スパゲッティ
スパゲッティ(イタリア語: spaghetti)とは、主にイタリア料理の前菜とされる麺類のパスタの一種であり、「ロングパスタ」に分類される。
日本において一般的な麺状のパスタ(ロングパスタ)である。スーパーやコンビニでもほぼ間違いなく売っている。茹で時間が長いものが多かったが、近年では早茹でタイプが日本メーカーより出ている。
中華圏における点心に相当する位置にある。一品料理ではなく前菜扱いである。そのためイタリアでは「半分」という注文もできるという。欧米における「スパゲッティ一人前」はかなり多く、メインディッシュに辿りついてデザートに到達してコーヒーに到着するのは苦行に近い。
概要[編集]
日本語ではスパゲティ、スパゲティーやスパゲッティーなどとも表記される。古くは「スパゲチ」の呼称もあった。
うどんや素麺とは異なり、ツユの代わりにソースを絡めて食べられることが多いが、日本国内では「スープパスタ」もある。フォークを使い、巻き取って食べるのが一般的。
種類[編集]
日本では一様に「スパゲッティ」とされるが、イタリアでは麺の太さに細かい規格が定められており[1]、断面形状や太さなどで別のパスタとして分けられている。
「2mm前後が多い」とされるが、0.9mmから2mmを越えるものまでさまざまある。
スパゲットーニ(spaghettoni)[編集]
2mmより太いパスタをいう。
ヴェルミチェッリ(Vermicelli 。バーミセリ)[編集]
太さ2.0mm。「ヴェルミチェッリ」はイタリア語で「長い虫」を意味する「verme」が語源で、極太の麺が特徴的とされる。太く食べ応えがあり、パスタ本来の小麦の味をしっかりと味わうことができるという。茹で時間は14分程度で長め。
スパゲッティーニ(spaghettini)[編集]
2㎜より細い。一般的な「スパゲッティ」は、1.4mmのスパゲッティーニである。
フェデリーニ(fedelini)[編集]
「フェデリーニ」はイタリア語で「糸」や「薄い」という意味で、太さ1.4mm~1.5mmのものをいう。 茹で時間は五分程度で、つるっとした食感の為、冷製パスタなどのあっさりとした味わいや、ペペロンチーノなどのシンプルな味わいのソースと相性がいいという。
カペッリーニ(capellini)[編集]
イタリア語で「髪の毛」という意味で、フェデリーニよりもさらに細い。太さ0.9mm~1.3mm。 本来のイタリア語の発音では「カペッリーニ」だが、日本人はラ行音の前に「ッ」が入る言葉に慣れておらず、「河童」や「田舎っぺ」の影響からなのか「カッペリーニ」という間違った表記が浸透している。
利用[編集]
イタリア共和国の食文化では、前菜として食べるものとされている。
日本におけるスパゲッティ[編集]
日本においては「ミートソース」をかけたスパゲッティや、スパゲッティをトマトケチャップで炒めた「ナポリタン」がスパゲッティ料理の代名詞となっている。時代が下るにつれて、スパゲッティを含むパスタが気軽に手に入るようになり、イタリア料理としてのスパゲッティ料理(ボロネーゼやアーリオ・オーリオ・ペペロンチーニなど)も国内で食べられるようになった。同時に日本で独自に生まれるスパゲッティ料理もあり、たらこスパゲッティや醤油などで味付けした和風スパゲッティが親しまれている。
なお、学校給食で使われる「ソフト麺」であるが、正式名称を「ソフトスパゲッティ式麺」としており、強力粉を使用したスパゲッティである。
基本的な知識[編集]
肉を使ったものと使わないものがあり、「肉を使ったものにはチーズ、使わないもの(海鮮類)にはパン粉をオリーブ油で炒めたものをかける」という方向性がある。
トマトを使ったものを「赤(ロッソ)」、使わないものを「白(ビアンコ)」、イカスミを使ったものを「黒(ネッロ)」という。
豚肉は塩漬けしたものを冷燻したベーコンも使われるが、豚の頬肉(いわゆる「豚トロ」)を塩漬したグアンチャーレが用いられるものも多い。
その他、香辛料としては塩・胡椒・唐辛子なども用いられる。
ハーブとしてな大蒜・バジル・イタリアンパセリもよく使われるが、これらはプランターにでも植えておけば安くて便利である。庭があればローリエも育てられるが、家庭で干すと葉が丸まってしまってそれっぽくないため、薄いプラスチックの俎で挟んで電子レンジで水気を飛ばすなどする。
バリエーション[編集]
詳細なレシピは『暮しの手帖』のバックナンバーと『パスタの聖書』[2]などに詳しい。
日本国内[編集]
- スパゲッティ・ミートソース
- スパゲッティ・ナポリタン
- タラコ・スパ
イタリア[編集]
- スパゲッティ・アッラ・ディスペラータ - 「絶望のスパゲッティ」。基本材料は大蒜と唐辛子とオリーブ油のみである。
- アーリオ・オーリオ・ペペロンチーニ - 大蒜と唐辛子がメインなので、ソースらしきものは入っていない。「ディスペラータ」とどこが違うかは不明である。別名を「絶望のパスタ」。
- スパゲッティ・アマトリチャーナ - アマトリーチェ風。トマトソースを用いた「赤(ロッソ)」と用いない「白(ブランカ)」がある。グアンチャーレを用いるが、日本ではベーコンで代用されることが多い。
- スパゲッティ・ボヴィレッロ - 「貧乏人のパスタ」。卵・バター・チーズ・黒胡椒。「リゾッタータ」といって、茹でて入れるのではなくてフライパンの中で煮てしまう。
- スパゲッティ・カルボナーラ - 「炭焼き人風」。「イタリアの TKG」ともいえる。粗挽きの胡椒と玉子とチーズとグアンチャーレとイタリアンパセリ。
- スパゲッティ・ネロ - 「黒」の意(「ネッロ」とも発音される)。烏賊墨スパゲティをいう。ベネツィアの郷土料理という。
- スパゲッティ・アッラ・プッタネスカ - 「娼婦風」。 ブラックオリーブ 、アンチョビ、トマトソースが基本である。チーズが入らないため、パン粉をオリーブオイルで炒めたものをかけるスタイルが多い。スパイスとしては、ケッパー、輪切り唐辛子、塩、胡椒、ローリエなどが適宜用いられることもある。「ありもので作った感満載」だが、「そこがいい」という意見もあるので好みにされたい。
- アラビアータ - ペンネを使うことが多いが、スパゲッティを使うことも必ずしも珍しくはない。
その他国外[編集]
米国では一般的な、煮込みミートボールを載せたスパゲティ。映画『ルパン三世 カリオストの城』で、ルパンと次元が奪い合っていたのがこれであるとされる。
空飛ぶスパゲッティ・モンスター教を象徴する料理がこれである。
その他[編集]
- 分類不能のスパゲッティがある。「茹でたスパゲッツティを器に盛って粉チーズをかけて手でつまんで食う」というデフォルトのスパゲッティには、名前らしきものがない。フォークが普及したのは1770年代、ナポリ国王フェルディナンド4世が、宮廷で毎日スパゲッティを供することを命じたが、ハプスブルク家出身の王妃マリア・カロリーナに咎められてフォークが用いられるようになった。それ以前はスパゲッティは手づかみで喰うのが一般的だった。すなわち頭上にかざして口に入れた。
- 映画『トム・ジョーンズの華麗な冒険』で男女が素手でスパゲッティを食べさせっこする場面があり、これを「トム・ジョーンズのディナー」と呼ぶらしい。
- 日本であれば茹でたスパゲッティに生玉子をかけて醤油をかけて箸で食ってもそれはそれで通るのだが、イタリアでは生玉子を喰う習慣もなければ醤油もなく、箸もないため一般的な呼称がない。海苔の断ち落としとかをかければそれなりに美味い(というか、カルボナーラに近い)ので、名前が欲しいところだ。
- イタリア人にとってスパゲッティを折ることは禁忌に近いという。キャンプ漫画の「ゆるキャン△」において該当シーンがアニメ化された際はイタリアから悲鳴が上がったという。「スパゲティを二つに折って鍋で煮る」という方法を広めたのは、フランス文学者で詩人の平野威馬雄の娘でシャンソン歌手の平野レミであったらしい。平野レミは現在は料理愛好家として知られている。
- 頻繁な仕様変更や機能増設により著しく可読性の低くなったプログラムコードについて、スパゲッティ・コードと呼ぶことがある。スパゲッティのように複雑に絡み合っていることを揶揄している。
- 看護学における用語として、「スパゲッティ症候群」がある。酸素吸入・点滴(およびシリンジポンプなど)・尿道カテーテルなどチューブだらけの状態にされてベッドから動けないと、筋力は衰えるわ精神状態はおかしくなるわで看護の手間もかかれば予後も悪くなり、リハビリも大変になる(もちろん、病状が回復せずに亡くなることもある)。プログラマは筋力が多少落ちても気にしないし、考えることが多いので比較的にこういう状況に耐性があるらしく、「これがホントのスパゲティ・プログラマ」とかいって自嘲していた馬鹿[3]もいる。