おかしなおかしな訪問者
『おかしなおかしな訪問者』(原題:Les Visiteurs)とは、1992年のフランスのタイムスリップ系の大爆笑映画である。主演はジャン・レノ。
予備知識[編集]
中世の騎士ゴッドフロワが従者(というよりも道化)のジャクイユとともに現代にタイムスリップし、大騒動を引き起こす物語である。
※中世ヨーロッパでは身分の高い者は家来の他に「道化」とか「あほう」と呼ばれる者を雇って側に置く傾向があった。道化は雑用をしたり馬鹿なことを言って主人を笑わせるのが仕事であった。更に、馬鹿を演じることで主人や、他の家来、来客などに優越感を与えるという重要な役割もあったのである。
ゴッドフロワは騎士とは言っても、城を持つ領主であり殿さまである。家来たちもゴッドフロワを「殿」と呼んでいる。
ゴッドフロワは信心深く、家来たちは迷信深い。
ストーリー[編集]
今から約1000年前、フランスはイギリスと戦争をしていたが、フランスのルイ国王はイギリスの姫と密かに付き合っており、モンミライユの騎士ゴッドフロワ豪傑伯は、国王が小屋の中で敵の姫とイチャイチャしている間に敵が来ないか見張りをさせられていた。
イギリス軍が来たと報告するのだが、国王は姫とのイチャイチャを止めようとしない。その上、姫に「足を見せてくれ」と頼む。他の映画で見たようなシーンである。これは映画「アマデウス」からのパクリであることは一目瞭然である。姫は恥ずかしながらドレスの裾を捲り上げて足首を見せる。しかし、王は「もっと上まで見せてくれ」と言い、膝の少々上まで見せてもらい、やっと満足するのだがイギリス軍が小屋まで来てしまう。足なんか見せてもらっているからそういうことになるのである。
国王とゴッドフロワは間一髪で裏口から脱出するが、逃げる途中で敵軍に遭遇、一人の敵兵が国王の前に立ちはだかる。国王が剣で斬り付けると敵兵の首が切り落とされたように見えたのだが、実は敵兵は、頭を鎧の中に亀のように引っ込めていたために、カブトが飛んだだけであった。笑いながら頭を出した敵兵にゴッドフロワが剣で斬り付けると、今度は本当に首が飛んでしまう。敵兵は首を切り落とされた後も少し歩き回ってから倒れ、それを見た敵軍は怖れをなして逃げ出し、二人は陣地に戻ることができる。首が切り落とされるシーンは「SHOGUN」からのパクリかも知れない。
国王は、敵の首を刎ねたゴッドフロワの活躍を皆の前で褒め「褒美を取らせる」と言い、ゴッドフロアは国王に永遠の忠誠を誓う。褒美は金銀や領地ではなかった。ゴッドフロワが前から好意を持っていたブイユ公の娘のフレネゴンド姫と結婚させてもらえることになる。ゴッドフロワとフレネゴンド姫は愛し合っていたが、ブイユ公の反対で結婚できなかったようなのである。そこに国王が介入し、結婚を許可することをブイユ公に命令してくれるというわけである。
ゴッドフロワは婚礼のための休暇を貰い、家来と聖職者と道化を連れて城に向かう。途中の森には魔女がいると言われており、家来たちは恐れて「森を迂回しましょう」と言うのだが、姫に早く逢いたいゴッドフロワは森を突っ切って行くと言う。
森には本当に魔女の家があり、中を覗くと魔女が、老婆を若返らせる儀式を行っていた。魔女が呪文を唱えて老婆に薬を飲ませると、老婆は耳からガスを噴き出しながらロケットのように屋根を突き破って空に飛び出して、少しして戻ってくる。戻ってきた老婆は若い娘になっている。しかし、顔は酷い不細工である。老婆の旦那が「女房は若い頃からブスだった」と言い、疑問は解消する。ドレスの裾からガスを噴き出すとおならの反作用で空を飛んでいるみたいなので、耳からガスを噴き出させたようである。老婆でもフランスでは一応マダムである。マダムにおならをさせるわけにはいかないのである。
ゴッドフロワは魔女を捕らえ、姫の待つ城に向かう。城には既に知らせが届いており、宴会が開かれていた。しかし、ブイユ公は娘の結婚相手を国王に勝手に決められて面白くない。ゴッドフロワの母が「あなたの娘と私の息子が結ばれる」と言うと、ブイユ公は「他の息子なら良かった。飲んでしこたま放尿だ」と言って皆を白けさせる。
ゴッドフロワは魔女に「婚礼だから拷問には掛けずに火あぶりにしてやる」と言い、魔女から礼を言われるが、いずれにしても火あぶりにされる魔女の気持ちもお察しください。城の近くまで来たゴッドフロワが晴れ着に着替えているとき、魔女は手を3メートルも伸ばして、ゴッドフロワの水筒に薬を入れてしまう。魔女の手が伸びるのは「奥様は魔女」からのパクリである。ゴッドフロワが水筒から酒を飲むと、城が膨らんで見える。家来たちが猪八戒と沙悟浄に見えてしまう。1000年前のフランス人が西遊記を知っていたとは驚きである。
ゴッドフロワ到着の知らせを受けたフレネゴンド姫は待ち切れずに城から走り出てしまう。ブイユ公は「公爵の娘が走ってはならん」と言って後を追って走り出る。このシーンも他の映画からのパクリのようである。青い珊瑚礁だろうか?魔女に薬を飲まされていたゴッドフロワは姫が人食い熊に追われているように見え、ブイユ公をクロスボウで射殺してしまう。このときのカメラアングルは「ロビンフッド」からのパクリである。魔女に薬を飲まされていたとはいえ、花嫁の父を殺したことで縁談は破談になってしまう。
ゴッドフロワはブイユ公を生き返らせて貰おうと、魔法使いのところに行く。魔法使いは「死者を生き返らせることはできないが、過去に戻って過去を変えることはできる」と言って、過去に戻れる薬を調合しジャクイユとゴッドフロワに飲ませると、二人はその時代から消えてしまう。だが、魔法使いはボケており薬の調合を間違っていたのである。
ゴッドフロワとジャクイユは1000年後(現代)にタイムスリップし森の中で目を覚ます。ゴッドフロワはジャクイユに「馬を探して来い」と命じる。ジャクイユは森から出て道路の臭いを嗅いでいると車に轢かれそうになり、急ブレーキを掛けて停まった車を棒で叩いて凹ませてしまう。車から降りてきた外国人を見たジャクイユはサラセン人(イスラム教国の人間のこと)だと思ってゴッドフロワに報告に行く。捨ててある運動靴を見付けて不思議がっていたゴッドフロワは「悪魔の荷車に乗ったサラセン人が現れた」という報告を受け、二人でその車を目茶目茶に壊してしまう。運転者は驚いて逃げてしまう。このシーンは「マッドマックス」からのパクリである。その後、お祈りをしていると馬が一頭現れる。そこは牧場の近くだったようである。
二人は腹が減りレストランに行く。レストランと言っても野外で炭火で料理を作るバーベキュー場のようなところである。コックが焼いていたステーキを盗んで食べていると、女ホームレスが来て唄を唄いながら物乞いを始める。この女ホームレスは「政治亡命者」と自称しており、共産圏から自由を求めてフランスに亡命してきた者らしい。しかし、亡命はしたもののホームレスになってしまったのだから衣食住の保証された共産圏に住んでいたほうが幸せだったかも知れない。
コックは女ホームレスがステーキを盗んだと勘違いしてその女と言い争いになる。それを見ていたゴッドフロワは騎士道精神を発揮し「女を殴るのは許せん」と言って大暴れする。すると別の店員がショットガンを持って出てきて発砲。ゴッドフロワは馬で逃げる。このときジャクイユとは、はぐれてしまう。タイムスリップ直後にショットガンで撃たれるのはバックツーザフューチャーからのパクリのようである。
途中、トラックに轢かれそうになったり、飛行機を見たりしてパニック状態になりながら、ゴッドフロワは教会に逃げ込む。カトリック教会のミサの様子は千年前とあまり変わっていないようで、興味深いシーンである。ゴッドフロワは教会でカレンダーを見付け、千年後にタイムスリップしてしまったことを知る。
神父は、歯医者の妻のベアトリスは旧姓がモンミライユであったことを思い出し「親戚かも」と思って、ベアトリスに電話を掛ける。ベアトリスは「行方不明の従兄弟では?」と思って教会に行く。教会に来たベアトリスはなんとフレネゴンド姫にそっくり。「こんなに良く似た人が良くいたものだ」と誰もが思うが、これは演劇界の裏技「一人二役」である。
ゴッドフロワはベアトリスをフレネゴンド姫だと思ってキスしようとして警察を呼ばれてしまう。ゴッドフロワは、ベアトリスが自分を知らないことから「ベアトリスは自分とフレネゴンド姫の子孫なのだ」と悟り、驚き感動する。
そこへ警察署長が機動隊と精神科医を連れて到着する。カブトと鎧、剣と盾を持った騎士と、ヘルメットと防弾チョッキ、警棒と盾を持った機動隊の姿が良く似ていて、この映画の中で最大の見せ場である。ゴッドフロワは剣で戦うのだが、機動隊にボコボコにされ、病院に送られる。精神科医の態度は、ターミネーターからのパクリである。
ジャクイユは女ホームレスからサランラップに包まれたパンを貰うのだが、そのままサランラップごと食べて「正真正銘の馬鹿だね」と言われる。サランラップが透明なことを考えると無理もないことである。その後、女ホームレスの案内でベアトリスの家に辿り付く。
ベアトリスは「ボルネオのラリーで行方不明になってしまった従兄弟のユベールがストレスから記憶を失い、顔も変わってしまったのかも?」と思って、病院からゴッドフロワを引き取り家に連れて来る。こうして二人はベアトリスの家に居候することになる。
ここまでは序盤であり、その後、電灯や水道や電話を知らない二人によって抱腹絶倒級の大騒動が起こることになる。
その他[編集]
美女があまり出ないのも、この映画の特徴である。イギリスの姫はお世辞なら美人と言える程度、フレネゴンド姫だって姫の割には大したことない。銀行の頭取の秘書は唯一美人だが、イイ歳であり、この映画を観ても一目惚れする男は少ないに違いない。監督は、美人を登場させなくても観て貰えるという自信があったのだろう。
登場人物は皆小柄に見えるが、それはジャン・レノが長身なためである。
矛盾点[編集]
- 魔女を火炙りにするのに、魔女の儀式の参加者は処罰しなくて良いのだろうか?
- ゴッドフロワは魔女は捕まえるくせに、魔法使いに頼るなんて矛盾していないだろうか?