チューバ
チューバ(tuba、「テューバ」とも)とは、金管楽器の中で管が一番太く長く、重量が一番重く、一番大型で、一番低い音を出す楽器。
概要[編集]
コントラバスの音域名、コントラバスオクターブに相当する金管楽器で、荘重な低音=重低音を受け持つ。オーケストラや吹奏楽などで、最も低い音域を土台として支え、パイプオルガンの重低音のように、深く豊かな響きで、力強い低音で、どっしりとした重厚な響きを持ち、ハーモニーで、和音(コード)の基本形や転回形の最低音、ベースパートを担当する。金管楽器セクションの屋台骨を支える低音楽器。バンド全体を包み込んでしっかりと支える重要な役割を持っている。
チューバの音域は、弦楽器でいうとコントラバスに当たる。メロディー楽器ではないのでソロに使われることはあまり無い 注。たまにソロに使われるときもある。音程感としてはわかりにくいが、音高の判別はできる。
チューバの音色は、トロンボーンの音色とあまり変わらない。MIDIにおけるチューバの音色は、「GM59.チューバ」でなくても、「GM58.トロンボーン」の使用でも可。
チューバの語源は、「管」という意味の英語表記「tube(チューブ)」に由来する。古代ローマ時代では「まっすぐなトランペット」の意味である。チューニングの際は、抜差管で音の高さを微調整する。
チューバの調性は、最もよく使われているのはB♭管で、他にC管も存在する。B♭管とC管は、「コントラバスチューバ」と呼ばれることもある。
注 事実上、低音楽器がメロディーを担当すると音程感やどれがメロディーかが少しでもわかりにくく、コードネームでは表せなくなり、コード(和音)が基本形か転回形かがわからず、曲のバランスが悪く、重苦しい響きになり、曲として成立しなくなる。
構造[編集]
音域は2オクターブ半ちょっとある。円錐状の非常に太い管を持ち、3本~5本のバルブを持つ。管体が全体的に厚い。バルブシステムにはピストン式とロータリー式の2種類がある。バルブの付いている位置による違いなど、チューバの種類が多種多様である。F管チューバは、低音域が足りず、低音域を補うために第5バルブが付いていて、5本のバルブで、操作が難しいため、オーケストラ用の楽器であるが、使いみちはあまり無い。ピストン式には、弁がまっすぐ上を向いて直立した「アップライト型=トップアクション」と、「サイドアクション」と、弁が横倒しに並んでいる「フロントアクション」がある。フロントアクションはバルブが楽器の前面にある。ベルは非常に太く大きなベルで、ベルの広がりは比較的少ない。ベルの直径は約40cm~50cm。ロータリー式とピストン式ではベルの向きが左右逆であり、ピストン式(トップアクション)ではベルが奏者の右向き、ロータリー式ではベルが奏者の左向きとなる。フロントアクションのベルの向きは、ロータリー式と同じ。ロータリー式チューバは、レバーが中央にある。ピストンバルブの操作は、右手で操作する。チューバの各部で、バルブの番号は、ロータリーチューバでは、丸い部分は、上から順に、第1、第2、第3、第4ロータリー、レバーは、上から順に、第1、第2、第3、第4レバーとなる。ピストンチューバでは、右から順に、第1、第2、第3ピストンとなる。第1レバーを押すと全音下がり、第2レバーを押すと半音下がり、第3レバーを押すと半音3つ下がり、第4レバーを使うことにより、第3レバーより音程が4度下がる。
チューバのマウスピースは、金管楽器のサイズに応じて大きく、重さは約260gで、ピッコロの本体よりも重く、大きなカップ形をしている。ピッコロの本体で約170gある。チューバの弁は、トランペットの弁より大型になる。そのため、バルブを押さえた後にバルブを離したとき、元の位置に戻る速度が比較的遅くなる。つまり、メロディーは担当しないということで、16分音符より短い音符の演奏には向かない。
種類[編集]
総論[編集]
チューバの仲間・同属楽器には、「バスチューバ」と呼ばれるE♭管とF管のものが存在する。管の長さが長い順に、B♭管、C管、E♭管、F管となる。チューバの仲間には、コントラバスチューバとバスチューバの2つがある。コントラバスチューバはB♭管とC管の2つの調性を合わせたもので、バスチューバはE♭管とF管の2つの調性を合わせたものであるという別の種類である。調性が全音(長2度)違いの2つの組み合わせで一組の音域名に対応しているのが特徴。具体的には、チューバの調性は、コントラバスチューバはB♭管とC管の一組、バスチューバはE♭管とF管の一組を形成している。バスチューバは、音域名では、バスとコントラバスの中間で、グレートバスの音域名に当たる。色々な調の楽器があるが、記譜するときはどの管も関係なく、移調楽器ではなく実音(原調)で記譜されるので、チューバの世界では、何を使わなくてはならないという決まりはない。単に「チューバ」といえば、コントラバスの音域名の金管楽器なので、「コントラバスチューバ」の略を指す。楽譜上では、全体的に、ある音符を1オクターブ下げるための記号「8vb」を使う。
F管チューバは、主にドイツのオーケストラで使われる。E♭管チューバは、ドイツでは使われない。
楽器本体は重量がとても重く、持ち上げながら演奏するのは大変であり、持ち運びがしにくく、持って歩きにくい。そのため、行進用にも使用できるように、ベルが正面を向いた、歩きながら肩に担いで(乗せて)構え、楽に演奏できるように考案(工夫)されたタイプ「マーチングチューバ」「スーザフォン」がある。マーチングチューバ、スーザフォンは共にB♭管のピストン式のみ存在する。マーチングチューバは、一見コンサート用の楽器を横にしているように見え、楽器の重さを肩で支えられるように、マウスピースが曲げられ、マウスパイプが演奏しやすい位置に取り付けられている。
まとめていうと、チューバの種類は、管の長さによる分類では、B♭管チューバ、C管チューバ、E♭管バスチューバ、F管バスチューバ、マーチングチューバ、スーザフォンの6つ、バルブシステムの違いでは、ロータリーチューバ、ピストンチューバの2つである。
B♭管チューバ[編集]
一番大型のチューバで、最も低い音域を補い,重厚で深みのある豊かな響きがする。最も低い音域が欲しい・カバーしたい時に効果を発揮する。管の長さが最も長いチューバ。B♭管コントラバスチューバ。4本のバルブを備えており、ロータリー式とピストン式の2種類がある。ロータリー式とピストン式の両方を併せ持っている。ピストン式では、第4バルブは、システムが2種類あり、バルブ全てがトップアクションになっているものと、ピッチを補正するコンペンセイティング・システムが装着されてサイドアクションになっているものもある。コンペンセイティングシステムのバルブは、左手を回して押す。コンペンセイティング・システムの調性は、B♭管とF管のセミダブルの仕組みになっていて、このF管は、B♭管より完全4度低いものの、F管の部分の最低音はB♭管の最低音と同様で変わらず、音域の広さはB♭管の部分より低音側に4度狭いため、F管は低音域を補うシステムで、調子:B♭/Fセミダブル=コンペンセイティングシステム。コンペンセイティングチューバは、ユーフォニアムと同じメカニズムで、外観的にはユーフォニアム型チューバといえる。ユーフォニアムの形状をチューバの大きさにしたものである。コンペンセイティングシステムの第4バルブを押すことにより、一部分は、更に低いF管のサブコントラバスの長さになる。オーケストラや吹奏楽、学生(学校備品)、金管バンド、アンサンブル、マーチング用(マーチングチューバ)など、あらゆるジャンルに幅広く使われている。全チューバの中で最も広く使われているタイプで、常用楽器である。音域は、4バルブの場合、目安となるのは、Bb-1(29.14Hz)~B♭2(約233.08Hz)で、3オクターブある。最低音は、Bb-1(約29.14Hz)で、5弦コントラバスの最低音より半音低い。B♭管チューバは、金管楽器の中で、コントラバスの音域名を担当する。5弦コントラバスの最低音の役割や、コントラバスオクターブ(C0~B0)と共通の音域をカバーしたいときや、88鍵のピアノの最低音(27.5HzのA-1)付近のように、最も低い音域が一応欲しいときは、B♭管で補う。
コンペンセイティングシステムは、セミダブルホルンと同じ設計である。
B♭管チューバは、レバーを押さないときは約5m40cm、バルブを全部押すと約9m60cmの長さの管になる。
3本バルブ仕様のB♭管チューバもあり、スーザフォン(後述)がある。
B♭管チューバは、大きく分けて4種類あり、ロータリー式チューバ、ピストン式チューバ、マーチングチューバ、スーザフォンに分類される。
マーチングチューバは、B♭管のみ存在し、ピストンバルブ全てがトップアクションになっているB♭管チューバをベースにして、方に乗せて演奏できるようにした楽器。ベルの向きは横向き。マーチングチューバは、吹き込み管を取り替えることによってコンサート用のB♭管チューバになるコンバーチブルモデルもある。
C管チューバ[編集]
B♭管に次いで大きいチューバ。C管コントラバスチューバ。B♭管チューバより音域が全体に長2度高く、響きが軽やかで明るく輪郭もはっきりしている。幹の長さがB♭管より全音短い。バルブシステムの設計は、低音域を補うために第5バルブが付いていて、5本のバルブを備えており、バルブがB♭管チューバより1本多いことにより、操作が複雑で難しくなり、高価で扱いにくい。ピストン式の場合は、4ピストン+1ロータリーで、フロントアクションタイプのみ存在する。ロータリー式は、5ロータリー。C管チューバのバルブの数が5本の理由は、第5バルブの装着により、各自然倍音列の音域が低音側に広くなり、低音域を補うことができ、自然倍音のうち、オクターブ隔たっている1倍音と2倍音の間を半音階で埋めることができるようにするためである。バルブの数が多いため、音域が広い。音域は、B-1(約30.87Hz)~C3(約261.63Hz、真ん中のド)の3オクターブ+半音ある。主にオーケストラ、室内楽、バロック音楽、アンサンブルに使用されている。
E♭管バスチューバ[編集]
B♭管チューバより音域が全体に完全4度高い。バルブはピストン式のみ存在する。第4バルブは、ピッチを補正するコンペンセイティング・システムが装着され、調性は、E♭管とB♭管のセミダブルの仕組みになっていて、このB♭管は、E♭管より完全4度低いものの、B♭管の部分の最低音はE♭管の最低音と同様で変わらず、音域の広さはE♭管の部分より低音側に4度狭いため、E♭管は低音域を補うシステムで、調子:E♭/B♭セミダブル=コンペンセイティングシステム。音域は、E♭0(約38.9Hz)~E♭3(約311.13Hz)の3オクターブある。主に金管バンドに使われる。用法としてはB♭管コントラバスチューバと組んでオクターブやユニゾンを奏でることが多い。
F管バスチューバ[編集]
B♭管チューバより音域が全体に完全5度高く、E♭管バスチューバより長2度高い。管の長さが一番短いチューバ。バルブは、4ピストン+1ロータリーで、フロントアクションタイプのみ存在する。バルブの数は、C管チューバと同じで、5本である。音域は、F0(約43.65Hz)~F3(約349.23Hz)の3オクターブある。オーケストラ、室内楽、バロック音楽に使われる。F管チューバのバルブの数が5本の理由は、第5バルブの装着により、各自然倍音列の音域が低音側に広くなり、低音域を補うことができ、自然倍音のうち、オクターブ隔たっている1倍音と2倍音の間を半音階で埋めることができるようにするためである。
スーザフォン[編集]
「星条旗よ永遠なれ」で有名なアメリカのマーチ王、ジョン・フィリップ・スーザが自らの楽団用に考案したもので、管を大きく輪状に巻き付けて頭上にかかげるという工夫で、持ち運びできる演奏者に巻き付いた形で、B♭管でピストン式の3本バルブでできている。マーチングチューバの一種。スーザフォンはB♭管チューバと同じ調性と同じ管長を持つが、バルブが3本で、第4バルブを備えていないので、最低音は、普通の4本のB♭管チューバより半音7つ(5度)高く、最低音は約41.2HzのE0であり、B♭管チューバで出せる低音が半音7個分カットされ、4弦コントラバス、4弦ベースの最低音と同じである。4弦コントラバスと同じ音域でもある。スーザフォンはB♭管チューバの仲間でもある。スーザフォンのベルはアサガオのように広がりが急である。スーザフォンのベルの向きは前向き。スーザフォンの音域は、E♭管バスチューバと同じである。3本バルブのチューバは、スーザフォンのみ存在する。スーザフォンは、3本バルブのB♭管チューバといえる。3本バルブは、4本バルブに比べて低音域で鳴らせない音が出てくる。
まとめ[編集]
従って、チューバは、E♭管は4本バルブのみ、C管とF管は5本バルブのみ存在し、3本バルブは、B♭管チューバの派生楽器スーザフォンのみ存在する。
形状的に、ベルの向きは、異なる種類があり、ベルが上向きのものは座って演奏するためのもので、もう1つは、マーチング用に使えるように、ベルが前向きになっているものに分けられる。
チューバの各種類の音域の運指表[編集]
同じ指使いの運指・同じ管の長さで、息の力の強さの変更により吹いたときに出る音高の変わり方は、チューバの「自然倍音列」「自然倍音」である。チューバの運指表で、同じ運指に対する自然倍音列の音域は、最低音はペダルトーンである。チューバで出せる自然倍音の音域は、最低音はペダルトーン、最高音は8倍音である。
自然倍音については、「倍音」という名前が付いているが、ここで注意しなければならないのは、ただの「倍音」とは異なり、チューバ及び金管楽器の自然倍音は、基音に整数次倍音を複合した音色が、倍音単体・倍音1つのソロの音高の配列に近い並びで鳴るもので、純正律の倍音と一致せず、自然倍音は、7倍音を除いて、平均律寄りの差が0セント=平均律の並びで鳴る。楽器の自然倍音列の呼び方は、「第~」は付けずに、「○倍音」と呼ぶ。「倍音」だけの場合は、基音に整数次倍音を複合した音色で、「音色が含まれる倍音成分」のことである。
チューバの自然倍音列における周波数比は、3倍音=2.997、5倍音=5.04、6倍音=5.993、7倍音= 7.045で、7倍音のみ平均律より-25セントであり、7倍音を除いて平均律であることがわかる。
チューバの運指表は、ピストンバルブやロータリーレバーを何も押さないときである開放の状態は、運指番号の数字は「0(ゼロ)」になる。
※基音周波数440Hz=A3としている。音域表は、全て実音で記載されている。
※オクターブ表記を使った音名=英語音名とする
関連項目[編集]
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吹奏楽で一般的に使われる楽器 |