クロスボウ

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ハンティング用のクロスボウ(日本では法律上、狩猟に弓は使えない模様)
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クロスボウ(crossbow)とは、機械仕掛けでを発射する弓の一種である。

概要[編集]

古代から中世にかけてアメリカ大陸を除く世界中で戦争狩猟に使われたほか、後の時代にも暗殺に使われた。日本では平安時代まで使用された。弩師の派遣を要請する公文書が残っている。

日本語では、大弓(おおゆみ)、(いしゆみ)又は(ど)と訳される。

構造[編集]

矢を置く溝が彫られた本体と、本体の先の方に水平に取り付けられた弓からなる。

そのほかに、引いた弦を掛けるフック、フックを固定しておいて発射の際に固定を解除するトリガーが取り付けられている。フックは幅が広く矢に干渉しないよう中央が削られて左右に分かれたような形状をしている。

大抵は、弦を引く際に足を掛ける鐙状のフットレバーが前端に取り付けられている。

通常はフットレバーに足を掛け両手を使って弦を引くが、特に強力なものは、弦を引くのに梃子クランク滑車などを使う。

矢羽根は、本体と干渉しないように、後方から見て9時、12時、3時の位置に合計3枚取り付けられている。現代のクロスボウは中世のものよりも矢を置く溝が深く彫られており、矢羽根は10時、2時、6時の位置に合計3枚取り付けられている。

矢を上から押さえて脱落を防止する弱いバネがフックの後ろに取り付けられている。そのバネは後ろから前に伸びて矢の後端付近を上から押さえて矢の脱落を防ぐ。

歴史[編集]

発明されたのは古代中国ともローマ帝国ともされているが、古代ローマの攻城用の大型の弓が起源の可能性もある。中世ヨーロッパでは十字軍の時代盛んに使われた。

百年戦争の頃、フランス軍はクロスボウを使ったのに対して、イギリス軍は長弓を使った。

その後、の発明によって使われなくなるのだが、不発の可能性が皆無のクロスボウは、初期の銃よりも信頼性が高く、銃が発明されてからもしばらく使われたようである。

初期の銃がクロスボウよりも圧倒的に優れていたのは命中した場合の破壊力と、銃声によって敵を追い払う効果くらいである。命中精度や連射性では初期の銃よりもクロスボウの方が優れていた。

弓の代わりに銃が使われるようになったばかりの頃の戦闘では、銃ではなくクロスボウか長弓を使った方が有利だったものが少なくないはずである。

中国では日清戦争のときまで使われていた。村田銃を相手にしても弩では勝ち目がなかったと思われる。

第一次大戦では、敵の塹壕に爆発物を投げ込む必要からグレネードランチャー代わりに使われた。

グリーンベレーというアメリカ映画の中には、ベトナム戦争でアメリカ軍の特殊部隊が敵の歩哨を倒すために銃声のしないクロスボウを使用するシーンがあり、ベトナム戦争でも少々使われていたかも知れない。

アメリカや、東南アジアでは今でも狩猟に使われている。

長所と短所[編集]

長所[編集]

  • 普通の弓と比べて、命中精度が非常に高い。
  • 狩猟にも適している。
  • 兵士が普通の弓で、矢を目標に命中させられるようになるには、かなりの訓練が必要だが、クロスボウならば比較的短期間の訓練で使いこなせるようになる。
  • 普通の弓と違って弦を引くのに両手が使えるので、強い弓が取り付けてある。故に至近距離であれば鎧を簡単に撃ち抜いてしまう。
  • 特に、城が敵から攻撃を受けているときに、城壁の上などから使用すると絶大な効果を発揮する。

短所[編集]

  • 普通の弓より複雑な構造をしており高価で整備にも熟練が必要であり、戦争のときに大量に調達するのが難しい。日本ではこれが原因で衰退した。
  • 弦を引いて矢をセットするのに時間が掛かり連続発射は困難である。徒歩の接近戦では、矢を発射してから次の発射まで手間取り、その間に殺られる可能性がある。
  • イギリス軍が使用した長弓はクロスボウに引けを取らないほど強力で、しかも連射ができ、それと比較すると効果的な武器とは言えない。
  • 通常の弓と比べて、遠方を狙うときに、どれくらい上を狙ったら良いのかを感覚的に判断しにくく、遠方の敵集団の中に矢を射込んで撹乱させるような使い方には不向きである。
  • 接近戦であれば威力は強いのだが、矢の到達距離は長弓よりも短い。矢は長い方が慣性が大きいが、矢が長くても短くても空気抵抗は殆ど変わらないためと言われている。

その他[編集]

銃は照準を合わせるときに、銃身の上に取り付けられた照星と照門を使う。このため銃弾の発射線と照準線には少々のズレがある。しかし、初期のクロスボウの場合は、矢を真後ろから覗き込むようにして照準を合わせるので、矢の発射線と照準線との間のズレが全くない。至近距離であればクロスボウは銃よりも命中精度が高いと言われるのはこのためである。しかし、矢の脱落防止用のバネが取り付けられたり、フロントサイトや可動式のリアサイトなどが取り付けられているクロスボウの場合は、矢を真後ろから覗き込むことが難しい。

更に、パーカッションロック式の点火方式が発明される以前の銃は、引き金を引いてから発射までに若干のタイムラグがあり、その間に銃の向きが少し変わってしまうため命中制度が良くないという問題点もあった。クロスボウはこのような問題とは無縁である。

矢の速度は銃弾よりも遥かに遅く、距離が同じならば矢は銃弾よりも桁違いに大きく降下する。このため現在の競技用や狩猟用のクロスボウには大抵、距離に応じて矢の発射角度を上向きにするための可動式リアサイトが取り付けられている。

クロスボウの弦を掛けるフックの凹字型形状は、後に発明されることになる銃の照門のデザインに影響を与えることになる。

クロスボウには銃声はないが、弦楽器を弾いたときのような発射音がある。

銃弾は一回しか使用できないが、矢は回収して繰り返し使うことができる。

クロスボウが登場する映画[編集]

  • おかしなおかしな訪問者
    • 主人公の騎士がクロスボウを使っている
  • 最後の巨人
    • 石油が無くなり文明も崩壊した未来の物語で、銃弾が使い果たされてしまったことを演出するためか、クロスボウが登場する
  • マッドマックス2
    • 最後の巨人と同様、しかし銃も登場する
  • ロビン・フッド
    • 主人公は長弓を使用。敵がクロスボウを使用
  • グリーンベレー
    • ベトナム戦争で特殊部隊が使用
  • 1492 コロンブス
    • サンサルバドルに上陸したコロンブス一行は刀剣類やポールウェポンで武装しているが、良く見ると先込め銃で武装している者もいる。更に良く見るとクロスボウで武装している者もいる。この時代は、銃の信頼性の低さを補うためにクロスボウがまだ使われていたようである
  • ジョン・ディクスン・カーの推理小説『帽子収集狂事件』『ユダの窓』

動画[編集]

  • 旧式のクロスボウの紹介
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  • Tenpoint Stealth SSの紹介
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  • Tenpointのクロスボウでクマを狩る
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関連項目[編集]