本間慎
本間 慎(本間 愼、ほんま しん、1931年 - )は、環境学者[1]。東京農工大学名誉教授。フェリス女学院大学名誉教授。専攻は環境生態学[2]。
経歴[編集]
新潟県佐渡郡羽茂村(現・佐渡市羽茂本郷)生まれ。1954年東京農工大学繊維学部養蚕学科卒業。1954年東京農工大学繊維学部助手、1963年農学部助手[3]。1970年「桑樹にたいする除草剤ATA・DCMC・PCPの薬害生理に関する研究」で農学博士(東京大学)[4]。1970年東京農工大学農学部助教授、1978年教授、1995年名誉教授[3]。1995年フェリス女学院大学文学部国際交流学部教授[5]、2004年同大学長、2008年伝統文化と環境福祉の専門学校校長[6]。
第13~第15期日本学術会議会員[7]、日本学術会議自然保護研究連絡委員会委員長[2]、日本環境学会会長(1994-2000年)[5]、日本科学者会議(JSA)代表幹事[8]、公害・地球環境問題懇談会(公害・地球懇)代表幹事[9]、美しい島佐渡・エコアイランド推進協議会会長[10][11]、関東羽茂会会長(2014年退任)を歴任[12]。関東羽茂会名誉会長[13]。「九条科学者の会」呼びかけ人[14]。
1970年「除草剤処理後展開してきた桑葉の乾量増加と窒素量について」で日本蚕糸学会進歩賞奨励賞を受賞[15]。
人物[編集]
東京農工大学の学生だったとき、「生産生態学」の立場をとる門司学派(東京学派)の生態学者から影響を受けた。門司正三・東大教授が提唱した「生産生態学」は、ボイセン・イェンセン『植物の物質生産』とマルクス『資本論』の原理から導かれ、植物の物質生産を経済的に分析したものである[8]。本間は「夜のゼミには、マルクスの『資本論』の勉強もした。私は、毛沢東の「矛盾論 実践論」の信奉者にもなった。戦後、生態学者間に「生物と環境」との関係について、「環境決定論」「相互作用論」「自己運動論」の3説が対立していた。私は、毛沢東の「矛盾論 実践論」の立場から「自己運動論」を支持した」と述べている[8]。
戦後、民主主義科学者協会(民科)の生物部会、農業部会に所属。民科の解散後、創立発起人の1人として1965年の日本科学者会議(JSA)の創立に参加。東京支部が結成されたときに常任幹事となり、情宣部を担当した。その後、全国常任幹事となり、公害環境問題を担当した[8]。1969年にJSA東京支部として安中公害(群馬県安中市の東邦亜鉛安中製錬所からの排煙で汚染された桑葉を蚕に与えると死んでしまうという問題)の調査に入って以来、公害研究(重金属による土壌汚染問題)に取り組み[7][8]、富山県のイタイイタイ病裁判、三多摩地域や秋田県鹿角郡小坂町のカドミウム汚染田問題、山形県南陽市の汚染米問題などに関わった[8]。
1975年11月の日本学術会議による国際環境保全科学会議(HESC)を成功させるため、福島要一の呼びかけで環境科学総合研究会実行委員会が結成され、5人の運営委員の1人となった(代表:福島要一)。1975年6月の「第一回環境科学総合研究会実行委員会(委員長:福島要一、幹事長:本間慎)」による研究発表会が成功したこともあり、環境科学総合研究会は活動を継続することになり、1975年7月の第1回幹事会で実行委員長に福島要一、副委員長に田崎忠良、幹事長に本間慎を選出した。1983年6月に環境科学総合研究会から日本環境学会(会長:神山恵三、事務局長:本間慎)に名称を変更した[8]。
2016年12月21日、浅見輝男(茨城大学名誉教授)、熊澤喜久雄(東京大学名誉教授)、瀬戸昌之(日本環境学会会長)、富山和子(立正大学名誉教授)、宮村光重(日本女子大学名誉教授)とともに呼びかけ人となり、「築地市場の豊洲移転は中止し、国民・都民の食の安全・安心を守れ」とする声明を発表した[16]。2017年1月26日、纐纈美千世(日本消費者連盟事務局長)、中澤誠(東京中央市場労働組合委員長)とともに発起人となり、「豊洲移転中止署名をすすめる会」を結成した[17][18]。
著書[編集]
単著[編集]
- 『おいしい水、豊かな土――足もとから始まる環境問題』(フェリス女学院大学[Ferris books]、2002年)
共編著[編集]
- 『現代環境工学概論』(加藤邦興、西山夘三、半谷高久、山本剛夫共編、オーム社、1978年、改訂2版1991年)
- 『新版 データガイド地球環境』(編著、青木書店、1995年)
- 『検証「環境ホルモン」――環境・生体攪乱物質のバイオサイエンス』(樽谷修共編、青木書店、1999年)
- 『環境哲学と最先端環境科学の融合時代――最新の環境問題重要テーマを網羅する』(菱田昌孝、鈴木浩、高江慎一共著、東京教育情報センター、1999年)*本間 愼表記
- 『21世紀生命科学バイオテクノロジー最前線――ヒト 動物 微生物 植物 ゲノムDNA』(渡邊格、鈴木浩、上田実、天児和暢、猪飼篤、小野里坦、東條英昭、安江博、杉田昭栄、美濃部侑三、正岡哲浩、長崎慶三、薩摩順吉、陳潤生、李俊佑、朱禎、張可喜、廣野喜幸共著、東京教育情報センター、2003年)*本間 愼表記
- 『新データガイド地球環境』(編著、青木書店、2005年)
- 『福島原発事故の放射能汚染――問題分析と政策提言』(畑明郎共編、世界思想社、2012年)*本間 愼表記
監修[編集]
- 『データガイド地球環境』(青木書店、1992年)
- 杉山浩、石塚皓造共同監修『これでわかる農薬キーワード事典――重要用語279項目+農薬の性質・毒性・用途 農薬の社会的管理・規制のために』(合同出版、1995年)
- こどもくらぶ編『環境学習に役立つ!わたしたちの地球環境と天然資源(全6巻)』(新日本出版社、2008年)
出典[編集]
- ↑ 「豊州移転問題 百年の悔い残さぬために」『しんぶん赤旗』2017年1月12日付
- ↑ a b 新データガイド地球環境 紀伊國屋書店
- ↑ a b 日外アソシエーツ編『現代日本人名録 1998 4. ひろ~わ』日外アソシエーツ、1998年
- ↑ CiNii 博士論文
- ↑ a b researchmap
- ↑ 産業振興部会 首都圏佐渡連合会 郷土連絡委員会
- ↑ a b 本間愼『おいしい水、豊かな土――足もとから始まる環境問題』フェリス女学院大学、2002年
- ↑ a b c d e f g 川崎健、北村実、小森田精子、本間慎『JSAと私の研究(PDF)』JSA eマガジン No.9、JSA eマガジン編集委員会、2013年1月20日
- ↑ 役員体制/会 則 公害・地球環境問題懇談会
- ↑ 市報さど2011年8月号(第90号)(PDF)佐渡市、2011年
- ↑ 第13回産業振興フォーラム 講演記録(PDF)首都圏佐渡連合会、2012年
- ↑ ’14年 羽茂会 関東羽茂会
- ↑ 佐渡の郷土会・第30回関東羽茂会総会・懇親会開催 佐渡市東京事務所ブログ、2018年9月8日
- ↑ 「九条科学者の会」呼びかけ人 九条科学者の会
- ↑ 日本蚕糸学会進歩賞 受賞者(奨励賞及び技術賞) 日本蚕糸学会
- ↑ 豊洲移転100年の悔いに/科学者6人が食の安全要求 日本共産党東京都委員会、2016年12月24日
- ↑ 【記者会見 】 豊洲市場移転中止署名を集めよう! 日本消費者連盟、2017年2月7日
- ↑ 2月18日 築地で大宣伝 食の安全・安心を守れ!豊洲移転中止署名をすすめる会」が署名開始 革新都政をつくる会、2017年2月15日