レトロニム
レトロニムとは、新しい種類のものができた時に、それまでにあった物や事象を再命名することをさす言葉である。
概要[編集]
例として、フィルムカメラという言葉はデジタルカメラが登場したことにより生まれたレトロニムである。 それまではカメラといえばフィルムを装填したフィルムカメラが一般的であったため、特に「フィルムカメラ」などと言わずに「カメラ」といえば通じたためである。ほかにも第2次世界大戦の勃発により1914年に勃発した世界規模の戦争が第1次世界大戦と呼ばるようになったり、世代交代により旧型となったものが初代○○などと言われるのもレトロニムであるとされる。
なお、新しいものが誕生した際に、古い方を単に「旧」を付けて呼ぶ場合もよくあるが、このような言葉は通常レトロニムとはみなされない。同様に、単に旧式化したものや登場した当初から呼び名が変わっていないものはレトロニムには該当しない。
レトロニムの例[編集]
鉄道[編集]
鉄道でレトロニムを表す言葉としては、例えば在来線がある。新幹線が開通するまでは、国鉄には、在来の85km/hから100km/h程度の低速や踏切の多い狭軌の鉄道のみしか存在しなかったため、いちいち在来線と区別して呼ぶ必要はなかったが、標準軌を採用し、最高速度200km/h超の新幹線が開通すると、これと従来の鉄道を区別する必要が生じた。
そこで、従来の鉄道を指す「在来線」という言葉が生まれた。技術進歩によって、北越急行のように、狭軌で最高160km/hが実現しても、在来線の定義が縮小することはなく、「フル規格新幹線」への過剰な信仰から並行在来線問題が生じている。
鉄道車両では、電車の吊り掛け駆動車両や気動車の機械式気動車、鉄道施設では、通票(タブレット)閉塞や腕木式信号機がレトロニムなものとされる。
電話[編集]
電話関連のレトロニムな言葉として、手掌サイズに縮小して携帯電話の普及が進んだ際に、それまでに存在した電話を区別する必要が発生して生まれた言葉である固定電話がある。また、スマートフォン(スマホ)の普及で生じた言葉としてガラケーもあるが、割当電波の使用期限後は死語になると思われる。
パソコン[編集]
パソコン関連では、「デスクトップパソコン」が良く使われるレトロニムである。ノートパソコンの登場により、それまでのパソコンはデスクトップパソコンと呼ばれるようになったものである。そのほかにもオンラインという概念が生まれたことによるオフラインという概念。
そして有線マウスや有線キーボードという言葉も赤外線やBluetoothによる無線接続が主流になりつつあるため、それまでの既存デバイスが「有線〇〇」と呼ばれるようになったものである。無線LANに対する有線LANも同様。
なお、かつて普及していたが技術の進歩により主流でなくなったPS/2やフロッピーディスクといったデバイスはレトロニムと混同されやすいが、再命名されていない概念のためレトロニムには該当しない。情報機器における旧式化された技術はレガシーデバイスやレガシーインターフェイスといった概念に分類されるものである。