アフターコロナ
アフターコロナ(英: After Corona[1][2]、AC[3])とは、世界の社会・経済に大きな変動を生じさせたCOVID-19流行の前後で世界を区分し、以降の社会的・経済的な変化「を経験した世界における、新しいビジネスや社会のあり方を指す」概念である[4][5][6][7][8][9][10][11][12]。
同じ趣旨で「ポストコロナ」という語句も使用されている[13]。
語句の普及[編集]
まだCOVID-19流行の初期と言える2020年2月~3月には、既に使用例が見られ、落合陽一が2月19日には[14]、上原浩治(元メジャーリーグ選手)が3月21日には[15]、それぞれ記事のタイトルに「アフターコロナ」と使用しており、また、3月17日にABEMA TIMESは、既にインターネット上で「アフターコロナ」という語句の使用が広まっている旨を報じている[4]。
三重県知事の鈴木英敬は、内閣官房の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議合同会議(2020年4月22日)にて、「『アフターコロナ』を見据えた戦略」と題した資料をリリースし、「世の中の考え方・働き方は大きく変化」したとして「『アフターコロナの新常態(ニュー・ノーマル)』が現出」したと述べ、政府・行政としても、これらの激変・急変に対応した変革が求められる旨を訴えており[16]、また、自由民主党の下村博文選挙対策委員長や稲田朋美幹事長代行らは、2020年5月、議員連盟「Withコロナ・Afterコロナの新たな国家ビジョンを考える会」を設立した[17]。
三井住友信託銀行は、「時論 ~ Before Corona、After Corona」と題したレポートを調査月報の2020年4月号に掲載し、「ヒト、モノ、カネにおいて、平時には余剰と思われるようなリソースを保有しておくことが、After Corona において重要となる」と論評している[18]。
日本の大手メディア[編集]
NHK教育テレビジョンは、歌手の山口一郎(サカナクション)、俳優の妻夫木聡、芸人・小説家の又吉直樹、デザイナーの森永邦彦、アートディレクターの吉田ユニ、以上5名によるオンライン座談会を「僕らの定点観測~アフターコロナの乗りこなし方~」と題して2020年6月13日に放送した[19]。
日本経済新聞社の「日経BizGate」は、同志社大学政策学部教授の太田肇による「アフターコロナの働き方」と題した週1連載を2020年5月14日から開始しており[20]、また、同グループの日経BPは、「アフターコロナ 見えてきた7つのメガトレンド」というタイトルの書籍を[6]、日経BP総合研究所は、「テレワーク大全 アフターコロナ時代の働き方」というタイトルの書籍を、発売している[21]。
朝日新聞デジタルは、「コロナ後の世界を語る -現代の知性たちの視線-」と題した特集のURLに「www.asahi.com/special/coronavirus/after-corona/」を使用している[22]。
英語圏[編集]
アメリカ国立生物工学情報センター(保健福祉省公衆衛生局が管轄する国立衛生研究所に置かれる国立医学図書館の一部門)は、ジャン・テサリク博士(チェコ人)による「After Corona: There Is Life After the Pandemic」と題した評論文を2020年4月8日に公式サイトで公開している[1]。
イギリス王立ロイヤル・ソサエティ・オブ・アーツは、「After Corona: The Future of Work」と題したオンライン・イベントを2020年5月27日に開催した[2]。
経済学・経営学にフォーカスした大学としてヨーロッパ最大のウィーン経済・経営大学は、「"Life After Corona" campaign」と題し、広く経済・ビジネス分野におけるCOVID-19流行によって生じた社会的・経済的な困難に関する質問を募集し、それに対して回答・助言する、という内容のキャンペーンを展開している[23]。
ヨーロッパの都市マーケティングを担う非営利団体である、European Cities Marketing[24]は、「A New Tourism Stigma After Corona?」と題したオンライン座談会を2020年5月13日に開催した[25]。
コンサルティング会社であるメルカトル・アドバイザリー・グループは、「Doing Business After Corona: How the Business World Will Change After Coronavirus」と題したレポートを2020年4月28日に公式サイトで公開している[26]。
スイスの投資銀行(プライベート・バンキング / アセットマネジメント)であるヴォントベルは、「"The world upside down" — The six challenges for investors "after Corona"」と題したレポートを2020年6月12日に公式サイトで公開している[27]。
具体的な論評[編集]
特に、数多くのCOVID-19流行によって生じた社会的・経済的な変化の内、一過性のものでなく、COVID-19流行が収束しても元に戻らず、定着するであろう、定着しなければならない、或いは、既に定着を前提に動きが始まっている[28]、と「アフターコロナ」という語句を使用して論評されているものとして、以下が挙げられる。
- テレワーク(リモートワーク)・在宅ワーク
- 元々、以前から普及が呼びかけられていたものが、COVID-19流行による感染の防止のため、一気に普及したものである[29][30][31][32][33]。
- 6割がアフターコロナにおいても継続したい旨を回答したとの、日本生産性本部による調査が報じられている[34]。
- 会議・打ち合わせの変化
- テレワークで済むものと、やはり会って話す必要性が高いものと、その区分けが広く共有されたとして、その使い分けが進むと論評されている[35]。
- また、音声や文字によるコミュニケーションを主体とした会議に移行することで、参加者による明確な自分の意見や他の参加者に対してのリアクションの表明、ファシリテーター(司会者・主宰者・議長)による意識的な質問・問いかけ等が必要になる旨、論評されている[36]。
- 印鑑の廃止
- 既に一部のIT系企業などが実施しているが、その定着が期待されている。
- 部下への権限移譲
- テレワーク・リモートワークの普及で従来のように上司と部下とが直ぐにオフィスで会えなくなると、業務の計画段階から、双方が業務の内容・目的・期限・期待される成果・評価の観点などにつき、従来にも増して高い精度で合意する必要が生じ、それに基づく適切なフィードバックのために、定期的な報告を受け、業務状況の把握や成果物の進捗状況の管理など上司の能力も問われる旨、論評されている[36]。
- 物理的な事務所の面積の縮小・事務所そのものの廃止
- テレワーク・リモートワークの普及で物理的に「出勤・出社」する人数が減少するのに伴い、従来の必要とされた事務所の面積も縮小し、そのための家賃コストも削減され、その分の資金を別の環境整備や事業戦略に充てられる、とのメリットも生じる旨、論評されている[33]。
- 書類のペーパーレス化
- 従来から推進されていたが、感染リスク減少の観点からも導入が進む旨、論評されている[33]。
- 顔認証システムの導入
- 従来から推進されていたが、感染リスク減少の観点からも導入が進む旨、論評されている[33]。
- 業務のアウトソーシング(外部委託)
- 従来、必要な業務の全般を自社内で担っていた企業も、テレワーク普及の結果、自社内に真に必須なコア業務だけに絞り、より専門性を高める機会となり、顧客に対しても従来より高いパフォーマンスの提供へ変化する旨、論評されている[33]。
- マネジメントや人事評価の見直し
- テレワーク・リモートワークの普及で従業員の働く状況が見えにくくなることから、従来の「勤務時間」・「勤続年数」・「保有能力」・「プロセス」から、「成果」に重点を置いた評価への移行が加速する旨、論評されている[31][36][33][28]。
- また、COVID-19流行が暫く継続するものと考えられることから、状況の変化に対する柔軟な対応力、自ら考える判断力・主体性、円滑なコミュニケーション能力などが、人事評価においても重視されて行く旨、論評されている[33]。
- 休暇の取得 / 退職せずに仕事を継続(出産する女性・育児する男女・介護など)
- 以上の様々な変化の複合的な結果として、従来なら退職せざるを得なかった事例が退職せずに仕事を継続しやすくなったり、進まなかった男性の育児休暇の取得が進んだり、といった積極的な変化が進む可能性が高まる旨、論評されている[29][31]。
- その他
- 青野慶久(サイボウズ代表取締役社長)は、アフターコロナにおいても「基本的には出社しない予定」だと宣言し、その理由として「今回、出社もしなくなって、会議も完全オンラインになって大反省した」、社業として「『情報格差をなくそう』と考えてグループウェアを作ってきたはずなのに、実は物理的な場所によって、まだまだ情報格差を生み出し続けていたことに気がついた」・「何だかんだ『オフィスにいる人』ばかりが働きやすい状況を作ってしまっていた」と自社が提供しているはずのビジネスに反した働き方をしていたと反省し、「社長である私がオフラインの世界にばかりいちゃいけないなと今回思った…オンラインの世界にいる『バーチャル社長』にならないと」、「サイボウズはもうグローバルで1,000人ほどの会社になってい」るので「社長である私は、場所を問わずメンバーに声を届けるために、特定の場所にいない方がいいと気がついた」等と挙げている[37]。
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
- ↑ a b Jan Tesarik (2020年4月8日). “After Corona: There Is Life After the Pandemic”. アメリカ合衆国保健福祉省 公衆衛生局 国立衛生研究所 国立医学図書館 国立生物工学情報センター. 2020年6月13日確認。
- ↑ a b “After Corona: The Future of Work”. ロイヤル・ソサエティ・オブ・アーツ (2020年5月27日). 2020年6月13日確認。
- ↑ 加藤佑 (2020年4月21日). “「分断する」経済から「つながる」経済へ。アフターコロナの世界とサステナビリティ”. 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン IDEAS FOR GOOD (ハーチ) 2020年6月14日閲覧。
- ↑ a b “新型コロナで“強制的”なオンライン化、収束後の社会「アフターコロナ」どう変わる?”. ABEMA TIMES (ABEMA TIMES). (2020年3月17日) 2020年6月14日閲覧. "この「アフターコロナ」とは、新型コロナウイルスを経験した世界における、新しいビジネスや社会のあり方を指すものとみられる。"
- ↑ 中村稔 (2020年5月23日). “「アフターコロナの世界経済は元には戻らない」”. 週刊東洋経済 (東洋経済新報社) 2020年6月13日閲覧。
- ↑ a b 日経クロステック (2020年6月2日). “アフターコロナ”. 日経BP. 2020年6月13日確認。
- ↑ 武藤真祐 (2020年6月4日). “アフターコロナ、医療に起きる6つの変化”. Beyond Health ビヨンドヘルス (日経BP) 2020年6月13日閲覧。
- ↑ 古田拓也 (2020年6月5日). “アフターコロナは「バブル一直線」? 上昇止まらない株価”. ITmedia (ITmedia) 2020年6月13日閲覧。
- ↑ ヤニス・バルファキス (2020年6月9日). “アフターコロナに待ち受ける「おぞましい世界」、2030年の政治経済シナリオ”. 週刊ダイヤモンド (ダイヤモンド社) 2020年6月13日閲覧。
- ↑ 村山幹朗 (2020年6月10日). ““アフターコロナ”の行動変化を予測するには? 顧客に「直接」聞いてみる 「語り」で読み解くコロナ以降の行動変化”. Web担当者Forum (Web担当者Forum) 2020年6月13日閲覧。
- ↑ 吉田将英 (2020年6月11日). “若者を見ればわかる「アフターコロナに爆発する7つの新しい価値観」”. プレジデント社 (プレジデント社) 2020年6月13日閲覧。
- ↑ “「ロジック」から「共感」へ──アフターコロナのニューノーマル”. Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン) (Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)). (2020年6月12日) 2020年6月13日閲覧。
- ↑ “新型コロナウイルス対応で変わる社会”. 日本総合研究所. 2020年6月14日確認。
- ↑ 落合陽一 (2020年2月19日). “「アフターコロナ」の世界で - #時事と抽出”. note. 2020年6月13日確認。
- ↑ 上原浩治 (2020=03-21). “アフターコロナで輝くために! 自宅待機の今、何をするかで未来が変わる!”. Yahoo!ニュース (Yahoo! JAPAN) 2020年6月14日閲覧。
- ↑ “「アフターコロナ」を見据えた戦略”. 内閣官房 (2020年4月22日). 2020年6月13日確認。
- ↑ “「9月入学を導入すべき」自民幹部ら積極的な動きも”. ANNニュース (テレビ朝日). (2020年5月28日) 2020年6月13日閲覧。
- ↑ “時論 ~ Before Corona、After Corona”. 三井住友信託銀行 (2020年4月1日). 2020年6月14日確認。 “想定外のことが発生するのが当たり前となって来ている中で、ヒト、モノ、カネにおいて、平時には余剰と思われるようなリソースを保有しておくことが、After Corona において重要となるのではないか。”
- ↑ ““1980年生まれ”の5人の表現者たちが「アフター・コロナ」のビジョンを語り合う 僕らの定点観測~アフターコロナの乗りこなし方~”. 日本放送協会 (2020年6月8日). 2020年6月14日確認。
- ↑ 太田肇 (2020年5月14日). “アフターコロナの働き方”. 日経BizGate (日本経済新聞社) 2020年6月13日閲覧。
- ↑ “テレワーク大全 アフターコロナ時代の働き方”. 日経BP 総合研究所 (2020年6月8日). 2020年6月13日確認。
- ↑ “コロナ後の世界を語る -現代の知性たちの視線-”. 朝日新聞社. 2020年6月14日確認。
- ↑ “Life After Corona”. Wirtschaftsuniversität Wien - WU (Vienna University of Economics and Business). 2020年6月14日確認。
- ↑ “サントン・コンベンションセンターで「ミーティングス・アフリカ2016」を開催”. ニュース – 南アフリカ観光局 (南アフリカ観光局). (2015年11月30日) 2020年6月14日閲覧. "欧州を拠点にレジャーやビジネスイベント分野での都市マーケティングを手掛ける非営利団体ECM(European Cities Marketing)"
- ↑ “A New Tourism Stigma After Corona”. European Cities Marketing (2020年5月13日). 2020年6月14日確認。
- ↑ Frankie Wallace (2020年4月28日). “Doing Business After Corona: How the Business World Will Change After Coronavirus”. 2020年6月13日確認。
- ↑ “"The world upside down" — The six challenges for investors "after Corona"”. Vontobel (2020年6月12日). 2020年6月13日確認。
- ↑ a b 中野在人 (2020年5月22日). “アフターコロナではこれまでの「当たり前」が破壊される──先の世界を見据え、人事はどう変わるべきか【29】”. 人事のプロを支援する HRプロ (ProFuture) 2020年6月13日閲覧。
- ↑ a b “新型コロナウイルス感染症拡大に伴う人々の行動と意識の変化から見る「学び方改革」、「働き方・暮らし方改革」の可能性 ~進んだ在宅勤務やオンライン会議。抵抗感の緩和や仕事と家庭の両立への効果実感につながる~”. 野村総合研究所 (野村総合研究所). (2020年4月20日) 2020年6月13日閲覧. "アフターコロナでも変わらず日本が抱える社会保障の維持、少子化克服といった課題の解決にもつながると考える。"
- ↑ 勝島杏奈・田嶋あいか (2020年6月9日). “アフターコロナの働き方は?“メンバー全員リモートワーク”20代女性社長に聞く働き方の未来”. NHK就活応援ニュースゼミ (日本放送協会) 2020年6月13日閲覧。
- ↑ a b c 久我尚子 (2020年6月1日). “ウィズコロナ・アフターコロナの働き方へ期待すること”. ニッセイ基礎研究所 (ニッセイ基礎研究所) 2020年6月13日閲覧。
- ↑ 古田拓也 (202005-24). “「持続可能なテレワーク」に不可欠な唯一の視点”. 東洋経済オンライン (東洋経済新報社) 2020年6月13日閲覧. "足元では、コロナ終息後の世界、いわゆる「アフターコロナ」で、われわれの生活がどのように変化するかという話題がビジネスパーソンの間でも関心の的となっている。・このようなテレワークの動きは、アフターコロナの世界で広がりをみせるだろうか。"
- ↑ a b c d e f g オフィスのミカタ (オフィスのミカタ). (2020年5月28日). https://officenomikata.jp/coverage/11205/+2020年6月13日閲覧。
- ↑ 谷井将人 (2020年5月25日). “6割は「アフターコロナもテレワークしたい」 通勤ラッシュからの解放や感染リスク低下が要因か”. ITmedia news (ITmedia) 2020年6月13日閲覧。
- ↑ MN ワーク&ライフ編集部 (2020年5月16日). “アフターコロナ、テレワークは浸透するか”. マイナビニュース (マイナビ) 2020年6月13日閲覧。
- ↑ a b c 松岡功 (2020年5月25日). “アフターコロナの経営に必須 マネジメント視点でみた「在宅勤務」の生かし方とは”. ITmedia エンタープライズ (ITmedia) 2020年6月13日閲覧。
- ↑ “「もう出社しない」って本気ですか? サイボウズ社長 青野にアフターコロナの働き方をあれこれ聞いてみた”. サイボウズ (2020年5月21日). 2020年6月13日確認。
関連項目[編集]
COVID-19(2019年の新型肺炎) |