↑ 「ホームレス自立援助・びよんどネット「若者貧困に支援を」 あす三鷹でシンポ/東京都」『朝日新聞』2012年10月26日付朝刊29面(むさしの・1地方)