日本語の動詞の活用

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日本語の動詞の活用には「活用形」と「活用型」がある。

概要[編集]

書き言葉の「活用形」には文語・現代語を合わせて十一種あり、その活用のしかたの分類が「活用型」である。

活用形[編集]

活用形は単なる羅列ではなく、一部に「連用形/連体形」「現在形/過去または完了形」という直交関係があって、たとえば「居る」だったら「い(連用形現在)」「いて(連用形過去または完了)」「いる(連体形現在)」「いた(連体形過去または完了)」となる。
文語文法では「未然・連用・終止・連体・仮定・命令」の六つが知られるが、これ以外に「已然形」があって計七つ。これらを現代日本語の学習用に整理したはずなのだが、いろいろややこしい問題があって、「これは一本化できんのか?」というので10個+1個の計11個になった。
まず、「+1」のところから説明すると、

  • 「ござる」と「ませ」(助動詞の依願・命令)が接続すると「ござりませ」になるはずだが、「ございませ」という形は普通に使われている。
  • 「いらっしゃる」と「ませ」が接続すると「いらっしゃりませ」になるはずだが、「いらっしゃいませ」という形は普通に使われている。

ということを説明するために+1になっている。しょっちゅう出てくる(=出現頻度が高い)が、出てくるシチュエーション(状況)が限られているので覚える必要はほとんどない。
「現代語では連体形と終止形は同じ形をしている」と学校では教えているが、これは現代語では動詞と形容詞の終止形が使われなくなっただけ。
戦後教育だと常用漢字体の「已」が使えなくなったので「已然形」を「仮定形」と言い換えるようになった。本来は未然形⇔已然形という関係があった。そうなると「仮定形」はどこへ行っちゃったのかというと、「あんまり使われないし古臭いから教えなくていい」というので教科書から消えた。「寄らば斬るぞ」が仮定形で「寄れば斬るぞ」が已然形。
そんでもって「未然形」は否定の意味で使うと形が変わるので、否定のほうは「否定形」とか「打消形」とか呼んで別扱いしたほうがいい。そうやって整理すると計十個になる。
そうなると、

  1. 未然形
  2. 已然形
  3. 打消形
  4. 連用形現在
  5. 連用形過去または完了
  6. 終止形
  7. 連体形現在
  8. 連体形過去または完了
  9. 仮定形
  10. 命令形
  11. 「ます」接続系

となる。 なお、形態素との接続の関係で「原形」を立てることもあるが、こちらが「活用形」ではない。

指標音原形[編集]

「書く」の連用形の過去または完了形は「書いて」であり、連体形の過去または完了形は「書いた」である。そのため「書く」の語幹は「か」と学校で教えられている。
ところが分類としては「子音末尾音k」なので、ローマ字で表記すると語幹は“kak”である。そのため五十音図で説明しようとすると、文法規則が非常にややこしくなる。そんなわけで「指標音」というものが立てられ、母音としては「i・e」(上一段・下一段)「a・o・u」(五段ハ行・ワ行)、子音としては「k・g・s・z・t・d・n(・h)・m・r」がある。ただし「過去または完了形」においては指標音が消失してしまうため、五十音図表現だとうまく説明できない。そのため、「指標音まで含めたローマ字表記の語幹」を採用すると、「う/よう」は「活用形なのか形態素なのか判断がつかない」ということになる。

  • 「見よう」「出よう」⇒ mi-you、de-you
  • 「買おう」「酔おう」「喰おう」⇒ ka-ou、yo-ou, ku-ou
  • 「書こう」「嗅ごう」⇒ kak-ou、kag-ou
  • 「貸そう」「刺そう」⇒ kas-ou、sas-ou

とかいった形になるわけだが、この動詞活用の深奧部に触れるとしばしば学生時代のトラウマに引っかかってアナフィラキシー・ショックを起こしたり狂乱状態(人狼化あるいは卓袱台ひっくり返し状態)になってしまうので、日本語処理界隈ではオカルト(密儀)とされており、それに触れるためには契約をしなければならぬ[1]

活用の型[編集]

  • 不規則活用
  • 一段活用
  • 五段活用

の三種があるが、五段活用は音便との関係があって五十音図で説明すると話がややこしくなる。そんなわけで、

  • 一段活用 ⇒ 母音末尾動詞
  • 五段活用 ⇒ 子音末尾動詞

としちゃえば話は早いのだが、h 音が聞きとりづらくなった[2]ので、

  • 五段活用ハ行音末尾動詞 ⇒ a・o・u 音という母音末尾の動詞なんだけど、活用は五段活用

ということになっている[3]

動詞の指標音によるタイプ分け[編集]

ローマ字で五段活用動詞の活用を表すと、活用語尾が同じになるものがあることが分かる。

  • k・g 音 - 書く・咲く・無く、泳ぐ・漕ぐ・嗅ぐ・殺ぐ・剥ぐ
  • t・r 音 - 勝つ・立つ、有る・取る・寄る
  • n・b・m 音 - 去ぬ・死ぬ、飛ぶ・呼ぶ、噛む・挟む
  • s 音 - 押す・越す

同じことが一段活用動詞にも謂えて、

  • i・e 音 - 着る、出る
  • a・o・u 音 - 買う、襲う、食う

と分類できる。 ややこしいのは、論文なんかだと和欧混植といって漢字かな交じり英単語交じりというテキストを開いてにしなければならないので、この関係を五十音ベースで記述しようとすると非常に面倒臭くなることである。それでもやった奴はいるわけだが。

総括[編集]

要するに、教科書の記述が解りにくいので教師も学生も苦労していて社会が迷惑しておるのだ、くそ。

使役・受動・尊敬・可能・ら抜きの可能の形態素[編集]

「出る(de)」は、使役「出させる(de-sase)」、受動「出られる(de-rare)」、尊敬「出られる(de-rare)」、可能「出られる(de)」、ら抜きの可能「出れる(de-re)」となる。こうしたパターンを整理して網羅し、受動なのか尊敬なのか可能なのかの見当をつけるというのがけっこうむつかしくはある。
さらに、これが五段活用で使役とかいうと、そのあとに別の形態素が来ると形が変わる。「書かされる」と「書かせられる」はどちらも正しいのだけれど、後者はなんとなく冗長な感じがする。これは「書かされる(書k-as-are-ru)」「書かせられる(書k-ase-rare-ru)」の違いで、前者は「五段k ⇒ 五段s ⇒ 下一 ⇒ 連体現」なのに後者は「五段k ⇒ 下一 ⇒ 下一 ⇒ 連体現」となるからだ。
このあたりは暗記してどうにかなるようなものではないので慣れるしかないが、相手をしてくれるヒマな人はそうそういないので、パソコン相手にチャットで鍛えるのがいい。

人間生活との関わり・利用[編集]

このあたりをちゃんと分かりやすく説明した国文法の教科書がないので、いまだに日本語ワープロは馬鹿であり IME の変換精度が低くて日本語をちゃんと使わない政治家が出しゃばってくるのである。教育が悪いのであって、メディア自体はただの媒体だから悪くはない。あとは察してくれ。私は立場姉ちゃんやチー牛寄りの立場であって、メディア規制反対派である。もちろん言葉狩りにも反対だが、差別にも反対する。

その他[編集]

脚注[編集]

  1. つーても、ここにこうやって堂々と書いてあるわけだが(笑)
  2. 昔は「p」「f」だったらしい。「金鳥」の「どんと」の TV CM 放映の際に、大野晋先生のところに問合せが来たという。
  3. 嘘だと思ったらプログラムに落として実行してみよう。このあたりは大修館の『言語』の「読者空間」において 1992 年に島田正雄 (システムエンジニア)が議論している。

関連項目[編集]

参考資料[編集]

外部サイト[編集]