日本国憲法

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日本国憲法(にほんこくけんぽう)は1947年に施行された日本憲法である。

目次

概要[編集]

前文と計103条の条文が明文化された成文憲法であり、改正条件が厳しい硬性憲法であることが特徴である。また、「天皇は国政に関する機能を有しない」とされている象徴天皇制を取っていること、三権分立を明確に位置付けていること、交戦権の否認と戦力の放棄という形で平和主義を謳っていること、基本的人権を尊重するとしていることなどが戦前の明治憲法と異なる特徴である。

一方で上諭や議会の構成(二院制)などに明治憲法との連続性を残している部分も見られる。

日本国憲法の改正には衆議院参議院の両院で総議員の3分の2以上の賛成によって国会が憲法改正を発議した上、国民投票で過半数の賛成を必要とする厳しい条件がある。このためもあり、施行されてから70年にわたり改正は1度もなされていない。

よく日本国憲法は当時の占領軍による「押しつけ憲法」などと言われているが、日本国憲法の草案は鈴木安蔵ら有識者7名による民間組織・「憲法研究会」が作成したもので、これを当時の占領軍が大いに参考してアメリカ側草案(マッカーサー草案)として成立したもので、必ずしも占領軍の押しつけによるものではない。

成立[編集]

第二次世界大戦に敗北した日本が占領軍であるGHQの指示を受けて大日本帝国憲法を改正して成立させたものである。当初日本政府は民主的な政治体制を復活させるにあたって憲法改正は最小限で十分だと考えていた。そのため政府の憲法問題調査委員会で作成された改正草案[1]はほとんど帝国憲法と変わらないものだった。しかし中途半端な改正がイギリスソ連などの他の連合国の反発を招き、これらの国が憲法の再改正と天皇制廃止を要求してくる可能性をGHQが懸念したため[2]、反発を招かない「完璧な」憲法にするためにGHQが独自に改正案を作ることとなった。作成に当たっては民間で高野岩三郎らが研究していた憲法研究会の案を参考にGHQ内部で試案を7日間で仕上げ、日本政府に提示した。日本政府では急進的な改正案に反発する声もあったが、結局天皇制維持のためにやむを得ずこの案をベースに改正案を作り替えた。

その後、帝国議会で審議が行われ、修正された上で1946年10月6日貴族院で、10月7日衆議院で可決されて成立し、11月3日に公布され、翌1947年5月3日に施行された。現在5月3日は憲法記念日として祝日になっている。

成立過程年表[編集]

  • 1945年
    • 12月26日 - 日本側が草案した新憲法の「憲法草案要綱」が首相官邸の秘書官に渡され、GHQにも提出される。
  • 1946年
    • 2月12日 - GHQ側の「マッカーサー草案」が完成する。
    • 2月13日 - 日本政府に対してマッカーサー草案が提案される。
    • 3月6日 - GHQ草案を受け入れて「憲法改正草案要綱」が完成する。
    • 11月3日 - 日本国憲法が公布される。
  • 1947年

条文[編集]

日本国憲法の三大原理に「国民主権」、「基本的人権の尊重」、「平和主義」の3つが挙げられている。

国民主権[編集]

前文 ...ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。...[3]

第1条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。[4]

日本国憲法には国民主権を明確に定めた条文は存在せず、前文および第一条を根拠とする解釈が通例である。この解釈をもって国政に関する決定権が国民にあるとする根拠になっている。一方明治憲法では日本国憲法とは大きく異なり、天皇主権が明確にされていた。

基本的人権の尊重[編集]

第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。[5]

第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。[6]

第13条 すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。[7]

第11条は人権尊重の原則を掲げたもので、12条以下に具体的な人権に関する規定が定められている。第11条は第97条にも類似の規定がある。明治憲法下では臣民(国民)の権利に「法律の留保」という比較的幅の広い制限が掛けられていたが、現行憲法では削除され、新たに「公共の福祉」という概念が設けられた。これは人権相互の衝突の場合のみ人権の制限を認める条項と解釈されている。

平和主義[編集]

前文 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。[8]

第9条 1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。[9]

日本国憲法の平和主義に関する条文は前文と第9条から構成されている。前文では「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」と謳い、第9条では戦争の放棄(第1項)、戦力の不保持(第2項前段)と交戦権の否認(第2項後段)が定められている。9条の条文は世界情勢に応じて幾度か解釈が変更されているが現在は「9条は戦争を放棄しているが自衛のための戦争までは放棄していない」という解釈になっている。これは9条2項の初めの「前項の目的を達するため」の字句を解釈したものである。つまり「前項の目的(国際紛争を解決する手段としての戦争の放棄)を達するために戦力を放棄するのであり、自衛のための戦力まで放棄するわけではない」ということである。この字句は帝国議会における改正議論の中で行われたいわゆる芦田修正によって挿入されたものである。

各章概要[編集]

  • 第1章 天皇 - 天皇の位置づけと機能について言及している。
  • 第2章 戦争の放棄 - 戦争の放棄と戦力の不保持を定めている。
  • 第3章 国民の権利及び義務 - 30条にわたって社会権生存権を軸とした国民の義務と権利について言及している。
  • 第4章 国会 - 国会の権限を規定している。
  • 第5章 内閣 - 国務大臣文民規定(第66条)など内閣について定めている。
  • 第6章 司法 - 最高裁判所や裁判官の独立について定めている。
  • 第7章 財政 - 国家財政の規範が規定されている。
  • 第8章 地方自治 - 地方公共団体についての規定。
  • 第9章 改正 - 改正要件について言及している。
  • 第10章 最高法規 - 憲法があらゆる法律に優越していることが宣言されている。
  • 第11章 補則 - 施行日などの細則

全文[編集]

(前󠄁文󠄁)[編集]

日本國民は、正當に選󠄁擧された國會における代表者を通󠄁じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸國民との協和による成󠄁果と、わが國全󠄁土にわたつて自由のもたらす惠澤を確保し、政府の行爲によつて再び戰爭の慘禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主權が國民に存することを宣言し、この憲󠄁法を確定する。そもそも國政は、國民の嚴肅な信託によるものであつて、その權威は國民に由來し、その權力は國民の代表者がこれを行使󠄁し、その福利は國民がこれを享受する。これは人類普遍󠄁の原理であり、この憲󠄁法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲󠄁法、法令及び詔勅を排除する。

日本國民は、恒久の平󠄁和を念願し、人間相互の關係を支配する崇高な理想を深く自覺するのであつて、平󠄁和を愛する諸國民の公󠄁正と信義に信賴して、われらの安全󠄁と生存を保持しようと決意した。われらは、平󠄁和を維持し、專制と隷從、壓迫󠄁と偏狹を地上から永遠󠄁に除去しようと努めてゐる國際社會において、名譽ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全󠄁世界の國民が、ひとしく恐󠄁怖と缺乏から免かれ、平󠄁和のうちに生存する權利を有することを確認󠄁する。

われらは、いづれの國家も、自國のことのみに專念して他國を無視してはならないのであつて、政治道󠄁德の法則は、普遍󠄁的なものであり、この法則に從ふことは、自國の主權を維持し、他國と對等關係に立たうとする各國の責務であると信ずる。

日本國民は、國家の名譽にかけ、全󠄁力をあげてこの崇高な理想と目的を達󠄁成󠄁することを誓ふ。

第一章 天皇[編集]

第一條[編集]

天皇は、日本國の象徵であり日本國民統合の象徵であつて、この地位は、主權の存する日本國民の總意に基く。

第二條[編集]

皇位は、世襲のものであつて、國會の議決した皇室典範の定めるところにより、これを繼承する。

第三條[編集]

天皇の國事に關するすべての行爲には、內閣の助言と承認󠄁を必要󠄁とし、內閣が、その責任を負ふ。

第四條[編集]

  1. 天皇は、この憲󠄁法の定める國事に關する行爲のみを行ひ、國政に關する權能を有しない。
  2. 天皇は、法律の定めるところにより、その國事に關する行爲を委任することができる。

第五條[編集]

皇室典範の定めるところにより攝政を置くときは、攝政は、天皇の名でその國事に關する行爲を行ふ。この場合には、前󠄁條第一項の規定を準用する。

第六條[編集]

  1. 天皇は、國會の指名に基いて、內閣總理大臣を任命する。
  2. 天皇は、內閣の指名に基いて、最高裁判󠄁所󠄁の長たる裁判󠄁官を任命する。

第七條[編集]

天皇は、內閣の助言と承認󠄁により、國民のために、左の國事に關する行爲を行ふ。

一 憲󠄁法改正、法律、政令及び條約を公󠄁布すること。
二 國會を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 國會議員の總選󠄁擧の施行を公󠄁示すること。
五 國務大臣及び法律の定めるその他の官吏󠄁の任免竝びに全權委任狀及び大使󠄁及び公󠄁使󠄁の信任狀を認󠄁證すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復權を認󠄁證すること。
七 榮典を授與すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交󠄁文󠄁書を認󠄁證すること。
九 外國の大使󠄁及び公󠄁使󠄁を接受すること。
十 儀式を行ふこと。

第八條[編集]

皇室に財產を讓り渡し、又は皇室が、財產を讓り受け、若しくは賜與することは、國會の議決に基かなければならない。

第二章 戰爭の放棄[編集]

第九條[編集]

  1. 日本國民は、正義と秩序を基調とする國際平和を誠實に希求し、國權の發動たる戰爭と、武力による威嚇又は武力の行使は、國際紛爭を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
  2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戰力は、これを保持しない。國の交戰權は、これを認めない。

第三章 國民の權利及び義務[編集]

第十條[編集]

日本國民たる要件は、法律でこれを定める。

第十一條[編集]

國民は、すべての基本的人權の享有を妨げられない。この憲法が國民に保障する基本的人權は、侵すことのできない永久の權利として、現在及び將來の國民に與へられる。

第十二條[編集]

この憲法が國民に保障する自由及び權利は、國民の不斷の努力によつて、これを保持しなければならない。又、國民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

第十三條[編集]

すべて國民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に對する國民の權利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の國政の上で、最大の尊重を必要とする。

第十四條[編集]

  1. すべて國民は、法の下に平等であつて、人種、信條、性別、社會的身分又は門地により、政治的、經濟的又は社會的關係において、差別されない。
  2. 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
  3. 榮譽、勳章その他の榮典の授與は、いかなる特權も伴はない。榮典の授與は、現にこれを有し、又は將來これを受ける者の一代に限り、その效力を有する。

第十五條[編集]

  1. 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、國民固有の權利である。
  2. すべて公務員は、全體の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
  3. 公務員の選擧については、成年者による普通選擧を保障する。
  4. すべて選擧における投票の祕密は、これを侵してはならない。選擧人は、その選擇に關し公的にも私的にも責任を問はれない。

第十六條[編集]

何人も、損害の救濟、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廢止又は改正その他の事項に關し、平穩に請願する權利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

第十七條[編集]

何人も、公務員の不法行爲により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、國又は公共團體に、その賠償を求めることができる。

第十八條[編集]

何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る處罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

第十九條[編集]

思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

第二十條[編集]

  1. 信敎の自由は、何人に對してもこれを保障する。いかなる宗敎團體も、國から特權を受け、又は政治上の權力を行使してはならない。
  2. 何人も、宗敎上の行爲、祝典、儀式又は行事に參加することを强制されない。
  3. 國及びその機關は、宗敎敎育その他いかなる宗敎的活動もしてはならない。

第二十一條[編集]

  1. 集會、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
  2. 檢閱は、これをしてはならない。通信の祕密は、これを侵してはならない。

第二十二條[編集]

  1. 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移轉及び職業選擇の自由を有する。
  2. 何人も、外國に移住し、又は國籍を離脫する自由を侵されない。

第二十三條[編集]

學問の自由は、これを保障する。

第二十四條[編集]

  1. 婚姻は、兩性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の權利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
  2. 配偶者の選擇、財產權、相續、住居の選定、離婚竝びに婚姻及び家族に關するその他の事項に關しては、法律は、個人の尊嚴と兩性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

第二十五條[編集]

  1. すべて國民は、健康で文化的な最低限度の生活を營む權利を有する。
  2. 國は、すべての生活部面について、社會福祉、社會保障及び公衆衞生の向上及び增進に努めなければならない。

第二十六條[編集]

  1. すべて國民は、法律の定めるところにより、その能力に應じて、ひとしく敎育を受ける權利を有する。
  2. すべて國民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通敎育を受けさせる義務を負ふ。義務敎育は、これを無償とする。

第二十七條[編集]

  1. すべて國民は、勤勞の權利を有し、義務を負ふ。
  2. 賃金、就業時間、休息その他の勤勞條件に關する基準は、法律でこれを定める。
  3. 兒童は、これを酷使してはならない。

第二十八條[編集]

勤勞者の團結する權利及び團體交涉その他の團體行動をする權利は、これを保障する。

第二十九條[編集]

  1. 財產權は、これを侵してはならない。
  2. 財產權の內容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
  3. 私有財產は、正當な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

第三十條[編集]

國民は、法律の定めるところにより、納稅の義務を負ふ。

第三十一條[編集]

何人も、法律の定める手續によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

第三十二條[編集]

何人も、裁判所において裁判を受ける權利を奪はれない。

第三十三條[編集]

何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、權限を有する司法官憲が發し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令狀によらなければ、逮捕されない。

第三十四條[編集]

何人も理由を直ちに吿げられ、且つ、直ちに辯護人に依賴する權利を與へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正當な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその辯護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

第三十五條[編集]

  1. 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、搜索及び押收を受けることのない權利は、第三十三條の場合を除いては、正當な理由に基いて發せられ、且つ搜索する場所及び押收する物を明示する令狀がなければ、侵されない。
  2. 搜索又は押收は、權限を有する司法官憲が發する各別の令狀により、これを行ふ。

第三十六條[編集]

公務員による拷問及び殘虐な刑罰は、絕對にこれを禁ずる。

第三十七條[編集]

  1. すべて刑事事件においては、被吿人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける權利を有する。
  2. 刑事被吿人は、すべての證人に對して審問する機會を充分に與へられ、又、公費で自己のために强制的手續により證人を求める權利を有する。
  3. 刑事被吿人は、いかなる場合にも、資格を有する辯護人を依賴することができる。被吿人が自らこれを依賴することができないときは、國でこれを附する。

第三十八條[編集]

  1. 何人も、自己に不利益な供述を强要されない。
  2. 强制、拷問若しくは脅迫による自白又は不當に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを證據とすることができない。
  3. 何人も、自己に不利益な唯一の證據が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

第三十九條[編集]

何人も、實行の時に適法であつた行爲又は旣に無罪とされた行爲については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

第四十條[編集]

何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、國にその補償を求めることができる。

第四章 國會[編集]

第四十一條[編集]

國會は、國權の最高機關であつて、國の唯一の立法機關である。

第四十二條[編集]

國會は、衆議院及び參議院の兩議院でこれを構成する。

第四十三條[編集]

  1. 兩議院は、全國民を代表する選擧された議員でこれを組織する。
  2. 兩議院の議員の定數は、法律でこれを定める。

第四十四條[編集]

兩議院の議員及びその選擧人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信條、性別、社會的身分、門地、敎育、財產又は收入によつて差別してはならない。

第四十五條[編集]

衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間滿了前に終了する。

第四十六條[編集]

參議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半數を改選する。

第四十七條[編集]

選擧區、投票の方法その他兩議院の議員の選擧に關する事項は、法律でこれを定める。

第四十八條[編集]

何人も、同時に兩議院の議員たることはできない。

第四十九條[編集]

兩議院の議員は、法律の定めるところにより、國庫から相當額の歲費を受ける。

第五十條[編集]

兩議院の議員は、法律の定める場合を除いては、國會の會期中逮捕されず、會期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、會期中これを釋放しなければならない。

第五十一條[編集]

兩議院の議員は、議院で行つた演說、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。

第五十二條[編集]

國會の常會は、每年一囘これを召集する。

第五十三條[編集]

內閣は、國會の臨時會の召集を決定することができる。いづれかの議院の總議員の四分の一以上の要求があれば、內閣は、その召集を決定しなければならない。

第五十四條[編集]

  1. 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以內に、衆議院議員の總選擧を行ひ、その選擧の日から三十日以內に、國會を召集しなければならない。
  2. 衆議院が解散されたときは、參議院は、同時に閉會となる。但し、內閣は、國に緊急の必要があるときは、參議院の緊急集會を求めることができる。
  3. 前項但書の緊急集會において採られた措置は、臨時のものであつて、次の國會開會の後十日以內に、衆議院の同意がない場合には、その效力を失ふ。

第五十五條[編集]

兩議院は、各々その議員の資格に關する爭訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多數による議決を必要とする。

第五十六條[編集]

  1. 兩議院は、各々その總議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
  2. 兩議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半數でこれを決し、可否同數のときは、議長の決するところによる。

第五十七條[編集]

  1. 兩議院の會議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多數で議決したときは、祕密會を開くことができる。
  2. 兩議院は、各々その會議の記錄を保存し、祕密會の記錄の中で特に祕密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。
  3. 出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを會議錄に記載しなければならない。

第五十八條[編集]

  1. 兩議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
  2. 兩議院は、各々その會議その他の手續及び內部の規律に關する規則を定め、又、院內の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多數による議決を必要とする。

第五十九條[編集]

  1. 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、兩議院で可決したとき法律となる。
  2. 衆議院で可決し、參議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多數で再び可決したときは、法律となる。
  3. 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、兩議院の協議會を開くことを求めることを妨げない。
  4. 參議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、國會休會中の期間を除いて六十日以內に、議決しないときは、衆議院は、參議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。

第六十條[編集]

  1. 豫算は、さきに衆議院に提出しなければならない。
  2. 豫算について、參議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、兩議院の協議會を開いても意見が一致しないとき、又は參議院が、衆議院の可決した豫算を受け取つた後、國會休會中の期間を除いて三十日以內に、議決しないときは、衆議院の議決を國會の議決とする。

第六十一條[編集]

條約の締結に必要な國會の承認については、前條第二項の規定を準用する。

第六十二條[編集]

兩議院は、各々國政に關する調査を行ひ、これに關して、證人の出頭及び證言竝びに記錄の提出を要求することができる。

第六十三條[編集]

內閣總理大臣その他の國務大臣は、兩議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について發言するため議院に出席することができる。又、答辯又は說明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

第六十四條[編集]

  1. 國會は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、兩議院の議員で組織する彈劾裁判所を設ける。
  2. 彈劾に關する事項は、法律でこれを定める。

第五章 內閣[編集]

第六十五條[編集]

行政權は、內閣に屬する。

第六十六條[編集]

  1. 內閣は、法律の定めるところにより、その首長たる內閣總理大臣及びその他の國務大臣でこれを組織する。
  2. 內閣總理大臣その他の國務大臣は、文民でなければならない。
  3. 內閣は、行政權の行使について、國會に對し連帶して責任を負ふ。

第六十七條[編集]

  1. 內閣總理大臣は、國會議員の中から國會の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。
  2. 衆議院と參議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、兩議院の協議會を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、國會休會中の期間を除いて十日以內に、參議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を國會の議決とする。

第六十八條[編集]

  1. 內閣總理大臣は、國務大臣を任命する。但し、その過半數は、國會議員の中から選ばれなければならない。
  2. 內閣總理大臣は、任意に國務大臣を罷免することができる。

第六十九條[編集]

內閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以內に衆議院が解散されない限り、總辭職をしなければならない。

第七十條[編集]

內閣總理大臣が缺けたとき、又は衆議院議員總選擧の後に初めて國會の召集があつたときは、內閣は、總辭職をしなければならない。

第七十一條[編集]

前二條の場合には、內閣は、あらたに內閣總理大臣が任命されるまで引き續きその職務を行ふ。

第七十二條[編集]

內閣總理大臣は、內閣を代表して議案を國會に提出し、一般國務及び外交關係について國會に報吿し、竝びに行政各部を指揮監督する。

第七十三條[編集]

內閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。

一 法律を誠實に執行し、國務を總理すること。
二 外交關係を處理すること。
三 條約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、國會の承認を經ることを必要とする。
四 法律の定める基準に從ひ、官吏に關する事務を掌理すること。
五 豫算を作成して國會に提出すること。
六 この憲法及び法律の規定を實施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復權を決定すること。

第七十四條[編集]

法律及び政令には、すべて主任の國務大臣が署名し、內閣總理大臣が連署することを必要とする。

第七十五條[編集]

國務大臣は、その在任中、內閣總理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の權利は、害されない。

第六章 司法[編集]

第七十六條[編集]

  1. すべて司法權は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に屬する。
  2. 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機關は、終審として裁判を行ふことができない。
  3. すべて裁判官は、その良心に從ひ獨立してその職權を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。

第七十七條[編集]

  1. 最高裁判所は、訴訟に關する手續、辯護士、裁判所の內部規律及び司法事務處理に關する事項について、規則を定める權限を有する。
  2. 檢察官は、最高裁判所の定める規則に從はなければならない。
  3. 最高裁判所は、下級裁判所に關する規則を定める權限を、下級裁判所に委任することができる。

第七十八條[編集]

裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の彈劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒處分は、行政機關がこれを行ふことはできない。

第七十九條[編集]

  1. 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員數その他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、內閣でこれを任命する。
  2. 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員總選擧の際國民の審査に付し、その後十年を經過した後初めて行はれる衆議院議員總選擧の際更に審査に付し、その後も同樣とする。
  3. 前項の場合において、投票者の多數が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
  4. 審査に關する事項は、法律でこれを定める。
  5. 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齡に達した時に退官する。
  6. 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相當額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

第八十條[編集]

  1. 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、內閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齡に達した時には退官する。
  2. 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相當額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

第八十一條[編集]

最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は處分が憲法に適合するかしないかを決定する權限を有する終審裁判所である。

第八十二條[編集]

  1. 裁判の對審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
  2. 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、對審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に關する犯罪又はこの憲法第三章で保障する國民の權利が問題となつてゐる事件の對審は、常にこれを公開しなければならない。

第七章 財政[編集]

第八十三條[編集]

國の財政を處理する權限は、國會の議決に基いて、これを行使しなければならない。

第八十四條[編集]

あらたに租稅を課し、又は現行の租稅を變更するには、法律又は法律の定める條件によることを必要とする。

第八十五條[編集]

國費を支出し、又は國が債務を負擔するには、國會の議決に基くことを必要とする。

第八十六條[編集]

內閣は、每會計年度の豫算を作成し、國會に提出して、その審議を受け議決を經なければならない。

第八十七條[編集]

  1. 豫見し難い豫算の不足に充てるため、國會の議決に基いて豫備費を設け、內閣の責任でこれを支出することができる。
  2. すべて豫備費の支出については、內閣は、事後に國會の承諾を得なければならない。

第八十八條[編集]

すべて皇室財產は、國に屬する。すべて皇室の費用は、豫算に計上して國會の議決を經なければならない。

第八十九條[編集]

公金その他の公の財產は、宗敎上の組織若しくは團體の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に屬しない慈善、敎育若しくは博愛の事業に對し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

第九十條[編集]

  1. 國の收入支出の決算は、すべて每年會計檢査院がこれを檢査し、內閣は、次の年度に、その檢査報吿とともに、これを國會に提出しなければならない。
  2. 會計檢査院の組織及び權限は、法律でこれを定める。

第九十一條[編集]

內閣は、國會及び國民に對し、定期に、少くとも每年一囘、國の財政狀況について報吿しなければならない。

第八章 地方自治[編集]

第九十二條[編集]

地方公共團體の組織及び運營に關する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。

第九十三條[編集]

  1. 地方公共團體には、法律の定めるところにより、その議事機關として議會を設置する。
  2. 地方公共團體の長、その議會の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共團體の住民が、直接これを選擧する。

第九十四條[編集]

地方公共團體は、その財產を管理し、事務を處理し、及び行政を執行する權能を有し、法律の範圍內で條例を制定することができる。

第九十五條[編集]

一の地方公共團體のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共團體の住民の投票においてその過半數の同意を得なければ、國會は、これを制定することができない。

第九章 改正[編集]

第九十六條[編集]

  1. この憲法の改正は、各議院の總議員の三分の二以上の贊成で、國會が、これを發議し、國民に提案してその承認を經なければならない。この承認には、特別の國民投票又は國會の定める選擧の際行はれる投票において、その過半數の贊成を必要とする。
  2. 憲法改正について前項の承認を經たときは、天皇は、國民の名で、この憲法と一體を成すものとして、直ちにこれを公布する。

第十章 最高法規[編集]

第九十七條[編集]

この憲法が日本國民に保障する基本的人權は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの權利は、過去幾多の試鍊に堪へ、現在及び將來の國民に對し、侵すことのできない永久の權利として信託されたものである。

第九十八條[編集]

  1. この憲法は、國の最高法規であつて、その條規に反する法律、命令、詔勅及び國務に關するその他の行爲の全部又は一部は、その效力を有しない。
  2. 日本國が締結した條約及び確立された國際法規は、これを誠實に遵守することを必要とする。

第九十九條[編集]

天皇又は攝政及び國務大臣、國會議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

第十一章 補則[編集]

第百條[編集]

  1. この憲法は、公布の日から起算して六箇月を經過した日から、これを施行する。
  2. この憲法を施行するために必要な法律の制定、參議院議員の選擧及び國會召集の手續竝びにこの憲法を施行するために必要な準備手續は、前項の期日よりも前に、これを行ふことができる。

第百一條[編集]

この憲法施行の際、參議院がまだ成立してゐないときは、その成立するまでの間、衆議院は、國會としての權限を行ふ。

第百二條[編集]

この憲法による第一期の參議院議員のうち、その半數の者の任期は、これを三年とする。その議員は、法律の定めるところにより、これを定める。

第百三條[編集]

この憲法施行の際現に在職する國務大臣、衆議院議員及び裁判官竝びにその他の公務員で、その地位に相應する地位がこの憲法で認められてゐる者は、法律で特別の定をした場合を除いては、この憲法施行のため、當然にはその地位を失ふことはない。但し、この憲法によつて、後任者が選擧又は任命されたときは、當然その地位を失ふ。

注釈[編集]

関連項目[編集]