パイプオルガン

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パイプオルガン(pipe organ)とは、鍵盤楽器の一つである。

概要[編集]

楽器の王様とも呼ばれている。多数配列した大小の管を発音体として備え、鍵盤を押すことにより選択したパイプに加圧した空気を送り複数のフィート・倍音を出す仕組みとなっている。鍵盤で操作する管楽器で、各パイプの音高は固定的であり、鍵盤の全てに対応する数のパイプを持っている。パイプ・ふいご・風箱・鍵盤から構成される。手鍵盤、足鍵盤、音栓を操作しながら演奏する。GM(General MIDI)音色では「チャーチオルガン(church organ)」とも呼ばれる。GM音色番号は「20」。教会のパイプオルガンは、「cathedral organ」とも書かれる。

パイプオルガンは、教会や演奏会場に造り付けて置いてある、大型のオルガンで、建物の一部の大きさに匹敵する、巨大な構造体となっている。

鍵盤とストップレバー[編集]

発音する各パイプ群の音高の組み合わせや音色のバリエーションを調節するものは「ストップレバー」「ストップノブ」、単に「ストップ」と呼ばれる。ストップの形はノブ型、レバー型である。ストップレバーを選ぶことにより、必要なパイプだけを鳴らせる。電気オルガン(ハモンドオルガン)でいうドローバーと同じである。ストップレバーを引っ張り出すと音が作動し、押し込むと無音になる。一つのパイプからは一つの音しか出ない。音の高さはパイプの長さで決まる。例えば、鍵盤で「ドレミ」と3つの音を鳴らしたとき、高さの異なる3つのパイプが必要になってくる。各ストップレバーには、32'、16'、8'、5 1/3'、4'、3 1/5'、2 2/3'、2'、1 1/3'、1'、2/3'、1/3'、1/2'というたくさんの数字が書かれ、これは、オクターブ単位で設定する音高を表現する数字で、「フィート」と呼ばれる。各ストップに書かれているフィートは、「ストップのフィート」と呼ぶ。8フィート(8')のピッチは、ピアノの鍵盤と同じ高さの基音周波数の音高で、標準となる音の高さで、すなわち、記音と実音とが一致するストップである。「8フィート」は「8'ストップ」である。オルガンでピアノと同じ高さの基音周波数の音を出すには「8フィート」のストップを選ぶ。「16フィート」は、パイプの長さが8フィートの2倍になるので、実際に弾いたキーより1オクターブ低い音が出る。「Bourdon 8'」「Flute a Chem 4」などのように、それぞれ音色名とフィートが書かれている。「2 2/3'」の読み方は「2と2分の3フィート」である。上の鍵盤の音を、下の鍵盤でも出せるようにするボタンは「カプラー」と呼ぶ。最大のパイプは32フィートである。音域は、手鍵盤はC1~C6の61鍵で、5オクターブあり、足鍵盤はC1~G3の2オクターブ半+半音で、およそ2オクターブ半。足鍵盤はペダル鍵盤で、低音域用の鍵盤。手鍵盤は3段(4段のものもある)で、各段が5オクターブの音域を持つ。同じ高さの鍵盤を弾いても、ストップレバーの操作によって、音高は異なる。各鍵盤に、音色や音量、音高の異なった実際の音を出させる。手鍵盤の段は、下から順に「第1鍵盤」「第2鍵盤」と呼ぶ。鍵盤を押すとパイプの下にある弁が開き、ノブが引かれているストップのパイプに空気が流れ、音が出る。

音域[編集]

低音のペダル音から高音のフルート音まで、非常に広い範囲の音域と多彩な音色を持つ。ストップレバーには、プリンシパル系の音、フルート系の音、トランペット系の音、ストリングス系の音といったいろんな音色が混ざっている。パイプの種類によって音高や音色も違う。パイプオルガンの音色は、音色や音質や大きさが複数異なるパイプから発する音を集合させたものといえる。トランペット管は明るく通り抜ける音、フルー管は柔らかい音が出る音がする。フルート系の音色は、「オルガンフルート」と呼ばれ、サイン波や、電気オルガン(ハモンドオルガン、ドローバーオルガン)のサウンドに近い。ストップレバーの切り替えによってパイプオルガンのバリエーション音は大きく変化する。ストップレバーを多く引くほど、より豊かで厚みのある大規模な音色が出て、フルカプラーとなる。パイプオルガンの最低音の基音周波数は約16.35HzのC音である。つまり、32フィートをオンに設定し、基音を32フィートにしたときの鍵盤の最低音と一致する。パイプオルガンの最低音(下限)の実音の基音周波数は、88鍵のピアノの最低音の周波数「27.5Hzのラ」より半音9個(長6度)低い音となる。パイプオルガンの音色で、一番低いラ♭(ソ#)は、約25.96Hzで、88鍵のピアノの最低音の周波数「27.5Hzのラ」より半音下の音高である。

パイプには「フルー管」と「リード管」があり、金属製のパイプは「フルー管」と呼ばれる。パイプを太くするとフルートの音色に、細くするとストリングスの音色に近付く。各ストップレバーが支配しているパイプ列・パイプの大きさは、音色の違いによってある特定の形のパイプが複数使用される。

パイプオルガンの音色が含む周波数成分は、1つのフィートの音色はサイン波~フルート系~ノコギリ波まで、幅広い多彩な音色を持つ。

パイプオルガンのストップレバーで、8フィートより高いフィートの音色成分のうち、トランペット系やストリングス系の音色の音量成分を少なくし、サイン波かフルート系の音色の音量成分を多く組み合わせると、ブライトパイプオルガンの音色になる。

実際のパイプオルガンのフィート数
フィート 手鍵盤左端のC音
32'(任意?) 16.35Hz
16' 32.7Hz
8' 65.41Hz
5 1/3' 98Hz
4' 130.81Hz
3 1/5' ?
2 2/3' 196Hz
2' 261.63Hz
1 1/3' 392Hz
1' 523.25Hz
2/3' 783.99Hz
1/2' 1046.5Hz
1/3'(任意?) 1567.99Hz

パイプオルガンは、各フィートの音色を複数のオクターブで組み合わせたものといえる。基音からの音程が、8度、15度、22度、12度、19度を含む。基音のフィートは、16フィートと32フィートの2つある。

32フィートや16フィートの音色は、基音に整数次倍音を複合したノコギリ波のような音色のみ存在する。32フィートとその倍音は任意である。パイプオルガンの鍵盤上の音域では、32フィートは、約16.35Hz~約523.25Hzで、16フィートは、約32.7Hz~約1046.5Hzである。パイプオルガンの鍵盤上の音域は、MIDIノートナンバーでは16フィート固定なので、32フィートは、ノートナンバー24~84、16フィートは、ノートナンバー36~96となる。

パイプオルガンの最低音、16.35Hzのドは、MIDIノートナンバーでは24番(C0)となる。

パイプオルガンの平均音域は、約16.35HzのC音~約1046.5HzのC音である。

パイプオルガンの最低音、16.35Hzのドは、楽曲として使うのが困難で、ほとんど使われない。

MIDIノートナンバー[編集]

パイプオルガンの音色の実音の基音周波数をMIDIノートナンバーで表すと、ノートナンバー69(A3)の基音周波数は220Hzであり、ノートナンバー60番の真ん中のドは約130.81Hz、ノートナンバー36番(C1)は約32.7Hz、ノートナンバーの最低音0番(C-2)は約4.09Hz、最高音127番(G8)は約6271.93Hzで、88鍵のピアノの最高音より半音7個上である。440Hzはノートナンバー81(A4)となる。MIDIノートナンバーでは、マスターチューニング(ノートナンバー69)は220Hzであり、16フィートである。パイプオルガンの最低音はノートナンバー24(C0、約16.35Hz)である。ノートナンバー60番の真ん中のド(C3)を弾いたとき、実際鳴る音は、フィートは、最低音で16フィートで、周波数約130.81Hzの音が鳴る。パイプオルガンの最低音は約16.35Hzのドであり、パイプオルガンの最低音をMIDIノートナンバーに変換して表すと、ノートナンバー24(C0)となる。パイプオルガンの平均音域は、約16.35HzのC音~約1046.5HzのC音で、ノートナンバーに変換して表すと、24(C0)〜96(C6)となる。

基音周波数440Hzのラを、MIDIのパイプオルガンの音色で鳴らすときは、MIDIノートナンバー81(A4)を押さえるということになる。88鍵のピアノの音域と同じ周波数(27.5Hz~4186.01Hz)を、MIDIのパイプオルガンの音色で表現すると、ノートナンバー33(A0)~120(C8)となる。27.5Hzはノートナンバー33、約4186.01Hzはノートナンバー120となる。

電子ピアノ・電子キーボードといった電子楽器におけるパイプオルガンの音色は、メーカーによって、さまざまなバリエーションが存在する。GM(General MIDI)規格の音色の音源におけるパイプオルガンの基音周波数は、ノートナンバー69は220Hz、440Hzはノートナンバー81、約32.7Hzのドはノートナンバー36、ノートナンバーの最低音0番は約4.09Hz、ノートナンバーの最高音127番は約6271.93Hzに統一・決まっている。

理由は、パイプオルガンの実音の周波数の音域から平均したものである。

電子楽器で、1つのメーカーのみでは、MIDI音源のパイプオルガンの音色は、バリエーションが不在であるものが多い。

日本では、昭和7年(1932年6月2日日本楽器が初めてパイプオルガンの製作に成功している。

General MIDI音源のフィート

例として、ノートナンバー36(C1)を弾いているとき、ストップレバーでは以下の音が鳴る。

フィート\音高 ノートナンバー36(C1)の周波数
16'=基音 32.7Hz
8' 65.41Hz
5 1/3' 98Hz
4' 130.81Hz
2 2/3' 196Hz
2' 261.63Hz
1 1/3' 392Hz
1' 523.25Hz
2/3' 783.99Hz
1/2' 1046.5Hz
1/3'(任意) 1567.98Hz
1/4'(任意) 2093Hz

88鍵の電子ピアノのMIDI音源におけるパイプオルガンの音色…ノートナンバーで表現

─黒鍵────白鍵───

──────┐
       108
──────┤
       107
106■──┤
       105←1760Hz
104■──┤
       103
102■──┤
       101
──────┤
       100
099■──┤
       098
097■──┤
       096
──────┤
       095
094■──┤
       093←880Hz
092■──┤
       091
090■──┤
       089
──────┤
       088
087■──┤
       086
085■──┤
       084
──────┤
       083
082■──┤
       081←440Hz
080■──┤
       079
078■──┤
       077
──────┤
       076
075■──┤
       074
073■──┤
       072
──────┤
       071
070■──┤
       069←220Hz
068■──┤
       067
066■──┤
       065
──────┤
       064
063■──┤
       062
061■──┤
       060
──────┤
       059
058■──┤
       057←110Hz
056■──┤
       055
054■──┤
       053
──────┤
       052
051■──┤
       050
049■──┤
       048
──────┤
       047
046■──┤
       045←55Hz
044■──┤
       043
042■──┤
       041
──────┤
       040
039■──┤
       038
037■──┤
       036
──────┤
       035
034■──┤
       033←27.5Hz
032■──┤
       031
030■──┤
       029
──────┤
       028
027■──┤
       026
025■──┤
       024
──────┤
       023
022■──┤
       021←13.75Hz
──────┘

パイプオルガンの最低音(下限)は、ノートナンバー24なので、ノートナンバー23以下は、パイプオルガンの最低音(下限)より下に超えている音で、パイプオルガンの音域には含まれていない。

MIDIノートナンバー0~127におけるパイプオルガンの音色の基音周波数…
─黒鍵────白鍵───

──────┐
       127
126■──┤
       125
──────┤
       124
123■──┤
       122
121■──┤
       120
──────┤
       119
118■──┤
       117←3520Hz
116■──┤
       115
114■──┤
       113
──────┤
       112
111■──┤
       110
109■──┤
       108
──────┤
       107
106■──┤
       105←1760Hz
104■──┤
       103
102■──┤
       101
──────┤
       100
099■──┤
       098
097■──┤
       096
──────┤
       095
094■──┤
       093←880Hz
092■──┤
       091
090■──┤
       089
──────┤
       088
087■──┤
       086
085■──┤
       084
──────┤
       083
082■──┤
       081←440Hz
080■──┤
       079
078■──┤
       077
──────┤
       076
075■──┤
       074
073■──┤
       072
──────┤
       071
070■──┤
       069←220Hz
068■──┤
       067
066■──┤
       065
──────┤
       064
063■──┤
       062
061■──┤
       060
──────┤
       059
058■──┤
       057←110Hz
056■──┤
       055
054■──┤
       053
──────┤
       052
051■──┤
       050
049■──┤
       048
──────┤
       047
046■──┤
       045←55Hz
044■──┤
       043
042■──┤
       041
──────┤
       040
039■──┤
       038
037■──┤
       036
──────┤
       035
034■──┤
       033←27.5Hz
032■──┤
       031
030■──┤
       029
──────┤
       028
027■──┤
       026
025■──┤
       024
──────┤
       023
022■──┤
       021←13.75Hz
020■──┤
       019
018■──┤
       017
──────┤
       016
015■──┤
       014
013■──┤
       012
──────┤
       011
010■──┤
       009←約6.88Hz
008■──┤
       007
006■──┤
       005
──────┤
       004
003■──┤
       002
001■──┤
       000
──────┘

パイプオルガンソロの曲[編集]

日本では「鼻から牛乳」の替え歌で有名であるが、元はオルガン曲である。音域…最低音:約18.35Hzのレ(ノートナンバー26、D0)~約466.16Hzのシ♭(ノートナンバー82、B♭4)[1]。「トッカータとフーガ BWV565/バッハ」は、電子ピアノ、DTMで使うMIDIキーボードでは、オクターブシフトを使わない場合は、鍵盤の最低音がD0以下、88鍵(A-1~C7)の範囲でないと弾けない曲である。

外部リンク[編集]

関連項目[編集]

  1. バッハの時代は、ピッチが半音低く、D0の音が17.3Hz、B♭4の音が440Hz前後であった。現代でも、楽器をこの時代基準でチューニングして演奏する場合もある。