石川憲彦

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石川 憲彦(いしかわ のりひこ、1946年11月10日 - )は、日本の児童精神科・小児科医。

東京大学医学部附属病院小児科助手、同精神神経科助手、マルタ大学児童精神科客員研究員[1]静岡大学教授(保健管理センター所長)[2]、林試の森クリニック院長を歴任。専門は小児神経学、児童精神医学[1]。妻の石川和恵は『マルタ島に魅せられて――地中海の小さな国』(晶文社、1997年)の著者[3]

略歴[編集]

兵庫県神戸市生まれ。1973年東京大学医学部卒業[1]。東大医学部で青医連運動、赤レンガ闘争に参加[4]。卒業後は小児科医となり、東京大学病院、藤枝市立志太病院に勤務[1]。1975年から東京大学病院で小児科臨床、特に障害児医療に携わりつつ、障害児を普通学校へという共生・共学の運動に関与。1977年に子どもやその親たちと「医療と教育を考える会」を結成し、「治療キャンプ」などの活動を2015年まで続ける。1984年頃から不登校について発言し始める。1987年に患児らが成人したことなどから精神科医となり、東大病院精神神経科に異動[5]。1989年からNHKラジオ「子どもと教育電話相談」で回答者を務める[3]

1994年から2年間、マルタ大学医学部で社会病理・教育臨床の研究と社会医学的調査を行う[6][7]。帰国後、1996年から静岡大学保健管理センターで大学生の精神保健を担当。同センター助教授[1]、教授、所長を歴任。2004年東京都目黒区に「林試の森クリニック」を開業[6]。NHKラジオ「こどもの心相談」アドバイザーに復帰[3][8]。2012年時点で「障害児を普通学校へ・全国連絡会」東京都・世話人[9]、2016年時点で雑誌『ちいさい・おおきい・よわい・つよい』編集協力人[5]。2018年3月「林試の森クリニック」院長を退任[10]

主張[編集]

  • 発達障害者支援法は当事者不在で成立したと批判している[11]。1980年代に出てきた発達障害という概念は、それぞれの定義が異なり、定義自体も変化しているため、増減は量れない。社会の隙間から漏れる人が多いことが「発達障害が増えた」という声と関係しているようであり、情報産業社会ではフィーリングを読み解くことを求められ、ADHDの衝動的な行動や集中力や落ち着きの無さのような自然界では必要な能力の学習は難しくなっていると述べている[12]
  • 反精神医学について、その思想には共鳴するが、「医者は医学的見解のベースに立つべき」だとしている[5]
  • 歴史的に見てもオルタナティブ教育は一部の例外を除いてエリート養成に転化するとして、教育機会確保法に反対している[5][13]

評価[編集]

社会学者の立岩真也は、山下恒男の『反発達論』(1977年)や篠原睦治の『「障害児の教育権」思想批判――関係の創造か、発達の保障か』(1986年)、石川の『治療という幻想――障害の治療からみえること』(1988年)など、養護学校義務化に反対し、義務化に賛成する全障研系の学者を批判した本は「当時それらを読んだ私たちのかなり「根」の部分に影響していると思う」と述べている[14]。環境哲学者の最首悟は、石川の『治療という幻想――障害の治療からみえること』について、「お薦めの本ですここで、石川憲彦が「直り」という言葉を復活させた意義は大きいと思います。」と評している[4]

著書[編集]

単著[編集]

  • 『影と向きあう教育と治療』 光村図書出版(朝日カルチャー叢書)、1984年
  • 『子育ての社会学』 朝日新聞社、1985年/朝日新聞社(朝日文庫)、1990年
  • 『治療という幻想――障害の医療からみえること』 現代書館、1988年
  • 『学校の精神風土』 アドバンテージサーバー(ブックレット生きる)、1994年
  • 『子育ての精神医学――思いこみから自由になるために』 ジャパンマシニスト社(「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」ブックレット)、1996年
  • 『こどもと出会い別れるまで――希望の家族学(1・2)』 ジャパンマシニスト社、2003年
  • 『こども、こころ学――寄添う人になれるはず』 ジャパンマシニスト社、2005年
  • 『キレる子と叱りすぎる親――自由に感情を表現する方法』 創成社(創成社新書)、2010年
  • 『みまもることば――思春期・反抗期になってもいつまでもいつまでも』 ジャパンマシニスト社、2013年
  • 『「精神障害」とはなんだろう?――「てんかん」からそのルーツをたずねて』 ジャパンマシニスト社(「こころ学」シリーズ)、2018年
  • 『「成長」とは「発達」とはなんだろう?――自然治癒力と「場の療法」の可能性』 ジャパンマシニスト社(「こころ学」シリーズ)、2019年

共著[編集]

  • 『子どもの心身症』 小倉清、河合洋、斎藤慶子共著、岩崎学術出版社、1987年
  • 『わが子をどう守るか――不登校・虐待・治療・いじめ・教育・法律』 奥地圭子、阿部知江、石井小夜子、内田良子、山下英三郎、吉峯康博共著、学苑社、1994年
  • 『心の病いはこうしてつくられる――児童青年精神医学の深渕から』 高岡健共著、批評社(メンタルヘルス・ライブラリー)、2006年
  • 『発達障害という希望――診断名にとらわれない新しい生き方』 高岡健共著、雲母書房、2012年

編著[編集]

  • 『子どもたちが語る登校拒否――402人のメッセージ』 内田良子、山下英三郎共編、世織書房、1993年
  • 『親たちが語る登校拒否――108人のノンフィクション』 内田良子、山下英三郎共編、世織書房、1995年
  • 『若ものたちが語る登校拒否――63人の経験』 内田良子、山下英三郎共編、世織書房、1996年
  • 『子どもの脳がねらわれている――今なぜ発達障害なのか』 北村小夜、鳥羽伸子共編著、国民教育文化総合研究所編集、アドバンテージサーバー、2006年

監修[編集]

  • 『きいてみよう障がいってなに?(全5巻)』 ポプラ社、2015年

分担執筆[編集]

  • 山田真編『お医者さんは神様ではない――子どもの健康を考える』筑摩書房、1987年
  • ぐるーぷ・エルソル編『こどものことば――2歳から9歳まで』晶文社、1988年
  • 鑪幹八郎、村上英治、山中康裕編『臨床心理学大系 12 発達障害の心理臨床』金子書房、1990年
  • NHKラジオセンター、NHKプロモーション企画・監修『NHKこどもと教育電話相談』ブロンズ新社、1991年
  • 高岡健編『孤立を恐れるな!――もう一つの「一七歳」論』批評社、2001年、新装増補改訂版2006年
  • 森口秀志、奈浦なほ、川口和正編著『ひきこもり支援ガイド』晶文社、2002年
  • 森田洋司監修、森田洋司、進藤雄三編『シリーズ社会問題研究の最前線 1 医療化のポリティクス――近代医療の地平を問う』学文社、2006年
  • 日本社会臨床学会編『シリーズ「社会臨床の視界」 第2巻 精神科医療――治療・生活・社会』現代書館、2008年
  • 志澤佐夜編『「共に学ぶ」教育のいくさ場――北村小夜の日教組教研・半世紀』現代書館、2010年
  • 静岡大学生涯学習教育研究センター編『いま、再び<いのち>を考える』静岡大学生涯学習教育研究センター(静岡大学公開講座ブックレット)、2012年
  • ローランス・ジロー文、リュシー・デュルビアーノ絵、はな にほんごやく『ルルちゃんのゆびしゃぶり』ジャパンマシニスト社、2014年

脚注[編集]

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 日外アソシエーツ編『新訂 現代日本人名録2002 1.あ~かと』日外アソシエーツ、2002年、525-526頁
  2. 紀田順一郎ほか編『現代日本執筆者大事典 第4期 第1巻(あ~お)』日外アソシエーツ、2003年、216-217頁
  3. 3.0 3.1 3.2 今なぜ発達障害か?Icons-mini-file acrobat.gif PDF 日本教育会館(2011年)
  4. 4.0 4.1 高草木光一編『思想としての「医学概論」――いま「いのち」とどう向き合うか』岩波書店、2013年 arsvi.com
  5. 5.0 5.1 5.2 5.3 #09 石川憲彦さん: 不登校50年証言プロジェクト 全国不登校新聞社(2016年12月8日)
  6. 6.0 6.1 シリーズ【1】「現代の精神医学を理解するために」 全国不登校新聞社
  7. 発達障害という希望―診断名にとらわれない新しい生き方 紀伊國屋書店
  8. 「子どもの心テーマに精神科医が講演 あす東村山で /東京都」『朝日新聞』2008年1月12日付朝刊多摩・1地方27面
  9. 障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2012年10月 308号巻頭文 障害児を普通学校へ・全国連絡会
  10. 「精神障害」とはなんだろう? / 石川 憲彦【著】 紀伊國屋書店ウェブストア
  11. 石川憲彦さんインタビュー 発達障害 全国不登校新聞社(2008年6月30日)
  12. #318 発達障害は本当に増えたと言えるのか? Mammo.tv(2013年)
  13. 【紹介】石川憲彦さんの意見文─「障害児を普通学校へ・全国連絡会」会報より 「不登校・ひきこもりを考える当事者と親の会 ネットワーク」(2015年12月13日)
  14. 立岩真也 もらったものについて・6 arsvi.com

参考文献[編集]

  • 紀田順一郎ほか編 『新現代日本執筆者大事典 第1巻(あ~お)』日外アソシエーツ、1992年

関連項目[編集]

  • 季刊福祉労働 - 1982年から1987年に「「障害」と治療」を連載。1988年『治療という幻想』として刊行。
  • 中島浩籌

外部リンク[編集]