おでん
おでん(御田)とは、田楽から派生した料理であり、現在では代表的な庶民とされている。それぞれの地方に郷土料理としてのおでんがあり、関東地方のものが知られているが、関西では「関東煮(かんとだき)」とも呼ばれる。「静岡おでん」などもある。いわゆるコンビニのおでんは関西風ではあるものの、関東大震災以来関東風と関西風の区別は曖昧であるとされ、現在では「どちらが本家か」といった議論にはあまり意味がない。
歴史[編集]
- 田楽は、もともと里芋を皮を剥いてから茹で、それを竹串で刺したものを湯に入れて保存しておき、甘味噌などを塗って供した屋台料理である。蒟蒻が参加した時期については不明である。
- 「おでん」の名は、「地面に竹竿を立ててそれに登る」という軽業を得意とした田楽法師に由来するといわれ、「田楽刺し」という言葉ができ、茹でた里芋や蒟蒻を串刺しにしたものを湯に漬けて温め、味噌だれをつけて供するものであり、いわゆる鍋料理としてのおでんとは異なるが、赤塚不二夫の「おそ松くん」でチビ太が持っているおでんは、やはり田楽刺しである。これは「ファストフードとしてのおでん」としての系譜を継ぐものであろう。
- 江戸時代はおでんと言っても、現在のように色々なメニューを煮込むおでんは現れておらず、当時は豆腐と蒟蒻を熟した大きな石の上で焼き、柚子味噌をつけて出すものであったとされ、これがおでんの前身とされている。
- 1941年12月8日の真珠湾攻撃の際は大日本帝国海軍航空母艦「瑞鶴」乗組員の朝食の戦闘食として支給された。
- そば・うどんなどでは、温めた麺におでん汁をかけて具をのせるなどしたものを「しっぽく(卓袱。円卓の意)」と呼んだ。たしか小淵沢駅のホームでは立ち食い蕎麦とおでんが売られており、かけそばにおでんをのせて食べることが流行していた。
概要[編集]
もともと保温のために湯に浸しておいたものだが、出汁の普及により様相が変わった。
様々な具材を下ごしらえし、鰹節や昆布の出汁・醤油や醤油・味醂などを加えた「つゆ」(おでんつゆ)に入れて保温・味付けをした料理である。
関東圏では出汁八+醤油一+味醂一を基本味とし、鰹節出汁や昆布出汁と合わせることが多いが、地域によって鰹出汁を控え、牛筋や鯛アラなども合わせたり、醤油・味醂ではなく塩や「いしり」「いしる」「しょっつる」を使うなどの各種の工夫がある。
レシピ[編集]
おでんの要諦は以下の五点につきる。
- 出汁をけちるな
- 下拵えは十全に
- 個性を主張しないのが美学と心得よ
- グツグツ煮るな
- 七十度が目安
である。
「田楽」とは異なり、「味の染みた」具材を愉しむ料理なので、肝心の出汁が利いていないと話にならない。 蒟蒻や豆腐は「えぐみ」があるため、それを抜くために十分に下拵えをすること。がんもどきやさつまあげや厚揚げは熱湯をかけて油抜きし、大根は充分に厚く皮を剥いて糠をいれた湯で充分に下茹でする。 おでんは一つの鍋で完結する料理であり、「具材かつ出汁材料であるもの」(練り物や牛すじなどがある)も入るため、「味が喧嘩しない」のを美学とする。ただし過程で「ひとりおでん」とかする場合は差し支えない。 「グツグツ煮ると蛋白質が固くなる。かといって温度が低すぎるとおいしくない。至適温度は各人模索されたい。
もっとも有名なおでん屋というと「銀座 お多幸」であろうと思うが、そのレシピはかつて「暮しの手帖」で公開されているので、家庭用にアレンジしたものを紹介する。
まず、出汁を引く。ただし、だし材は想像を絶したくらい(「イヤぁ! ヤメテぇ」と悲鳴が上がるくらい)入れるのがよいとされる。昆布のほか「かつお厚削り」が知られているが、上品な味は求めていないので二番出汁を使うこともあり、鯖節なども入る。牛すじ(すじは捨てずに、適当に切って串にさして具材とする)・鶏ガラ・湯通しした鯛のアラを焼いたものなど、いろいろ混ぜてよい。沼津あたりでは、「釜揚げしらすの茹で汁」を使うこともあったという。煮干もいいが、雑味を避けるため、頭と内蔵を取って乾煎りしたものが上とされる。頭は水だしにしてもいいという。
大根は厚く剥いて米糠を入れて下茹でし、揚げ物は湯通しし、豆腐は奴に切って水に漬けてにがりを抜き、蒟蒻は下茹でするというのが上とされるが、これはこだわりに類するので、あまり気にしなくてもよい。
あとは出汁に味付け[1]をして、沸騰しない程度に温めればよい。一度沸騰直前まで温めて、鍋ごと毛布などでくるんで一晩置くとよいという話もある。
コンビニに行けば具材だけでも売っているし、おでんの素も売っているので心配は無用である。
調理器具[編集]
浅くて広い鍋が必要である。蓋もあれば便利である。
その他、出汁を引いたり具材の下拵えをしたりする調理器具については省略する。
最上級とされるのが銅製の打ち出し鍋に鈴鍍金をしたものであるが、ほぼ業務用である。
ステンレス製のバットの深いものがあればとりあえず屋台的な感じにはなるが、合う蓋がないのが困りものである。食器洗い用のステンレス製の桶は安くていい[2]。
ステンレス製の大鍋も使えるがめったに使わないので高い。アルマイト製の大鍋は麺茹でなどに活用できるので、こちらはお奨めである。
熱源としては、東芝あたりの製品で保熱用のホットプレートが安全でいい。その上に鍋を置き、防災用の防炎加工されたアクリル毛布でも被せておけば万全である。甘酒だろうがヨーグルトだろうが、好気性発酵なら普通にイケる。ただし温度調節ができないので、本体と容器の間に何かの断熱材を挟むなどして工夫されたい。
脚注・出典[編集]
参考文献[編集]
各地のおでん[編集]
- 札幌風おでん
- 青森風おでん
- 仙台風おでん
- 秋田風おでん
- 東京風おでん
出汁が九割に対して、一割ほどの「かえし」(醤油と味醂を同割にして煮切ったもの)を加えたものが多く、『お多幸』などはこのスタイルである。ただし、関東でもコンビニおでんなどは昆布出汁に塩味をつけたものが多く、汁の色は濃くないことが多い。築地のおでんも同系統である。
- 飯田風おでん
- 金沢風おでん
- 静岡風おでん - 「だし粉」を入れるのが特徴といえば特徴である。味の特徴としては、味付けがほぼ濃口醤油のみであること。身体を使わないひとは、日本酒をちょっと足すとよい。家庭で作る場合は、醤油と酒を同割りにして煮切ったものを入れる。なお、「すじ」「つみれ」などをしこたま入れるとよい。鰹出汁より煮干し出汁が合う。
- 名古屋風みそおでん
- 京都風おでん
- 大阪風関東煮
- 姫路風おでん
- 松江風おでん
- 高松風おでん
- 高知風おでん
- 長崎風おでん
- 鹿児島風おでん
- 沖縄風おでん