にしんずし
にしんずしは、ニシンで作られるなれずし、いずしである。ニシンが多く取れる東日本の日本海側で作られる。
表記[編集]
本来、なれずしという意味では「鮓」を用いるべきであり、寿司は握り寿司に対する当て字である。「鰊鮓」、「鰊寿司」など様々な表記があるが、「にしんずし」の表記が多いので本稿は「にしんずし」とする。また、鰊漬けもほぼ同じ食品である。
概要[編集]
冷蔵庫のない時代、水揚げされたニシンを保存する方法として身欠きニシンを製造したが、さらなる保存期間の延長の方法としてにしんずしを作った。漬け込んでいる間に乳酸菌による嫌気発酵で酸味が出てくる。これが本来の「鮨」である。同様なものとして「鮎鮓」や「鮒寿司」があるが、消費者の好みから押し寿司となった。現在の握り寿司は江戸時代から作られ、酢で酸味をつけた「早鮨」である。
製法[編集]
身欠きにしんを塩、麹、ニンジン、唐辛子、ヒジキで交互に挟み、蓋をする。ダイコンを入れることもある。塩を入れるのは味を整えるためと、雑菌の繁殖を抑えるため、食材と麹から水分を出すためである。嫌気的発酵により麹が糖化し、これがさらに乳酸菌によって発酵して酸味が出てくる。乳酸菌は食材にもついているが、特定の植物の葉にもついており、これを入れることによって発酵の速度が早まる。にしんずしを何度も漬けた木の桶ならば、その桶に乳酸菌が付着しており、自然に乳酸発酵が進む。木の樽を使う場合は空気が入らないように蓋に重石を載せ、数か月、ときには数年間発酵させる本漬けをする。
乳酸発酵[編集]
食べ方[編集]
一緒につけた麹は食べる。乳酸菌による嫌気発酵でアミノ酸などの旨味成分もある。匂いが強く、年少者は好まないが、高齢者になると好むようになるという。日本酒との相性も良いという。
現状[編集]
かつては各家庭でも作られていたが、作るのに手間がかかること、若年層が好まないことによる核家族化によって作られなくなった。福井県敦賀市では、土産物店や敦賀駅で販売されている。
製造上の注意[編集]
一部の愛好家によって小規模に作られることがあるが、伝統的な製法でないと嫌気的条件からボツリヌス菌が増殖する可能性がある。
脚注[編集]
参考文献[編集]
- 滋賀の食事文化研究会『ふなずしの謎』サンライズ出版2006年7月31日初版第9刷発行。
- E・ローゼンバーグ、I・R・コーエン『入門現代生物学』培風館2001年4月10日初版第15刷発行。
- 吉田邦久『チャート式要点と演習新制新生物ⅠB・Ⅱ』数研出版1997年3月1日発行。