高橋洸

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高橋 洸(たかはし こう、1925年8月29日[1] - )は、経済学者。

経歴・人物[編集]

東京都豊島区南長崎生まれ。旧制武蔵高等学校卒業[2]。1947年東京大学経済学部卒業。日本評論社『経済評論』編集部に入社。1952年高崎市立短期大学助教授[1]。のち明治大学経営学部教授[3]。1977年「日本的労資関係の研究」で経営学博士(明治大学)。

旧制武蔵高等学校で兼任講師として「法制経済」を担当していた大河内一男の講義を受け[2]、東京大学経済学部で大河内一男の演習に参加した。敗戦後、薄信一らが組織した学生社会科学研究会に入会し、浮浪者と濠舎生活者の実態調査に参加した[4]。大河内の演習参加生の大塚斌、高橋洸、浜誠闇市の実態調査を行い、論文「戦後における露店市場」(大河内一男編『戦後社会の実態分析』日本評論社、1950年)にまとめた。同論文は「戦後のヤミ市の実態を知るうえで最も貴重な文献」ともいわれる[5]

日本人文学会日本ユネスコ国内委員会の委託を受け、1954年度に実施した近代技術の社会的影響に関する実態調査の安中地区調査班(島崎稔班長)の班員だった[6]。安中調査は高崎市立短期大学の島崎稔が、学生らが東邦亜鉛安中製錬所に勤めていたこと、同僚だった高橋洸と1953年の東邦亜鉛安中争議とともに関心を共有したことから始めたもので、東邦亜鉛安中製錬所による鉱害と農民・労働者らの動きを取り上げている[7]。日本人文科学会編『近代鉱工業と地域社会の展開』(東京大学出版会、1955年)に収録された報告書は「社会学の手法を用いて公害を研究した戦後最初の仕事」といわれる[7]

長幸男によると、内田義彦らが山田盛太郎を学長にして高崎市立短期大学を4年制の大学にしようとしたが、学内騒動になってそのプランが潰れ、東京から来ていた大石眞三郎内藤則邦松浦高嶺、島崎稔、石本美代子(島崎美代子)、高橋洸、長幸男らは東京に引き上げたという[8]

大友福夫の大河内一男批判、藤田若雄の大河内・大友批判を踏まえ[9]、社会政策学会の大会報告「所謂「企業別組合」について――日本の労働組合と封建性」(社会政策学会編『賃労働における封建性』有斐閣、1955年)で大河内一男の企業別組合論を批判した。日本の労働組合が企業別組合になった理由として、敗戦直後のさし迫った状況では個別に説得して組合に加入させるという悠長な組織化はできず、工場、職場を単位とした一括組織化が進められたこと、資本家階級が「上からの組織化」を進めたこと、労働者階級もこれに対抗して「下からの組織化」を進める必要性があったことをあげた[10]

著書[編集]

単著[編集]

  • 『日本的労資関係の研究――「企業別組合」の構造と機能を中心として』(未來社、1965年、増補版1970年)
  • 『日本の賃金管理――賃金政策の展開と賃金管理の構造』(泉文堂、1965年)

共著[編集]

編著[編集]

  • 『講座 現代賃金論(全3巻)』(高木督夫、金子ハルオ共編、青木書店、1968年)
  • 『日本労務管理史 3 労使関係』(小松隆二、二神恭一共編著、中央経済社[日本労務学会経営労働双書]、1988年)
  • 『現代日本の賃金管理』(編、日本評論社、1989年)

訳書[編集]

  • シドニー・ウェッブ、ビアトリス・ウェッブ『労働組合運動の歴史(上・下)』(荒畑寒村監訳、飯田鼎共訳、日本労働協会、1973年)

出典[編集]

  1. a b 『労働人事名鑑 改訂版』社会労働協会、1960年、961-962頁
  2. a b 高橋洸「淡交如水」、大河内演習同窓会編『わが師大河内一男』大河内演習同窓会、1986年
  3. 明治大学社会科学研究所編『鉄鋼業の合理化と労働――八幡製鉄の実態分析』白桃書房、1962年
  4. 高橋洸「学生社研の先輩」、氏原正治郎編者代表『薄信一人と憶い出』製作:東京大学出版会、1969年
  5. 西田禮一郎「ヤミ市名物残飯シチュー」、『歴史への招待 ㉑ 昭和編』日本放送出版協会、1982年、211頁
  6. 日本人文科学会編『近代鉱工業と地域社会の展開』東京大学出版会、1955年
  7. a b 友澤悠季「公害反対運動と労働運動の接点をめぐる試論 : 1950~73年に焦点をあててPDF」『大原社会問題研究所雑誌』No.713、2018年3月
  8. 長幸男「内田義彦と日本の経済思想像」『専修大学社会科学研究所月報』No.333、1991年3月
  9. 住谷悦治、山口光朔、小山仁示、浅田光輝、小山弘健編『講座・日本社会思想史 5 戦後日本の思想対立』芳賀書店、1967年、189頁
  10. 二村一夫企業別組合の歴史的背景〔補訂版〕