性犯罪の冤罪
性犯罪の冤罪(せいはんざいのえんざい)は、実際には性犯罪を犯していない人が性犯罪者として扱われることである。
概要[編集]
一般に刑事裁判においては、「無罪推定」「疑わしきは罰せず」が大原則である。それにも関わらず、性犯罪に限っては(自称)被害者の証言のみを証拠として有罪判決が下されることが往々にしてあり、冤罪の温床となっている。被告人が無実を主張することや、無実の被告人を擁護することが、「セカンドレイプ」として誹謗中傷の対象となることがある。これは他の犯罪にはないことであり、適正手続が保障されないことが問題となっている。
性犯罪の冤罪の被害者の大部分は男性であり、男性差別としての側面もある。
補足・詳細[編集]
性犯罪の冤罪の発生原因[編集]
性犯罪の冤罪は、犯罪の事実があったうえで犯人が誤認されることがあるのみではなく、他の犯罪に比べて自称被害者の証言が重視されることから、賠償金目当てや、怨恨、愉快犯、自身の不倫をごまかすためなどの理由で誣告(虚偽の告発)が行われることもある。特に示談金目当てにでっちあげられた痴漢冤罪は社会問題となった。実際は犯罪の被害に遭っていないのに被害に遭ったかのように嘘の告訴をすることは、虚偽告訴等罪に当たる。しかしながら、自称被害者の主張が嘘であったことを証明することは困難であり、冤罪を被った真の被害者は泣き寝入りをせざるをえないことも多い。
男性から借金をしていた女性が借金の返済を求めた男性をストーカーとして訴えて返済を免れようとするなど、金銭などのトラブルをごまかそうとして性犯罪がでっちあげられる場合もある[1]。
法制度・運用の問題点[編集]
「性犯罪の加害者は男性であり、被害者は女性である」というジェンダーバイアスにより、男性は性犯罪の冤罪の危険に常に晒されている[2]。
性犯罪の冤罪はより弱い立場の男性が被ることが多く、黒人が性犯罪の冤罪で検挙される確率は白人に比べて約8倍高いとされている[3]。
性犯罪というものの規定に曖昧な部分があることも問題である。同意の上で肉体関係を持ったとしても、女性の方から一方的に同意がなかったと主張された場合に男性には反論の方法がない。また、「見られた」「匂いを嗅がれた」というような証明のしようのない行為までも「痴漢」と主張されることがある[4]。
性犯罪以外にも、女性が被害を訴えると、無実の男性が容易に犯罪者扱いされてしまう傾向がある。四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件[5]はその典型的な例である。
2023年7月13日、改正刑法が施行され、強制わいせつ罪は「不同意わいせつ罪」となり、強制性交等罪と準強制性交等罪が「不同意性交等罪」に一本化された。この法律においては、性的同意を取ったとしても「本当は同意していなかった」と主張すれば相手を犯罪者として告発しうることが問題になっている[6][7][8]。
2024年3月現在、創設に向けて調整が進められている「日本版DBS」制度において、「性加害の恐れがある」と判断された人について、犯罪歴がなくても配置転換などの措置を雇用主に義務付ける方針となっており[9]、一切の犯罪に関わっていない人物が虚偽の告発によって問答無用で不利益な扱いをされることが懸念されている。
冤罪の発生率[編集]
欧米において性犯罪の冤罪率は4~20%だと推定されている[10]。2017年にカナダで通報された性的暴行の19%は根拠のないものであった[11]。
性犯罪の告発のうちどのくらいの割合が根拠のないものであったかには数々の統計がある。ただし、性犯罪は(自称)被害者の証言のみを証拠として有罪とされることが少なくないため、冤罪の件数は暗数を含めると実際には統計よりもはるかに高い可能性がある。
二次的弊害[編集]
性犯罪の冤罪を恐れる男性の心理につけこんだ美人局などの犯罪が行われることが問題となっている[12][13]。
実際の性犯罪の被害者が告発を思いとどまってしまったり、告発をしても証拠がないために起訴に至らないケースも確かに存在しうるものであり、重大な問題である。一方で、そうした事例を実際以上に大きく言い立てるデマ[14]は人にショックを与えて広まりがちであり、不必要な恐怖が広まる危険がある。また、虚偽の告発が多く行われることによって本当に性犯罪の被害を受けた被害者の告発が信用されにくくなるという危険性もある。
性犯罪の冤罪を恐れて、男性が女性への救命に消極的になる危険がある。2008年から2015年にかけて、心停止となった高校生・高専生に対してAEDのパッドが貼られた割合は、男子生徒83.2%に対して女子生徒55.6%であった[15][16]。しかし、この問題を指摘するNHKのブログは「服をすべて脱がす必要はない」「周りの人たちが人垣を作るという配慮もあります」などと、高度な配慮を要求しており、ますます女性への救命をしにくくするような言説となっている。
フィリップス社の調査では、「ご自身が職場や駅のホームなどで倒れて至急の救命行為が必要になり、AEDを使うために異性に衣服を脱がされたら、それに不快感を感じますか?」という問いに対して、16%の女性が「はい」、70%の女性が「不快感までは感じないが、抵抗がある」と答えている(男性はそれぞれ3%、20%。)[17]。女性がこうした意識を持っている以上男性が救命に消極的になるのは不可避であり、女性の意識が変わらなければならない。
冤罪に対する対処[編集]
MeToo運動における虚偽のレイプやセクハラの告発の風潮に対抗して、性犯罪の冤罪に反対するHimToo運動が行われた[18]。
主な事例[編集]
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以下、主として冤罪が確定している事例を中心に挙げる。痴漢冤罪は事例が多すぎるので省略する。痴漢冤罪の記事を参照のこと。
- 中国の明・清の時代には強姦の虚偽告訴は「誣姦」と呼ばれ、その頻発が社会問題と化していた[19]。
- 1921年、タルサ人種虐殺[20]。アメリカ・オクラホマ州で、黒人の青年が白人の女性を性的に暴行したというデマが流れ、白人による暴動が起こり、少なくとも26人(実際には200人と推計する専門家もいる)の黒人が虐殺された。
- 1923年、関東大震災後に多くの朝鮮人が虐殺された。この際、朝鮮人が強姦を行ったというデマを新聞が報じ、このことが虐殺につながった。
- 1989年、セントラルパーク・ジョガー事件。アメリカ・ニューヨークで女性がレイプされ、黒人やヒスパニックの少年たち5人が逮捕され、実刑判決を受けたが、真犯人は別人であった[21][22]。2019年にはこの事件を題材に「ボクらを見る目」[23]というドラマが製作されている。
- 1995年1月17日、阪神・淡路大震災が発生した。災害時には一般に助け合いの精神から犯罪が減り、この際も例外ではなかった。だが、震災の現場でレイプが多発したという主張が広まった[24]。
- 2005年、臨床検査技師による検査中にわいせつ行為をされたという女性の訴えにより、技師が逮捕・起訴された。裁判の結果、無罪が認められた[25]。
- 2009年、大阪市強姦虚偽証言再審事件。
- 北海道中標津町の男性が温水器の修理に訪れた女性宅で女性にキスしようとしたとして逮捕された。2009年には逆転無罪となり[26]、2010年には虚偽告訴容疑で女性を訴えた[27]。しかし民事裁判でも損害賠償は認められなかった[28]。
- 2012年、フットボール選手のブライアン・バンクスは、クラスメイトのワネッタ・ギブソンを強姦したとして5年間服役した。しかしこの強姦はギブソンによるでっちあげであり、ギブソンは高校のキャンパスが安全な環境ではなかったとして150万ドルの賠償金で受け取っていた[29]。この事件は2018年に映画化されている。
- 2013年1月31日、東京都葛飾区立小学校児童強制わいせつ冤罪事件。
- 2013年7月27日、パーナさん事件[30]。
- 2014年11月19日、バージニア大学集団レイプ記事捏造事件[31]。
- 2018年11月、オーストラリアのシドニーでケイトリン・グレイという女が、車の修理を手伝ってくれた男性を、性的暴行を受けたとして警察に虚偽の告発を行った[32][33][34]。
- 2019年3月に「6歳児が性的暴行を受け子宮を全摘した」というツイートが広まったが、この種の無根拠な噂は以前から頻繁に広まり、不必要な恐怖を駆り立ててきたことが指摘されている[35]。
- 2019年3月にエレノア・ウィリアムズという女が3人の男性から強姦被害を受けたと虚偽の告発を行った。冤罪の被害者は有罪判決を受け、自殺未遂に及んだ。2023年に真相が明らかになり、ウィリアムズは司法妨害罪で有罪判決を受けた[36]。
- 2019年11月12日、草津町強制わいせつ冤罪事件[37][38][39][40][41]。
- 2000年、会津若松虚偽告訴事件[42][43][44]。
- 2021年、韓国ソウルの地下鉄でスマートフォンでゲームをしていた男性が「下半身を触っていた」として刑事告発された。告発した女は当日機嫌が悪く、「キモい」と感じた男性を八つ当たりで告発したことが明らかになった[45]。
- 2022年には、同僚の男性隊員に強制性交されたと虚偽の申告をした20代の自衛隊員が停職12ヶ月の懲戒処分を受けている[46]。この女性隊員は別の男性隊員と交際しており、疑われたくなかったために虚偽の申告をしたと述べている。
- 2023年、ソウル中央地検の丁貞旭(チョン・ジョンウク)検事は、「性的暴力を受けた」という虚偽告訴を相次いで摘発した[47]。
- 2023年12月、韓国の大邱地検は、合意の上で性的関係を持ったうえで男性たちに対する虚偽告訴を繰り返した30代の女を起訴した[48]。
- 2024年1月15日、大阪地裁は強制性交等で告訴された男性に無罪判決を言い渡した。判決の中では「性犯罪の被害深刻の事実をことさらに重視し、他に有力な証拠もないのに被害者供述の 信用性を肯定することは、わずかではあっても、虚偽の被害申告等を見落とす危険を伴うもの」と述べられ、性犯罪の冤罪に対する司法の現状への危惧が表明された[49]。
- 2024年2月18日、福岡県警はアリバイのある40代の男性を公然わいせつ容疑で誤認逮捕した[50][51][52]。
- 2024年5月、合意の上で男性と肉体関係を持った上で「薬を盛られた」などと主張し3000万円を脅し取ろうとした20代の女が、虚偽告訴罪で懲役1年6月保護観察付執行猶予3年の有罪判決を受けた[53]。
係争中・疑いのある事例など[編集]
脚注[編集]
- ↑ Xユーザーの滝沢ガレソ🪄さん: 「【続報】上記ニュースですが、「ストーカー男から自宅凸された女性」は前科ありヤバ女でした…
- ↑ この偏見は男性の性犯罪被害者が軽視されることにも繋がっている。
- ↑ 「黒人にトイレで襲われた」虚偽の申告で女を逮捕。性暴力の冤罪による検挙、黒人は白人の約8倍
- ↑ 「触らない痴漢」急増 捜査員苦心 | News Everyday
- ↑ jawp:四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件
- ↑ 性交同意 なかったと言われたら? - Yahoo!ニュース
- ↑ あまりのリスクに"まともな男性"は恋愛市場から去り問題男性が残る…「不同意性交罪」が引き起こす皮肉な現象 女性が能動的・主体的にグイグイ行くしかない | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
- ↑ 不同意性交や性被害虚偽告訴…闇の司法に対する防衛術|rei
- ↑ 性犯罪歴なくても配置転換 日本版DBS、雇用主に安全義務(共同通信) - Yahoo!ニュース
- ↑ 先進国に蔓延する強姦冤罪|rei
- ↑ Unfounded Sexual Assaults in Canada, 2017
- ↑ 被害者の負い目につけ込む「美人局」 SNSでハードル低下 中学生逮捕は氷山の一角か - 産経ニュース
- ↑ 【速報】「女子中学生らが男子大学生から金品奪おうとして…」結果、逃げた大学生が転落死 中学生ら強盗致死容疑で逮捕 美人局の可能性も視野(MBSニュース) - Yahoo!ニュース
- ↑ 舞田敏彦の新作デマ ~日本の強姦の認知率が数%で、強姦事件は闇に葬られているというデマ | demita77のブログ
- ↑ 女性だとAEDが使われない? 救命処置の男女差 | 災害・防災・安全 | NHK生活情報ブログ:NHK
- ↑ 女性にAED ためらわないで! | NHKライフチャット
- ↑ いつ、誰にでも起こりうる心肺停止の怖さ。あなたができる救助の心構え - ブログ | フィリップス
- ↑ jawp:#HimToo
- ↑ 五味知子(2012)「「誣姦」の意味するもの : 明淸時代の判牘・官箴書の記述から」『東洋史研究』70(4)東洋史研究会 pp. 609-638
- ↑ jawp:タルサ人種虐殺
- ↑ Central Park jogger case - Wikipedia
- ↑ セントラルパーク・ジョガー事件の知られざる共同被告、有罪撤回へ 米 | Rolling Stone Japan(ローリングストーン ジャパン)
- ↑ jawp:ボクらを見る目
- ↑ 物語の海、揺れる島(再)――NHKのデマ放送の元ネタが、デタラメ極まる件:兵頭新児の女災対策的随想:兵頭新児の女災対策的随想(兵頭新児) - ニコニコチャンネル:社会・言論
- ↑ 99.9%の壁を破って~無罪判決の獲得~ | 京都第一法律事務所/創立60年の確かな実績|京都弁護士会所属
- ↑ 中標津に無罪事件の主人公を訪ねる - 熱血ローヤー(子煩悩パパ)の三日坊主ブログ
- ↑ 「わいせつ」事件で逆転無罪の男性が女性を刑事告訴 - 47NEWS(よんななニュース)
- ↑ “うその供述”賠償請求棄却 - NHK 北海道 NEWS WEB
- ↑ Brian Banks: Football star jailed falsely for rape wants $219k compensation | Daily Mail Online
- ↑ jawp:パーナさん事件
- ↑ jawp:バージニア大学集団レイプ記事捏造事件
- ↑ Woman who falsely accused a Good Samaritan of sexual assault is jailed | Daily Mail Online
- ↑ 「性的暴行を受けた」 助けた女の嘘で全てを失った男性 | ニコニコニュース
- ↑ ただしこの被害を受けた同じ男性は別の犯罪で有罪判決を受けている(Kenan Basic back in jail after being falsely accused of indecent assault at Sydney Petrol station | Daily Mail Online)
- ↑ 「女児暴行のうわさ」の過去と今(dragoner) - エキスパート - Yahoo!ニュース
- ↑ Eleanor Williams jailed over false rape claims - BBC News
- ↑ 黒岩草津町長の「性犯罪」虚偽告発の経緯①(2020~2021) - Togetter
- ↑ 「虚偽の性被害」訴えた元町議を支援した団体に「人権賞」、弁護士から疑問の声「趣旨に反する」(弁護士ドットコムニュース) - Yahoo!ニュース
- ↑ 草津町長室での性交渉なしと認定 町長の名誉毀損で元町議らに賠償命令 - 産経ニュース
- ↑ 「草津町に来て謝るべきでは」虚偽認定された性交渉証言に苦しんだ黒岩信忠町長の怒り㊤ - 産経ニュース
- ↑ “セカンドレイプの町・草津”と不名誉なレッテル…「性被害告発」は実態も証拠もなかった? メディアの責任と課題 | 国内 | ABEMA TIMES | アベマタイムズ
- ↑ 会津若松虚偽告訴事件 - アニヲタWiki(仮) - atwiki(アットウィキ)
- ↑ レイプでっち上げ女の虚偽申告によって人生を破壊された男性: 地声人語日記
- ↑ 「わいせつ行為」虚偽告訴の女性に実刑判決 福島地裁(朝日新聞)
- ↑ 【韓国】地下鉄車内で「ただシャツで汗を拭いた」男性が性犯罪容疑者に ありえない「告発理由」と「捜査」(吉崎エイジーニョ) - エキスパート - Yahoo!ニュース
- ↑ HBC NEWS|HBC北海道放送
- ↑ 「性的暴行を受けた」という虚偽告訴を相次いで見破ったソウル中央地検の女性検事-Chosun online 朝鮮日報
- ↑ 男性たちと合意の性関係、そして「暴行された」と虚偽告訴、6回も…韓国で30代女性を起訴(KOREA WAVE) - Yahoo!ニュース
- ↑ 大阪地裁「誤判はさらなる大きな不正義」 司法記者が驚いた無罪判決の一文 裁判長が『当たり前』を記した理由は…(関西テレビ) - Yahoo!ニュース
- ↑ 公然わいせつ容疑で誤認逮捕 福岡県警「アリバイ捜査なし」謝罪 | 毎日新聞
- ↑ 福岡県警が公然わいせつ容疑で男性を誤認逮捕 アリバイ確認せず [福岡県]:朝日新聞デジタル
- ↑ 【独自】誤認逮捕された男性が胸中を語る”テキトーな捜査”(九州朝日放送) - Yahoo!ニュース
- ↑ 「睡眠薬を盛られた…」虚偽の性被害で“3000万円”を要求、女性に有罪判決 背後には犯罪グループの影 - 弁護士ドットコム
- ↑ jawp:御殿場事件