交通系ICカード
交通系ICカードとは交通機関で利用できる電子マネーの一種。
概要[編集]
サイバネ協議会で定められたFelica規格に則ったICカードが使用され、チャージ残高で電車やバス等に乗ることができる。
鉄道会社やバス会社によってはICカードで乗車すると切符や現金で乗車するよりも数円〜十数円安くなる場合がある。ただしICカードできっぷを買っても割引は受けられない。
駅以外でも、コンビニ、スーパー、ファ-ストフード店などで交通系ICカードを使った支払いができるが、令和以降は還元サービスのあるPayPayなどのQRコード決済システムや後述の非接触クレジットカード決済との競合が進んでいる。
全国相互利用可能な交通系ICカードは、鉄道駅の自動券売機以外でもセブン銀行ATMでチャージが可能である。
2024年以降、運輸業でもVISAで開発された非接触クレジットカード決済との競合が始まり、広島県や熊本県の交通事業者のように、標準決済方式をクレジットタッチレス決済に移行したケースも出だした。
沿革[編集]
前史[編集]
電電公社でテレホンカードが発売されて以降、磁気式のプリペイドカードは普及し、1985年、分割民営化前の国鉄で「オレンジカード」が発売され、分割民営化後のJR各社では、列車の車掌が地域性を持ったオレンジカードを販売していた。オレンジカードは、自動券売機で切符を買う域から出なかったが、1991年にJR東日本が日本で初めて自動改札機のみで運賃決済をするストアードフェアシステムの「イオカード」を発売。以降、2000年代前半までに関東主要民鉄の「パスネット」、関西民鉄の「スルッとKANSAI」、JR西日本の「Jスルーカード」といった磁気式プリペイドカードによるストアードフェア改札システムは全盛期を迎えた。
草創期[編集]
高額磁気式プリペイドカードの偽造事件もあり、ICカードによるストアードフェアシステムの開発が進んだが、2001年にJR東日本がSuicaが登場。関東圏では、その後、2007年に民鉄主導のPASMOが登場し、加盟社も増え、これら1枚で首都圏のすべての電車・バスが利用できるようになった。この間、静岡県の中堅民鉄の遠州鉄道で2004年に「ナイスパス」が登場。「ナイスパス」は中堅民鉄で初めてだけでなく、鉄道バス兼業社で鉄道バス共通で使える初めてのICカードでもあった(なお、「ナイスパス」は交通系ICカード全国相互利用サービス(後述)には対応していない。)。また関西民鉄では初めてのポストペイ(後払い)型である「PiTaPa」が2004年に登場した。JRはその後、JR西日本で2003年にICOCA、JR東海で2006年にTOICA、JR北海道札幌圏で2008年にKitaca、JR九州で2009年にSUGOCAが登場。2008年には九州西鉄系のnimoca、2009年1月には札幌圏での公営・民鉄系で鉄道バス共通のSAPICAが登場した。
反面、名古屋圏や関西圏民鉄でのICカード改札の本格普及は大幅に遅れた。名古屋圏では名鉄が各駅に磁気式自動改札機を設置しての乗車券確認システムを2005年に構築したため、自動改札機の償却まで長く使い続ける必要があったためであり、関西圏ではクレジットカード並みの審査がある「PiTaPa」の加入者が伸び悩んだ一方、鉄道間対抗により、安価な磁気式の回数乗車券が買いやすく、「スルッとKANSAi」加盟の磁気式のストアードフェアカードと重ねてスピーディーに乗り越し精算できることが「イラチな関西人」に支持されたからである。
名古屋圏民鉄はJR東海に遅れること5年で、磁気式のポイント還元サービスを継ぐmanacaが登場したが、関西私鉄は更に遅れ、阪急阪神を除く「スルッとKANSAi」加盟各社が磁気式ストアードフェアカードの販売を止めたのは2017年になってからであり、阪急阪神が磁気式の「レイルウェイカード」の販売を止めたのは2019年である。
全国相互利用へ[編集]
各地でのICカードの普及に伴い、相互利用も増えてきた。2004年には、SuicaとICOCAの相互利用が始まり、Suicaで改札を通れることに驚く東日本在住者の姿を、西日本で多く見かける様になった。2006年にはICOCAとPiTaPa、2007年にはSuicaとPASMOの相互利用も可能になった。
2011年頃までに、各地でICカード対応改札機が普及。短期の地域外利用に対応するため、JRおよび大手民鉄が手を組み、2013年3月に交通系ICカード全国相互利用サービスがスタートした。
現在、全国で各種交通系ICカードが導入されている一方、JR主導の交通系ICカードの場合、JR会社間で運賃がキロ数通算のため、定期外での会社またがりの利用は基本的にできず、ネット上では不満の声もある。
現状[編集]
2020年代になると、カード購入時に保証金が必要で、リピーターでない場合に敷居が高い欠点が露呈され、非リピーター層の改札の省人化を進めるためのQRコード改札導入の検討が、JR東日本や広島電鉄で始まった。
さらに、機器更新コストの増大から、熊本市交通局など熊本県下の交通事業者は、交通系ICカード対応の運賃決済システムを止め、クレジットカードのタッチ決済に移行することを決め、前述の広島電鉄など広島県の交通事業者もローカルの交通系ICカード「PASPY」の運用停止を決めた。
一覧[編集]
JR主導の交通系ICカード[編集]
事業者毎で全国相互利用可能。JR間の会社またがりは基本的に不可能である他、会社内でもエリアまたがりが不可能なケースがある。
- Suica (JR東日本エリア)
- Kitaca (JR北海道エリア)
- TOICA (JR東海エリアおよび愛知環状鉄道)
- ICOCA (JR西日本・JR四国エリアおよび周辺民鉄、バス事業者)
- SUGOCA (JR九州エリア)
民鉄・公営交通主導の全国相互利用可の交通系ICカード[編集]
乗り切り合算もしくは定額割引のため、エリア内なら会社またがりも可能。
- PASMO(首都圏私鉄各線・関東山梨バス事業者)
- manaca(名古屋鉄道・名古屋市交通局・豊橋鉄道・愛知高速交通・名古屋臨海高速鉄道)
- PiTaPa(関西民鉄・静岡鉄道、一覧では唯一のポストペイ専用カード)
- nimoca(西日本鉄道・九州地域バス事業者・函館市電・函館バス)
- でんでんnimoca (熊本市電、2026年発行停止予定)
- はやかけん(福岡市交通局)
民鉄・公営交通主導の主な地域型交通系ICカード[編集]
地域のカードの全国相互利用不可だが、全国相互利用ICカードの他地域からの自動改札機の片利用は可能。
- SAPICA (札幌市交通局)
- icsca(仙台市交通局)
- emica(三重交通)
- PASPY (広島電鉄他、広島都市圏バス会社、2025年(令和7年)3月29日に運用終了予定)
- IruCA(高松琴平電気鉄道、他高松都市圏交通事業者)
- くまモンのIC CARD(熊本県バス5社、2024年11月15日片利用停止予定)
民鉄・公営交通主導の主な独立システムの交通系ICカード[編集]
事業者エリア内利用のみ