産業別組合

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産業別組合(さんぎょうべつくみあい)とは、産業別に組織された労働組合産業別労働組合産別組合産別労組産別ともいう。同一産業に従事する労働者が直接加入するものと同一産業に属する企業別組合で構成される産業別連合体があり、前者のみを産業別組合と呼ぶことがある[1]。初期の労働組合は熟練労働者が組織する職業別組合(クラフトユニオン)が一般的だったが、機械化の進展に伴う旧型職種や熟練の解体、半熟練・不熟練労働者の増加で労働市場独占力が低下し、不熟練労働者を中心とする一般組合、続いて職種や熟練度に関係なく同一産業の労働者を組織する産業別組合が主流になった。アメリカでは職業別組合主義に立つアメリカ労働総同盟(AFL)内の産業別組合派が1935年に産業別組織委員会を結成し、1938年にAFLから独立して産業別組織会議(CIO)を結成した。1955年にAFLとCIOは合同してアメリカ労働総同盟・産業別組織会議(AFL-CIO)を結成した。韓国の労働組合は1990年代以降、民主労総を中心に企業別組合から産業別組合への転換が進められ、2010年時点で民主労総の組合員の79.5%、韓国労総を含めると組合員の54.1%が産業別組合に所属している[2]

戦後日本の労働組合は企業別組合や事業所別組合が主流をなし、同一産業の企業別組合や企業別連合体企業グループ労連が産業別連合体を構成する。日本では、個人加入の単組、連合体、協議体を区別せず産業別に組織された労働組合を単産(単位産業別組合、単一産業別労働組合、産業別単一組合の略称)と呼び、慣用的には企業別組合を単位組合とする産業別連合体を単産と呼ぶことがある。異種産業の労働組合を包括した産業別組合(UAゼンセンなど)は複合産別と呼ばれる。

個人加盟の産業別組合[編集]

日本の産業別組合は企業別組合の産業別連合体として組織されており、欧米に多い個人加盟の産業別組合(産業別単一組合)は少数しかなく、産業別単一組合でも企業別組合の連合体という性格が強い。日本の主な産業別単一組合には全日本海員組合全日本港湾労働組合(全港湾)、全日本損害保険労働組合(全損保)、日本金属製造情報通信労働組合(JMITU)などがある。全逓信労働組合(全逓、現・JP労組)や国鉄労働組合(国労)など独占的公営事業の労働組合も産業別組合と呼ばれる。「産業別団体交渉」「産業別労働協約」を実現している個人加盟の労働組合を「産業別労働組合」であると捉えた場合、全日本海員組合は日本で唯一の産業別労働組合といわれる[3]。なお産業別連合体でも産業別賃金交渉を実現した例もあるが、ほとんどが消滅している。松村文人編著、藤井浩明、木村牧郎著『企業の枠を超えた賃金交渉――日本の産業レベル労使関係』(旬報社、2013年)は「(1)1960年代まで存続したのは、石炭の対角線交渉、私鉄の中央統一交渉、ビールの統一交渉、(2)1980年代まで存続したのは、海運・外航部門の統一交渉、金属機械の石川県の地域連合交渉、(3)1990年代まで存続したのは、私鉄の中央集団交渉、繊維の業種別中央交渉(化繊の連合交渉、羊毛の集団交渉、麻の連合交渉)、(4)2000年代まで存続したのは、海運・フェリーの統一交渉、尾西地区毛織業の地域集団交渉、(5)現在も存続しているのは、海運・内航部門の統一交渉」としている[4]

大産業別組織[編集]

大産業別に組織された連合体・協議体には、全日本金属産業労働組合協議会(金属労協)、全日本交通運輸産業労働組合協議会(交運労協)、公務公共サービス労働組合協議会(公務労協)などがある。

国際産業別組織[編集]

各国の産業別組合で構成される国際産業別組織には、国際労働組合総連合(ITUC)と協力関係にある国際産業別労働組合組織(9組織)、世界労働組合連盟(WFTU)の産業別部門の労働組合インターナショナル(11組織)などがある。かつて国際労働組合連合(WCL)加盟組織の産業別組織として「International trade federations」(ITF)が存在した。

出典[編集]

  1. 禹宗杬産業別組合と産業別連合体PDF」『日本労働研究雑誌』2015年4月号(No.657)
  2. 安周永「韓国労働組合による組織転換の現状とその課題〈1〉〈2〉」『Int'lecowk』1031号、2013年
  3. 兵頭淳史産業別労働組合地域支部による外国人労働者の組織化―静岡県西部地域における金属産業労組の取り組みを中心とする考察―」『専修大学社会科学研究所月報』No.597、2013年3月
  4. 濱口桂一郎「日本の産業別労働組合に未来はあるか?求められる役割はこれだ」情報労連、2016年10月21日