水泳教育

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水泳教育(すいえいきょういく)とは、水泳に関する教育である。主に学校教育の場で行われることが多いが、それ以外にもある。

学校教育における水泳教育[編集]

体育の内容の一つとして、小学校中学校高等学校で主に1学期後半の初夏に行われているが、水泳が原則として全員必修なのは小学校と中学校のみである。しかし学校内及び近隣で授業に用いるプールを確保できない場合、小中学校でも実技を座学に代えても良いとされる。[1]
日本において水泳教育が小中学校で必修なのは、1955年5月11日に発生した国鉄宇高連絡船紫雲丸の沈没事故修学旅行中の小学生が大勢犠牲になったのがきっかけ[2]と言われるが、実際はスポーツ振興法施行による施設整備費の増額や、高度経済成長により学校設置者である自治体の税収が増加してプールの整備費が拠出しやすくなったことが要因とされる。[3]

実施内容は校種・学年別に分かれており、小学校低学年は水に慣れ親しむ水遊び、中学年は水の浮き方、補助具を使用してキックやストローク、初歩的な泳ぎをする浮く・泳ぐ運動、高学年はクロール・平泳ぎを続けて長く泳ぐ水泳となっている。中学校は1・2年生はクロール又は平泳ぎを全員が学習し、これらに加えて背泳ぎ・バタフライ・複数の泳法・リレーのどれか1種目以上を学ぶ。3年生は前述の種目の中から最低1種目以上を学ぶ。

高等学校において水泳は必修ではなく、1年生は器械運動・陸上競技・水泳・ダンスから1項目以上と球技・武道から1項目以上、2・3年生は器械運動・陸上競技・水泳・ダンスのうち2項目以上を選択履修する形となっており、校内や近隣にプールの設備がない、設備があっても故障中で修繕予算を確保できないなどの理由で水泳の授業を開講していない事がある。

授業において必修ではないが、学校・地域によっては水難事故に備えての着衣泳、日本泳法・古式泳法の指導を行っていることや体育とは別枠の伝統行事や臨海学校のプログラムとして海などでの遠泳寒中水泳を行っているところもある。また夏休み林間学校臨海学校のプログラムに川や海での水泳・水遊びを入れているところも多い。更に夏休み期間中、学校のプールを児童・生徒のために開放している所もかつては多く、小学校では終業式の日にプールカードを配布して夏休み中のプール開放に積極的に参加するよう呼びかける所もあった。プール開放の監視員はPTA会員の保護者が持ち回りで担う。

学校のプールは多くのところで屋外にあり、実施できるかどうかは天候に大きく左右される。小学校では雨天中止、中学校以上では雷鳴が鳴ったら中止としている他、水温が一定の基準に達しない場合にも中止となる。実施時期の関係で寒い思いをしたという人は多いのではないだろうか。屋内設置の温水プールを備えている学校はごく一部の公立学校と私立学校ぐらいである。

中学校以上では何故か水泳の授業を欠席する事に対して厳しい対応を執っている所があり[4]

  • 1回見学するごとに放課後や夏休み期間中などに補習を受けることを義務付け。補習を受けなければ体育の成績は1(単位不認定)
  • 水泳の授業に出席できない理由を生徒手帳に書き、親の署名捺印を貰って教員へ提出
  • 水泳の授業を見学した場合、校庭での走り込み、プールサイドで授業中筋力トレーニングなどを義務付け
  • 月の障りを理由とする見学は1回までしか認めない

など理不尽なルールが存在する。

2021年頃から学校設置のプールを使用せず、自治体または民間の運営する屋内プールへ児童・生徒を移動させて水泳の授業を行う所が増えだした。学校のプールを使用しないことで維持運営にかかるコストの低減、天候に左右されず水温も安定し、更に壁に囲まれているので覗き込まれるリスクも減ることで児童・生徒の見学が減り、授業を計画通りに進めやすくなる、通年で水泳が行えるなどのメリットがある。[5]
またプール修繕の予算を確保できず、代替となる公共のプールがない事などを理由に水泳の実技を廃止する自治体も出ている。

日本は水泳を体育で経験するために泳げる人の割合が多いと言われるが、泳げないカナヅチは一定数存在する。水泳の実技の廃止反対を訴える人の中には洪水や津波に襲われた時、海難事故水難事故の際にカナヅチだと困るから実技が必要だという主張をする人もいるが、学校の体育は長年速く泳ぐことを重視した指導しかしておらず、更に自然の水域では泳いで陸に辿り着く事や救助を待つ事はまず不可能なため、水泳の実技を学校で続ける理由にはならないという反論もある。大事なのは救助が到着するまで水面に浮くことであり、2020年施行の小学校学習指導要領では、高学年の水泳で溺水事故を防ぐ『安全確保につながる運動』がようやく明示された。

なお学校のプールは水泳教育としての利用だけでなく、消防水利としての役割も持たせられている。使用しない時期にも水が張られているのはプール壁面の保護だけでなく、消防水利として常に水を蓄えておくよう定められているからで、清掃などで水を抜く場合は所轄の消防署に前もって連絡しなければならない。

学校外における水泳教育[編集]

地域のプールなどでスイミングスクールが開講されているところは多く、子供がスイミングスクールに行っている間に家事に専念できる、子供の体力を削りやすい、スポーツ少年団より手軽で保護者の金銭的負担も小さいなどの理由から子供の習い事としてスイミングスクールに通わせる保護者は数多い。

また日本赤十字社が水難事故を防ぎつつ、安全な泳ぎの基本や身を守る方法を習得し、万が一の事故の際の救助・手当法なども習得する水上安全法の講習を行っている他、水難事故の救助などにあたる自衛隊員や消防隊員も水泳教育を受ける。

脚注[編集]