ブレイクスルー感染

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ブレイクスルー感染(ぶれいくするーかんせん、:Breakthrough infection )は、ワクチンを接種した患者が、予防した筈の感染症に罹ってしまう事である。「ワクチン接種後感染」「ブレークスルー感染」「打ち抜き感染」「突破感染」ともいう。

感染割合[編集]

イスラエルのでデータでは新型コロナのブレイクスルー感染は2.6%とする[1]

CDCのデータでは、新型コロナのブレイクスルー感染による死亡率は0.001%以下とする[2]

非営利団体「カイザー・ファミリー財団(KFF)」が州の公式データを分析したところ、「ブレークスルー感染」はワクチン接種者の1%以下であることが判明した。コネティカット州では0.01%、オクラホマ州では0.9%であったとする[3]。ブレークスルー感染が極めてまれであることが示された。

語源[編集]

造語である。「ブレイクスルー」(Breakthrough)は突破、「感染」はinfectionを組み合わせた造語である。ウイルスがワクチン接種で得られた免疫を「突破」するという意味から作られた。しかしブレークスルー自体は「障壁を突破するという意味」から「打開」「躍進」など前向きな表現で使われることが多い。

アメリカの事例報告[編集]

アメリカでは、ワクチンを2回接種した7700万人のうち、約5800人が新型コロナに感染したと報道された。ブレイクスルー感染して、亡くなった方も74人という報告があるという[4]。愛知県がんセンターの伊東直哉医師によれば、ブレイクスルー感染の原因は次が考えられるという[4]

  1. ワクチンの効果は100%ではない
  2. 獲得する免疫力の強さに個人差がある。
  3. 免疫の持続期間が短い可能性がある。
  4. ウイルスが変異するとワクチン接種の効果が落ちる

日本の事例報告[編集]

2021年8月13日、「ブレークスルー感染」による死亡が東京都内で初めて確認された[5]

福岡市では「ブレークスルー感染」は、6月30日~8月6日に少なくとも70人いたことが市の調査で判明した[6]

デルタ株との関係[編集]

変異ウイルスのなかでデルタ型がブレークスルー感染を招きやすいとの研究がある。テキサス州ヒューストンの病院などの研究では3月中旬から7月上旬に確認された新規感染3900人強のうち、他の変異ウイルスでは感染者はわずか6%であるが、デルタ型の新規感染のうちワクチン接種完了した人は2割を占めたという[7]

論文での使用例[編集]

データベースで論文検索すると使用例が見つかった。現状では「ブレイクスルー感染」「打ち抜き感染」どちらも使われるが、前者の方が多い。そのほか「vaccine breakthrough infection症例」「一次性膀胱尿管逆流症425症例におけるtrade別のbreakthrough infectionの検討」といった英語の使用例も見られる。

ブレイクスルー感染[編集]

9例が見つかった。タイトルでの使用は3例がある。論文例に鈴木圭,中瀬一則,菅原由美子他(2015)「ミカファンギン耐性非カンジダ属真菌によるブレイクスルー感染症の臨床的特徴」鈴木圭、中瀬一則他(2021)「HBVワクチンエスケープ変異株によりブレイクスルー感染した小児例」(2021)、MIURA Yasuo,KANEKO Masahiko,NISHIZAWA Masatoshi(2007)「慢性リンパ性白血病患者におけるTrichosporon asahiiのブレイクスルー感染」など。

ブレークスルー感染[編集]

2例が見つかったが、タイトルに使用された例はなかった。中村信元,尾崎修治,安倍正博他(2010)「ボルテゾミブ療法後に播種性接合菌症を合併した多発性骨髄腫」では「抗真菌薬投与中のブレークスルー感染症などが発症の誘因と考えられた」という文脈で使用されている。

打ち抜き感染[編集]

2例がみつかった。タイトルでの使用は1例のみである。使用例として石原晋,中山晴雄,和泉 春香他(2009)「打ち抜き感染 (Breakthrough infection) として発症した侵襲性ムーコル症の1剖検例」がある。

ウイキペディアでは[編集]

ウイキペディア日本語版に「ブレイクスルー感染」はなく、「打ち抜き感染」として掲載されている(「ブレイクスルー感染」は「打ち抜き感染」に転送)。しかし「ワクチンがその目的とする病原体に対する免疫を提供出来ない場合に発生する」との記述は不十分(または誤り)である。免疫を提供できないのではなく、ウイルスの変異の結果、HLA-A24(ヒト白血球抗原)から逃避し、感染受容体のACE2への結合性が高まったことが原因である。

誤情報の拡散[編集]

国立感染症研究所の報告の一部を切り取り「感染研がワクチンに効果がないと認めた」という科学的な議論でない解釈を誤情報として流すSNSやメールマガジン投稿が出現した。研究所はこれに対して批判声明を出した。自らの主張に都合のいいように一部の文言だけを切り出して使用すると、正しい理解ができなくなると警告している[8]

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外部リンク[編集]