共産主義
共産主義 (きょうさんしゅぎ)とは、私有財産制を否定し財産を共有することによって平等な社会を目指す思想や運動、社会体制のこと。狭義にはマルクス主義の別名、もしくはマルクス主義において社会主義社会の次の段階にくるとされる社会体制のこと。
概要[編集]
原始共産制[編集]
狩猟、採集の時代は個人が蓄える財産には限界があった。食料を蓄えても腐敗が進行するし、道具を作成するにも材料が豊富ではなかった。農耕時代になった後、他の部族との交易が始まって生産性が向上し、貨幣が登場すると財産を蓄えた人物が部族の主導権を握り、奴隷制が生まれ、原始共産制は消滅した。
共産主義思想[編集]
原始キリスト教、プラトン『国家』、トマス・モア『ユートピア』、トマソ・カンパネッラ『太陽の都』、イギリス清教徒革命のディッガーズ、フランス革命のジャコバン派、グラックス・バブーフなどが共産主義の先駆といわれている。1848年にカール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスは共産主義者同盟の綱領として『共産党宣言』を発表した。資本主義は労働者階級を低賃金長時間労働の悲惨な生活に追いやるが、共産主義社会への移行を準備するとし、労働者階級が階級闘争に勝利することによって共産主義社会が実現すると説いた。
近代[編集]
資本主義の金持ち中心の社会による、労働者階級の貧しい生活を改善するべく共産主義が登場した。社会主義との違いは社会主義は共産党が政権運営を行いながら共産主義に移行する手前の段階であり、国家として共産主義を実現した国家は存在しないとされている。旧ソ連や中国、北朝鮮は社会主義に当たる。
資本主義の西側諸国は社会主義を滅ぼす「帝国主義」であると規定された。社会主義国は常に西側諸国の脅威にさらされているため、核ミサイルの開発など軍事力に多額の予算をつぎ込んでいる。また内部の敵をあぶり出すため国民は常に監視されており、数々の独裁者が登場した。共産主義系の独裁者としてはヨシフ・スターリン、毛沢東、金日成、ポル・ポトが有名である。ただし資本主義にも独裁者もどきの人物がいる。
戦前の日本では、天皇制と相容れない思想として弾圧された。アメリカ合衆国をはじめ西側諸国寄りの教育を受けた人物は、共産主義は悪党で資本主義は自由や平和として認識することが多いが、争いの原因や自身の貧困の原因が資本主義にあることに気づいていない人物も多い。そのため日本では、金持ち中心の格差社会となりつつある。その貧困問題を実際日本共産党が常に言っているが、資本主義陣営が貧困対策をしない限り共産主義との争いが続く。
労働者[編集]
日本では労働者という言葉に馴染みがなく、自身が労働者または労働者の家族であるという認識がない。もしくは工場勤め=労働者という認識である。
幹部や大企業の社員を除けば、民間企業に勤める大部分は労働者である。つまり国民の9割くらいの人物は労働者であり労働者の家族である。自分たちが労働者であるという認識を持ってもらわなければ社会主義・共産主義を掲げる政党の革命は遠い。
配給[編集]
必需品は無料
衣服・食料・住宅・教育・医療は中央政府が無料で国民すべてに提供(配給)する。共産主義でもっとも重要な公共サービスである[1]。社会主義国家の時点でこのような公共サービスが無料や低価格で行われている。
- 食料はお肉の日など品物事に配給される日が決められている。(社会主義国全般)
- 自動車は予約すると約10年後に無料で配給される。(ソビエト連邦)
- 旅行は予約すると数年後に国内のリゾート地へ招待され娯楽施設が使用できる。(ソビエト連邦)
国営企業
国民に安定した配給などを行うため、個人で会社を設立することを禁じ、すべての会社は国営で運営し政府が需要に合わせて調整する。また労働が義務とされており、ニートの存在はできない(働かざる者食うべからず)。4か月以上理由なく休むと収容所行きとなる。そのため配給だけもらうということはできない。なお共産主義社会の段階で国家は消滅する。
歴史学
唯物史観(史的唯物論、マルクス主義歴史学)は、原始共産制→奴隷制古代社会→農奴制中世封建社会→絶対主義近世社会→資本主義社会→社会主義→共産主義と社会は発展するものと解いた。
批判[編集]
計画経済を理論通りに進めるのは不可能であり、国営企業は民間企業よりも非効率な運用になる。これを推し進めようとした結果、物資の不足や農村の荒廃など悲惨な事態が発生した。また自由な発想が奪われてイノベーションの低下が起きる。