古賀暹

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古賀 暹(こが のぼる、1940年 - )は、新左翼活動家、編集者、出版人。東京大学法学部「政治コース」卒[1]。第二次ブント結成に尽力[2]。雑誌『情況』創刊者、初代編集長[3]世界書院取締役[4]

来歴[編集]

東京生まれ。父は北一輝系の右翼で、二・二六事件に連座した古賀斌東京大学入学後、東京大学新聞の編集者となり、吉本隆明廣松渉と出会う。1962年に東京社学同の結成に参加、副委員長となる(佐竹茂委員長、望月彰書記長)[2]。1963年に東京社学同と関西社学同が合同して社学同全国委員会(味岡修委員長)が結成されたが、1964年にML派マル戦派関西派独立社学同に分裂した[5]。古賀は明治大学斎藤克彦らと明大独立社学同を結成し、ブントの再統一を目指す[6]。1965年3月に独立社学同と共産同ML派の一部を統一させ、同年6月これに関西派が合流した共産主義者同盟統一委員会(統一派)[7]の結成に参加、政治局に加わる[6]。同年7月に統一派により社学同全国委員会が結成された[5]。1966年9月に統一派とマル戦派が合同して第二次ブントが結成され、学対部長となる[8]松本礼二議長、水沢史郎書記長)[9]。1966年11月に明大学費闘争が始まり、1967年2月2日に学生会中執と理事会が学費値上げを容認する協定に調印して闘争は終結に向かった。古賀がこの「二・二協定」といわれる「ボス交」を裏で指導していたとされ、この件で第二次ブントを除名された[10]

明大学費闘争の少し前に大和書房に就職[8]。第二次ブント除名後の1968年に情況社を設立し[1]、同年7月に月刊誌『情況』を創刊した[3]。古賀によれば、廣松渉が当時の金で100万円援助して、創刊されたものだという。古賀はいったん断ったが、喫茶店で上半身の服を脱ぎ、さらしから100万円を出し、「男が一度出した金を引っ込めることはできない」と言われたことから、創刊を決意したと言う[11]。第二次ブント分裂後は、共産主義者同盟再建準備委員会(通称:情況派)に所属。古賀によれば、雑誌『情況』は党派とは別のジャーナリズムであり、党派が情況派と呼ばれることは迷惑だったという。情況派の分裂後は、游撃派の指導者となったが、『情況』の刊行と党派の指導を両立させるのが難しくなり、1975年から76年頃に政治活動から離れ[12]、76年暮に『情況』を休刊した。

1976年『情況』休刊後すぐ西ドイツに渡り[13]ミュンヘンデュッセルドルフボンフランクフルトに滞在しながら、大学に通う。フランクフルトではアレックス・デミロヴィッチらとアルチュセールを読み続けていたという[14]。1986年(または1984年[2])に帰国し[1]河合塾の講師となった。1990年7月に第2期『情況』を創刊。古賀によれば、『情況』を再刊する気はなかったが、廣松渉の要請により、再刊に至ったという[14]。2000年に引退し[1]、発行元の情況出版大下敦史に譲渡した[14]。 2014年に北一輝論を出版[15]

著書[編集]

  • 『北一輝――革命思想として読む』御茶の水書房、2014年

訳書[編集]

分担執筆[編集]

  • 荒岱介編著『破天荒な人々――叛乱世代の証言』彩流社、2005年
  • さらぎ徳二著、さらぎ徳二著作集刊行委員会編『さらぎ徳二著作集 第3巻 天皇論/過渡期世界の転換と民族問題』情況出版、2008年

脚注[編集]

  1. a b c d 北一輝―革命思想として読む 紀伊國屋書店
  2. a b c 『破天荒な人々――叛乱世代の証言』101-108頁
  3. a b 『戦後思想の一断面――哲学者廣松渉の軌跡』104頁
  4. 会社概要 世界書院
  5. a b 板橋真澄「独立社学同」『戦後革命運動事典』197頁
  6. a b 『破天荒な人々――叛乱世代の証言』111-118頁
  7. 蔵田計成「共産主義者同盟統一派」『戦後革命運動事典』76頁
  8. a b 『破天荒な人々――叛乱世代の証言』124頁
  9. 蔵田計成「共産主義者同盟」『戦後革命運動事典』73-74頁
  10. 『破天荒な人々――叛乱世代の証言』123-129頁、249頁
  11. 『破天荒な人々――叛乱世代の証言』130-131頁
  12. 『破天荒な人々――叛乱世代の証言』133-136頁
  13. 「“逆風”に抗し第2期創刊(雑誌界)」『朝日新聞』1990年6月10日付朝刊11面(読書)
  14. a b c 『破天荒な人々――叛乱世代の証言』136-141頁
  15. 因島囲碁協会の古賀暹さん「北一輝」論を出版 せとうちタイムズ

参考文献[編集]

  • 荒岱介、古賀暹「親子二代、雪のふる日に人生が変わっていく」 荒岱介編著『破天荒な人々――叛乱世代の証言』彩流社、2005年、101-142頁
  • 熊野純彦『戦後思想の一断面――哲学者廣松渉の軌跡』ナカニシヤ出版、2004年
  • 絓秀実『革命的な、あまりに革命的な――「1968年の革命」史論』作品社、2003年
  • 戦後革命運動事典編集委員会編『戦後革命運動事典』新泉社、1985年

外部リンク[編集]