オナペット

オナペット（和製英語:onapet^[1]）は､主として男性がオナニーを行う際に想像したり眺めたりして性的興奮を高めるために使用する女性^[2]。恋人や推しのタレントなどがよく利用される^[3]。『いろの辞典』は、今後は女性が同様の目的に使用する男性についてもこう呼ばれるかもしれないとする^[3]。

オナニーを行う際、性的興奮を高めるために何らかの補助素材を利用することがある。この補助素材としては、アダルト雑誌・一般雑誌のグラビアや、女性タレントやグラビアアイドルの写真集などの静止画、アダルトビデオなどの動画、官能小説やアダルトゲームなどの各種媒体が利用され、性的興奮を高めやすいものは「実用的」と形容される。ただし、オナニーを行うにあたってこれらは必須の要素ではなく、性的対象の裸体や性的行為などの空想だけで行うこともある。このような補助素材を、オナニーをより美味しくするための添え物であるとしておかずと呼ぶこともある。この場合の主食に対応するものはナニか。2000年に出版された『いろの辞典』によると、ある者は射精であると言い、またある者はナマの性行為であると言う。また、そのようなものは存在しないと言う者もいる^[4]。『いろの辞典』には、おかずという俗語は短い流行の後廃れた^[4]とあるが、実際には2023年現在も使われることがある。

概要[編集]

沿革[編集]

1969年の映画『いそぎんちゃく』をはじめ、数々の映画に主演した女優の渥美マリがオナペット女優と呼ばれ人気を博したが^[5]、1970年代から1980年代に掛けてはオナペットという単語は明るい印象をもって堂々と使われていた^[6]。

『平凡パンチ』1985年4月8日号では、60's-70'sに関する特集が組まれ、その中で同誌に1960年代に登場した女性歌手、俳優などが写真とともに紹介されている。そこの前置きとして「ここにズラリと登場する写真は、いずれも本誌「平凡パンチ』に60年代に掲載されたものばかりである。VANとJUNでキメたアイビーファッションの"みゆき族"が銀座5丁目を闊歩した時、きっと小脇にはさまれていたに違いない。水着姿が、セミヌードが、そしてオール・ヌードがそれぞれに意味を持ち、確固たる主張を若者に投げかけてきた。ビニ本、裏ビデオに慣らされてしまった今のボクたちには、きっと物足りない気がするかもしれない。が、男たちが男らしかった時代の女性たちが同様に女らしかったことを感じてほしい。同時に、当時の若者だった諸兄にも目いっぱい懐かしんでもらえたら最高かな。」と書かれ、60年代にオナペットと目されていた約40人が、『平凡パンチ』掲載時の写真とともに紹介されている。挙げられているのは、中山麻理、中村晃子、小山ルミ、立花マリ、倍賞美津子、集（つどい）三枝子、若林美裕、小川知子、緑魔子、大信田礼子、杉本エマ、青山ミチ、青木エミ、麻生れい子、泉アキ、大原麗子、小川ローザ、前田美波里、渥美マリ、松原智恵子、沢知美、カルーセル麻紀、松岡きっこ、黛ジュン、いしだあゆみ、安田道代、江波杏子、ジュン＆ネネ、山本リンダ、太地喜和子、中尾ミエ、由美かおる、奥村チヨ、加賀まりこ、真理アンヌ、范文雀、浜美枝、奈美悦子、丘みつ子、カルメン・マキ、殿岡ハツエである。2位以下の順位は書かれていないが、「60'sオナペットNo.1はこのヒト」との見出しが付けられているのが松岡きっこで、コメントとして「とにかく”目”。彼女の魅力はこれに尽きる。「眠れる美女」（大映）でデビュー後、悪女役もこなし、『11PM』のホステスで名を広めた。」とある。また中山麻理が冒頭に「いつも真っ黒がウリだった」の見出しとともに掲載され、コメントとして「エキゾチックなマスクとプロポーションで一時は男たちの目を独占したのが中山麻理。いつも真っ黒で、そのあたりからくる若々しさも大いに麻里人気に貢献した。」とある^[7]。

1972年 9月10日号の『週刊プレイボーイ』では、『ニッポン美女＜オナペット＞の系譜　八千草薫・吉永小百合から栗田ひろみまで』という特集をくんでいる。書き出しは「いまやシットリ調の「ONAPET」が大モテ。奥サマのオイロケたっぷりの“八千草薫”、お姉サマと頼れる“吉永小百合”、それに妹みたいにつきあえる“栗田ひろみ”がなんたってナウなONAPETビッグ3なんだってさ。」である。この3人は別に脱いだり水着になったりするわけでないから、当時のオナペットの認識としては、好きな美人女優などをアタマに描き、その人とセックスをすることの代償行為を意味していたのかもしれない。ちなみにこのときにオナペットランキングでは、

①　天地真理　②栗田ひろみ　③五十嵐じゅん　④八千草薫　⑤吉永小百合

⑥　田中真理（当時で言うポルノ女優）　⑦三ツ矢歌子　⑧小柳ルミ子　⑨山口ひとみ

⑩　欧陽菲菲

である。

『現代用語の基礎知識』が「オナペット」を見出し語として採録したのは、1974年 1月1日発行の「1974年版」が調べた範囲で最古である^[8]。

1974年前後に、歌手の松尾和子はオナペット歌手の称号を得ていた。当時39歳だった松尾は『月刊POCKETパンチOh』昭和49年5月号で「オナペット歌手」として取り上げられ、インタビューで次のように答えている。「オナペットかしらねえ・・・。フーン、こんなおばさんをつかまえてどこがいいのかしら（笑）オナペットっていわれたって、全然ピンと来ないんですよ。わたしの歌を声を、それからボインですか。そんなものが若い男の子の処理に少しでも役立つのならそれはそれで結構だと思うんですヨ。」^[9]

また1980年にカティーサークのCMに起用されて一躍人気を得た藤方佐和子は、『平凡パンチ』1980年 6月30日号でのインタビューに答えて、「えッ、私がオナペット？　うれしい。どうせなら日本一のオナペットになりたい」と答えている^[10]。このように『平凡パンチ』や『週刊プレイボーイ』では、1980年前後まではオナペットが一般的な用語として使われていた。

特に個人用の廉価なビデオデッキが普及し、自宅でアダルトビデオという動画を見られるようになるまでは、いわゆるエロ本のグラビアのほか、雑誌に掲載されるヌード写真や人気歌手やタレントのグラビアなどの静止画が担う「性的興奮を高めるための補助素材」の比重は大きかった。テレビでは可愛い歌手としてを歌うアイドルが、雑誌で大胆な水着を披露することで、多くの若者が発情し、オナニーを行っていた。特に1970年代後半では、桜田淳子や倉田まり子のように、超ミニスカートで歌番組に登場したり、性的な関係を匂わせる歌詞を歌い上げる山口百恵などが、若者の性的な興奮を掻き立て、さらに『平凡パンチ』や『週刊プレイボーイ』あるいは『GORO』（1974年創刊）で水着を披露することで、そうした若者の欲求を満足させていた。

1980年代になると、『平凡パンチ』が松田聖子をデビュー前からパンチラガールとして売り出し始め、曲のヒットとともにグラビアやピンナップで水着やテニスウェアなどでたびたび登場させるようになり、松田聖子をトップアイドルに押し上げた一要素となった。特に彼女が今にも下着が見えそうにマイクロミニスカートを履いて、「秘密の花園」を歌うころには各紙でも水着姿をたびたび披露し、男性の「性的興奮を高めるための補助素材」としてトップクラスの役割を果たしていた。松田聖子は50代になっても水着グラビアを披露したが、20代の松田聖子は『平凡パンチ』のほか『週刊プレイボーイ』『GORO』などにたびたび登場し、そのグラビアを素材として使っていたという男性は意外に多い。巨乳でもなく、はっとさせるようなプロポーションではないが、テレビでさりげなくパンチラをするようなかすかなあざとさが男性に受けたとも考えられる。そういう意味では松田聖子は実質的に1980年代前半の最高のオナペットと言えるのかもしれない。また中森明菜や小泉今日子などの人気歌手のほか、テレビ番組「スケパバン刑事」で人気を博した南野陽子が大胆な水着でグラビアに登場したり、NHKの朝ドラで清純な役で人気を得た斉藤由貴が、雑誌『ヤングマガジン』で豊満な水着姿を示したりしたことも性欲の強い若者には大きな刺激となった。また石川秀美は、水着グラビアではビキニを着ることはなく、すべてワンピースの水着だった^[要出典]にもかかわらず、長い脚、特に肉感ある太ももで若者を魅了し、そうした需要に応えた。オナペットとはそうした存在を指す場合が多く、そういう意味で、オナペットは肯定的な用語として受け入れられていた。

『週刊プレイボーイ』1986年 7月8日号では、「憧れのオナペット決定!!　100万人の読者アンケート想像力をカキたてる女は誰だ!?」という特集を組んでいる。100万人読者アンケートと銘打ちながら、有効回答数が2029票とそれほど多くのデータとは言えないが、一定の資料にはなるので参考までにその順位を挙げておこう。2029票といっても、完全にランダムに選ばれたサンプルならば得られたデータは統計学的に意味があるのだが…^[11]。

①　沢口　靖子　　②　本田美奈子　　③　深野　晴美　　④　松坂　慶子　　⑤　舵川まり子

⑥　中山　美穂　　⑦　菊地　桃子　　⑧　河合奈保子　　⑨　中森　明菜　　⑩　斉藤　由貴

⑪　堀江しのぶ　　⑫　南野　陽子　　⑬　小泉今日子　　⑬　森田　水絵　　⑬　美波　千秋

⑯　田中こずえ　　⑰　石川　秀美　　⑱　西村　知美　　⑲　可愛かずみ　　⑳　木下久美子　

1位の沢口靖子は決してセクシー系ではないが、「清純なイメージがいい」「かわいい」「きれい」が理由だという。2位に入っている本田美奈子は、売り出しのころは清純なイメージの水着を披露していたが、このアンケートがあった年の2月に発表された「1986年のマリリン」でへそ出しの衣装や激しく腰を振る振り付けで、若者の下半身を大いに刺激したのが大きいだろう。3位の深野晴美は南麻衣子、小川菜摘とともにオナッターズを結成し、テレビ朝日で放送された深夜番組『グッドモーニング』にレギュラー出演したが、その豊満なバストで3人の中では最も人気があり、オナッターズというストレートなネーミングで、単純に若者を刺激したことも間違いない。舵川まり子は今で言うセクシー女優であるが、上記のように普通の女優やアイドル歌手も上位を占めていた。

注目すべきは、この記事の導入部分に書かれている内容である。「基本的にオナニーはとても気持ちのよろしいものであるが、より快感を増し、至福の状態に達するためにはそれなりの努力が必要だ。コンニャクを使うとか、クリームを塗ったくるとかの物理的な努力も悪くはない。しかし、真に要求されるのは精神的な努力だ。つまり、豊かな想像力だ。早いハナシがどんな女をオナペット（おお、古いコトバだ）に選んで、しかるのちにオナニーするか、だ。」とある^[11]。この後も括弧書きで「古いコトバだ」が二度繰り返される。つまり1986年において、既にオナペットは用語としてはあまり使われなくなったということが示されている。

しかし、日本人がオナニーをしなくなったというわけではない~~当然だ~~、「性的興奮を高めるための補助素材」がなくなったわけでもないだろうから、何らかの理由でこの用語があまり1980年代後半以降、使われる頻度が減ってきたことはたしかだろう。少なくとも一般の雑誌でこの語が活字になることはほとんどなくなってきたのである。

時代は下り、『週刊大衆』2017年 11月15日号で取り上げられ、それと連動した『風俗大衆JOINT STYLE』の記事「わが青春のオナペットガチンコランキング」が、この用語を使った2015年以降の例である。「わが青春の」というタイトルからも、後述するランキングに挙がっている人名からもわかる通り、回答者の多くが50代以降であると思われる。だからこそ、この1980年代前半までによく使われた用語が使われていると考えられる。回答者は534人で、アンケートはがきと面接調査の回答によると言う。回顧的なアンケートであるので、時代の幅があるところが、『週刊プレイボーイ』1986年7月8日号とは違う点である。参考までにその順位を挙げておこう^[12]。

①　アグネス・ラム　　②　吉永小百合　　③　由美かおる　　④　高橋　恵子　　

⑤　河合奈保子　　　　⑥　五月みどり　　⑦　天地　真理　　⑧　美保　純　　

⑨　山口　百恵　　　　⑩　谷　ナオミ　　⑪　南　沙織　　以下略

特筆すべきは1位に上げられているアグネス・ラムだろう。グラビア界を賑わしたのが1970年代後半だったために1986年の『週刊プレイボーイ』のランキングには入っていないが、ここでは「ぶっちぎり」の1位という。アグネス・ラムは水着グラビアアイドルの走りと言って良い存在で、ここに挙がっている読者の声がそれを物語っている。「まさに元祖・水着グラドル。当時は部屋中にアグネス・ラムのポスターを貼ってました」（58・会社員）　「ハワイから来た、おっぱいを積んだ黒船。“たった2パイで夜も寝られず”でしたよ（笑）」（62・自営業）　「当時はパイズリという言葉もなかったが、あの豊満な胸の谷間にアソコを突っ込みたいと何度思ったことか」（57・会社員）」

やはり、この用語を語るのに、アグネス・ラムを挙げないわけにはいかない、ということは言えるだろう。現在でも『アグネス・ラム　砂浜の恋人週刊ポストデジタル写真集』がKindle版で買えるということが、この年代での「性的興奮を高めるための補助素材」としての彼女の人気を物語っており、『週刊大衆』のアンケートと総合して考えると、彼女は1970年代後半の最高の「オナペット」と言えるだろう。

また1986年当時のアンケートと2017年の「わが青春のオナペット｣の両方にランク入しているのが河合奈保子である。1986年の『プレイボーイ』では「最近やたらときれいになったし、あの水着の胸の谷間がたまらない」とあり、2017年の方では「オナペットとしての人気の秘密は、超ド級のバストにあるようで、「水着グラビアや芸能人水泳大会で、河合奈保子を見るのが楽しみでした」（52・運送会社勤務）　「あのおっぱいは、今で言うなら放送事故でしょ」（46・量販店勤務）といった意見が多数。」とある。アグネス・ラム、河合奈保子に共通しているのは「顔がかわいく、豊満なバスト」という点である。このあたりは暗黙の知と言えるのだろうか。

種々のオナペット[編集]

三次元ではお気に入りの芸能人（歌手・女優・モデル、もちろんAV女優も含む）がオナペットの定番であるが、身近な女性をオナペットにすることもある。学生時代に同級生、下級生をオナペットにしたEnpedian諸兄もいるはずだ。また上級生や女教師（教育実習生・保健室の先生を含む）も一定の人気がある。不適切な関係になるなよ、絶対なるなよ！

社会人ならば同じ職場や取引先の女性、風俗嬢などをオナペットにするケースが多い。その他、日常的に利用する小売店や飲食店にいつもいる女性従業員、通勤電車で同じ車両で見かける女性もしばしばオナペットになる。なかには、たった一度すれ違っただけの女性がドストライクで、そのままオナペットにしてしまったという事例もある。~~要するに何でもいい~~

二次元では、アニメ・ビデオゲームなどの登場人物をオナペットにするオタクが一般的だ。理想のオナペット、いわゆる「俺の嫁」がいないので自ら作る者もいる。イラストまたはCG制作のスキルがあればそれは可能であり、そうして出来上がったオリキャラをPixivのようなサイトで発表する者、薄い本にして頒布する者もいる。それらは他のオタクのオナペットとして再使用される。

声優をオナペットにするオタクもいるが、これは二次元にも三次元にも分類可能である。本来の仕事を越えて歌手に近い活動をする声優も1990年代以降目立つが、三次元の歌手と同じようにオナペットになり得る。また、アニメなどの萌えキャラに発情し、中の人としての声優にεροσの対象をシフトさせるオタクもいる。