水道方式
水道方式とは、遠山啓・銀林浩らによって考案された算数・数学の教育メソッドである。
命名は遠山 啓らによる小学生用の算数教科書の編集方針について、「水源池から各家庭の蛇口までの経路」になぞらえたことに由来し、編集者が「水道方式」と通称するようになったことにある。
「一般から特殊へ」という方針があるが、「特殊から一般へ」という方向性があることは遠山自身も認めている。
多くの教育者からの影響を受けており、また多くの教育者に影響を与えている。
- 構成的な、発達段階に応じた指導(ピアジェの『発生的認識論序説』ほか)
- 五・二進法
- タイルのシェーマ
などがあり、森毅の
のように数学教育にも影響を与えている。
五・二進法[編集]
「ちえおくれの生徒に、『5』を『V』として教えたら効果があった」というところから、小学生の一桁の加算において導入された。
一桁の加算の指導[編集]
一桁の加算の指導においては、
- 1+1、1+2、1+3、2+1、2+2、3+1 という、和が五未満の加算を指導する。
- 1+4、2+3、3+2、4+1 などの、「足して五になる加算」を指導する。
- 1+5、2+5、3+5、4+5、5+1、5+2、5+3、5+4、5+5 などの、「足して五を超え、計が十未満になる五以下の数の加算」を指導する。
- 1+9、2+8、3+7、4+6、6+4、7+3、8+2、9+1 などの「足して十になる加算」を指導する。
ことで、「十へのくりあがりがある一位の加算の指導」がうまくゆく、という話である。これはタイルのシェーマを用いて説明する。
ここから、「足して 18 以下の加算」を経て、二位数・三位数の加算にまで進んでゆく。
結果が一桁数になる減算の指導[編集]
まず、以下の減算の問題のパターンを以下の三つに分ける。
- A - B = □
- A - □ = C
- □ - B = C
あとは
- 2 - 1 = □、3 - 1 = □、3 - 2 = □、4 - 1 = □、4 - 2 = □、4 - 3 = □、5 - 1 = □、5 - 1 = □、5 - 3 = □、5 - 4 = □
- 6 - 1 = □、7 - 2 = □、8 - 3 = □、9 - 4 = □
- 6 - 2 = □、6 - 3 = □、6 - 4 = □、6 - 5 = □、7 - 1 = □、 7 - 3 = □、 7 - 4 = □、 7 - 5 = □、7 - 6 = □、8 - 1 = □、
8 - 1 = □、8 - 2 = □、8 - 4 = □、8 - 5 = □、8 - 6 = □、8 - 7 = □、9 - 1 = □、9 - 2 = □、9 - 3 = □、9 - 5 = □、9 - 6 = □、9 - 7 = □、9 - 8 = □
を指導してゆく、これに習熟したところで「空位の 0」を指導する。
ここからの指導は、児童の達成度に合わせて行う。目標は、三桁までの加減算のパターンを総て網羅することであり、「水源池」は「111 + 111」(繰り上がりがなく、0 を含まない)と「222 - 111」(繰り下がりがなく、0 を含まない)である。「222 + 222」のうな「繰り上がりのないもの」から始め、それを十分に理解してから、三桁のいずれかに繰り上がりのあるものへと指導してゆく。このあたりは、プログラム化して自動化し、AIにでも判定させればよい.
構成的な、発達段階に応じた指導[編集]
これが本来の「水道方式」の語源である。/br>
ひとつの方針としては、「一般から特殊へ」がある。
ただしその逆もああり、正方形は四辺形の中では特殊であるが、そこから凸四辺形を経て一般の四辺形に向かってゆく。
あるいは九九は、「ににんがし」から「くくはちじゅういち」とかつては教えられていた。
いわゆる「百マス計算」では 0 から 9 までの演算を教えるようだが、いわゆる「九九」には「0 の段」「1 の段」はない。
したがって、「0 元」と「単位元としての 1 」は自明とされていた。
また、乗算における交換法則も自明とされており、「さんにがろく」は「間違っている」と叱られたという話がある。
同様に、小学校における分数の指導には「約分」「通分」が伴うが、「ユークリッドのアルゴリズム」や「素因数分解」といった概念は教えれらてはいない。
「物事は順序だてて教えられなければならない」「達成度テスト(=レディネス・テスト)は、学童の理解度を確認するためのものであり、合計点や偏差値では計れないと遠山は述べている。