菅孝行
菅 孝行(かん たかゆき、1939年7月17日 - )は、劇作家、評論家[1]。元河合塾小論文科講師。公益財団法人舞台芸術財団演劇人会議評議員、ルネサンス研究所運営委員、河合文化教育研究所研究員。『変革のアソシエ』運営委員会運営委員、編集委員会編集長。
略歴[編集]
1939年、陸軍中将菅晴次の子として東京に生まれる[2]。学習院初、中、高等科を経て[3]、1962年、東京大学文学部国文科卒業[4]。東大在学中に演劇活動を始め[2]、卒業後は東映に入社、京都撮影所で演出助手を務める[3]。1964年、東映労組京撮支部書記長に[2][3]。1965年、CM/PR映画制作部門に配転。1967年、退社、上京[3]。以後、河合塾小論文科講師などを務めながら、演劇論、天皇制論、思想論などの分野で評論活動を展開する[5]。1972年、演劇集団「不連続線」を結成[1]。同年に起きた連合赤軍事件の裁判では連合赤軍公判対策委員会世話人を務める[2]。1983年の昭和記念公園反対闘争を経て、1984年に天野恵一らと反天皇制運動連絡会(略称:反天連)を結成する。2003年~2010年、財団法人静岡県舞台芸術センター文芸部所属[6]。2014年~2017年、梅光学院大学文学部特任教授[7]。
戯曲集に『ヴァカンス/ブルースをうたえ』(1969年)、『いえろうあんちごうね』(1978年)、戯曲に「はんらん協奏曲」(『現代日本戯曲体系 第8巻』所収、三一書房、1972年)、シナリオに「北村透谷 わが冬の歌」(ATG、1977年公開/『年鑑代表シナリオ集1977年版』所収、ダヴィッド社、1978年)がある。評論に『吉本隆明論』(1973年)、『解体する演劇』(正・続、1974年・1981年)、『竹内好論』(1976年)、『戦後演劇』(1981年)、『関係としての身体』(1981年)、『感性からの自由を求めて』(1983年)、『身体論』(1983年)、『想像力の社会史』(1983年)などがある。
人物[編集]
- 1962年に吉本隆明主宰の雑誌『試行』に掲載され、1967年に同名で単行本化した新劇批判のマニフェスト「死せる「芸術」=「新劇」に寄す」は、演劇評論家の扇田昭彦から「思想的にアングラを切り開いた画期」と評価されている[8]。
- 天皇制に反対していることで知られる。1970年代前半から天皇制論を執筆し、1984年に反天皇制運動連絡会(略称:反天連)を結成、1980年代の反天皇制運動を理論的にリードした。2018年現在は天皇制や国家に対する批判の論理の違いから反天連を離れ、天野恵一や反天連への批判を行っている[9]。
- 1973年の「天皇制の最高形態とは何か」(『天皇論ノート』所収)では、象徴天皇制の成立を天皇制の「崩壊の第一歩」とする見方に反して、「戦後においてこそ天皇制は護持され、発展されますます完成されたのだといえるのではないか」と問題提起し、象徴天皇制を「天皇制の最高形態」と表現した。
- 2018年から雑誌『映画芸術』に自伝「ことにおいて後悔せず」を連載している。
著書[編集]
単著[編集]
- 『死せる「芸術」=「新劇」に寄す――菅孝行評論集』 書肆深夜叢書、1967年
- 『ヴァカンス/ブルースをうたえ――菅孝行戯曲集』 三一書房、1969年
- 『劇的空間のかなたへ――演劇における近代の死とは何か?』 大和書房(大和選書)、1971年
- 『狂騒の論理』 現代評論社、1971年
- 『吉本隆明論』 第三文明社、1973年
- 『騒乱のフォークロア――方法としての民衆』 大和書房、1973年
- 『解体する演劇』 アディン書房、1974年
- 『天皇論ノート――天皇制の最高形態とは何か』 田畑書店、1975年/明石書店、1986年
- 『延命と廃絶――昭和の時間と文学の党派性』 河出書房新社、1975年
- 『竹内好論――亜細亜への反歌』 三一書房、1976年
- 『反昭和思想論――十五年戦争期の思想潮流をめぐって』 れんが書房新社、1977年、新版1985年
- 『天皇制――解体の論理』 三一書房、1977年/明石書店、1985年
- 『戦後思想の現在――続反昭和思想論』 第三文明社、1978年
- 『現代の部落差別と天皇制――国家権力と差別構造』 明石書店、1978年
- 『いえろうあんちごうね――菅孝行作品集』 アディン書房、1978年
- 『現代史のなかの学生』 思想の科学社、1979年
- 『鶴見俊輔論』 第三文明社、1980年
- 『何よりもダメな日本――思想情況への発言』 批評社、1981年
- 『戦後精神――その神話と実像』 ミネルヴァ書房(叢書・同時代に生きる)、1981年
- 『関係としての身体』 れんが書房新社、1981年
- 『日本の思想家――近代篇』 大和書房(銀河選書)、1981年
- 『戦後演劇――新劇はのりこえられたか』 朝日新聞社(朝日選書)、1981年/社会評論社、2003年
- 『解体する演劇 続』 れんが書房新社、1981年
- 『全学連』 現代書館(For beginners シリーズ)、1982年
- 『マルクスと現代』 未來社、1982年
- 『感性からの自由を求めて――文明の破局・存在の危機』 毎日新聞社、1982年
- 『何よりもダメな日本 2 文化情況への発言』 批評社、1982年
- 『天皇制』 現代書館(For beginners シリーズ)、1983年
- 『反昭和史』 第三文明社、1983年
- 『身体論――関係を内視する』 れんが書房新社、1983年
- 『想像力の社会史――作劇の時間構造』 未來社、1983年
- 『何よりもダメな日本 3 核時代の科学技術と社会の原理』 批評社、1984年
- 『賤民文化と天皇制』 明石書店、1984年
- 『女の自立・男の自由――性別分業の解体を求めて』 毎日新聞社、1984年
- 『現代天皇制の統合原理』 明石書店、1984年
- 『戦後民主主義の決算書』 農山漁村文化協会(人間選書)、1985年
- 『差別』 現代書館 For beginners シリーズ、1986年
- 『架空ドキュメントXデー――昭和の終る日』 亜紀書房、1986年
- 『高度成長の社会史――暮らしの破壊40年』 農山漁村文化協会(人間選書)、1987年
- 『天皇制国家と部落差別――現代日本の統合と排除』 明石書店、1987年
- 『9・11以後丸山真男をどう読むか』 河合文化教育研究所(河合ブックレット)、2004年
- 『戦う演劇人――戦後演劇の思想』 而立書房、2007年
- 『菅孝行『天皇制論集』 第1巻 天皇制問題と日本精神史』 御茶の水書房、2014年
- 『三島由紀夫と天皇』 平凡社(平凡社新書)、2018年
- 『天皇制と闘うとはどういうことか』 航思社、2019年
- 『演劇で「世界」を変える――鈴木忠志論』 航思社、2021年
- 『ことにおいて後悔せず――戦後史としての自伝』 航思社、2023年
共著[編集]
- 『インディアスを「読む」』 原広司、石原保徳、志麻麗子、花崎皋平、矢下徳治、和田春樹、海老坂武、山崎カヲル、太田昌国、池田浩士共著、現代企画室、1984年
- 『一人でもたたかえる「日の丸」・「君が代」――たたかうあなたへ連帯のメッセージ』 名取弘文、藤田邦彦共著、ユニテ、1984年
- 『対論共同体のゆくえ』 松本健一共著、第三文明社、1985年
- 『対論ナショナリズムのゆくえ』 松本健一共著、第三文明社、1985年
- 『戦後とは何か』 鶴見俊輔、日高六郎、針生一郎共著、青弓社、1985年
- 『戦後史の天皇・総解説――最後の御前会議からXデーまで』 丸山照雄、穂坂久仁雄、天野恵一共著、自由國民社、1986年
- 『天皇制にこだわる――天皇依存症の研究』 野坂昭如共著、明石書店、1986年
- 『日本の権力』 高野孟共著、現代書館(For beginners シリーズ)、1989年
- 『近代日本の国家権力と天皇制』 安丸良夫共著、御茶の水書房、2014年
- 『これからの天皇制――令和からその先へ』 原武史、磯前順一、島薗進、大澤真幸、片山杜秀共著、春秋社、2020年
編著[編集]
- 『Xデーがやってくる!――危機の中の天皇制攻撃』 柘植書房、1984年
- 『いまなぜ差別を問うのか』 明石書店(シリーズ・差別構造を読む)、1985年
- 『モグラ叩き時代のマルキシズム』 現代企画室(PQ books)、1985年
- 『反差別の思想的地平』 明石書店、1986年
- 『叢論日本天皇制 1 現代国家と天皇制』 柘植書房、1987年
- 『叢論日本天皇制 2 天皇制の理論と歴史』 柘植書房、1987年
- 『叢論日本天皇制 3 天皇制に関する理論と思想』 柘植書房、1988年
- 『現代日本の差別』 明石書店(シリーズ・差別構造を読む)、1988年
- 『一人でもたたかえるXデー――たたかうあなたへ連帯のメッセージ2』 名取弘文、藤田邦彦共編著、貝原浩イラスト、ユニテ、1988年
- 『「自由な人間」であり続けるために――「一人でもたたかえる日の丸・君が代」パート2』 名取弘文、藤田邦彦共編著、ユニテ、1994年
- 『佐野碩 人と仕事――1905-1966』 藤原書店、2015年
学習参考書[編集]
- 『合格できる小論文 《自己評価グラフ付》-系統別・論述タイプ別実践問題集/採点者が納得する、答案の作り方-』 白川真澄、安藤紀典、森永和英共編著、河合出版、1999年
- 『早稲田大の小論文』 安藤紀典、白川真澄、森永和英共編著、河合出版、2000年
- 『慶應大の小論文』 安藤紀典、白川真澄、森永和英共編著、河合出版、2003年
- 『小論文入門 《推薦小論文の書き方付》 -改訂版-』 白川真澄、安藤紀典、森永和英共編著、河合出版、2004年
脚注[編集]
- ↑ a b 菅孝行(かん たかゆき)とは コトバンク
- ↑ a b c d 上映/討議『北村透谷 わが冬の歌』菅孝行×日本映画大学・瀆神「天皇制、メロドラマ、あるいは幻想の共同性」 Facebook
- ↑ a b c d /27 第311回 現代史研究会(レジュメ:改元・改憲・廃絶を考える―拙著『三島由紀夫と天皇』を手掛りに) ちきゅう座
- ↑ 『吉本隆明論』著者紹介
- ↑ 『リーディングス戦後日本の思想水脈 2』著者紹介
- ↑ 【授業】西悟志について私が知っている二、三の事柄(菅孝行) 劇場文化
- ↑ 投稿特集 ー梅光問題を考えるー 長周新聞
- ↑ シンポジウム:アングラ演劇は死なず! ―小劇場運動の50年― SPAC
- ↑ 天皇制をめぐって HAPAX(2018年10月20日)
外部リンク[編集]
- 天皇制と闘うとはどういうことか(1)/菅孝行 第一回 安倍政権の末期的醜態と天皇明仁の「護憲・平和」(月刊コモンズ)
- 民主主義の荒廃に抗して安倍内閣の醜状から天皇制の廃絶を考える(共産主義者同盟統一委員会)
- 先人の仕事を検証することの意味(現代企画室)
- 利賀に彩りをそえた人々 菅 孝行(富山県利賀芸術公園)