培養線
培養線(ばいようせん)とは、鉄道路線などある特定の基幹的な公共交通機関(幹線、本線)に接続させて輸送を行う副次的な交通機関(支線、枝線、フィーダー路線)の内、基幹的な交通機関に旅客や貨物を集め基幹的な交通機関の輸送を増やし活性化させる(培養する)要素を持っている交通機関を指す。
概要[編集]
微生物の培養に喩え、長距離公共交通機関などを成育させるあるいは成育させられると見込まれている支線交通である。
明治の鉄道草創期の官設鉄道のように幹線交通は長距離の輸送を使命とした。それは、多くの人々にとって「停車場が遠い」ことを意味し、そこまでの交通機関が何もなければ利用が困難となり、輸送が増えない、即ち交通機関として成長しない問題を抱える。
そこで、そうした幹線に接続する支線がそこまでの輸送を担うことで、遠く離れた地域から旅客や貨物が幹線に集まり、幹線が本来の使命を達成し収益も安定するという考えである。その支線こそ幹線を成育させる力を持っているとして、「培養線」という概念ができた。なお、大社線のように、幹線の通過地になることを忌避して培養線を選択したと伝承される路線もある。
幹線側から見れば、培養線が直営であれば更なる収益増も見込める。培養線が第三者による経営であっても、直接の収益にこそならずとも建設費や運営費の負担せずに潜在客層の掘り起こしになるので、得られるメリットは大きい。日本の新幹線に代表されるように幹線は、1960年代後半以降、その使命達成のため直線的な線形の上停車場(鉄道駅)は少なく設置されるのが常となった。
一方支線側から見ると、遠くはなれた幹線を利用することができるようになるため、人の移動が高速・簡便になったり、特産物を広範囲に流通させることができるようになるなど沿線地域の発展が見込める。そのため、鉄道は幹線に接続する支線・枝線が多く作られた歴史があり、さらに鉄道駅に集約する乗合バスや貨物トラック網(通運)も発展してきた。そうした人・物を幹線に集める支線的存在を培養線と呼ぶ。
日本では、旧日本国有鉄道における自動車線の進出条件に「培養」を含む「国鉄自動車の5原則」があった。
なお、幹線と培養線の関係は、何か明確な基準があるわけではなく、時代の変化[注釈 1]や様々な利用形態によって見えにくい場合も生じ、その定義は曖昧になりやすい。
近年はモータリゼーションの進行により地方部を中心に主要駅までのアクセスに自家用車を用いるケースが増加しており、需要の低下した培養線の減便や廃止が行われている他、新幹線の培養線に後退した幹線区[注釈 2]で新在直通のミニ新幹線といった、直通運転による再生が行われたりする[注釈 3]。
盲腸線[編集]
支線の中でも。終着駅で行き止まりになり、鉄道交通が連続しない路線は「盲腸線」と呼ばれる。これには、産業構造の変化や人口減などで収益力・採算性が著しく悪化した、即ち培養機能が低下したニュアンスが強く含まれる。
主な培養線の例[編集]
- 航空に接続するリムジンバス、連絡鉄道など
- 航空の利便性は空港に乗り入れる地上交通の充実度が左右する。
- 新幹線に接続する在来線や高速バス各線
- 幹線鉄道に接続する支線鉄道、地下鉄、路面電車
- 鉄道に接続する路線バス
- 日本の大都市圏では路線バスからののりかえ通勤客が多く鉄道の培養線となっている場合が多い。
関連項目[編集]
脚注[編集]
- 注釈
- 出典