四則演算

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四則演算(しそくえんざん)あるいは四則計算(しそくけいさん)とは、最も基本的な4種類の二項演算のことである。「加減乗除」の別名もある。結果は「和差商積」と云われ、順序が異なる。

概要[編集]

二つの数を入力とし、何らかの出力を行う計算のことを二項演算と呼ぶが、その中で最も基本的な二項演算、足し算・引き算・掛け算・割り算のことを四則演算と呼ぶ。

自然数の四則演算[編集]

加算/足し算[編集]

結果は「和」。
自然数の並び {1, 2, 3, 4, 5 ……} の中で、AのB個先の数のことをA+Bとあらわす。例えば、3の2個先の数は5なので、3+2=5である。ただ、この「次の数」を基礎とした「序数的定義」(「数え主義」とも呼ばれる) は「拡張しやすい」という意味では数学的な扱いやすさはあるが、小学生にはわかりにくい。そこで、「1+1=2」から始まる「基数的定義」を持ちこんだのが遠山啓(とおやま・ひらく)である。
足し算は、交換法則(A+B=B+A)、結合法則((A+B)+C = A+(B+C))を満たす。
自然数に自然数を足すと自然数なので、自然数は加算について閉じて(closeして)いる。

減算/引き算[編集]

結果は「差」。
B + X = A を満たす X を、AとBから求める計算。この X の計算を減算(引き算)と呼び、X = A - Bと書く。
自然数の場合、AはBより大きくなければ、自然数の範囲から出てしまう。したがって、自然数は減算について開いて(openして)いる。

乗算/掛け算[編集]

結果は「積」。
「A + A + … + A」と、「B個のAを足す」(累加する)計算。これを掛け算と呼び、“A×B”、あるいは“A・B”や“AB”と書く。プログラミング言語では “A * B”。
したがって、自然数は乗算について閉じて(closeして)いる。
掛け算は、交換法則(A×B=B×A)、結合法則((A×B)×C = A×(B×C))を満たす他、足し算と合わせて分配法則(A×(B+C)=A×B+A×C)も満たす。
ただ、乗算を累加で説明すると、ディメンジョンは変わらないが長方形の面積はタテ×ヨコという長さの積であるため、次元が変わってしまう。それを説明するために遠山啓が持ってきたのが単位正方形を基礎としたタイルのシェーマである。

除算と割り算[編集]

結果は「商」。
除算には二種類あり、

  • いわゆる「除法」
  • ユークリッドの除法[1]

をいう。
割り算は五千年くらい昔には存在して、そこから分数がうまれた。除算の記号「÷」は分数に由来する。
「n 個のミカンを m 人で分けると、一人あたりのミカンはいくつになりますか?」という話はあるわけで、「11÷3」だと「一人あたり3個だと二個余るし、一人あたり四個だと一個足りない」という悩ましい状況が生まれる。
そこで、「話がややこしくなるから、“足りない”ケースは横に置いておこう」というのがユークリッドの除法であり、
  b = q×a + r  (0 ≦ a < a)
すなわち「被除数=商×被除数+剰余(余り)と考える。
狭義の自然数の範疇には 0 はないので、「割切れる」を「余りがない。割切れる。」という意味の0はいつごろ生まれたかはわからない。
ユークリッドの除法を「割り算」、分数的な除法を「除算」と呼びわけるひともいる。
除算だと 5 ÷ 0 の値は「不定」だが、剰余系ではユークリッド式の割り算が一般的なので「法はいくつだ?」という話になるので、(mod 6)で考えると 5 割る 0 は 5 である。

広い範囲での四則演算[編集]

整数[編集]

整数は、自然数より範囲を広げて、引き算を自由にできる様にした(減算において閉じている)世界である。整数は、自然数全てに加え、A+0=A、A×0=0となる様な「0」という数を含める。さらに、Aが整数であるなら、A+(-A)=0となる数-Aも用意し、整数に含める。ここで、A-B = A+(-B)と同じとなる。
加算・減算・乗算の三つに対して閉じている数学的構造を、「環(ring)」という。だけど除算については閉じていないので、「そういう世界を作っちゃえ」的な発想をした数学者がいたらしく、剰余系では割り算≡除算なので、「0÷0=0」で通っちゃうのだ。ただし外の世界には出られないので、「ひきこもり数学」ともいえる。 この上で、自然数での四則演算の概念は、交換法則・結合法則・分配法則が満たされる形で整数にも適用される。

有理数・分数[編集]

有理数は、整数より範囲を広げて、割り算を自由にできる様にした世界である(ただし0で割ることだけはできない)。有理数は、整数全てに加え、Aが0以外の有理数であるならA×A-1=1となる数A-1も用意し、有理数に含めることで整数より概念を拡張する。ここで、A÷B = A×B-1と同じとなるが、「あまり」の計算は行わない。この上で、整数での四則演算の概念は、交換法則・結合法則・分配法則が満たされる形で有理数にも適用される。

実数・複素数[編集]

実数複素数は、有理数をさらに拡張した概念であるが、有理数の時と矛盾が無い様に、四則演算が定義される。

数の世界以外での四則演算[編集]

四則演算は、いわゆる数の世界だけにあるものではない。様々な種類の四則演算があり、基本的には以下の条件を満たす様に決められる。

  • 足し算・掛け算は、いずれも結合法則・分配法則を満たす。
  • 足し算は、交換法則を満たす。(掛け算は、満たす場合と満たさない場合がある)
  • 引き算が可能だとすると、0に相当する元が存在し、0+X=Xが成り立つ。
  • 割り算が可能だとすると、1に相当する元が存在し、1・X=Xが成り立つ。(割り算を定義する場合)

脚注[編集]

  1. 遠山 啓『初等整数論』、P.10 による。

関連項目[編集]

外部サイト[編集]