パートタイマー
パートタイマーとは、正社員よりも労働時間が短い労働者を意味する[1]。表現が異なるだけでアルバイトも同じことを意味する[2]。以後、アルバイトも同義としてパートタイマーで統一して説明する。
概要[編集]
パートタイマーは一般的に主婦や学生、フリーターなどを中心に働く人が年々増加している[1]。特に飲食店やスーパーマーケットなどはパートタイマーが社員の大半を占める場合がある[1]。ただし、それほど重要な労働力であるにも関わらず、当初は会社とパートタイマーとの間に労働契約が存在せず、そのまま採用される場合が大半でそのために労働条件をめぐるトラブルも多かった[1]。
そのため法律の改正により、会社はパートタイマーを雇う際に賃金や労働時間などの労働条件に加え、働き続けた場合の昇給の有無や退職手当の有無、賞与(ボーナス)の有無といった条件も文書に示さないといけないことが明確化された[1]。パートタイマーの労働条件は同じ会社で働く正社員より低いのが一般的で、何年フルタイムで正社員同様に働き続けても、中には店長などの責任ある立場に就いている場合でも、パートタイマーだからという理由だけで正社員に比べて労働条件が劣化していた[1]。そのため、パートタイマーの中でも「労働契約をずっと繰り返していて、契約期間に定めがない状態になっている」「仕事の内容や責任の重さが正社員と同じである」「人事異動の有無など勤務の仕組みが正社員と同じである」などの3つの条件に当てはまる場合は、賃金の決定方法、キャリアアップのための教育の実施、福利厚生施設[3]の利用などの待遇を正社員と同じにしなければならないと決められた[1][4]。ただし実際のところ、3つの条件に当てはまらない人も多く、パートタイマー全体でみた場合、正社員との待遇の格差は縮まらないままである[4]。ただし優秀な人材を確保したいなどの考えから、小売業界や飲食業界を中心にパートタイマーに対して試験を実施し、合格者を正社員に格上げする会社も出てきている[4]。
「アルバイト」と「正社員」の区別は慣習的なものであり、企業がそのように勝手に呼び分けているだけ(「パート」と「アルバイト」の区分についても同様)であり同一同格の労働者である。企業が正(規)社員のモチベーション向上の為に作為的に用意られている外国語(ドイツ語)であり、俗にいうブラック企業では恣意的なヒエラルキーとして使われる「企業内差別用語」であるとする指摘も見られる。それが是正されぬまま長年にかけ、ポップな親しみやすい言葉とし日本中に普及した為、安価に雇え、また、使い捨て感覚で扱える求人の言葉として普及しており、居酒屋チェーンワタミなどでは経営合理化の余波が労働的に弱い立場にあるアルバイトにまで及んでおり人間の使い捨て化は深刻な問題となっている。
アルバイトの職種・業種[編集]
アルバイトの職種・業種は、第三次産業が多い。これは第三次産業の活動が、機械設備等よりも労働力に依存することが多いためである。例えば、下記のようなものがある。
- コンビニエンスストアや各種量販店、販売店の販売スタッフ・店員
- 販売員に専門的なスキルや高い接客能力を求めるなどの理由から、販売員にアルバイトを雇用しない方針を採る企業もある。
- コールセンター(カスタマサポートセンター)のオペレータ
- 居酒屋やレストランなどの飲食店スタッフ(調理系は除く)
- 映画館やゲームセンター、遊園地などのアミューズメント従業員
- 交通量調査などの各種調査員
- 学習塾講師
- 個別指導塾などの学生講師やチューターはこの形態であることが多い。集団授業を行うような場合では、高い指導力や授業マネジメント力を求められるために本職の講師が受け持つといった分業が垣間見える。
- キャンペーン・イベントコンパニオン
- スポーツジムのインストラクター
- 工場内作業、建築作業、引越し作業などのいわゆるガテン系
- 等
アルバイトの探し方の変遷[編集]
ウェブの普及とともに、「求人サイト」とよばれる、アルバイトの求人募集を網羅したサイトがポピュラーになっている[5]。加え、求人雑誌もフリーペーパー化が顕著で、求人情報の入手経路は多岐かつ無料化が進んでいる。かつては、求人誌は有料、店頭での直接応募などがポピュラーであったが、インターネットの普及と同じく、求人情報へのコスト意識・若年層のアルバイトの探し方にこのような変化があった。
アルバイト賃金の地域間格差拡大[編集]
2007年の東京都内の平均時給は約1100円であるが、北海道・沖縄などは未だに600円台の職種も多い。首都圏では時給1500円以上という職種も一部見受けられる。
実質的な生活費は地方も首都圏もあまり変わらないため倍近い差が見られる。生活費で地方が首都圏より安いのは家賃くらいである。さらに北海道・東北などは寒冷・積雪に対する費用も首都圏よりかかる。
正社員とアルバイトの賃金格差縮小[編集]
前項でも挙げられているが、首都圏では時給1500円以上という職種も一部では見受けられるが、時給1500円を月給に換算すると、月20日勤務した計算でも24万円になり、これは一部上場企業の平均大卒初任給(20万円前後)より4万円近くも上であり、中小企業と比較した場合では、保険・賞与を含めた上でも賃金が逆転しているケースも多く見られる。
サービス残業が求められることがある正社員よりも、学生のアルバイトの方が一時間当たりの賃金単価が高いという状況は極めて異常であり、早急な改正が求められる。一部の職種は欧米と同水準の大卒初任給、年収500~600万円程度にすべきだとの意見もある。大学の授業料を自己負担しているにもかかわらず中小企業に入社した場合、高額アルバイトの平均に追いつくのも30歳前後になってからである。最近の若者はこの点を正確に認識しており、昨今のニート問題や、離職率増加の一因になっていると思われる。そもそも、一部上場の有名大企業や公務員等は離職率も中小企業よりずっと低い。
勤勉さと利益相反について[編集]
アルバイトがまじめに働くほど、企業側が正規雇用者が必要ないと判断する現象がおきている。 フルタイムのアルバイト側からすれば、真面目に働いても正規雇用者にしてもらえる見込みがない場合、求職活動をしながら解雇されない最低限の労働しかする必要がなくなってしまう。企業側が業務を非正規雇用者で代替可能と判断する以上、本質的に非正規雇用者と勤勉性は利益相反の関係にある。逆に、(全てではないが)正規雇用者の様に長期的に見ても給料が増える事もなく、労働条件が良くなる事もないせいか、まじめにやらない(クビにならない程度に怠け気味(覇気がない)、適当にやる)というスタンスの者もいる。ただし、言うまでもなく、このタイプで長続きする者はあまりいない。同僚や上司との関係が良好なものになり得ないためである。
その他[編集]
年間の収入合計が103万円を超えた場合、所得税が発生する他、親や配偶者の扶養控除の対象からはずれるため、意図的に収入をこの額以下に抑えようとすることがある。なお、2ヶ所以上でアルバイトしている場合、2ヶ所目以降については、1円であっても所得税が源泉徴収されることになる。この場合、合計額が103万円以下であれば、翌年以降5年以内に確定申告をすることで、還付を受ける事ができる。
海外のパートタイマー[編集]
イギリスやフランス、ドイツなどのEU(欧州連合)諸国でも、かつてパートタイマーと正社員の賃金の格差が問題になっていた[6]。そこで格差を解消するために1997年にEUパートタイム労働指令が採択された[6]。これはパートタイマーであるというだけの理由でフルタイム労働者(正社員)より不利な扱いをされないものとするというもので、同じ仕事をする以上同じ賃金が支払われる「同一労働・同一賃金」が原則とされた[6]。その結果、ヨーロッパでは正社員とパートタイマーの賃金の差はかなり縮まっている[6]。